株券発行会社における株式譲渡について

コーポレート・M&A
伊藤 菜々子弁護士 岩田合同法律事務所

 株券発行会社において、株式を譲渡する方法を教えてください。株券が手元にない場合は、どうすればよいですか。

 株券発行会社において、株式を譲渡するためには、株式を譲渡するという意思表示と株券の交付の2つが必要となります。株券を発行していない会社で、株主の手元に株券がない場合、株主は、まず会社に対して株券の発行を請求し、会社から株券の交付を受けた上で、これを譲渡する必要があります。

解説

目次

  1. 株券発行会社とは
  2. 株券の発行・不発行に関する会社法の定め
  3. 株券の発行・不発行に関する定款の定め
  4. 株式の譲渡方法
  5. 株券の交付がない場合の株式譲渡の効力
  6. 株券の交付方法

株券発行会社とは

 株券発行会社とは、「その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めがある会社」をいいます(会社法117条7項)。

株券の発行・不発行に関する会社法の定め

 平成16年に商法が改正される前は、すべての会社において株券を発行することが強制されていました。
 しかしながら、株券を発行しない会社が少なくないという中小企業の実態を踏まえ、平成16年の商法改正(平成16年6月9日法律第88号)では、株券発行を原則としたまま、新たに株券不発行制度を設け、定款に定めることにより株券を発行しないことが認められました。
 平成18年に制定された会社法では、株券の発行・不発行の原則と例外が逆転し、株券を発行しない会社が基本となりました。すなわち、定款で株券を発行する旨を定めた場合に限り、株券を発行することとされ、「株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。」と定められています(会社法214条)。

株券の発行・不発行に関する定款の定め

 会社法の改正に伴って、平成18年5月1日(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律、以下「整備法」の施行日)時点で存続する株式会社は、定款に株券を発行しない旨の定めがない場合には、定款に株券を発行する旨の定めがあるものとみなされることになりました(整備法76条4項)。
 したがって、平成18年5月1日時点で存続する会社で、株券の発行・不発行について、定款に何の定めもない会社は、株券発行会社とみなされるため、株式の譲渡の際には株券の交付が必要になります。

株券の発行・不発行に関する定款の定め

株式の譲渡方法

 株券発行会社の場合株式の譲渡は、株券を交付しなければその効力を生じません(会社法128条1項)。したがって、株式を譲渡する旨の意思表示と株券の交付の2つが必要となります。

 株券発行会社であっても、例外的に、株券を発行していない場合があります。譲渡制限会社では、会社は、株主から請求があるまで株券を発行する必要がありません(会社法215条4項)。また、株主から株券の不所持申出があった場合にも株券を発行する必要がありません(会社法217条)。そのため、これらの場合に株式を譲渡したい株主は、会社に対して、株券の発行を請求して、株券の交付を受けた上で、その株券を交付しなければ譲渡の効力は生じないこととなります。

株券の交付がない場合の株式譲渡の効力

 株券の交付は、単なる対抗要件(当事者間で成立した法律関係を第三者に対抗するための要件)ではなく、権利移転に必要な要件(当事者間で法律関係が成立するための要件)となります。
 したがって、株式を譲渡するという意思表示だけで、株券の交付がない場合株式移転の法律効果は生じません。この場合は、単に、譲受人が、譲渡人に対し、株式を譲渡するように請求する(この場合は、株券を交付するように請求する)権利を取得することができるにとどまることになります。

株券の交付方法

 株券の交付とは、株式の引渡し、すなわち株券の占有を移転することをいいます。したがって、現実に株券を引渡して交付する方法(現実の引渡し。民法182条1項)のほか、簡易の引渡し(もともと占有していた者に意思表示だけで占有を移転する方法。民法182条2項)、占有改定(代理人が占有物を以後本人のために占有する旨の意思表示により占有を移転する方法。民法183条)、または指図による占有移転(代理人が占有している場合、本人が代理人に対し以後第三者のために占有することを命じ、第三者が承諾することにより第三者に占有が移転する方法。民法184条)でも差し支えないものとされています。

無料会員にご登録いただくことで、続きをお読みいただけます。

1分で登録完了

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する