日本発のグローバルトップファームへ 歩みを進める東京国際法律事務所

コーポレート・M&A

目次

  1. 「日本発のグローバルトップファームをつくる」思いに共感した仲間が集う
  2. 国籍・ジュリスディクションを問わずワンチームでミッション達成を目指す
  3. チームをさらに強化し、グローバルトップファームへ

東京国際法律事務所は2019年4月、「日本企業に世界で勝負するための武器を提供する」という強力なミッションを掲げ、クロスボーダーの法務案件に特化した法律事務所として森 幹晴弁護士、山田 広毅弁護士によって設立された。それから約2年。クリストファー・スチュードベーカー外国法事務弁護士、谷中 直子弁護士など、経験豊富な新しいメンバーを迎えた東京国際法律事務所が描く新たなビジョンとは。

「日本発のグローバルトップファームをつくる」思いに共感した仲間が集う

2019年のインタビューでは、東京国際法律事務所のミッション・バリューについてお聞きしました。この2年間で生じた変化について教えてください。

山田弁護士:
もともと事務所を立ち上げた時に抱いていた「日本の弁護士はもっと世界で勝負できる」「世界と戦う日本企業のための弁護士集団が必要」という思いを突き詰めて考えた結果、「日本発のグローバルトップファームをつくるべきだ」と思い至りました。

国内外の色々な人たちと話をするなか、優秀な海外の人たちが日本という国の魅力を感じ、我々の思いに共感してくれたことはポジティブサプライズです。

我々の思いと、日本発であることを強みに、世界で勝負していけるような仲間を集めています。メンバーの数は約3倍になりました。設立時は弁護士5名とバックオフィス2名の体制でしたが、現在は外国弁護士を含む弁護士等が15名、バックオフィスが7名になりました。

森弁護士:
メンバーが集まってきたことで、スタートラインにようやく立てたような感覚ですね。東日本大震災後の10年間は、景気拡大のなかでの成長戦略としてM&Aが大きな柱でしたが、2019年頃から景気後退局面を予測して、上場会社のM&Aや事業の売却・再編、国際紛争・国際仲裁、国際EPC・インフラ案件など、業務領域の多面化に取り組んできました。そこに対応できるメンバーの強化を図ってきたという点は、この2年間での大きな変化だと思います。今年の1月には初めて所内からパートナーに昇格したメンバーも出ています。

東京国際法律事務所 森 幹晴弁護士

東京国際法律事務所 森 幹晴弁護士

谷中先生、スチュードベーカー先生が東京国際法律事務所に入所された経緯を教えてください。

谷中弁護士:
最初に就職した大手渉外事務所で金融、コーポレート、労働、知財関係など、比較的広い分野を20年弱扱ってきました。

東京国際法律事務所へ移籍するきっかけとなったのは、大学時代のゼミの友人だった森弁護士と会ったことです。移籍を考えたことはそれまでありませんでしたが、森弁護士から事務所の立ち上げに対する熱い思いを聞いて、「ここでなら、新しいことができる」と感じ、2021年の1月に入所しました。

スチュードベーカー外国法事務弁護士:
私は2020年8月に入所しました。以前は15年ほどニューヨークの法律事務所で弁護士として働いていました。主に担当していたのは、国際紛争、米国での訴訟、内部調査などです。

私の母と妻が日本人ということもあり、昔から日本で仕事をしたいという気持ちを持っていました。ただ、いろいろな先生方から、「日本に行く前に米国で専門家としての経験を積んだほうが良い」とアドバイスを受け、まずは米国で弁護士としての実績を積んでいました。

ちょうど次のキャリアについて考えていたころに、森弁護士と山田弁護士に会い、「これからのグローバル事務所をつくりたい」というビジョンを聞き、このプラットフォームであれば、私がこれまで培ってきた紛争プラクティスをさらに成長させ、国際紛争に直面する日本のクライアントに質の高いリーガルサービスを提供するために必要なサポートを得ることができると感じました。

