世界で戦う日本企業の軍師であれ 東京国際法律事務所 森弁護士、山田弁護士が描くビジョン

コーポレート・M&A

目次

  1. 日本の弁護士はもっとグローバルで勝負できる
  2. 弁護士はマーケットインの視点を持て
  3. 世界で戦う日本企業の軍師であれ
  4. 日本の司法インフラを支えるために「本気」を巻き込んでいく

「世界で戦う日本企業の軍師でありたい」

大手法律事務所でキャリアをスタートし、リーマンショックの最中に渡米、現地の法律事務所で経験を積んだ森幹晴弁護士、山田広毅弁護士は、そう語る。

企業の競争環境がドラスティックに変化する中、多くの日本企業が世界での戦いに活路を見出そうとしている。しかし、国境を超えたM&Aや紛争への対応は最高度の複雑性を伴う。事前に綿密な戦略を描き、それを実行に移すことのできる「軍師」の存在が不可欠だ。

同じ志を持ち、今年、クロスボーダーに特化した法律事務所を立ち上げた2人の弁護士に、新たなチャレンジに懸ける思いと戦略を聞いた。

日本の弁護士はもっとグローバルで勝負できる

まずは、事務所立ち上げに至るまでの経緯を教えてください。

山田弁護士:
米国への留学、研修時に感じた、日本の弁護士も世界で通用するという確信。国内市場が縮小する中で抱いた日本企業が世界で戦う必要性と、それを本気でサポートできる弁護士が不足しているという問題意識が事務所立ち上げの背景にあります。

森弁護士:
原体験は山田と通じる部分が多いのですが、日本人弁護士の手による、日本企業のためのグローバル戦略法務を提供する事務所を作るべきじゃないか、という思いが立ち上げの原点です。われわれの子どもたちの世代に、日本が海外で稼げるような豊かな経済を残す一助になりたいという気持ちもありました。

お二人は米国でどのような経験をされたのでしょうか。

山田弁護士:
私は森・濱田松本法律事務所で3年弱働いたところで米国へ留学し、Kirkland & Ellisへ研修に行きました。私が所属したのは全米でもトップレベルと言われる特許訴訟のチームでした。2年間の業務を通じて、自分自身が想定していた以上に「通用する」と感じ、実は日本の弁護士は相当レベルが高いのではないか、という気付きがありました。自分にできたのだから、日本の弁護士はもっとグローバルで勝負できる。帰国したときにはそんな確信を持っていましたね。

先ほど話題に上がった問題意識は、米国への留学、研修時代に抱かれたものですか。

山田弁護士:
私は、リーマンショックの渦中である2009年から2012年までの期間に留学と研修をしていましたが、私が高校時代に米国に留学した時期と比べて、世界での日本のプレゼンスが相対的に落ちてきていることを肌で感じました。

何とかこれを食い止めたいと思いました。長期的に見れば、国内市場の縮小はどうしても避けられませんから、日本企業は力があるうちに、世界のマーケットに打って出なければなりません。そして日本の弁護士は、世界で戦う日本企業のニーズに寄り添い、グローバルなクロスボーダーのサービスを提供していかなければならない。そんな問題意識を抱いたのです。

しかし、帰国してみると、クロスボーダーに特化・集中している弁護士は多くはありませんでした。弁護士が支える司法インフラの側面から見ても、日本はグローバルへの対応力がまだまだ弱いな、と痛感しました。

森弁護士:
私は2004年に長島・大野・常松法律事務所で仕事を始めました。会社法や独占禁止法の改正などによって国内の規制緩和と法制度のグローバル標準化が進み、外資による日本のM&Aマーケットが盛んになってきた時期で、国内の上場会社のTOBや買収などの案件を担当しました。今振り返ってみても息つく暇も無いほど忙しく働いていたと思います。

ところが、2007年のリーマンショックを契機に、上場会社の買収案件に対するファイナンスが止まってしまいました。何かすごいことが起きているなと感じながら米国に留学し、Shearman & Sterlingで仕事をすることになりました。すると、国内ではまったくM&Aをやらなくなった日本企業が、米国企業に投資しているんです。それも、日本よりもゼロが1つ大きいような規模で。実に驚くべき体験でしたね。

一方で、日本企業は米国で証券訴訟やカルテル、クラスアクションのリスクを抱えていましたから、そういう面でもサポートしていきたいということを考えていました。

米国にいる時期は、日本のGDPが中国と入れ替わって世界第2位から3位に落ちたり、自分の子どもが産まれたり、などといったこともあり、次の世代にいい経済を残していかなければ、という思いが芽生えた時期でもありました。

Shearman & Sterlingではどのような案件を担当されていたのでしょうか。

森弁護士:
現地の弁護士と一緒に、M&Aのデューデリジェンスやファイナンス案件を担当していました。ディール全般のハンドリングやリスクへの感度、それに対するマネジメントのやり方について、米国トップファームの弁護士のスタイルは大変勉強になりました。また、サービス精神に溢れ、マーケターとして、クライアントのために全力を尽くす米国のトップロイヤーの姿勢に感銘を受けました。

