懲戒処分の基礎知識を弁護士がわかりやすく解説 〜懲戒の必要性、法的要件、フロー、証拠化のノウハウなど

人事労務
宇賀神 崇弁護士 宇賀神国際法律事務所

目次

  1. 懲戒処分の必要性と重要性
  2. 懲戒処分が許される3つの条件
    1. 就業規則に懲戒処分の根拠規定が必要
    2. 就業規則記載の懲戒事由に該当する事実が必要
    3. 「社会通念上相当」である必要
  3. 懲戒処分の種類
  4. 懲戒処分のフロー:「問題社員型」と「突発的重大事件型」
  5. 証拠化のノウハウ – メール・録音・報告書をどう使うか
    1. メールを活用した「注意指導」と「不作為」の証拠化
    2. 録音と報告書作成のポイント
  6. ヒアリングのフローと実施時の留意点

 従業員のルール違反や問題行動に対し、会社(使用者)として服務規律と企業秩序を守るために重要な手段である「懲戒処分」。対応を誤れば労務トラブルや訴訟リスクにもつながりかねません。コンプライアンスへの社会的関心が高まる中、担当者には適正でありながら果敢な実務対応が求められています。


 本記事では、BUSINESS LAWYERS主催のセミナー「いまさら聞けない法務の基本『懲戒処分』」(2027年7月23日までアーカイブ配信中)のレポートをお届けします。
 講師を務めるのは、人事労務分野で豊富な実績を持つ宇賀神国際法律事務所の宇賀神崇弁護士。本セミナーでは、懲戒処分の必要性・重要性や法的要件、懲戒処分の種類、対応フローをわかりやすく整理。さらに、訴訟リスクを見据えたメール・録音・報告書による徹底的な「証拠化」のノウハウなど、実務で直ちに役立つポイントを具体例とともに解説いただきました。

懲戒処分の必要性と重要性

 セミナーの冒頭、宇賀神弁護士は「そもそも、なぜ懲戒処分を行うのか?」という根本的な問いを投げかけ、「ベテランの実務担当者でも、意外と突っ込んで勉強したことがないテーマかもしれません」と続けました。

 その答えは、大きく分けて「服務規律」と「企業秩序」を守るためです。
 まず、服務規律とは、就業規則に定められた従業員の行為規範のことです。ルールを定めた以上、それを破った従業員に何の罰も与えられないのであれば、誰もルールを守らなくなり、形骸化してしまいかねません。「服務規律を含め、従業員が守るべきルールを定めた以上は、それを破ったときのサンクション(制裁)を用意しておくことが論理必然の要請」と宇賀神弁護士は説明します。
 一方で、企業秩序は、判決文などに頻出する概念でありながら、その定義は判然としません。「企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なもの」といった判例 1 の表現を紹介しつつ、宇賀神弁護士は「企業の組織としての性格に根差す本質的なもの」だと説明します。多数の人間で構成される企業組織において、個々の従業員がバラバラに自由奔放に行動していては収拾がつかないので、そこには秩序が必須です。それが「企業秩序」と呼ばれるものだと、宇賀神弁護士は嚙み砕きます。
 逆に言えば、企業秩序違反に何の処分もなければ組織は瓦解してしまいます。こうした整理から、懲戒処分は「従業員の企業秩序違反行為に対する制裁罰」と定式化できると宇賀神弁護士は説明しました。

 「懲戒処分にはさまざまな法的制約がありますが、『無効になるリスクがあって面倒だからやらない』となれば、企業秩序が崩壊し、会社が組織としての一体性を保てなくなります。必要な場面では、果敢に懲戒処分を行う姿勢が会社に求められます」(宇賀神弁護士)

懲戒処分が許される3つの条件

 もっとも、必要だからといって無制限に懲戒処分ができるわけではありません。労働契約法15条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒を「権利の濫用」として無効と定めています。

労働契約法15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

※下線は宇賀神弁護士

 宇賀神弁護士は、懲戒処分を下すにあたって越えなければならない法的制約を、以下の3つに分けて解説しました。

就業規則に懲戒処分の根拠規定が必要

 第一の条件は、就業規則上の根拠規定の存在です。
 根拠規定が一切なければ、いかに悪質な企業秩序違反行為があったとしても、懲戒処分を行うことはできません。また、実際に処分を行う際も、就業規則に定められた「懲戒事由・懲戒種類・懲戒手続」に基づく必要があります。

