監査役の任期は?退任・辞任するのはどのような場合?

コーポレート・M&A 更新

 私は、昨年の定時株主総会で新たに監査役に選任されたのですが、今年の定時株主総会の終結をもって監査役を退任することになると言われました。当社の定款では、監査役の任期について「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と定められていますが、選任後4年を経過せずに監査役を退任するということはあるのでしょうか。

 監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。監査役の独立性の観点から、原則として任期を短縮することはできません。

 ただし、補欠監査役については例外があり、定款に定めがある場合、ある監査役が退任した後にその補欠として選任された監査役は、退任した監査役の任期の満了時に任期満了により退任します。
 また、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する場合や、非公開会社が公開会社となる定款変更を行う場合等、任期の当然終了事由となる定款変更を行った場合には、4年を経過する前でも監査役の任期が終了することがあります。

解説

目次

  1. 監査役の任期
    1. 監査役の任期は4年
    2. 伸長可能な場合
  2. 監査役が退任する6つの場合
    1. 任期満了
    2. 任期途中の辞任
    3. 欠格事由に該当し、監査役の資格を喪失
    4. 任期の当然終了事由となる定款変更
    5. 監査役が委任契約の終了事由に該当
    6. 株主総会決議による解任
  3. 監査役が退任した場合の変更登記

監査役の任期

監査役の任期は4年

 監査役の任期は、会社法336条1項で、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定められています。
 取締役の任期は原則として2年と定められていますが(会社法332条1項)、それと比べて長期とされているのは、監査役の地位を長期間にわたって保障することにより、監査役の独立性を確保するためです。この観点から、定款の定めを設けることや、株主総会の決議又は監査役間の合意によっても、監査役の任期を短縮することはできません

 もっとも、補欠監査役(ある監査役が退任した後にその補欠として選任された監査役)については、任期に例外があります。定款に「任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期は、退任した監査役の任期の満了する時までとする」といった定めがある場合、補欠監査役は、退任した監査役の任期の満了時に、任期満了により退任します(会社法336条3項)。これは、全監査役について同じ時に改選決議をしている会社においては、補欠監査役の就任により、一部の監査役について改選時期が異なってくることを防止したいという要望があることを考慮して、補欠監査役に限って例外を認めているものです。

伸長可能な場合

 非公開会社では、定款で定めることにより、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで任期を伸長することができます(会社法336条2項)。

監査役が退任する6つの場合

 監査役の退任とは、監査役と会社との間の委任契約の終了事由の発生を意味し、「任期満了による退任」、「辞任」、「解任」等がこれに含まれます。監査役が退任することになるのは、以下の6つの場合です。

  1. 任期が満了した場合
  2. 任期途中に辞任した場合
  3. 欠格事由に該当し、監査役の資格を喪失した場合
  4. 任期の当然終了事由となる定款変更があった場合
  5. 監査役が委任契約の終了事由に該当することになった場合
  6. 株主総会決議で解任された場合

任期満了

 監査役は、任期の満了により退任します。
 同じ人が再び監査役となる場合でも、いったん退任し、株主総会で改めて選任決議を行う必要があります。なお、同じ人が任期満了と同時に再任されることを登記実務上、「重任」といい、退任と就任とを重ねて登記するのではなく、単に重任した旨の登記を行います。

任期途中の辞任

 辞任とは、監査役の一方的な意思表示により監査役の職を辞することであり、株主総会決議は不要です。辞任の意思表示は、受領権限を有する相手方(通常は代表取締役)に到達することでその効力が生じますが、実務上は、「一身上の都合により、監査役を辞任します。」という記載とともに、日付、本人の氏名、本人の住所を記載した辞任届を作成し、会社に提出するのが一般的です。

欠格事由に該当し、監査役の資格を喪失

 監査役の欠格事由(会社法335条1項、331条1項各号)に該当した場合は、監査役の資格を喪失することになりますので、当該監査役の意思表示や会社による何らかの手続がなくても、当該監査役は当然に監査役を退任することになります。
 欠格事由の詳細については「監査役になるための資格と兼任が禁止される場合」をご参照ください。

任期の当然終了事由となる定款変更

 以下のような定款変更があった場合にも、監査役の任期は当然に終了し(会社法336条4項)、監査役による意思表示や会社による何らかの手続がなくても、監査役の任期は当然に終了することになります。

  1. 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
  2. 監査等委員会または指名委員会等を置く旨の定款の変更
  3. 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更(監査役会設置会社または会計監査人設置会社となる旨の定款変更を行った結果、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の規定が無効となる場合も含む)
  4. その発行する株式の全部の内容として譲渡による当該株式の取得について当該会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更

 上記①②は、会社の機関として監査役という機関がなくなる場合です。
 上記③は、監査役の権限が拡大するために、監査役の資質等への要求も異なり得ることから、当然終了事由とされています。
 また、上記④は、非公開会社である場合には任期が4年超となっている可能性があることに鑑み、公開会社になる場合は一律に監査役の任期の当然終了事由としているものです。

監査役が委任契約の終了事由に該当

 会社と監査役との関係については民法の委任の規定が適用されるところ(会社法330条)、民法では受任者の死亡、受任者が破産手続開始の決定を受けたことおよび受任者が後見開始の審判を受けたことが委任契約の終了事由とされています(民法653条1号・2号・3号)。
 そのため、監査役が死亡した場合、破産手続開始の決定を受けた場合および後見開始の審判を受けた場合、その監査役は当然に退任することになります。

株主総会決議による解任

 監査役は、正当な理由がなくても、株主総会の決議によって解任することができるとされています(会社法339条1項)。
 株主総会決議による解任の詳細については、「監査役はどのような場合に解任されるか」をご覧ください。

監査役が退任した場合の変更登記

 監査役が退任した場合は、その事由が生じた時から2週間以内に、変更登記を行う必要があります。この登記に要する登録免許税は1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社については1万円)です。

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