取締役会議事録を複数作成する場合の留意点

コーポレート・M&A
伊藤 菜々子弁護士 岩田合同法律事務所

 当社の取締役3名のうち2名は、海外に居住する外国人の取締役です。そのため、取締役会議事録に各取締役から署名(記名押印)をもらうには相当な日数がかかります。そこで、取締役会議事録を3通作成し、それぞれの議事録に1名ずつ署名(記名押印)してもらう方法を考えていますが、このような方法は適法でしょうか。また、適法の場合、作成にあたって留意する点はありますか。

 取締役会議事録を数通作成して、個別に取締役の署名(記名押印)をもらう方法も適法ですが、その場合は、すべての取締役会議事録について、議長の署名(記名押印)が必要になります。質問の場合は3通です。
 もっとも、登記の場面では、現状このような様式の取締役会議事録を使用することは認められていません。したがって、登記の添付資料とする場合は、1通にすべての出席取締役が署名(記名押印)する必要があることに留意する必要があります。

解説

目次

  1. 取締役会議事録への署名(記名押印)の意義
  2. 取締役会議事録を数通作成することの可否
  3. 登記に使用する場合

取締役会議事録への署名(記名押印)の意義

 取締役会に出席した取締役および監査役は、取締役会議事録に署名または記名押印しなければならず、電磁的方法で取締役会議事録が作成された場合には電子署名が必要とされています(会社法369条3項、4項、会社法施行規則225条1項6号)。

 取締役等に署名等が求められるのは、出席した取締役に、実際に行われた議事の経過や要領が正確に議事録に記載されているかを確認し、署名(記名押印)させることによって、議事録の内容の正確性を担保するためです。
 また、決議に参加した取締役については、議事録に異議をとどめなかったときは、当該決議に賛成したものと推定されることからも署名等が求められています(会社法369条5項)。

 議事録に押印する印鑑について法令上の制限はないため、実印でなく認印でも差し支えありませんが、新たに代表取締役を選定する場合には、出席取締役および監査役は、実印を押印し、登記の際はその印鑑証明書を添付することが求められています(商業登記規則61条6項3号)。

取締役会議事録を数通作成することの可否

 取締役会議事録として取り扱うためには、1つの取締役会について1通の書面をもって作成されている必要があります。議案や添付資料が多く1冊にまとめられない場合は分冊にすることも可能ですが、その場合には分冊された議事録同士が1通の議事録であるとわかるように表示し、一緒に保管しておく必要があります。

 そのため、取締役会議事録を数通作成し、それぞれに出席取締役の一部が署名(記名押印)して、これをすべて合わせて初めてすべての出席取締役の署名等がそろうという議事録も、それぞれの取締役会議事録を合わせて1通の取締役会議事録であることがわかれば適法であるとされています(取締役実務研究会編「Q&A取締役の法律実務」4001頁〔新日本法規・平成18〕。
 たとえば、数通の取締役会議事録を合綴して議長が割印をする方法が考えられます。ただし、このような方法で作成する場合であっても、議長の署名(記名押印)はすべての取締役会議事録について必要となることに注意が必要です。
 法律上は、以上のような方法で数通作成することも可能ですが、重複した取締役会議事録が数通存在することは、混乱を招く要因にもなりますのでなるべく避けることが望ましいものと思われます。

登記に使用する場合

 もっとも、以上のような取締役会議事録を登記の添付資料として使用することは、現状、認められていません。登記の先例では、取締役会議事録の原本を3通作成し、それぞれに記名押印してある3通を合わせればすべての出席取締役の記名押印がそろうという場合であっても、適法な取締役会議事録とは言えないとされています(昭和36年5月1日民事局第4課長事務代理回答)。
 したがって、登記に使用する場合には、1通の書面ですべての出席取締役の署名押印をそろえる必要があります

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