2026年10月カスハラ対策が義務化!企業が講ずべき措置を解説 令和7年労働施策総合推進法改正の概要と企業への影響

人事労務 更新
嶋村 直登弁護士 森・濱田松本法律事務所外国法共同事業 井村 俊介弁護士 森・濱田松本法律事務所外国法共同事業

目次

  1. カスハラ対策義務化の背景
  2. カスハラ対策法の内容
    1. 主な規定事項
    2. カスハラの定義
    3. 「雇用管理上の措置義務」とは
  3. 施行日
  4. カスハラについて雇用管理上講ずべき措置の内容
    1. 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
    2. 相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    3. 職場におけるカスハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
    4. 職場におけるカスハラへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
    5. 併せて講ずべき措置
  5. 自社の労働者等が行ったカスハラに関する協力(努力義務)
  6. カスハラ防止のために望ましい取組(努力義務)
  7. 他社の労働者やフリーランス等に対するカスハラ対応への望ましい取組(努力義務)
  8. まとめ

 2025年6月4日に、カスハラ対策を雇用主に義務付ける法律 1 が国会にて可決・成立しました。

 同法は、労働施策総合推進法 2 を改正して、カスハラ対策を事業主の「雇用管理上の措置義務」とすることを主な内容とするものです。労働者が1人でもいれば、事業主に該当すると考えられます。この義務に違反した事業主は、報告徴求命令、助言、指導、勧告または公表の対象となるため、事業主は、施行日(現在の案では2026年10月1日)までに対応必須といえます。

 また、厚生労働省は、2025年12月に「カスタマーハラスメントについて雇用管理上講ずべき措置に関する指針(案)」を公表しました。企業はこの指針(案)を参考にしながら、社内での方針の策定、内部規程やマニュアル等の作成、教育・研修等のカスハラ対策を着実に進めていく必要があります。

 本稿では、改正の概要を整理した上で、それに伴い企業が講ずべき措置の内容について指針(案)を踏まえて解説します 3

カスハラ対策義務化の背景

 カスタマーハラスメント(カスハラ)は、昨今、大きな社会問題となっています。
 顧客等によるカスハラ行為は、その態様により、暴行、傷害、脅迫、強要、名誉毀損、侮辱、業務妨害、不退去などについては、刑法や軽犯罪法等で規制されています。他方で、刑罰法規に触れない程度の迷惑な言動や過度な要求に対する法的な規制や、横断的にカスハラの問題に焦点を当てた法的な規制はありません。また、2024年10月4日に制定された東京都・カスタマー・ハラスメント防止条例」(以下「東京都カスハラ防止条例」といいます)以外に、防止策を義務付ける直接的な規定もないのが現状です。

 こうした状況を踏まえ、労働者の就業環境の整備を主な目的として、労働施策総合推進法の改正の議論が進み、2025年6月4日に、労働施策総合推進法等の一部を改正する法律(以下「カスハラ対策法」といいます)が参議院本会議で可決・成立しました。
 国会で審議されていた法案の資料は以下のとおりであり、国会での審理中に一部修正がされています 4

法律案名 資料
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案

※本稿では「カスハラ対策法」と略記

カスハラ対策法の内容

 カスハラ対策法は、既存の労働施策総合推進法を改正して、カスハラ対策を事業主の「雇用管理上の措置義務」とすることを主な内容とし、ほかに労働者・顧客等の努力義務、国が定めるべき指針などについて規定するものです。

主な規定事項

 今般のカスハラ対策法では、概要、次の事項が規定されています。

対象 カスハラ対策法の主な規定事項 改正後の労働施策総合推進法
の条文番号
事業主
  • カスハラについて、事業主の「雇用管理上の措置義務」(後記2-3参照)とする
33条1項
  • 労働者がカスハラの相談を行ったことやカスハラの相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
33条2項
  • 他の事業主から必要な協力を求められた場合には協力するよう努力する
33条3項
  • カスハラに起因する問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をする
34条2項
  • 国の講ずる広報活動、啓発活動その他の措置に協力する
34条2項
  • カスハラに起因する問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努める
34条3項
労働者
  • 事業主の「雇用管理上の措置義務」に協力するよう努める
34条4項
  • カスハラに起因する問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努める
顧客等
  • カスハラに起因する問題に対する関心と理解を深めるとともに、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努める
34条5項
  • 厚生労働大臣は、事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定める
33条4項
  • 国は、カスハラに起因する問題に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努める
34条1項

カスハラの定義

(1)カスハラ対策法上の定義

 カスハラは、カスハラ対策法において以下のように定義されています(改正後の労働施策総合推進法33条)。

職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(顧客等言動)により当該労働者の就業環境が害されること

