法務の英語メール 課題克服レッスン

第1回 外国人弁護士へのメール送付時の「ちょうどよい」件名・挨拶表現は

国際取引・海外進出
山崎 聡士 株式会社コロプラ

目次

  1. 英語にコンプレックスを持たずに、自分の使える言葉で書くこと
  2. メールを読んでもらえる件名のコツ
  3. 宛名は “sensei”(先生)で敬意と日本人であることを示す
  4. 外国人弁護士とのコミュニケーションを円滑にする自己紹介の書き方
  5. 相手の弁護士を知った経緯を伝え、さらに褒めて親近感を持ってもらう
  6. 参考表現

ビジネス環境の国際化、複雑化に伴い英語が必要になる場面は増え続けています。これは法務部門においても例外ではなく、英文契約書のドラフトやレビュー、海外子会社のコンプライアンス体制構築など様々な場面で英語を用いる機会があります。

その一方で、英語に対して苦手意識を持つ法務担当者も多く、BUSINESS LAWYERSが実施したアンケートでは実に約7割の方が英語が苦手と回答しています。

特に海外の外国人弁護士に英文メールを送る業務は頻繁に発生するにもかかわらず、ノウハウが明らかにされることは少なく、手探りで対応をされている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、架空の会社であるXYZ社の法務部に所属する先輩社員の佐藤さんと後輩社員の山田さんのOJTを通じて、TPOに応じた程よい英文表現をご紹介していきます。

第1回は、初めて仕事を依頼する外国人弁護士に英文メールを送る場合の心構えや書き方について、株式会社コロプラ コーポレート本部法務知財部 山崎 聡士部長によるノウハウをもとに、ポイントを伝授します。

山崎氏は「大抵の若手法務パーソンは、初めて海外の外国人弁護士に英文メールを出すとき、どう書いて良いか戸惑うものです。しかし、ポイントさえ理解すれば、それほど難しいものではありません。」と語ります。英語が苦手な方にとって、心強い一言ですね。

早速、佐藤先輩が山田さんにメールの指示を出しています。

英語にコンプレックスを持たずに、自分の使える言葉で書くこと

佐藤先輩:
例のインドネシアの代理店との紛争案件ですが、契約上、準拠法がシンガポール法で紛争解決はシンガポール国際仲裁センターでの仲裁になっています。現地の国際仲裁の専門家を起用するのが良いと思いますので、山田さんからシンガポールのABC法律事務所、ジョン・スミス弁護士にメールしてくれますか?

山田さん:
海外の弁護士に英文メールを出したことがないのですが、少しアドバイスをいただけますか? 実は英語が苦手なもので・・・。

佐藤先輩:
喜んで。まずは、心構えとして、うまく書こうと背伸びしないことです。
ビジネスでは英語が共通語でも、山田さんと同じように、相手の弁護士も必ずしもネイティブとは限りません(ポイント①

山田さん:
なるほど。確かに、この間、出席したFCPAのセミナーでは、講師はネイティブではない印象でした。

佐藤先輩:
たとえニューヨーク州やカリフォルニア州の弁護士資格をもっていたとしても、その弁護士が英語圏出身とも限りません。

たとえばニューヨーク州の司法試験の外国人受験者比率は高く、また、近年では、全合格者のうち、約30パーセント以上は外国人とも言われているようです 1

それに、一口にネイティブの英語と言っても、イギリス英語、アメリカ英語、オーストラリア英語、カナダ英語、シンガポール英語、インド英語など様々で、国・地域によって英語の発音、綴り、表現等が微妙に異なります。

外国人の弁護士であっても、どこのネイティブかもわからないので、うまくメールを書こうと背伸びする必要はありません。

重要なのは、英語が苦手というコンプレックスを持たないで、今の自分のレベルに合わせて、自分の使える言葉で書くことです。メールでコミュニケーションするだけならば、高校生程度の英語力でも十分、外国人と意志疎通できるはずです。

それに気の利く相手なら、山田さんのレベルに合わせてわかりやすく返信してくれるはずですよ。

山田さん:
ありがとうございます! 少し自信が出てきました。

ポイント ①
海外の弁護士事務所の弁護士も英語ネイティブとは限らない、背伸びをせずに自分の使える言葉でメールを書こう。

メールを読んでもらえる件名のコツ

山田さん:
他に書き方のポイントはありますか?