 就業規則における規定の仕方にはコツがあります。宇賀神弁護士は、懲戒事由は「細かく」「短く」定めるべきとします。

 「実務上よくある事例は、10個でも100個でも就業規則に書き込んで構いません。規定の内容が重複しても何ら問題はありません。1つの条項に多くの要件を詰め込んでしまうことは望ましくありません。要件が多くなればなるほど、会社側が立証しなければならないハードルが上がり、結果として懲戒処分がしにくくなります」(宇賀神弁護士)

 たとえば厚生労働省のモデル就業規則にある「素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき」2 という文言について、宇賀神弁護士は「私ならこうは書きません」と断った上で、その理由を次のように説明しました。

 「『著しく』とはどの程度を指すのか曖昧です。そう従業員から弁解されると懲戒しにくくなります。また、『素行不良であり、かつ秩序又は風紀を乱した』という両方に該当しなければ懲戒できない書き方になっています。会社にとって不利な方向での曖昧さは排除し、要件を分けて短く定めるべきです」(宇賀神弁護士)

懲戒の事由は、「細かく」「短く」定める
  • 実務上よくある事例を多数書き込む。規程相互が相互に重複しても問題ない
  • ただし、懲戒できる条件が多くなると懲戒しにくくなるため、短く書く
(例)
 △「素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。」
 ◯「社内の秩序又は風紀を乱したとき。」

 同様に、モデル就業規則の「正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき」3 という記載についても、次のように注意を促しました。

 「1回の遅刻では『しばしば』に当たらないとしても、3回ならどうか、4回ならどうか――やはり曖昧です。『しばしば』という文言は削除するか、せめて『1か月内に3回以上』のように一義的かつ客観的に判断できる数値基準を設けておくことが求められます」(宇賀神弁護士)

懲戒の事由は、(会社に有利な方向では)曖昧さを排除
  • 該当するかどうかが曖昧な文言では、懲戒しにくくなるため、該当性が一義的に明確になるように記載する
(例)
 △「正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。」
 ◯「正当な理由なく1か月内に3回以上欠勤、遅刻、早退をしたとき。」

 他方、会社に有利な方向での曖昧さは残しておいて構わないとします。不測の事態において会社側に処分を下す余地を残しておくことが実務上重要だからです。
 最後に、あらゆる事態を網羅するキャッチオール条項を就業規則に入れることを、宇賀神弁護士は推奨します。

何でも入る「キャッチオール条項」は必ず入れる
(例)
 ◯「この規則その他の会社の定める規則規程に違反したとき。」
 ◯「その他前各号に準ずる不都合な行為があったとき。」

 一方、懲戒の手続に関する規定については、「定めてもよいが、定めなくてもよい。むしろ下手に定めないほうがよい」というのが宇賀神弁護士の見解です。たとえば、「懲戒委員会の議決を要する」と定めてしまうと、その手続を怠っただけで、懲戒処分が無効になるリスクが生じるためです。

就業規則記載の懲戒事由に該当する事実が必要

 第二の条件は、就業規則上の懲戒事由に該当する客観的事実の存在です。
 ここで重要なのは、会社として単に「懲戒事由に該当する事実があった」と主張するだけでは足りず、裁判において客観的な証拠によって事実を認定できなければ敗訴してしまうという点です。
 なお、この証拠化に関するノウハウについては、セミナー後半で詳しく展開されました(後述5)。

「社会通念上相当」である必要

 懲戒処分の第三の条件は、処分が「社会通念上相当」であることです。
 宇賀神弁護士は、不相当として無効となる典型的なシチュエーションを「処分が重すぎる場合」と「しかるべき手続を踏んでいない場合」の2つに整理しました。

懲戒処分の相当性

処分が重すぎないか?
  • 行為の性質、態様、経緯
  • 行為の及ぼした悪影響の有無、程度
  • 処分歴(初犯かどうか)
  • 反省の有無 ⇔反抗的態度をとったかどうか
  • 他の懲戒処分事例との比較 →悪しき前例を作ることの弊害
  • これまで黙認されてきた行為かどうか・行為時と処分時の時間間隔
  • 本人の精神疾患の有無、内容、程度

しかるべき手続を踏んだか?
  • 弁明の機会の付与
  • (就業規則に定めがあれば)懲戒委員会の審議議決

(1)処分が重すぎないか?