谷中先生やスチュードベーカー先生にとって入所の決め手となったポイントはどのようなものでしたか。

谷中弁護士:
事務所のコンセプト自体が新しく魅力的だったことです。ここに飛び込めば、これまで日本の弁護士があまりやってこなかったような分野を開拓していける。そんなエネルギーを感じました。メンバーの人柄も皆素晴らしく、東京国際法律事務所でならワンチームとしての仕事ができると考え、入所を決めました。

東京国際法律事務所 谷中 直子弁護士

東京国際法律事務所 谷中 直子弁護士

スチュードベーカー外国法事務弁護士:
米国の訴訟でディスカバリー手続きを担当した際に、東京国際法律事務所の方々と一緒に仕事をしました。皆が協力し合い、クライアントにとってベストな条件を提供しようとする姿勢を見て、弁護士としての能力が非常に高い方々だと感じました。

長年にわたり、日本の経営層や法務部門の方々とお話しするなかで、クライアントにアドバイスをするだけの日本の弁護士業界に対して、個人的に物足りなさを感じていました。クライアントは、問題解決を求めて弁護士に相談しにきます。そこで「A、B、Cという解決策があります」と答えるだけの弁護士も多いですが、弁護士であればもっと踏み込んで「法律面ではBを選んだほうが良い」というところまでアドバイスをすべきです。

また、英語で「Issue Spotting」と表現しますが、クライアント側で認識できていない問題についても考えなければなりません。「実はこういう問題も起こる可能性がありますよ」とクライアントに伝え、解決策を考案することは、弁護士がやるべき大きな仕事の1つだと思います。東京国際法律事務所のメンバーには、そうした意識が根付いていると感じ、こういう事務所であれば、自分もしっかり働くことができそうだと考えました。

東京国際法律事務所 クリストファー・スチュードベーカー外国法事務弁護士

東京国際法律事務所 クリストファー・スチュードベーカー外国法事務弁護士

国籍・ジュリスディクションを問わずワンチームでミッション達成を目指す

メンバーが増えたことで、今後どのような構想を描かれていますか。

森弁護士:
我々は「グローバルプラットフォーム構想」を掲げています。私たちが狙っているマーケットは、国内はもちろん、欧米・アジアを含むグローバルな戦略法務領域です。国内のM&Aや紛争だけでなく、日本企業が海外進出するためのクロスボーダーM&A、国際紛争・国際仲裁、EPC・インフラ案件なども含め、企業のグローバル展開に関わる法的支援領域を多面的に捉えるなかでは、グローバルな業務遂行力とクライアントへの訴求力を高めることが大切です。世界中の弁護士とのネットワークを作り上げ、アウトバウンドとインバウンドの2つのマーケットでうまくビジネスに落とし込めるかどうかが、グローバルプラットフォーム構想を実現するカギになると考えています。

2020年には、当事務所が海外のネットワークを活かして2,000億円超規模の大型買収案件をリードしました。これは、欧州・アジアを中心に10か国弱にまたがる大型のM&Aでした。従来であれば、国際的な英国法律事務所の日本支店が手掛けてきたような法律業務です。私たちの注力する海外M&A分野は、現地の優秀な弁護士との協働がベースにあります。これまで、欧米やアジアなどに150を超える海外事務所とのネットワークを築いてきました。そこに、様々なジュリスディクションのグローバルな弁護士チームを掛け合わせることで、今まで欧米の大手法律事務所しかできなかったような案件を、日本企業のニーズを理解した日本人弁護士がリードし展開していけるようなプラットフォームがつくれるのではないかと考えています。

日本人弁護士と外国人弁護士が所属する事務所は国内にもありますが、チームとしての一体感が東京国際法律事務所の強みということでしょうか。

山田弁護士:
はい。私たちが目指しているのは、「日本発のグローバルトップファームをつくること」です。そのためには、国籍やジュリスディクションを問わず才能のある仲間を集め、まずは東京にインターナショナルなチームを構築する必要があります。皆が一体となりチームとして動ける事務所をつくれるかどうかが勝負です。スチュードベーカー外国法事務弁護士をはじめとする外国資格保有者の仲間も一緒に事務所の方向性について議論したりリクルート活動を行ったりしています。国籍に関係なく、能力を基準にして物事を考え、本当に強いチームをつくっていくことが、ミッションの達成に必要なことだと考えています。

