法律雑誌編集部と振り返る2019年
第1回 中央経済社、ビジネス法務編集部が選ぶ2019年の注目トピックス
法務部
法律業界の2019年を、専門誌編集部のおすすめ記事と特集でたどる本連載。第1回は、各種法改正・最新の法律動向をわかりやすく解説してくれる実用法律雑誌「ビジネス法務」編集部が、独自の目線で2019年の法務トレンドを振り返ります。
レピュテーションリスク(2月号)、パワハラ(9月号)、自然災害(5月号)など、旬を逃さないテーマ設定が光った2019年の「ビジネス法務」。スルガ銀行不正融資問題の第三者委員会報告書に寄せてなされた、社外取締役の役割に関する踏み込んだ提言(3月号)に、専門誌としての矜持を感じた読者は少なくなかったことでしょう。近年、読者のなかで数を増やしているという「一人法務」に光を当てた特集(10月号)も、「ビジネス法務」らしい切り口で読者の好評を得ました。
2019年の注目記事・特集5選
〔特集〕法務マネジメントの可能性を探る レピュテーションリスクの正体

- 掲載号:
- ビジネス法務2019年2月号(2018年12月21日発売)
- 著者:國廣正、竹内朗、五木田和夫、岡本杏莉ほか
【選出のポイント】
企業が果たすべきとされる社会的責任が拡大している現在、企業活動において「レピュテーション」が重要であることは疑いがありません。その一方、「レピュテーションリスク」は抽象的に語られることが多く、具体的なイメージを持てないことが多々あると感じ、本特集を企画しました。
特集各稿では、具体的な形を持たないレピュテーションとは何なのか、法務部は「なぜ・どのように・どこまで関わるべきか」といった点につき、丁寧に整理いただきました。特に、國廣先生・竹内先生の対談(「鋭敏なセンスを養う! レピュテーションリスクの本質と法務の役割」)ではレピュテーションリスクの管理手法につき具体的に言及されており、企業法務に関わるすべての方にお読みいただきたい内容です。
〔実務解説〕スルガ銀行不正融資問題に係る第三者委員会報告書の分析と企業対応

- 掲載号:
- 2019年3月号(2019年1月21日発売号)
- 著者:寺田昌弘
【選出のポイント】
2018年に日本の金融業界を震撼させたスルガ銀行の不正融資問題。「地銀の優等生」と呼ばれた同行の不祥事に関する第三者報告書は、広く世間の耳目を集めました。本記事は客観的な視点から、他の報道では多く語られることのなかった同報告書の分析・検討を試みます。
スルガ銀行は「幾重もの情報の断絶」により社外役員が有効に機能するために必要な情報提供がなされる体制になかった、という同報告書の結論に対して、本記事は、「社外取締役や社外監査役は、ただ受け身で情報を与えられるのを待っていればよいというものではない」と、社外役員の責任のあり方に鋭い示唆を与えています。
2019年12月4日の参議院本会議で可決、成立した改正会社法では、「社外取締役の設置義務」が明文化されました。ここでいう社外取締役に期待されているのは能動的に経営に携わることです。社外役員のあるべき姿を考えるうえで、有用な視点を提供する印象深い記事となりました。
〔特集〕会社・社員を守る “パワハラ”への法務対応

- 掲載号:
- 2019年9月号(2019年7月21日発売)
- 著者:安倍嘉一、近藤圭介、盛太輔、小鍛冶広道ほか
【選出のポイント】
2019年に吉本興業のお笑い芸人による闇営業問題等で世間を賑わせた「パワハラ」。働く人の人権と意欲を保ち、人材流出を防ぐため、パワハラをなくすことはもちろん必要ですが、現場からは「業務指導との線引きがわからない」「管理職が萎縮してしまう」との戸惑いの声も聞かれます。
本特集では、通常国会で成立したパワハラの防止措置を企業に義務づける法律を受け、「会社・社員の双方を守る」にはどうしたら良いかという視点から、適切な法務対応のあり方を探りました。小鍛冶広道先生の「パワハラにならない部下の叱り方・接し方10箇条」は、「パワハラ」と言われることをおそれるすべての管理職の方に、明確な視点を与えてくれる内容です。
〔実務解説〕契約・コンプライアンスの視点で検討 自然災害発生に係る法務担当者の平時対応

- 掲載号:
- 2019年5月号(2019年3月21日発売号)
- 著者:落合孝文、森田樹理加
【選出のポイント】
台風による甚大な被害が相次いだ2019年は、企業活動も大きな影響を受けました。本記事では、自然災害に備えて、平時から法務部として準備しておきたい事項を取り上げました。
企業防災には、被害の最小化を目指す「防災」と、災害時の企業活動の維持または早期回復を目指す「事業継続」という2つの観点があります。本記事では後者にフォーカスし、有事の際に重要製品やサービスの供給継続を維持することや、従業員に対する安全配慮義務を果たすことを目指した平時からの契約の作り込み方などを丁寧に解説しています。ぜひ参考にしていただき、自社のエマージェンシー対策の見直しに役立てていただきたい記事です。
〔特集〕経験者の独自メソッドに学ぶ 「一人法務」の心得

- 掲載号:
- 2019年10月号(2019年8月21日発売)
- 著者:橋浦尚志、片岡玄一、品川皓亮ほか
【選出のポイント】
法務強化の流れを受け、法学部出身という理由である日突然、法務担当に任命された社員、ベンチャー企業に法務第一号として迎えられた弁護士……。現在、当誌の読者にも「一人法務」の方が増えていたことから、本特集を企画しました。
本特集では、どのように業務範囲を設定すればよいか、社内から気軽に相談される法務部員になるにはどうしたらよいか、一人ではスキルアップ・業務改善に限界がある……といった一人法務共通の悩みについて、14名の経験者に様々な解決策を示していただきました。「一人法務」と銘打ったものの、各稿に示されている現場との信頼関係構築法や業務改善の視点は、一人法務に限らず、大規模法務の読者にも読んでいただきたい内容です。
2020年の注目トピックス
上記で紹介した記事の他にも、2019年は日常の法務実務を改めて深掘りする記事に対し多くの好評をいただきました。月刊誌として、法改正や重要判例等の最新動向を漏れなくお届けすることはもちろん、普段の法務業務における何気ない疑問やスキルアップにつながるポイントにつき、実務に即した視点より丁寧に解説する記事を掲載していきたいです。
また、議論が成熟していない段階であっても、次代のテーマをいち早く取り上げるのが当誌の強みです。2020年も企業法務の業務領域はさらに拡大・深化していくと思いますので、新たな領域にチャレンジする読者を後押しする情報をお届けしていきます。
雑誌名:ビジネス法務
発行元:株式会社 中央経済社
発売日:毎月21日
定価:本体1,545円+税
URL:http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/
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