佐藤先輩:
こちらの意図がストレートに伝わるよう、シンプルに、丁寧に、かつ直接的な表現を使うのが良いと思います。

日本人同士のコミュニケーションでは、行間を読ませたり、文脈で伝えようとしたりすることが間々あります。特に言いにくいことはその傾向が強いですよね。しかし、外国人と日本人とでは、文化的、宗教的、あるいは言語的に様々な違いがありますので、文脈に頼る書き方や婉曲的な表現をすると相手に誤解を与える可能性があります。

また、一文が長くなり過ぎないようにすることも重要です。文章をつなげる場合でも、接続詞は1つだけにしましょう。一文が長かったり、接続詞を多用すると文章が読みにくくなります。

その他にも相手に読ませる工夫は色々ありますので、山田さんの書き方を見せてもらいながら教えたいと思います。

山田さん:
わかりました。では、まず件名から書きます。
このインドネシアの件はかなり急ぎで対応をお願いしたいので、“Urgent”(至急)としてみました。これで相手の目を引けると思いますが、いかがですか?

佐藤先輩:
どこの誰かも分からない人から “Urgent”(至急)という件名のメールを受け取ったら、相手はどう思うでしょうか?

山田さん:
ちょっと唐突ですかね…。

佐藤先輩:
そうですね。知り合いの弁護士であれば、単刀直入な物言いですので全く問題ないと思いますが、初めてメールをする相手であれば、その件名では不躾に感じる人もいるでしょう。

山田さん:
では、どんな感じが良いでしょうか?

佐藤先輩:
件名というのは、相手が最初に目にするものですから、なるべく相手に読んでもらいやすくする工夫が必要です。

それこそ件名が不適切だと、すぐに読んでもらえなかったり、最悪の場合は迷惑メールと勘違いされて、未開封のままゴミ箱行きになったりしかねません。

ポイントとしては、件名だけで、ある程度、用件がわかるように、でも長すぎず、簡潔に書くのが望ましいと思います(ポイント②

できれば、長くても10単語以内に収めておきたいところです。

たとえば、今回の件は、インドネシアの代理店との紛争の件で仕事の依頼をしたいということですから、

“Request for your advice on dispute with an Indonesian distributor”

という表現が良いように思います。

万が一、相手から返信がない場合は、リマインダーメールを送りましょう。そのときの件名は、下記の例があげられます。

  • Kind Reminder: (元のメールの件名)
  • Friendly Reminder:(元のメールの件名)
  • Gentle Reminder:(元のメールの件名)

その他の件名のバリエーションとしては、下記の表現で伝えます。

  • 何か確認したいことがあるとき Confirmation:(確認したい内容)
  • 提案したいことがあるとき Suggestion:(提案内容)
  • 苦情があるとき Complaint:(苦情の内容)

山田さん:
確かに件名次第で相手は内容を想像できますね。

ポイント②
件名は長すぎず、簡潔に書いて用件がわかるように表現しよう

宛名は “sensei”(先生)で敬意と日本人であることを示す

山田さん:
今回のご相談先は今までにお付き合いのないジョン・スミス弁護士でしたね。“Dear Mr. John Smith,” と宛名を書いてみましたがどうでしょう。

佐藤先輩:
確かにそれでも全く問題はありません。
しかし、日本人ならではの良い言い方がありますので、この表現も覚えておきましょう。

“Dear John Smith-sensei,”

山田さん:
“sensei”(先生)で通じるのですか?

