株券発行会社でない場合の株式譲渡と名義書換について
コーポレート・M&A株券発行会社ではない会社の株式を譲渡する方法を教えてください。また、株主名簿の名義書換の手続の方法についても教えてください。
株券発行会社ではない会社において、株式の譲渡は、当事者間で株式を譲渡する旨の合意のみで成立します。会社または第三者に株式譲渡を対抗するためには、株式を取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載する必要があります。
解説
株券を発行する旨の定款の定めがない場合
会社法では、定款に株券を発行するという定めがない場合には、株券を発行する必要がありません(会社法117条7項、214条)。このような会社は、株主からの請求があっても、株券を発行することができませんので、完全にペーパーレスの会社ということになります。
株式の譲渡方法
このような会社における株式の譲渡は、当事者間で株式を譲渡する旨の合意のみによって成立します。
会社または第三者に株式譲渡を対抗するための要件として、その株式を取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載しなければなりません(会社法130条1項)。ここで、「会社に対抗することができない」とは、会社に対して、株主であることを主張できないということを意味します。
株主名簿の名義書換の手続
株券を発行していない会社の名義書換は、原則として、株式を取得した者と株主名簿に記載されている株主またはその相続人などの一般承継者と共同で行わなければなりません(会社法133条2項)。
ただし、確定判決を得た場合や、相続や合併・会社分割などの一般承継により株式を取得した場合で、一般承継したことを証する書面を提出した場合など、利害関係人を害するおそれがないと法務省令で定める場合は、共同での名義書換の対象外となります(会社法施行規則22条)。
株主名簿への名義書換がなされることによって、株主総会での議決権の行使や配当金の受領が可能となります。
名義書換の効果
株券発行会社の場合は、株券の提示を受けたうえで名義書換の手続を行うため、株主名簿上の株主が仮に実質上無権利者であっても、株主名簿上の株主に権利行使を認めれば会社は免責されると解されています。
他方、株券発行会社以外の会社では、株券が発行されておらず提示を受けないため、株主名簿の記載に基づいて、株主名簿上の株主の記載に、誰が本当の株主であるかという点につき免責されるわけではないと解されています。
相続の場合
株式を保有していた株主が亡くなった場合、相続人らによる株式の相続の手続が必要になります。相続の手続にあたっては、共同相続人による同意書または遺産分割協議書(株式を誰が相続したのかがわかる書類)のほか、戸籍謄本、印鑑証明書、名義書換請求書、印鑑票などが求められることがあります。会社は、これらの書類を審査したうえで、相続人に名義を書き換える手続を行います。

岩田合同法律事務所