 典型的には、まったく欠陥がない商品を新しい商品に交換するよう労働者に要求する、労働者に物を投げつける、唾を吐く、労働者に謝罪の手段として土下座をするよう強要する、労働者に対して必要以上に長時間にわたって厳しい叱責を繰り返すなどの行為がカスハラに該当すると考えられます。

(2)指針(案)におけるカスハラの典型例

 このほか、カスハラの対象となる行為については、カスハラ対策法の制定後に公表される指針で具体的に示される予定です(後記4参照)。
 2025年12月10日時点で公表されている指針(案)では、カスハラの定義について、詳細な解説がなされています。
 たとえば、カスハラの対象となる顧客等には、BtoCの消費者だけではなく、BtoBの取引先の担当者も含まれること、また、職場におけるカスハラには、店舗および施設等において対面で行われるもののみならず、SNS等のインターネット上において行われるものも含まれることが説明されています。また、客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、カスハラに当たらないことなどについても言及されています。

 特に重要なものとして、社会通念上許容される範囲を超えた言動の典型的な例として、以下の内容が紹介されています。

イ 言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
  1. そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
    ・性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求をすること。
  2. 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
    ・契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること。
  3. 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
    ・契約金額の著しい減額の要求をすること。
  4. 不当な損害賠償要求
    ・商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること。

ロ 手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
  1. 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
    ・殴る、蹴る、叩く等の暴行を行うこと。
    ・物を投げつけること。
    ・わざとぶつかること。
    ・つばを吐きかけること。
  2. 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)

    ・店舗の物を壊すことをほのめかす発言やSNS等のインターネット上へ悪評を投稿することをほのめかす発言によって労働者を脅すこと。

    ・SNS等のインターネット上へ労働者のプライバシーに係る情報の投稿等をすること。

    ・労働者の人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を行うことを含む。

    ・土下座を強要すること。
    ・盗撮や無断での撮影をすること。

    ・労働者の性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の者に暴露すること又は当該労働者が開示することを強要する若しくは禁止すること。

  3. 威圧的な言動
    ・大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること。
    ・反社会的な言動を行うこと。
  4. 継続的、執拗な言動
    ・同様の質問を執拗に繰り返すこと。
    ・当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立てをすること。
    ・同様の電子メール等を執拗に繰り返し送りつけること。
  5. 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
    ・長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること

 ここで紹介されている内容は、限定列挙ではないことに十分留意する必要があります。

 また、2022年2月に公表された厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」でカスハラの例として紹介されていた内容と少し異なっています。たとえば、同マニュアルでは、「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例として、「企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合」が挙げられていましたが、指針(案)には含まれていません。
 これは、商品・サービスに瑕疵・過失があるかどうかは、現場での判断が難しく、正当な申入れとの区別が容易ではないため、典型的な例からの記載からは含まれなくなったものと思われます。

「雇用管理上の措置義務」とは

 事業主の講じるべき「雇用管理上の措置義務」とは、労働者の就業環境がハラスメントによって害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該ハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他事業主が講ずるべき措置に関する義務をいいます。
 この義務に違反した事業主は、報告徴求命令、助言、指導、勧告または公表の対象となります。

 カスハラ対策法は、現在、雇用管理上の措置義務の対象となっている以下の4種類のハラスメントに、カスハラを加えるものです。

対象 通称 根拠となる法律 指針

① セクシュアルハラスメント

セクハラ 男女雇用機会均等法 5 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措 置等についての指針

② パワーハラスメント

パワハラ 労働施策総合推進法 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針

③ 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

マタハラ、パタハラ 男女雇用機会均等法
育児・介護休業法 6
事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針

④ 介護休業に関するハラスメント

ケアハラ 育児・介護休業法 子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針

 また、厚生労働大臣は、法律ごとに、当該措置等に関してその適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めており、カスハラについても同様の指針が定められることとなっています(後述4参照)。

施行日

 カスハラ対策法は、公布日から起算して1年6月以内で政令で定める日に施行される予定となっていますが、2026年10月1日とする方向で検討がされています 7

カスハラについて雇用管理上講ずべき措置の内容

 カスハラ対策法において、厚生労働大臣は、事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下「指針」といいます)を定めることが規定されており、現在、2025年12月10日時点での指針(案)の概要が公表されています 8
 指針(案)の内容は、次の6項目からなります。

項目①:職場におけるカスハラの内容
項目②:事業主・労働者の責務 9
項目③:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容
項目④:他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力
項目⑤:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組の内容

項目⑥:事業主が職場において行われる自らの雇用する労働者以外の者に対する顧客等の言動に関し行うことが望ましい取組の内容

 このうち、項目③が指針のメインであり、以下の4-1~4-5について「措置を講じなければならない」とされています。

事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

 事業主は、職場におけるカスハラに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、以下の措置を講じなければならないことが規定されています。

