土壌汚染の報告・調査義務が生じる場合と義務を負う者 - 2019年改正土壌汚染対策法対応

不動産

目次

  1. 土壌汚染対策法の改正
  2. 土壌汚染対策法上の土壌汚染調査・報告義務を負う場合 [^2]
    1. 土壌汚染調査・報告義務を負う場合
    2. 土地の形質変更を行う者による土壌汚染調査・報告義務(土壌汚染対策法4条調査)
    3. 条例などで土壌汚染調査が必要となる場合
  3. 土壌汚染調査・報告義務を負う者(原則)[^9]
    1. 原則として土地所有者が義務を負う
    2. 土地を共有している場合には共有者全員が義務を負う
  4. 土地所有者以外が土壌汚染調査・報告義務を負う場合
    1. 土地の賃借人・借地人
    2. 土地に設定した担保権の権利者
    3. 土地区画整理事業の施行者
    4. 不動産証券化対象地の管理処分権者
  5. 都条例で土壌汚染調査・報告義務を負う場合
    1. 都条例116条の有害物質取扱事業者
    2. 都条例117条の土地の改変者
  6. おわりに

土壌汚染対策法の改正

 2009年(平成21年)改正の土壌汚染対策法附則において、「政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、新法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされたことを受けて、検討がなされた結果、2016年(平成29年)5月に改正法が成立するに至りました。

 改正項目により異なりますが、2018年(平成30年)4月と2019年(平成31年)4月に改正法が施行されています。

 本稿で解説するとおり、土壌汚染の可能性がある土地において届出や報告・土壌調査が求められる要件についても改正がなされており、これまでよりも届出や報告・土壌調査を行わなければならない事態が増えると思われますので、注意が必要となります。かかる改正については、土壌汚染が存在する可能性が高い土地において形質変更を行う場合には汚染の拡散を生ずるおそれがあることから規制対象をこれまでよりも広げることとしたものです。今回の改正によってこれまで対象外であった形質変更(3000㎡未満の形質変更)のうち、半数以上の行為について届出の契機を捉えることができると推計されています 1

土壌汚染対策法上の土壌汚染調査・報告義務を負う場合 2

土壌汚染調査・報告義務を負う場合

 土壌汚染対策法(以下、特段の指摘のない限り「法」といい、同施行規則を「規則」といいます)により、土地の所有者等に対して必要な届出、土壌汚染の調査・報告義務が課されています(土壌汚染対策法3条~5条)。

 土壌汚染対策法上、調査義務が発生するのは、以下の3つの場合があります。

土壌汚染対策法3条 水質汚濁防止法上の「特定施設」を廃止する場合
土壌汚染対策法4条 3,000㎡以上(一定の場合には900㎡以上)の土地の形質変更を行った者による事前届出の結果、知事が土壌汚染のおそれありと認定した場合
土壌汚染対策法5条 上記のほか、知事が、土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれありと認定した場合

土地の形質変更を行う者による土壌汚染調査・報告義務(土壌汚染対策法4条調査)

 以下では、実務上最も問題となる土壌汚染対策法4条調査を中心に以下説明します。

(1)土壌汚染対策法4条に基づく届出

 3,000㎡以上の範囲の土地の掘削その他の形質変更を行う場合、土地の所有者等はその着手30日前までに都道府県知事に必要な届出を行う必要があります(土壌汚染対策法4条1項、土壌汚染対策法施行規則22条本文)。改正法(2019年施行)3 では、現に有害物質使用特定施設が設置されている工場・事業場の敷地、または、使用が廃止された有害物質使用特定施設(土壌汚染対策法3条1項本文)に係る工場・事業場の敷地(同項ただし書の場合は除く)の土地の形質の変更にあっては、900㎡以上の土地の形質変更が対象となりました(土壌汚染対策法施行規則22条ただし書)。

 なお、土地の形質変更にあたる場合であっても、以下のケースなどについては、届出が必要ないものとされています(土壌汚染対策法4条1項2号、土壌汚染対策法施行規則25条)。

  1. 土壌を土地の区域外へ搬出すること
  2. 土壌の飛散または流出を伴うこと
  3. 形質変更部分の深さが50cm以上であることのいずれにもあたらない「軽易な行為その他の行為」

 また、土地の形質変更の内容が盛り土のみである場合にも届出は不要とされています(環境省「土壌汚染対策法の一部を改正する法律による改正後の土壌汚染対策法の施行について」第3.2.(2)①)。

