アンダーソン・毛利・友常法律事務所が「外国法共同事業」を開始 4名の外国法事務弁護士がパートナーに就任

国際取引・海外進出

目次

  1. 「外国法共同事業」というプラットフォームが、組織に多様性と一体性をもたらす
  2. 複雑化する顧客ニーズ、外資系事務所との競争激化 ポストコロナを見据えた戦略とは
  3. パートナーに就任した4名の経歴、専門分野、今後の取り組みに対する想い

今年1月、アンダーソン・毛利・友常法律事務所が「外国法共同事業」を開始した。米国・英国・中国メインランドの資格を持つ4名の外国法事務弁護士が同事務所のパートナーに就任することで、クロスボーダー案件への体制を強化。多様性と一体性のある組織への進化を目指すという。

同事務所パートナーの前田 敦利弁護士、この度新たにパートナーに就任したレン マツナガ外国法事務弁護士、バシリ ムシス外国法事務弁護士、屠 錦寧外国法事務弁護士、内藤 央真外国法事務弁護士にお話を伺った。

「外国法共同事業」というプラットフォームが、組織に多様性と一体性をもたらす

「外国法共同事業」を開始されたことは、貴所にとってどのような意味を持つのでしょうか。

前田弁護士:
より多くの外国法弁護士を迎え入れるプラットフォームができました。

「アンダーソン・毛利・友常法律事務所でパートナーを目指せる」「日本法の弁護士ではなくても、日本のリーガルマーケットにおいて知識と経験を活かしてパートナーになる道がある」というメッセージを、外国法弁護士の方々に対して発することができたと思います。

なぜ、そのようなメッセージを発信されたのでしょうか。

前田弁護士:
外弁法の定めにより、外国法共同事業でなければ外国法事務弁護士をパートナーにすることはできません。

当事務所のウェブサイトでは日本法のパートナー弁護士と今回パートナーに就任した4名の外国法事務弁護士が、同じ職位として並んでいます。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所ホームページより

アンダーソン・毛利・友常法律事務所ホームページより

外国法共同事業ではない場合、日本法の法律事務所に所属する外国法弁護士の役割や肩書は非常に大きく制限され、上記のように日本法弁護士とパートナーという同じ職位として記載することは難しいと思います。弁護士業界に詳しい人しか気付かないことですが、そこには明確な制度の違いがあります。

今回パートナーに就任された4名の外国法事務弁護士の先生方は、どのような役割を担うのでしょうか。

前田弁護士:
これからはこの4名とも協力して事務所を運営していきます。パートナーの肩書きを持つ以上、事務所を発展させるための責任と義務を持ち、人事や予算、組織改革にも関わっていただきます。

組織運営にはどのような影響を与えると考えていますか。

前田弁護士:
私たちは多様性と一体性(Diversity & Inclusion)の強化が組織を強くすると信じています。外国法共同事業はそれを実現していくために必要なツールでもあります。

今後、外国法事務弁護士の人数をどの程度まで増やす計画ですか。

前田弁護士:
数年以内に20名ほど増員する計画は立てています。良い人材がいれば躊躇なく採用していきますが、人を増やすことが目的ではありません。

実際、私たちの取り組みを興味深く見てくださる方は非常に多く、すでに日本在住の外国法弁護士の方々から多数のコンタクトをいただいています。

日本で外国法事務弁護士としてキャリアを積んでいこう、と考えてくれる方が出てくることは嬉しいかぎりです。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 前田 敦利弁護士

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 前田 敦利弁護士

複雑化する顧客ニーズ、外資系事務所との競争激化 ポストコロナを見据えた戦略とは

「外国法共同事業」を開始した背景を教えてください。

前田弁護士:
この変化のタイミングを成長の機会と捉え、1年かけて議論を重ね「外国法共同事業」の開始を決定しました。

新型コロナウイルスの影響でグローバライゼーションは足踏みをしていますが、複数の国をまたいだクロスボーダー案件は確実に増えています。

海外においても日本企業が関わる複雑な背景を抱えた案件が爆発的に増えており、そういった案件に対応できる法律事務所が求められています。

従来私たちが持っていた日本法を主軸にした法律事務所という強みに加えて、国際的な案件を担う能力をさらに強化することがねらいです。

国際案件において体制を強化する必要を感じていたのですね。

前田弁護士:
日本企業が国際案件に求めるリーガルサービスを提供できていない、という自覚は以前からありました。

日本企業が海外で行うM&Aや大型のプロジェクトファイナンス案件が取れそうで取れない。外資系事務所に案件獲得競争で敗れてしまう。そんなジレンマを抱えていたことは事実です。

外国法共同事業となったことで、外国法事務弁護士がパートナーとして案件をハンドルすることができます。

たとえば、どのような案件での体制強化を考えていますか。

前田弁護士:
国際仲裁は体制を強化した分野の1つです。日本、シンガポール、ロンドンなど仲裁地は案件ごとに異なり、仲裁機関ごとに異なる仲裁手続きルールはありますが、使用する言語は英語であり、手続きやルールも共通化してきています。

英語をネイティブとして操り、国際案件の経験豊富な外国法事務弁護士と日本法の弁護士チームが一体となることで、日系企業のために世界中どこでも国際仲裁案件をハンドルできるようになります。