 一般的に、軽微な万引き行為で死刑に処されることはないのと同様に、従業員の企業秩序違反行為に対して重すぎる処分は無効になります。
 懲戒処分の量刑の決定において、「最も重要なのは、行為の性質・態様・経緯と、行為が及ぼした悪影響の有無・程度。ここで処分全体の7〜8割は決まる」と宇賀神弁護士はいいます。たとえば、パワハラであれば休職に追い込まれた部下の人数、私生活上の逮捕であれば会社名が報道されたか否かなどによって、悪影響の程度は大きく異なります。

 その上で、懲戒処分の相当性の検討にあたっては、過去の処分歴、反省の有無、他の懲戒処分事例との比較、黙認されてきた行為かどうか、本人の精神疾患の有無などが補強的な要素になります。問題行動を起こす従業員は精神的な不調を抱えているケースも多く、実務上どうアプローチするかは極めて難しい問題です。

 また、調査にあたって対象の従業員が反抗的な態度をとった場合、宇賀神弁護士は「必ず証拠化してください」とアドバイスしました。

 「仮に裁判になった場合、裁判官は提出された証拠をもって判断することになります。反抗的態度があったという客観的な証拠は、『やはりこの人には問題がある』という心証形成につながり、会社に有利な方向に働きやすくなります。もちろん、現場の担当者にとっては反抗的態度をとられることは精神的な苦痛が伴うと思いますが、見方を変えて、『良い証拠が取れたぞ』くらいの気持ちで対応してもらいたいですね」(宇賀神弁護士)

 過去の処分事例との比較に関しては、「悪しき前例」への注意が必要です。重い処分を下して懲戒が無効となることを恐れて安易に軽い処分を選ぶと、将来同種の事案が起きた際に「過去に比べて重い処分が下されるのは不公平だ」と主張され、適正な処分ができなくなるおそれがあると宇賀神弁護士は指摘します。

(2)しかるべき手続を踏んだか?

 手続面では、就業規則に懲戒手続の定めがない場合でも、最低限行うべき手続として「弁明の機会の付与」が挙げられました。対象の従業員に認定した事実と想定している処分を伝え、本人の言い分を聞くというプロセスを怠れば、それだけで相当性を欠くと判断されるおそれがあります。

懲戒処分の種類

 具体的な懲戒の内容として、処分が軽いものから順に、以下のとおり6段階に分けて説明がなされました。

懲戒処分の種類 概要
戒告・譴責(けんせき) 始末書を出させるなど、口頭や文書で注意を行う
減給 一定額を給与から差し引く
※懲戒処分としての減給は、大した減額はできない
出勤停止 一定期間の就労を禁止し、その間の賃金を支払わない
降格 役職の罷免・引下げ、資格等級の引下げ
※懲戒処分としてではなく、人事上の措置として行う場合もある
諭旨解雇(諭旨退職) 退職届提出を勧告し、提出しなければ懲戒解雇とする
懲戒解雇 懲戒処分としての解雇
※退職金を不支給とする例が多い

 また、懲戒解雇に関しては、以下のように普通解雇との違いについて整理した上で、「労働基準監督署長の認定を得れば、解雇予告・解雇予告手当が不要となりますが 4、実務上は認定を待っていられないことも多いでしょう。①退職金不支給・減額としたい、②予告手当なく即時に解雇したい、③懲戒処分の形式をとりたい、という強い理由がない限りは、懲戒解雇を選ぶ実益は乏しい」と宇賀神弁護士は補足しました。


懲戒解雇と普通解雇の使い分け

懲戒解雇 普通解雇
退職金不支給・減給 可能 不能
予告手当なしの即時解雇 可能(だが困難) 不能
懲戒処分性 あり なし
有効となるハードル 極めて高い 高い
解雇理由の追加主張 不可 余地あり