 なお、ここで定められている「3,000㎡以上」とは、実際に土地の掘削等を実施する部分の広さのことであり、対象地の面積のことではありません。もっとも、後述のとおり、形質変更をする部分の面積は3,000㎡未満でも、東京都では条例(「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」。以下「都条例」といいます)において、3,000㎡以上の土地で土地の改変を行う際には届出を行うことが義務づけられています(都条例117条1項、都条例施行規則57条1項本文)。

(2)土壌汚染対策法4条に基づく汚染調査・報告義務

 上記の届出(土壌汚染対策法4条)がなされた場合、都道府県知事は、当該土地が特定有害物質によって汚染されているおそれがあるものとして環境省令で定める基準に該当すると認めるときは、特定有害物質による汚染の状況について、当該土地の所有者等に対し土壌汚染調査を行わせ、その結果を報告するように命ずることができます。

 なお、改正法(2018年施行)4 では、土地の形質の変更を行おうとする者が先行して土壌汚染状況調査を実施し、土地の形質の変更の届出と併せて調査結果を報告することができることになりました 5

(3)土壌汚染対策法3条1項ただし書の届出、汚染調査・報告義務

 なお、調査義務が一時的に免除されている土地(土壌汚染対策法3条1項ただし書)についても、900㎡以上の土地の形質変更が届出の対象となっています(土壌汚染対策法3条7項、土壌汚染対策法施行規則21条の4)6。この場合においては、あらかじめ届ける必要があることとされ(30日前までに届け出ることは不要)、届出があった場合は、都道府県知事は必ず土壌汚染状況調査を命ずることとされています(土壌汚染対策法3条8項)7

条例などで土壌汚染調査が必要となる場合

 上記のほか、都条例をはじめ、各地方公共団体の定める条例により土壌汚染調査や対策が要求されることがあります。

 東京都の環境確保条例において、調査義務が発生するのは、以下の2つの場合があります。

116条 工場設置者が工場を廃止したり、工場や作業場の全部または一部除去しようとする場合
117条 3,000㎡以上の土地の改変(土地の掘削その他土地の造成など)を行おうとする場合

 土壌汚染対策法と条例では、土壌汚染調査が求められる基準は必ずしも一致しません
 たとえば、「117条調査」は3,000㎡以上の土地で、土地の切り盛りや掘削など(土地の改変)を行おうとする者に要求される調査ですが、土壌汚染対策法の4条調査とは異なり、土地の改変を行う面積でなく、対象地の面積が基準となります(都条例規則57条1項)。つまり、対象地の一部だけ土地の改変を行うような場合、改変の対象となる面積は3,000㎡未満であっても、その対象地の面積が3,000㎡以上であれば届出調査が求められます 8

土壌汚染調査・報告義務を負う者(原則)9

原則として土地所有者が義務を負う

 上記のような土壌汚染調査・報告義務を負う者については、土壌汚染対策法においては「土地の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)」(土壌汚染対策法3条参照)と規定されています。

 この点について、環境省の通知においては、「土地の掘削等を行うために必要な権原を有し調査の実施主体として最も適切な一者に特定されるものであり、通常は土地の所有者が該当する」とされています 10。土壌汚染対策法が所有者に対して義務を課しているのは、他人に危害を及ぼすような物を所有する者は、危害が生じないようにする義務があるという考え方に基づくものとされています。

土地を共有している場合には共有者全員が義務を負う

 対象地が共有されている場合には、共有者全員が土壌汚染調査・報告義務を負うことになると考えられています 11

 土壌汚染の調査(また、そのための土地の掘削行為)は、土地の現状を維持する行為として保存行為(民法252条ただし書)にあたると考えられています。そのような考え方を前提とすれば、土地の共有者は、各人が単独で土壌汚染調査・報告の実施義務を負うことになります。土地の所有者が死亡して相続がなされた場合にも相続人間で土地を共有する状態となる場合があることから、各相続人が単独で土壌汚染調査・報告の実施義務を負う可能性があります 12

土地所有者以外が土壌汚染調査・報告義務を負う場合

 これに対し、「土地の管理および使用収益に関する契約関係や管理の実態等からみて、土地の掘削等を行うために必要な権原を有する者が、所有者ではなく管理者または占有者である場合」には、当該管理者または占有者が調査報告義務を負うことになるとされています 13。環境省通知においては、具体例として、所有者が破産している場合の破産管財人、土地の所有権を譲渡担保により債権者に形式的に譲渡した債務者、工場の敷地の所有権を譲渡した後も引渡しをせずに操業を続けている工場の設置者等があげられていますが、その他の場合にも問題となるケースが考えられます。