佐藤先輩:
sensei(先生)という単語は、武道や学校の先生、医者、弁護士、その他の専門家に対する日本語の敬称として、海外でも結構知られています。この単語の便利なところは、相手の弁護士に対して、山田さんが日本人であることと、自分が敬われていることの2つを同時に伝えられる点です(ポイント③

つまり、私は日本人でネイティブではないのでお手柔らかに、というメッセージですね。

弁護士につける敬称として、“Esquire” という言葉があります。
使い方としては、“John Smith, Esq.” となりますが、あまり現代的な感じではありませんし、通常のメールのやり取りでは滅多に見かけることはありません。

山田さん:
なるほど。ところで、「拝啓 平素は…」といった前文は必要でしょうか?

佐藤先輩:
そのような前文は不要です。これは日本語のメールでもそうですが、個人としても会社としても全く初めての相手にそのような前文は付けませんよね。相手も心当たりのない人からそのようなメールをもらったら不審に思うかも知れません。

山田さん:
では、相手が知り合いの場合はどうですか?

佐藤先輩:
その場合は、日本語の「お元気ですか?」、「調子はいかがですか?」、「ご無沙汰しています」に相当する言い回しがあります。しばしば見かける決まり文句ですので、覚えておくと便利です。

たとえば、次のような表現があります。

  • I hope this e-mail finds you well.
  • I hope everything is going well with you.
  • I hope you are doing well.
  • It’s been a while.

もっと手短に、“How’s everything?”、“How are things?” や “Is everything ok?” といった表現もあります。

ポイント③
宛名はsensei(先生)で、相手への敬意と自分が日本人であることを同時に示そう。

外国人弁護士とのコミュニケーションを円滑にする自己紹介の書き方

山田さん:
次に自己紹介の書き方を見ていただきたいのですが、シンプルに短くするのが良いとのことでしたので、こんな感じにしてみました。

“I’m Taro Yamada. My company is XYZ Corporation.”

佐藤先輩:
それではシンプル過ぎて、山田さんと会社の関係がわかりません。もしかしたら相手は山田さんをXYZ Corporationの社長さんかと思うかもしれませんよ。

自己紹介では自分の名前、会社名、所属、職位を明確にしておくべきです。
また、弁護士からすると、クライアントがどんな会社であるかに興味があるはずですので、簡単に会社説明を加えると一層良いでしょう(ポイント④


山田さん:
では、こんな感じでどうでしょうか?

“My name is Taro Yamada, a staff member of the Legal Department of XYZ Corporation. Our company is involved in social game business.”

佐藤先輩:
すごくよくなりました。しかし、“a staff member” では下っ端感がありますね…。山田さんの場合は、肩書がありませんので、そこを強調して書く必要はありません。

山田さん:
では、どう書けば良いですか?

佐藤先輩:
そうですね。それなりに責任ある人物と思わせた方がその後の弁護士との付き合いがしやすい(ポイント⑤面もありますので、山田さん向きの表現を教えます。

“My name is Taro Yamada. I work for XYZ Corporation and report directly to the Manager of the Legal Department of XYZ Corporation.”

相手は、こちらの組織構成などわかりませんので、この表現であれば部門長と直接つながっている印象を与え、山田さんの下っ端感は和らぐと思います。

(注:Department(部)の責任者は一般的にはGeneral ManagerまたはDepartment Managerと言います。通常は、Departmentの下位にSection(課)がありますので、課長はSection Managerや単にManager、あるいはSection Chiefなどといったりもします。)

山田さん:
(何度も下っ端って言わなくても…)
確かに読みようによっては部門長の「右腕」っぽいですね。他にはどんな言い方がありますか?

佐藤先輩:
その他にも使い方によっては責任者とも担当者とも捉えられる曖昧な表現として、“in charge of” という言い方があります。たとえば、“I am in charge of legal affairs on this matter.” と言うと、「私はこの件の法務担当(あるいは法務責任者)です」という意味になります。

その他の自己紹介も紹介しておきますので、あとはお好みで使い分けましょう。

自己紹介表現の使用例

“My name is Taro Yamada of the Legal Department at XYZ Corporation, which is a social game company having an industry-leading VR technology.”