措置の内容 対応例
職場におけるカスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報または啓発のための資料等に職場におけるカスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を記載し、配布等する
  • トップメッセージとして当該方針を広く社内に発信する
  • カスハラへの対処の内容と併せて研修、講習等を実施する
職場におけるカスハラの内容および対処方法を定めること
  • 労働者から管理監督者等に直ちに報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐ
  • 可能な限り労働者を1人で対応させない。また、必要に応じて当該労働者に代わって管理監督者等が対応する
  • 顧客等とのやり取りを録音・録画する。なお、録音・録画にあたっては個人情報保護法等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱う
  • 労働者から十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりする
  • 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報する
  • 現場対応が困難な場合においては、本社・本部等へ情報共有を行い、指示を仰ぐ
  • 法的な手続が必要な場合には、法務部門等と連携し、弁護士へ相談する
カスハラの内容および対処方法を労働者に周知すること
  • 対応規程を作成する
  • マニュアルを作成する
  • 研修、講習等を実施する

相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならないことが規定されています。

措置の内容 対応例
相談窓口を定め、労働者に周知すること
  • 相談に対応する担当者をあらかじめ定める
  • 相談に対応するための制度を設ける
  • 外部の機関に相談への対応を委託する
相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。なお、カスハラ該当性の判断が微妙な場合も含めて、広く対応をすること
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と関係部門とが連携を図ることができる仕組みとする
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応する
  • 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行う

職場におけるカスハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

 事業主は、職場におけるカスハラに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認および適正な対処のため、次の措置を講じなければならないことが規定されています。

措置の内容 対応例
事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  • 社内で定めた対処方法を踏まえ、管理監督者等がその場で事実関係を確認し対応する
  • 相談窓口の担当者、関係部門または専門の委員会等が、相談者から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮する
  • 必要に応じて、周囲の労働者からも事実関係を聴取したり、録音・録画等の客観的な証拠を確認したりする等の措置を講ずる。なお、録音・録画等の客観的な証拠を確認するにあたっては個人情報保護法等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱う
  • 必要かつ可能な場合には行為者からも事実関係を聴取する
  • 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、法37条に基づく調停 10 の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねる
職場におけるカスハラが確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
  • 社内で定めた対処方法を踏まえ、事案の内容や状況に応じ、管理監督者等が被害者に代わって対応する
  • 事案の内容や状況に応じ、行為者に対応する担当者の変更または複数人で対応する
  • 被害者と行為者を引き離す(配置転換を含む)等の措置を講ずる
  • 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については警察へ通報する
  • 被害者と行為者を引き離すための配置転換、管理監督者または事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずる
  • 法的な手続が必要な場合には法務部門等と連携し、弁護士へ相談する
  • 法37条に基づく調停 11 その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずる
再発防止に向けた措置を講ずること
(ただし、職場におけるカスハラが生じた事実が確認できなかった場合においても、必要に応じて同様の措置を講ずること)
  • 必要に応じて、接客等における慣行の見直しなどの職場環境の改善や組織風土の見直しを行う
  • 必要に応じて事案の内容や対応経緯を記録し、個人情報の取扱いに留意して関係部門に共有し、再発防止に活用する
  • 他の事業主が雇用する労働者等がカスハラ行為者である場合には、必要に応じて、当該事業主に再発防止に向けた措置への協力を求める
  • 改めて、職場におけるカスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針およびカスハラへの対処の内容を、①社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報または啓発のための資料等に掲載し、配布等すること、および、②研修、講習等を実施する
  • カスハラの原因や背景となった商品・サービス・接客等における問題や顧客等とのコミュニケーションの不足などが把握された場合には、改善を図る

職場におけるカスハラへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置

 事業主は、職場におけるカスハラの抑止のための措置として、以下の措置を講じなければならないことが規定されています。

措置の内容 対応例
労働者に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定めること (あくまでも例であり、業種・業態等により必要な対応が異なる場合がある)
  • 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報する
  • 行為者に対して警告文を発出する
  • 法令の制限内において行為者に対して商品の販売、サービスの提供等をしない
  • 行為者に対して店舗および施設等への出入りを禁止する
  • 民事保全法に基づく仮処分命令を申し立てる
労働者に周知すること
方針において定めた対処を行うことができる体制を整備すること
  • 関係部門間の連携等の体制を整備する

併せて講ずべき措置

 上記4-1〜4-4までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じなければならないことが定められています。

措置の内容 対応例
相談への対応または当該カスハラに係る事後の対応にあたっては、相談者等のプライバシー(性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報を含む)を保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること
  • 相談者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとする
  • 相談者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行う
  • 相談窓口においては相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報または啓発のための資料等に掲載し、配布等する
労働者が職場におけるカスハラに関し相談をしたこと、事実関係の確認等に協力したこと、都道府県労働局に対して相談・調停の申請を行ったこと(以下「カスハラの相談等」という)等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
  • 就業規則等の文書において、カスハラの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をする
  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報または啓発のための資料等に、カスハラの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等する