スチュードベーカー外国法事務弁護士:
東京国際法律事務所での勤務を始めてから8か月以上経過しましたが、ここでの勤務体験はニューヨークで働いていたころとまったく変わりません。驚くほどスムーズに移行できています。唯一の実質的な違いといえば、私が東京にいること、そして日本語でのコミュニケーションが増えたことです。ここでは皆がフラットに同じチームの一員として働くことができています。そういった意味で、東京国際法律事務所は、まさしくインターナショナルな法律事務所だと断言できます。

谷中弁護士:
朝のミーティングでは、経験の少ない若手弁護士からも意見が出てきます。皆、ワンチームでやっているという感覚があるのではないでしょうか。採用においても、大きな事務所であれば採用担当者のみの面接を行うケースが多いですが、私は入所時に全員の弁護士と会う機会をもらいました。メンバーが分け隔てなくフラットに議論できる環境であることの証だと思います。

チームをさらに強化し、グローバルトップファームへ

最後に皆さんから一言ずつ今後の展望について伺えますか。

山田弁護士:
コロナ禍で物理的に国境をまたぐことが難しくなっている状況ではありますが、今は、東京でできることをできるだけ高めていこうと考えています。そのためには、新しい時代の流れを敏感に感じとり、ともに変革を推し進めていく仲間探しが重要です。国籍やジュリスディクションを問わず、優秀な人たちにできる限り参画してもらうための活動をこれからも続けていきます。

東京国際法律事務所 山田 広毅弁護士

東京国際法律事務所 山田 広毅弁護士

森弁護士:
3年から5年で弁護士数30人から50人規模の事務所に拡大していくという、設立時に想定していた中期プランに変わりはありません。私たちがベンチマーキングしているトップクラスの国際法律事務所の東京チームは、だいたい100人前後。その次の集団は、だいたい30人程度の規模になります。私たちはまず、3年から5年でそこに追いつこうとしています。実際に2年弱で10数名が集まり目標値の半分まできました。この調子で達成できると見込んでいます。

5年から10年目は、国内案件はもちろん、クロスボーダーM&Aや国際紛争などのグローバル戦略法務の領域でトップファームになっていくことが目標になります。日本企業が海外M&Aや紛争・仲裁に対応する際にアウェイだと感じない世界をシームレスにつくり上げるには、優秀な若手弁護士の力や、外国弁護士の力を結集していく必要があります。彼らが魅力を感じるような法律事務所のビジネスの在り方、価値観の持ち方、クライアントへのアピールの仕方を考えて、達成していきたいです。

谷中弁護士:
私個人としては、新しい世代を育てていきたいという気持ちがあります。今年の新人は3名ともに優秀なうえ、高い熱量があります。

女性のメンバーも増えてきたので、3人の子どもを育てながら働いてきた自身の経験も生かして、働き方やワークライフバランスの観点から、家庭と仕事の両立をしている姿を見せていけたら良いですね。そのためには、周りに流されることなく自分の付加価値を高めていくことが重要だと考えています。

スチュードベーカー外国法事務弁護士:
ワンストップ・ワンファームですべてのクライアントのニーズに対応できる法律事務所にしていきたいというのが、長期的な展望です。たとえば、M&Aであれば、M&A後の紛争や、他の契約保証や労働問題などがあった場合にも、すぐに私たちのところに相談していただけるようにしていきたい。そのために、やるべきことはやはり仲間探しです。様々なバックグラウンドを持つ人材を採用すれば、それぞれのクライアントのニーズに多角的に対応できるようになります。クライアントからすると、外資系事務所や日本の大手法律事務所など、多くの選択肢があると思いますが、その選択肢の1つとして真っ先に私たちの名前があがるようにしていきたいですね。

(文:周藤 瞳美、写真:弘田 充、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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