懲戒処分のフロー:「問題社員型」と「突発的重大事件型」

 続いて、懲戒処分に至るプロセスの解説に移りました。宇賀神弁護士は、実務上のフローを「問題社員型」と「突発的重大事件型」の2つに大別します。

懲戒処分のフロー:問題社員型

懲戒処分のフロー:問題社員型


 まず、問題社員型は、懲戒事由に該当するような問題行動が何度も繰り返されるケースです。
 問題行動を探知して証拠化し、注意指導・業務指示を行ってそれ自体も証拠化する。それでも繰り返される問題行動をさらに証拠化していく——このサイクルを回しながら、調査、弁明の機会の付与を経て懲戒処分の発令に至り、さらにそのサイクルを繰り返していきます。


懲戒処分のフロー:突発的重大事件型

懲戒処分のフロー:突発的重大事件型


 一方の突発的重大事件型は、何度も繰り返される性質のものではない不正・事故を、事後的に調査して証拠化し、その結果をもとに懲戒処分を行うケースです。
 過去の出来事を後から調査するため、証拠隠滅や口裏合わせを防止する観点から、対象者に暫定的な自宅待機を命じる必要性が高いのが特徴です。

証拠化のノウハウ – メール・録音・報告書をどう使うか

 2-2で述べたとおり、懲戒処分を下すためには就業規則上の懲戒事由に該当する客観的事実が不可欠です。事実認定において重要な役割を果たす証拠化のノウハウとして、宇賀神弁護士が挙げたのがメール、録音、報告書・議事録の活用です。

メールを活用した「注意指導」と「不作為」の証拠化

 まず、問題社員からのメールは、パワハラ・セクハラなどの重要な証拠となるためキープしておくこと。そして、会社側の注意指導は口頭だけでなくメールやチャットでも行い、「問題行動を放置せず、適切に指導していた事実」を証拠化することが重要です。

 たとえば、9時始業のところ9時13分頃に出勤してきた従業員に対し、すぐさま注意指導のメールを送ります。これにより、「遅刻の事実」と「注意指導を行った事実」の双方が1通で証拠化できる、まさに一石二鳥のメールとなります。
 宇賀神弁護士は「こうしたメールが10通、20通と積み重なれば、裁判官に『20回遅刻し、20回指導されているのに一向に改めない』と強く印象づけられる」と説明します。


メールの例(遅刻)

件名:遅刻の件

Aさん

本日も、始業時間が午前9時であるにもかかわらず、Aさんが出勤してきたのは午前9時13分頃でした。◯月◯日、◯月◯日の面談などでもたびたび述べていますが、遅刻は就業規則に反する行為ですので、明日以降は必ず始業時刻までに出勤するようにしてください。

※上記のメールを、Aさんが出勤した午前9時13分以降に速やかに送信

 やるべきことをやらなかったという「不作為」の証拠化には、業務指示メールが有効です。
 タスクの内容を明確に書き、期限を区切って指示します。可能であればメール送信前に面談を行い、本人に期限を確約させた上で「面談で話し合った結果」としてメールを送るのがベストです。


メールの例(業務指示)

件名:業務指示

Bさん

本日◯時頃からの面談でBさんと話し合いました結果、Bさんには、以下のタスクを以下の期限までに行っていただくことになりましたので、期限を遵守して取り組んでください。

1. ◯◯という資料を作成し、◯月◯日17時までに、メールで私に送ってください。

2. ◯◯社の◯◯氏に電話し、◯◯について状況を確認いただいた上、◯月◯日17時までに、メールで私に報告してください。

3. ⋯


以上のタスクの進捗状況は、本日の面談で話し合ったとおり、◯月◯日◯時からの面談で再度確認させていただきます。

※上記のメールを、Bさんとの面談後速やかに送信

 上記の例において、期限までに成果物が提出されなければ、期限直後に「17時30分を過ぎても受領していません」といった内容のメールを送ります。「期限を区切って指示したメールと、期限の直後に『出ていません』というメール。この挟み撃ちで、やるべきことをやっていなかった事実が立証できます」と宇賀神弁護士は実践的なテクニックを紹介しました。

録音と報告書作成のポイント

(1)録音

 対象の従業員の問題行動に気づいたら、即座に携帯端末等を用いて録音等をするのも選択肢の1つだと宇賀神弁護士はアドバイスします。これらは、相手にわかるように録音しても、いわゆる秘密録音であっても証拠として使用できます。