 以下、具体的に問題となる事例について説明します。

土地の賃借人・借地人

(1)原則として、借地の賃貸人が義務を負う

 対象地が第三者に賃借され、その第三者が土地上で工場などを操業している場合でも、原則として土地所有者(賃貸人)が調査・報告義務を負うと考えられます。
 なぜなら、借地人は、借地契約上の借地の目的からみて、その土地の用法に従った使用を行う権利を有しているものの、多くの場合に、土地の掘削等を伴う土壌汚染調査を行うことは、賃借物の保存行為として土地所有者(賃貸人)の権限の範囲内と考えるのが合理的と考えられるためです(民法606条2項参照)。
 対象地が使用貸借されている場合も、同様に原則として土地所有者が調査・報告の義務を負うことになるものと思われます 14

(2)借地人が義務を負う場合

 これに対し、土地の賃貸借契約において、特約で借地人が土地の掘削等を行うために必要な権原を有しているような場合には、当該借地人が調査報告義務を負うことになると考えられます。もっとも、借地契約において、土壌汚染の調査・対策を占有者(借地にある工場の設置者など)が行うという条項が規定されていた場合でも、所有者が土地の掘削等を伴う管理に関する一般的な権限を有している場合には、やはり土地所有者が調査・報告義務を負うことになることがあるものと思われます。
 なお、そのような場合には、調査の実施や費用負担は借地人が行い、都道府県知事への報告は借地人から調査結果を受け取った土地所有者が行うなどの役割分担とすることも考えられるとの指摘がなされています 15

土地に設定した担保権の権利者

(1)土地に設定した譲渡担保の権利者

 土地所有者が債権者に対して債権担保のために所有地に譲渡担保権を設定することがあります。
 譲渡担保権は債権担保のために土地の所有権が担保権者に移転するものの、譲渡担保の実質は担保権であり、土地の占有・利用については多くの場合従来どおり担保権設定者に留保されたままとなり、また、所有権移転の効力は債権担保の目的を達成するために必要な範囲においてのみ認められるとされていることからすれば(最高裁昭和57年9月28日判決・判タ485号83頁)、原則として調査・報告義務を負うのは、譲渡担保権者ではなく、担保権設定者(実質的な土地の所有者)となると考えられます 16

(2)土地に設定した抵当権の権利者

 また、同様に土地所有者が債権者に対して債権担保のために所有地に抵当権を設定することがあります。
 譲渡担保権と同様に、抵当権が設定された場合でも債務者(抵当権設定者)が占有を継続し、抵当権者は対象不動産からの優先弁済を受ける権利があるだけで(民法369条1項)、当該土地の使用占有などの管理処分権原はないことから、抵当権者は、原則として土壌汚染調査・報告義務を負わないと考えられます。
 これに対し、抵当権者が抵当権を実行して自己競落して土地の所有者となった場合は調査・報告義務を負うことになると考えられます 17

土地区画整理事業の施行者

 土地区画整理事業では、施行者は土地の所有者ではないことから、土壌汚染調査・報告義務を負わないことになると考えられます。

 そのため、形質変更時の届出についても施行者が単独で行うことはできず、地権者全員の同意(土壌汚染対策法施行規則23条2項2号)が必要となりますが、これは現実的には難しいことが多いと思われます。この点について、環境省は、地権者からの同意書が得られたまとまりごとの随時提出を認めるほか、「仮換地の指定」等がなされた場合には施行者が土壌汚染対策法における「土地の所有者等」として地権者の同意が不要となるとの見解を示しています 18

不動産証券化対象地の管理処分権者

 土地資産を流動化(証券化)している場合も、対象地の管理や使用収益に関する契約関係や管理の実態等からみて、土地の掘削等を行うために必要な権原を有する最も適切な一者が調査・報告義務を負うことになると考えられます 19

都条例で土壌汚染調査・報告義務を負う場合

都条例116条の有害物質取扱事業者

 都条例116条において、土壌汚染調査・報告義務を負う者は「有害物質取扱事業者」とされています。ここでいう有害物質取扱事業者とは、「条例に規定する工場又は指定作業場を設置している者で、有害物質を取扱い、又は過去に取り扱ったことがある者」を定義されており、同条例施行後(平成13年10月1日以降)に有害物質を取り扱っていなくても、過去に取り扱ったことがあれば、有害物質取扱事業者に該当することになると解されています 20