“I am Taro Yamada from the Legal Department of XYZ Corporation.
Our company is engaged in social game services.”

“My name is Taro Yamada. I am in the Legal Department of XYZ Corporation, which is a social game company having an industry-leading VR technology.”

(注:My name is…という書き出しの方がビジネス的にはフォーマルと言われますが、I am …と書き出しても特に失礼ではないので、あまり使い分けを気にする必要はないでしょう。)
ポイント④
自己紹介で伝えるべきは「自分の名前」、「会社名」、「所属」、「職位」。「会社説明」を加えると一層良い。

ポイント⑤
海外の弁護士に連絡する際は、それなりに責任ある人物と思わせた方がその後の付き合いがしやすい。

相手の弁護士を知った経緯を伝え、さらに褒めて親近感を持ってもらう

山田さん:
他に気をつけるポイントはありますか?

佐藤先輩:
相手の弁護士を知るに至った経緯も、できれば書いた方が良いです。
弁護士本人にとっては、そこにも関心があるはずです。

たとえば、“Chambers and Partners” や “The Legal 500” などの弁護士ランクのサイトを見て知った、誰かから紹介された、何かの会合で名刺交換した、あるいは、その弁護士のセミナーに出席したなど、具体的に書くほど親近感が沸き効果的と思います。さらに、そこで相手を誉めることができると良いでしょう。誉められて嫌に思う人はあまりいませんからね。

John Smith先生は、The Legal 500でたまたま見つけて、良さそうな先生だったので、こんな感じで書くと良いでしょう。

“I came across your profile on “The Legal 500”, and found that you have profound knowledge and experience in handling a variety of complex litigations.”

参考までに、いくつか違うシチュエーションでの書き方を教えますね。

たとえば、どこかでプレゼンを見たなら、こんな感じです。

“I saw your presentation at the INTA’s Annual Meeting this year, and I was deeply impressed with your rich knowledge and deep insight.”

こちらは誰かから紹介された場合の例です。

“I was referred to you by TANAKA Ichiro-sensei of ●●● International Law Firm. He and I have known each other for a long time, and he strongly recommended that I should contact you.”

山田さん:
ありがとうございます。
この調子で、次は「案件依頼の頭出し」の書き方をお願いしたいのですが。

佐藤先輩:
おやおや、もう終業時間ですよ。続きはまた今度にしましょう。


筆者の経験した限りで、英文メールの勘所を書かせていただきましたが、これはコミュニケーション術に他なりません。
本質的に大切なのは、伝えたいことを書くのではなく、伝わるように書くという姿勢です。そこさえブレなければ、自ずと書き方は変わってくるでしょう。
若手法務パーソンの皆さんの英文メールへの苦手意識が少しでもなくなれば幸いです。

参考表現

パターン1

Dear John Smith-sensei,

I am reaching out to you because your blog article about "●●●" made me realize you're the one whom I should consult with.

My name is Taro Yamada, and I am from the Legal Department of XYZ Corporation. Here's a link to our company:●●●.(URLのリンクを入れる)

パターン2

Dear John Smith-sensei,

My name is YAMADA Taro at XYZ Corporation, and I’m in the Legal Department.
Our company is one of the leading companies in the social gaming industry in Japan.

I'm writing to you because I read your bio on your firm’s website and found that you're quite familiar with international arbitration cases.

パターン3

Dear John Smith-sensei,

My name is Taro Yamada, and I handle legal affairs at XYZ Corporation.
Please go to the URL below to see our company profile.

http://XXXXXXXXXXXXXX

While I was browsing the Chambers and Partners, I noticed that you’re well versed in a bunch of lawsuits involving complex legal issues. That’s why I am sending this email.

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