他方で、日本人の弁護士の強みも感じました。日本語でクライアントとコミュニケーションできるのでクライアントの細やかなニーズを把握しやすいですし、かゆいところに手が届く気の利いた部分も日本人の弁護士が得意とするところだとも感じていました。米国人の弁護士は非常に優秀ですが、日本人弁護士でも米国のトップファームで活躍されている方も少数ながらいらっしゃいまして、私も心から尊敬しております。そのような先輩方の後に続いて、日本人の弁護士の中からも、グローバルな領域で活躍する人数が増えていくべきだと思いました。

東京国際法律事務所 山田広毅弁護士、森幹晴弁護士

左から東京国際法律事務所 山田広毅弁護士、森幹晴弁護士

弁護士はマーケットインの視点を持て

日比谷中田法律事務所に在籍されていた当時も、グローバルな案件を中心に担当されているという印象がありました。なぜ、新事務所の立ち上げを決断されたのでしょうか。

森弁護士:
日比谷中田法律事務所に在籍しているときも、日本企業に対する一定のサポートはできていました。しかし、個人としての取り組みに限界があると感じはじめ、そこからさらに一歩踏み込んで、本気でベストな体制でクライアントをサポートしていくためには、自分たちでチームを作ることから始め、より責任感をもってクライアントと向き合う必要があったのです。そのことを中田が前向きに応援してくれたので、山田とともに事務所を立ち上げることに決めました。

山田弁護士:
日本の司法インフラを支えるという大きな目標に向けて勝負するためには、自分たちの足で立ち、自分たちで仲間を集め、強いチームを作らなければならないと思いました。

国内の弁護士は日本の法律を学び、日本法の専門家として司法試験に合格しています。ですから、自分たちが大事にすべきは日本の法律だと考えているかもしれません。

それも理解はできるのですが、ややプロダクトアウト的な印象を受けます。本来はマーケットのニーズを捉え、弁護士が提供できる付加価値を考え、サービスを提供していくマーケットインの視点が重要なはずです。

つまり、自分たちができることではなくて、世の中が欲していること、必要としていることにアプローチしていく方法が必要だと考えています。

ここまで問題意識と思いを共有できる2人が出会えたことは、奇跡に近いことですね。

山田弁護士:
森と最初に会って話をしたときは、いわゆるカジュアル面談みたいな形でしたが、すぐに意気投合して2時間くらい話をしていました。

森弁護士:
山田と初めて会ったとき、私は衝撃を受けました。ほとばしる眼差しと、日本企業のために体を張っていくんだという強い思い。われわれの世代で、彼ほどの情熱を持った弁護士はいないと感じましたよ。

そのとき、自分自身も奮起して、「よし、彼と一緒にやろう」と決意したのです。

山田弁護士:
目を見た瞬間にビビッと、わかり合えそうな人だなという感覚があったんですよね。

東京国際法律事務所 
 森幹晴弁護士

東京国際法律事務所 森幹晴弁護士:

世界で戦う日本企業の軍師であれ

東京国際法律事務所が掲げる「世界で勝負するための武器を提供するプロフェッショナル集団」というミッションには、どのような思いが込められているのでしょうか。

山田弁護士:
われわれが特化している複雑なクロスボーダーの案件は、複数の法制度を跨ぎ、関係当事者の数も多くなることから、意思決定の基礎となる変数が多く、絶え間なく難しい意志決定を迫られるという点に特徴があります。

しかも、常に短期間で意思決定することが求められるので、適切な舵取りをするための軍師役がいなければ、うまく乗り切ることは非常に難しいです。われわれは世界で戦うクライアント企業のリーガル面の軍師となり、事業の成功と勝利を支援したいと考えています。

日本企業が世界で勝負するための武器や知恵を提供することが、われわれの目指す姿であると考え、それをミッションに落とし込みました。クロスボーダーの戦略法務の領域で日本一の弁護士事務所になることを、われわれは本気で目指しています。そういった思いもこのミッションの中に詰まっています。

具体的には、どのような形で企業への支援を行われているのでしょうか。

森弁護士:
たとえば、アジアやヨーロッパに拠点を持つ米国企業を買収するケースで考えてみましょう。まず各拠点でデューデリジェンスの対応が必要となるのですが、私どもは独自に数十カ国に提携弁護士のネットワークを築いてきましたので、欧米やアジアの複数カ国にまたがる案件であっても、即座に案件ごとに最適な弁護士を選んでチームアップすることができます。

各拠点のデューデリジェンスをつぶさに行うと、たとえば、アジアでは、会計の不正や政府機関とのつながりで反腐敗の問題が出てくることがあります。そのような問題があると、FCPAのリスクが増え、買収後に巨額の罰金を支払うリスクを引き継いでしまいますので、必要な手当をする必要があります。

具体的には、不正に関与しているビジネスの部分だけを切り出すストラクチャリングの提案や、売り手と特別補償を交渉して被る可能性のある損害の手当てをすることもあります。

さらに、大きな案件になると、クロージングまでに複数カ国で競争法のファイリングを要することもあります。これも、複数カ国での競争法弁護士とのネットワークを有する私どもの得意とするところです。

