譲渡制限株式の譲渡についての留意点

コーポレート・M&A
伊藤 菜々子弁護士 岩田合同法律事務所

 譲渡制限株式とは何ですか。これを譲渡することはできますか。

 譲渡制限株式とは、定款において、会社が発行する全部の株式の内容としてまたは種類株式の内容として、その株式を譲渡するにあたっては、会社の承認を要する旨が定められている株式を言います。
 このような譲渡制限付株式も一定の手続を経ることで、譲渡することができます(「譲渡制限株式の譲渡手続」参照)。

解説

目次

  1. 株式譲渡の自由とその例外
  2. 定款の定めによる株式の譲渡制限
    1. 譲渡制限株式とは
    2. 定款の記載方法
    3. 譲渡制限株式の譲渡に関する承認機関
  3. 譲渡承認機関の決議における留意点
    1. 決議に加わることができない取締役、株主
    2. 株主が1名である会社の場合
  4. 会社の承認を欠く譲渡制限株式の譲渡の効力

株式譲渡の自由とその例外

 株式は自由に譲渡できるのが原則です(会社法127条)。株式会社では所有と経営が分離しており、経営は経営者によって行われるので、株式が譲渡されても会社経営に影響を及ぼさないことと、株主は、解散時の残余財産分配や自己株式の取得など一定の場合を除いて、会社から出資金の払い戻しを受けられないため、投下資本を回収するための手段として、株式の自由譲渡性が保障される必要があるからです。
 しかし、会社法やその他の法律によって一定の例外が認められており、契約によって、株式の譲渡を制限することも可能です。
 家族経営の会社や中小企業など閉鎖型の会社では、株主を信頼関係のある者に限定したいという要請があることから、このような譲渡制限株式は、上場していない会社の多くで利用されています。

定款の定めによる株式の譲渡制限

譲渡制限株式とは

 会社は、定款に定めることにより、譲渡による株式の取得について会社の承認を必要とすることを定めることができます。
 会社が発行する全部の株式の内容として(会社法107条1項1号、2項1号)、または種類株式の内容として(会社法108条1項4号、2項4号)、譲渡による当該株式の取得について、会社の承認を要する旨が定められている株式を「譲渡制限株式」と言います(会社法2条17号)。
 なお、発行する株式の全てについて定款上、譲渡制限が付されている株式会社を「非公開会社(株式譲渡制限会社)」といい、発行する株式の全部または一部に譲渡制限の定款の定めがない会社を「公開会社」といいます(会社法2条5号)。

公開会社 発行する株式の全部または一部に譲渡制限の定款の定めがない会社
非公開会社
(譲渡制限会社)
発行する株式の全てについて定款上、譲渡制限が付されている株式会社

定款の記載方法

 会社が発行する全部の株式に譲渡制限を付ける場合通常は、定款に「当会社の株式を譲渡するには、●●の承認を受けなければならない。」といった定めがなされます。種類株式の内容として譲渡制限を付ける場合には、その種類株式についての定めの中で同様に定められます。

譲渡制限株式の譲渡に関する承認機関

 譲渡を承認する機関は、取締役会設置会社であれば取締役会の決議、それ以外の会社では株主総会の決議が必要となります(会社法139条1項)。
 ただし、定款で特別の定めをすることも可能であり、取締役会設置会社であっても、株主総会で承認すると定めることもできます(会社法139条1項ただし書)が、たとえば、取締役会設置会社の場合に代表取締役で承認するというように、法律で定められた承認機関より下位の機関を定款で定めることはできないとされています。

 株式に譲渡制限がついているか、ついている場合はその承認機関はどこかという点は、登記事項ですので、会社の登記を取得すればわかります。なお、譲渡制限株式については、会社による譲渡の承認がない限り、株主名簿の名義書換を請求することはできません(会社法134条)。

 参考:「譲渡制限株式の譲渡手続

譲渡承認機関の決議における留意点

決議に加わることができない取締役、株主

 株式の譲渡にあたり取締役会の承認を必要とする場合取締役が、株式の譲渡人・譲受人のいずれであっても、決議につき特別利害関係人(会社法369条2項)にあたると解されています。
 したがって、当事者となる取締役は、決議に加わることはできません。なお、特別利害関係人にあたる取締役が、その議題について議長を務めることができるかという問題があります。様々な考え方があるところですが、手続の公正さを期するため、議長となることは避けることが無難です。

 また、株式の譲渡にあたり株主総会の承認を必要とする場合株式を譲渡しようとする株主は、決議につき特別利害関係人にあたりますので、決議に参加することはできません(会社法140条3項)。ただし、この譲渡等承認請求者以外の株主の全部がこの株主総会において議決権を行使することができない場合は、議決権を行使することができます(会社法140条3項ただし書)。

株主が1名である会社の場合

 なお、譲渡制限株式は、会社にとって好ましくないものが株主となることを防止して、譲渡人以外の株主の利益を保護することを目的とするものですので、株主が1名である会社(取締役会設置会社)において、株主が他の者に株式を譲渡した場合には、判例上、取締役会の承認がなくても、会社に対する関係でも譲渡は有効になるとされています(最高裁平成5年3月30日判決・民集47巻4号3439頁)。

会社の承認を欠く譲渡制限株式の譲渡の効力

 会社の事前の承認がなされないままになされた譲渡制限株式の譲渡は、譲渡の当事者間では有効ですが、会社に対する関係では効力を生じないとされています。
 前述のとおり、会社による譲渡の承認がない限り、株主名簿の名義書換を請求することはできません(会社法134条)。

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