 なお、有害物質取扱事業者が土壌汚染の調査等を行わずに土地の譲渡等をしたときは、譲渡を受けた者が土壌汚染の調査等の措置を講じなければなりません(都条例116条4項)。

都条例117条の土地の改変者

 また、都条例117条において、土壌汚染調査・報告義務を負う者は「土地の切り盛り、掘削等規則で定める行為(以下「土地の改変」という。)を行う者」とされています。

 ここでいう「土地の改変」とは、土地の切り盛り、掘削その他土地の造成、および、建築物その他の工作物の建設その他の行為に伴う土地の形質の変更をいうものとされています(都条例施行規則58条)。

おわりに

 以上、本稿においては、土壌汚染の報告・調査義務が生じる場合とその義務を負う者について、改正法を前提に基本的な考え方を説明しました。
 もっとも、ケースバイケースにより報告・調査義務を負う場面は異なりうることから、その都度慎重な判断が求められます。
 特に、土壌汚染に関して必要な届け出を怠って土地の開発を行ったケースで、土壌汚染対策法違反で刑事告発がなされた例がありますので注意が必要です(猿倉健司『土壌汚染に関連する不祥事事案から考える、不正発覚後の対応・再発防止策策定のポイント』参照)。

 土壌汚染対策法上の特定有害物質以外にも、近時特にPCBやアスベスト汚染土壌の取り扱いが問題となっていることから、下記も参照してください。


  1. 中央環境審議会「今後の土壌汚染対策の在り方について(第二次答申)」(平成30年4月3日)4頁 ↩︎

  2. 井上治「不動産再開発の法務 -都市再開発・マンション建替え・工場跡地開発の紛争予防〔第2版〕」(商事法務、2019)33頁以下 ↩︎

  3. 環境省 水・大気環境局 土壌環境課「改正土壌汚染対策法について(平成31年4月1日施行)」 ↩︎

  4. 環境省 水・大気環境局 土壌環境課「改正土壌汚染対策法について(平成31年4月1日施行)」10頁 ↩︎

  5. 環境省 水・大気環境局 土壌環境課『逐条解説 土壌汚染対策法』(新日本法規、2019)72頁 ↩︎

  6. 環境省 水・大気環境局 土壌環境課「改正土壌汚染対策法について(平成31年4月1日施行)」9頁 ↩︎

  7. 環境省 水・大気環境局 土壌環境課『逐条解説 土壌汚染対策法』(新日本法規、2019)68頁 ↩︎

  8. 東京都環境局ウェブサイト「よくあるご質問」5番 ↩︎

  9. 井上治著「不動産再開発の法務 -都市再開発・マンション建替え・工場跡地開発の紛争予防〔第2版〕」(商事法務、2019)35頁以下 ↩︎

  10. 環境省「土壌汚染対策法の施行について」環水土第20号(第3.1.(2)①) ↩︎

  11. 環境省「土壌汚染対策法の施行について」環水土第20号(第3.1.(2)①) ↩︎

  12. 土壌汚染対策研究会編著「改正法対応Q&A129 土壌汚染対策法と企業の対応」(産業環境管理協会、2010)50~51頁 ↩︎

  13. 環境省「土壌汚染対策法の施行について」環水土第20号(第3.1.(2)①) ↩︎

  14. 土壌汚染対策研究会編著「改正法対応Q&A129 土壌汚染対策法と企業の対応」(産業環境管理協会、2010)51~52頁 ↩︎

  15. 環境省 水・大気環境局土壌環境課編「逐条解説 土壌汚染対策法」(新日本法規出版、2019年)51頁 ↩︎

  16. 環境省「土壌汚染対策法の施行について」環水土第20号(第3.1.(2)①) ↩︎

  17. 土壌汚染対策研究会編著「改正法対応Q&A129 土壌汚染対策法と企業の対応」(産業環境管理協会、2010)53頁 ↩︎

  18. 環境省「土壌汚染対策法に関するQ&A」(令和2年6月8日)10頁30番 ↩︎

  19. 土壌汚染対策研究会編著「改正法対応Q&A129 土壌汚染対策法と企業の対応」(産業環境管理協会、2010)54頁 ↩︎

  20. 東京都環境局ウェブサイト「よくあるご質問」1番 ↩︎

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