私たちは、過去に日本企業が経験した失敗を踏まえ、リスクを発見し、事前の対応や案件を止める判断も含めて、問題発見時の処置を行います。クロスボーダーM&Aでは、国内案件と比べて時間軸が非常に早いため、問題の優先順位を明確にして、クライアント企業がその場その場でベストな判断を下せるよう支援をしています。

山田弁護士:
クライアントのビジネス上の目的や優先順位を理解し、プロアクティブに問題点を発見しソリューションを提供していかない限り、このようなリスク回避は実現できません。そもそも情報がなければ作戦は立てられませんから、待ちや受けの姿勢では、支援そのものが成り立たないのです。

主なプラクティスの領域はどこですか。

山田弁護士:
主たる柱はM&Aです。特に、日本企業による海外企業の買収案件が多いですね。事務所全体では7割ほどです。他の実績では、国内のM&Aはもちろん、グローバルな独占禁止法の企業結合のファイリング、国際紛争、カルテル対応等もあります。

国際的な紛争では複数の国で同時に訴訟手続が生じることがあります。国によって手続きのあり方や勝ちパターンが異なるので、個別の国において最適な戦略が他の国の手続きに悪影響を与えるというようなこともあります。そういった案件で戦略的に全体最適のゴールを目指すためのサポートもしています。

そのほかには、各国における当局調査を受ける際の戦略立てや、贈収賄、マネーローンダリングなど、グローバルなコンプライアンス態勢の構築を支援することもあります。

東京国際法律事務所 山田広毅弁護士

左は東京国際法律事務所 山田広毅弁護士

日本の司法インフラを支えるために「本気」を巻き込んでいく

ミッションに加えて「チームの力を信じること」、「高付加価値と高生産性の両立」、「誠実に長期的関係の構築を目指すこと」という3つのバリューが印象的でした。

山田弁護士:
私たちがもともと大切にしていたこと、これから大切にしなければならないこと、ミッションを達成するためにやらなければならないことは何だろうかと考え、この3つを策定しました。

クロスボーダーの戦略法務の領域で日本一の弁護士事務所になるために必要なことは何かを考えたときに、本当の意味で「チーム」を作ることが重要だという結論に至りました。チームの仲間一人一人が自己実現のために自身のポテンシャルを最大限発揮する。そして、その方向性がチームとして進みたい方向性にしっかりマッチする。そういった状況を作り上げることができれば、クライアントにとって真に付加価値のあるサービスを提供することができ、ひいては厳しい競争にも打ち勝つことができると考えています。

東京法律事務所に依頼すると、誰が出てきてもすごく仕事ができる。そのようなチームを作ることが大切で、代表としては、そこに最大限コミットすることを考えています。

われわれが掲げたミッションに共感して、日本の司法インフラを支えるために本気で頑張れる人たちをどれだけ巻き込めるか、そこが勝負のポイントだと思っています。優秀で意欲のある人達が、このチームでなければ自分たちが本当にやりたいことを成し遂げられないと思ってもらうこと、それが大切だと捉えています。

そのためには「高付加価値と高生産性の両立」が有効となってきそうですね。

森弁護士:
これからの弁護士は問題を発見し、道筋を見極め、適切なコミュニケーションを通じて解決していくことを通して、高い付加価値を提供していく必要があります。

山田弁護士:
そのためには、心身ともに健康な状態を保ち、本当に頭を使う業務に集中してクリエイティビティを発揮することが求められます。ですから、長時間労働から脱却して生産性を高めることは必須です。

生産性を高めるためには、オペレーションの工夫も当然必要です。同時に最新のテクノロジーを積極的に活用していきます。

最近話題となっているリーガルテックも活用されているのでしょうか。

山田弁護士:
私は株式会社LegalForceの社外監査役も勤めていますし、以前もインタビューでお話した「AI契約書翻訳サービス」も活用しています。最新のリーガルテックサービスについては常にアンテナを張り、組織へ柔軟に取り入れていくことで、各弁護士が本当に知恵を使わければならないところに集中する方法を考えています。

「誠実に長期的関係の構築を目指す」にはどのような思いが込められているのでしょうか。

山田弁護士:
短期的な思考を持って仕事をしていると、そのときだけ儲かればいいというインセンティブが生じてしまい、本来クライアントに請求すべきではない費用まで請求してしまう可能性があります。

しかし、私たちは目先の売上の多寡よりも、同じクライアントにどれだけリピートしていただいたかという指標を大切にしています。次の機会もわれわれに依頼したいと思っていただくために全力を尽くしますし、自分たちの提供した付加価値に見合ったものしかご請求できません。

これはチームメンバーとの関係でも同じです。同じ船に乗る決断をしてくれたメンバー全員が120%の実力を発揮できるよう、環境を整え、長期にわたって支援し続けることが重要です。長期的関係を前提とする信頼があってこそ、チームの仲間は全力で駆け抜けることができると認識しています。


後半『クロスボーダー特化型事務所が描く、弁護士とクライアントの新しい関係』へ続く。

(取材・構成・写真撮影:BUSINESS LAWYERS編集部)  

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する