自社の労働者等が行ったカスハラに関する協力(努力義務)

 指針(案)の項目④では、自らが雇用する労働者等が行うカスハラについて、被害者側となる事業主からの協力依頼があった場合には応じる努力義務があること(改正後の労働施策総合推進法33条3項)に関して、望ましくない対応および望ましい対応として合計3つの行為が挙げられています。

(望ましくない対応)
  • 加害者側の事業主が、当該協力依頼を理由として、当該事業主との契約を解除する等の不利益な取扱いを行うこと
(望ましい対応)
  • 加害者側の事業主が、労働者へ事実関係の確認等を行うに当たっては、これに協力した労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いを行わない旨を定めて労働者に周知・啓発すること
  • カスハラ行為が確認できた場合においては、行為者に対して必要な懲戒処分等を講ずること

カスハラ防止のために望ましい取組(努力義務)

 指針(案)の項目⑤では、上記5に加えて、カスハラ防止のために望ましい取組が次のとおり紹介されています。

  • 労働者が自社の商品やサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図るために研修等の必要な取組を行う
  • 労働者が顧客等への理解を深めるために必要な取組を行う
  • 上記4の措置を講じる際に、必要に応じて、労働者(例:衛生委員会)や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努める
  • 業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めること
  • 同じ業種・業態等の複数の事業主が一体となって取組を行う
  • 事業主は、当該事業主が雇用する労働者が、他の事業主が雇用する労働者に対する言動についても必要な注意を払うよう配慮する
  • 事業主自らと労働者も、他の事業主が雇用する労働者に対する言動について必要な注意を払うよう努める
  • カスハラ対応方針の明確化等を行う際に、他の事業主が雇用する労働者に対して、カスハラを行ってはならない旨の方針を併せて示す

他社の労働者やフリーランス等に対するカスハラ対応への望ましい取組(努力義務)

 指針(案)の項目⑥では、自らが雇用する労働者以外の者(他の事業主が雇用する労働者およびフリーランス等)に対するカスハラ対応への望ましい取組が次のとおり説明されています。

  • カスハラ対応方針の明確化等を行う際に、職場における当該事業主が雇用する労働者以外の者に対する顧客等の言動についても、同様の方針を併せて示す
  • これらの者から職場におけるカスハラに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、必要に応じて適切な対応を行うように努める

 カスハラ対策法は、その附則第8条の2において、特定受託事業者(フリーランス法 12 で保護対象となるフリーランス。具体的には、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しない個人または代表者以外に他の役員や従業員がいない法人)が受けた業務委託に係る業務において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該業務に関係を有する者の言動であって、当該従事者の業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該従事者の就業環境が害されることのないようにするための施策についても検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするものと規定しています。
 この規定により、将来的にカスハラ対策法は労働者のみならずフリーランスにも拡大適用される可能性があるものと考えられます。

まとめ

 カスハラ対策法が成立したため、企業は、カスハラ対策をとることが義務付けられることになります。適用対象は「事業主」と広く一般的に規定され、労働者が1人でもいれば、カスハラと無関係な企業はないものと考えられます。

 指針(案)の公表を受け、カスハラ対策として求められることが具体的になってきました。指針(案)を参考にしながら、社内での方針の策定、内部規程やマニュアル等の作成、教育・研修等の実施を着実に進めていく必要があります。


  1. 正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」。 ↩︎

  2. 正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」。本稿では、「労働施策総合推進法」または「法」と略記します。 ↩︎

  3. 本稿の意見に係る部分は著者らの個人的見解であり、著者らの所属する組織の見解を表すものではありません。 ↩︎

  4. 衆議院「第217回国会閣第50号に対する修正案」参照。 ↩︎

  5. 正式名称は、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」。 ↩︎

  6. 正式名称は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」。 ↩︎

  7. 厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令案について【概要】」(2025年12月10日) ↩︎

  8. 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)について【概要】」(2025年12月10日) ↩︎

  9. この項目②では、主にカスハラ対策法の内容(上記2-1)の内容が繰り返されているにとどまり、特段、対応事項が追加されているものではありません。 ↩︎

  10. 改正後の労働施策総合推進法37条では、都道府県労働局長は、カスハラに関する労使間の紛争について、当該紛争の当事者の双方または一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道府県労働局に置かれた紛争調整委員会に調停を行わせるものとすることが規定されています。 ↩︎

  11. 改正後の労働施策総合推進法37条では、都道府県労働局長は、カスハラに関する労使間の紛争について、当該紛争の当事者の双方または一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道府県労働局に置かれた紛争調整委員会に調停を行わせるものとすることが規定されています。 ↩︎

  12. 正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。 ↩︎

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