株主総会資料の電子提供制度に関する実務対応
コーポレート・M&A
目次
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.197」の「特集」の内容を元に編集したものです。
本年9月1日に迫った株主総会資料の電子提供制度の施行に向け、法務省および東京証券取引所(以下「東証」という)から以下の通知が発出されていますので、その概要についてご案内いたします。
法務省からは8月3日付で、「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」と題する通達が発出され、電子提供制度の施行日(以下「施行日」という)において振替株式を発行している会社が登記を行う際の添付書面について、会社代表者が作成する証明書の書式が掲載されています。
東証からは8月8日付で、「株主総会資料の電子提供措置における東証ウェブサイト利用時の留意点」と題する通知が出されており、電子提供措置事項を掲載するウェブサイトとして東証のウェブサイトを利用する場合の留意点について案内がなされています。
あわせて定款および株式取扱規程の東証等への提出についても整理いたしましたのでご参照ください。
法務省「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」
以下、電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更登記手続について、上記通達から抜粋してご案内します。
登記の期間
(1)施行日において振替株式を発行している会社
施行日において、いわゆる「みなし定款変更」が適用される会社(施行日より前にあらかじめ電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更に係る株主総会の決議をした場合も含む)は、施行日から6か月以内に、その本店の所在地において、電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記をしなければならない(整備法第10条第4項)。
なお、施行日から上記電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記をするまでに他の登記をするときは、当該他の登記と同時に、電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記をしなければならない(同条第5項)。
(2)上記(1)以外の会社
上記(1)以外の株式会社(施行日後に振替株式を発行する株式会社となる場合を含む。)が株主総会の決議により定款を変更して、電子提供措置をとる旨の定款の定めを設定したときは、当該定款の変更の効力の発生日から2週間以内に、その本店の所在地において、電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記をしなければならない(会社法第911条第3項第12号の2、第915条第1項)。
登記すべき事項
登記すべき事項は、電子提供措置をとる旨の定款の定めおよび変更年月日。
【記録例①】施行日において振替株式を発行している会社(変更年月日は施行日(下線部分))
電子提供措置に関する規定 | 当会社は、株主総会の招集に際し、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとるものとする。 | 令和4年9月1日設定 |
令和4年10月3日登記 |
(下線は筆者による)
【記録例②】上記①以外の会社
電子提供措置に関する規定 | 当会社は、株主総会の招集に際し、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとるものとする。 | 令和4年10月3日設定 |
令和4年10月14日登記 |
添付書面
(1)施行日において振替株式を発行している会社
当該会社が施行日において振替株式を発行している会社であることを証する書面。具体的には、当該株式会社の代表者の作成に係る証明書となる。
【様式例】
当会社は、会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和元年法律第71号。以下「整備法」という。)の施行日(令和4年9月1日)において、社債、株式等の振替に関する法律(平成13年法律第75号)第128条第1項に規定する振替株式を発行しており、整備法第10条第2項の規定により、当該施行日をその定款の変更が効力を生ずる日とする電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更の決議をしたものとみなされた会社であることを証明します。
令和〇〇年〇〇月〇〇日
〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
株式会社 〇〇
代表取締役 〇〇 〇〇
(2)上記(1)以外の会社
株主総会の議事録ならびに主要な株主の氏名または名称、住所および議決権数等を証する書面(いわゆる「株主リスト」)とされている。
東証「株主総会資料の電子提供措置における東証ウェブサイト利用時の留意点」
本通知によると、上場会社は、株主総会資料を公衆の縦覧に供している東証上場会社情報サービス(以下「東証ウェブサイト」という)を、電子提供措置をとる媒体の一つとして利用することも考えられるとした上で、東証ウェブサイトは上場会社各社の自社ウェブサイト等のバックアップとして補助的に利用いただくことを前提とするものであるため、システム上の制約や障害、メンテナンスその他の理由により東証ウェブサイト上の情報にアクセスできない状況等が発生した場合でも責任は負わないとされています。また、以下の案内がなされています。
ウェブサイト利用時の留意点
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稼働状況等に関する報告書の提供
自社ウェブサイト等の電子提供措置をとるメインのウェブサイトでアクセスの中断が発生した (またはその可能性が生じた)ときなど、東証ウェブサイトの稼働状況等の確認が必要となった場合は、下記の事項について、無料で、東証が報告書を作成・提供します。
報告事項 | 概要 |
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① 東証ウェブサイトの稼働状況 |
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② 株主総会資料ファイルの掲載日時 |
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③ 株主総会資料ファイルの状況 |
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定款および株式取扱規程の東証・証券保管振替機構宛の提出
定款と株式取扱規程の改訂後は、それぞれ下表のとおり提出が必要となります。
東証宛 | 証券保管振替機構宛 | |
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定 款 | 提出要 (変更後遅滞なく(※) ) |
提出不要 |
株式取扱規程 | 提出要 (変更後遅滞なく(※) ) |
提出要 (決議後速やかに) |
(※)「変更後遅滞なく」とは効力発生後の提出を求めるものとされています。
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
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