中国・新型コロナウイルス感染拡大と現地日系企業の法的対応(1)- 濃厚接触者への対応等
国際取引・海外進出中国では、感染が拡大する新型コロナウィルスに対してどのような法的対応を取っているのでしょうか。また、現地法人の労働者等が「濃厚接触者」に該当性するか否かの判断基準、「濃厚接触者」であると判断された場合にどのような対処を受けるのかについても教えてください。
新型コロナウイルスは「中華人民共和国伝染病防治法(伝染病防治法)」により、中国法上の法定感染病として指定されています。また、新型コロナウイルス肺炎は、「中華人民共和国国境衛生検疫法」が定める検疫伝染病管理対象に指定されています。
「濃厚接触者」の判断基準については、新型コロナウイルス肺炎患者が発病後、中国国家衛生健康委員会病気予防統制局が定める一定の状況に該当し、かつ有効な防護措置を講じていない人員をいいます。
また、濃厚接触者は衛生健康行政部門による追跡および管理を受けなければなりません。中国の保健当局、国家衛生健康委員会の2月9日24時までの統計によれば、追跡できた中国国内の濃厚接触者数は39万9,487人となり、現在18万7,518人が医学観察を受けていると発表されていますが、今後この数字はさらに増えると予想されます。
解説
目次
春節休暇期間の延長に関する賃金の支払い、営業の再開期間延長に関する賃金の支払い、さらに、医学観察を受けているなどの原因により通常勤務ができない労働者に対する賃金の支払いについては、『中国・新型コロナウイルス感染拡大と現地日系企業の法的対応(2)− 賃金の支払い』をご参照ください。
新型コロナウイルスの感染拡大による営業再開の延期により、契約を履行することができなった場合に、不可抗力による免責を主張できるか否かについては、『中国・新型コロナウイルス感染拡大と現地日系企業の法的対応(3)− 不可抗力』をご参照ください。
新型コロナウイルスはそもそも中国法上の法定感染病なのか
新型コロナウイルスは中国法上の法定感染病です。
「中華人民共和国伝染病防治法」(以下、「伝染病防治法」という)の規定によれば、伝染病は、甲、乙および丙類に分類され、流行状況および危害の程度により、中国国務院衛生行政部門が乙または丙類への分類決定を下します。
新型コロナウイルス肺炎は、中国国家衛生健康委員会が2020年1月20日に公布した第1号公告により、伝染病防治法が定める乙類伝染病に指定され、甲類伝染病の予防・抑制措置を講じるとされました。また、新型コロナウイルス肺炎は、「中華人民共和国国境衛生検疫法」が定める検疫伝染病管理対象に指定されました。
現地法人の労働者が新型コロナウイルスの「濃厚接触者」に該当するか否かをどのように判断すればよいか
中国国家衛生健康委員会病気予防統制局が2020年1月22日に公布した「新型コロナウイルス肺炎の暴露疑い者および濃厚接触者の管理方案(第2版)」(以下、「管理方案」という)によれば、濃厚接触者とは、新型コロナウイルス肺炎患者(以下、「肺炎患者」という)が発病後、以下のいずれかの状況に該当し、かつ有効な防護措置を講じていない人員をいいます。
- 肺炎患者と同居、一緒に勉強、仕事をしていたか、その他の方法により肺炎患者と密接に接触した人員。たとえば、肺炎患者と近距離で仕事、同じ教室で勉強、同じ部屋での生活があげられる。
- 肺炎患者を診療、介護、または見舞いをした医療人員、もしくは家族またはその他の類似の方法により肺炎患者と近距離で接触した人員。たとえば、肺炎患者を直接的に治療または介護する人員や、肺炎患者がいる閉鎖環境で見舞いしまたは滞在した人員、肺炎患者と同じ病室にいるその他の患者および医療人員があげられる。
- 肺炎患者と同じ交通手段を利用する等により近距離で接触した人員。たとえば、当該交通手段で当該肺炎患者を世話した人員、当該肺炎患者の同行者(家族、同僚、友人など)を含む。また、調査・評価により肺炎患者と近距離で接触したその他の乗客および客室乗務員も含まれる。
- 現場調査人員による調査・評価後、その他の濃厚接触者と接触したと認められる人員も対象となる。
「濃厚接触者」であると判断された人は、どのような対処を受けるのか
管理方案によれば、濃厚接触者は積極的に、衛生健康行政部門による追跡および管理を受けなければなりません。具体的には、以下の医学観察が実施されます。
- 自宅隔離または集中隔離による医学観察。自宅隔離による医学観察を実施できない濃厚接触者に対しては、集中隔離観察を実施する。医学観察の期間は、最後に肺炎患者と無防護の状態で接触した日から14日間である。
- 医学観察を実施する場合、相手に対し、書面または口頭により、医学観察の理由、期間、根拠法律、注意事項、病気に関する知識、医学観察担当者の氏名および連絡先を告知しなければならない。
- 自宅隔離による医学観察を受ける濃厚接触者はできる限り別居しなければならず、同居している人員との接触も可能な限り減らさなければならない。原則的に、外出してはならず、やむを得ない事由により外出する場合、医学観察管理人員の許可を得て外出しなければならない。外出する場合、使い捨ての外科マスクを着用しなければならず、人が密集する場所に行くことを避けなければならない。
- 医学観察期間中、指定された管理人員は濃厚接触者に対し、毎朝晩で体温測定の実施、健康状態のヒアリング、濃厚接触者の医学観察記録表・登記表の記載といった必要な協力および指導をしなければならない。
- 医学観察期間中、濃厚接触者に、発熱、咳、息切れ等の呼吸器感染症状がみられる場合、ただちに現地の衛生健康部門に報告し、指定医療機関による診療をさせなければならない。
- 医学観察期間満了後、以上の症状が見られない場合、医学観察を解除しなければならない。

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