(2)報告書の作成

 メールや録音による直接的な証拠がない場合には、事後的に報告書を作成します。ここでの重要なポイントは次の2点です。

 第一に、現認したその日に作成すること。「6か月後に『あのときどうだったかな』と作る報告書には何の意味もありません。記憶が鮮明なうちに作成してください」と宇賀神弁護士は強調します。

 第二に、作成したファイルをフォルダに保存するだけでなく、メールに添付して自分や上司に送り、存在日時を確定させることです。メールの送信日時は客観的に明らかになるため、「後から改ざんされた」という反論を封じることができます。

 「実務でよくある失敗として、その都度1つのExcelやWordファイルに追記して上書きしていくケースがあります。これでは、古い情報であっても後から編集可能なため、証拠価値が著しく下がってしまいます。追記していく場合でも、その都度メール送信してください」(宇賀神弁護士)


報告書の例


◯年◯月◯日

報告書


◯◯株式会社

[◯◯部◯◯課長] ◯◯


 当職は、◯年◯月◯日◯時◯分頃、東京都◯◯区◯◯町◯-◯-◯ ◯◯ビル◯階 当社◯◯部◯◯課のフロア内において、当社◯◯部◯◯課 ◯◯(以下「C氏」という。)の問題行動を、以下のとおり直接現認したので、取り急ぎ報告する。
 C氏は、◯年◯月◯日◯時◯分頃、東京都◯◯区◯◯町◯-◯-◯ ◯◯ビル◯階 当社◯◯部◯◯課のフロア内において誰かと電話中、突然、「ふざけるな!この野郎!」などと怒鳴り始め、その後も、
 「てめぇ何様のつもりだ!」「てめぇみてーなのが担当だからこっちが迷惑するんだよ!」「だから、さっさと俺の言ったとおりにやりゃあいいんだよ!」などと、約◯分にわたって、他のフロアにも響き渡るほどの大声で怒鳴り続けた。
 ◯時◯分頃、C氏が電話を切ったため、当職から誰と話していたかをC氏に質問すると、「◯◯社の◯◯という担当者が、こっちのいうことを聞かないんですよね。」などと述べた。

以上

 なお、報告書には、5W1Hを徹底して具体的に書く必要があります。日時・場所を特定するのはもちろん、「怒鳴りました」で終わらせるのではなく、「ふざけるな!この野郎!」などと実際の発言内容を生々しく再現し、「約◯分にわたって」「他のフロアにも響き渡るほどの大声で」といった、情景が浮かぶディテールまで書き残すことが重要です。

ヒアリングのフローと実施時の留意点

 セミナー終盤では、特にハラスメント事案や突発的重大事件型で重要となる対象者へのヒアリングの進め方が紹介されました。

ヒアリングのフロー

ヒアリングのフロー


 原則は2つです。
 第一に、ヒアリングの順番。まずは被害者、次に目撃者・関係者の順に聞き、懲戒処分の対象者へのヒアリングはいちばん最後に行います。宇賀神弁護士は「他の人のヒアリングで外堀をすべて埋め、確信が高まった状態で、最後に本丸に切り込むイメージ」と説明しました。
 第二に、客観証拠が先、ヒアリングが後という原則です。客観的な証拠でわかることを固めた上で、証拠ではわからない部分を補充する形でヒアリングを行います。

 実際のヒアリングは、質問役と記録役に分かれた2人体制で行うのが最適です。正確な記録のために「録音する」と事前に本人に告げた上で録音するのもよいでしょう。

 聞き取った内容は録音だけに頼らず、速やかに議事録として文章化し、その日のうちに(遅くとも翌日までに)メール添付で送信して存在日時を確定させます。報告書と同様の徹底した証拠化の作法が、ヒアリングプロセスにおいても不可欠です。


  1. 富士重工業事件(最(三小)昭和52年12月13日判決・民集31巻7号1037頁) ↩︎

  2. 厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則」(令和7年12月版)88頁 ↩︎

  3. 厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則」(令和7年12月版)87頁 ↩︎

  4. 労働基準法20条3項 ↩︎

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