より良いサービスを日系企業の皆様に提供していきたいと考えています。

パートナーに就任した4名の経歴、専門分野、今後の取り組みに対する想い

マツナガ先生のご経歴、専門分野を教えてください。

マツナガ外国法事務弁護士:
ニューヨークで20年以上、日本でも14年弁護士をしています。2005年にUSのビンガム・マカッチェン・ムラセに入所し、2007年にビンガムの東京オフィスで外国法共同事業を経験しました。2015年に当事務所とビンガムが統合したことによって私も当事務所に入所しました。専門分野はクロスボーダーM&A、ビジネストランザクションです。

パートナーに就任され、どのような変化があると考えていますか。

マツナガ外国法事務弁護士:
ポイントは2つあります。1つは内部に与える影響力です。若手の弁護士にとって日本法弁護士ではない私がパートナーになることは、かなりポジティブなメッセージとなるはずです。

もう1つは依頼者に対してです。たとえば日本企業が海外企業を買収するようなクロスボーダーM&A案件の場合、私が英語で海外企業とやりとりし、当事務所の日本人弁護士が日本のクライアントに対応することができます。

このコンビネーションによって付加価値が高まり、依頼者に安心感をもたらします。外国法弁護士と日本人弁護士という2つの力を組み合わせることで当事務所とクライアント双方にとってwin-winの関係を築くことができます。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー レン マツナガ外国法事務弁護士

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー レン マツナガ外国法事務弁護士

日本企業にとっては安心感がありますね。ムシス先生のご経歴も教えてください。

ムシス外国法事務弁護士:
私は英国弁護士の資格を持っています。1995年にベルギー欧州委員会の競争当局で1年間研修を受け、イギリスの法律事務所に勤務しました。

2003年、日本に出向し、その後アメリカの法律事務所で4年間国際カルテルを担当。2008年に日本に戻ってきてからは、ずっと競争法を手がけています。専門分野は主に企業結合、国際カルテルです。

パートナーに就任された心境をお聞かせください。

ムシス外国法事務弁護士:
外国法共同事業となり、最初のパートナーになれたことに感動しています。

お客様が納得するパートナーに私たちがならないと、今後の事務所のマーケティングも難しくなります。

国際案件を手がけるパートナーとして精一杯頑張ることはもちろん、優秀な外国法の資格を持った弁護士が最初に希望する、インターナショナルな法律事務所を目指していきたいですね。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー バシリ ムシス外国法事務弁護士

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー バシリ ムシス外国法事務弁護士

内藤先生はいかがでしょうか。

内藤外国法事務弁護士:
私はイギリスで英国法の弁護士資格を取得して、2002年にロンドンの法律事務所に入所しました。2010年に同事務所の東京オフィスで勤務し、2018年から当事務所に所属しています。

専門領域はファイナンスです。世界中の電力や資源、エネルギー、インフラに関するプロジェクトファイナンス、アセットファイナンスを手がけてきました。

今後のファイナンスチームの方向性についてどのようにお考えですか。

内藤外国法事務弁護士:
コロナ禍でプロジェクトの遅延や事業の資金ショート、企業のアクイジションのビジネスに関連するファイナンスの相談が増えています。

国内企業が海外へ投資する案件だけでなく、海外企業も日本への投資機会を探っており、ファイナンシングの重要性も一層高まっています。

国内、海外のチームが連動してファイナンス部門をさらに伸ばせる機会を感じています。インバウンド、アウトバウンド含めてクロスボーダー案件をフルで対応できる体制を強化していきたいですね。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 内藤 央真外国法事務弁護士

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 内藤 央真外国法事務弁護士

それでは、屠先生のこれまでのご経歴を教えてください。

屠外国法事務弁護士:
2000年に上海の事務所で弁護士を始めました。2年後、日本に留学し、京都大学大学院で日本の民事訴訟法と国際倒産法を勉強しました。2006年に当事務所に入所し、今年15年目を迎えます。

どのような分野を専門とされていますか。

屠外国法事務弁護士:
日本と中国に関する案件は幅広く取り扱っています。会社の新規設立やM&A、事業撤退、倒産など企業のライフサイクルに関わること、コーポレート関連の案件やガバナンス、コンプライアンス、訴訟なども手がけます。

今の想いを聞かせてください。

屠外国法事務弁護士:
率直に、パートナーと名乗れることを嬉しく思います。

これまで外国法弁護士と一緒に仕事をしてきた経験を踏まえて、より多くの優秀な弁護士と手を組み国際事業をさらに発展させたい、という事務所の思いも強く伝わってきました。

当事務所は今後も、より多様性と包容力のある組織になっていくと期待しています。これは簡単なことではなく、志が高くなければ実現できません。

私自身、経営陣の先生方の期待を裏切らないよう、当事務所初めての外国法パートナーの一人として誇りを持ってより一層頑張っていきたいです。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 屠 錦寧外国法事務弁護士

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 屠 錦寧外国法事務弁護士

先生方がパートナーに就任されたことで、所内に変化はありますか。

内藤外国法事務弁護士:
外国法弁護士、特に若手・中堅の方々向けにコーポレート、ファイナンス分野の日本法に関する英語での研修プログラムを1年かけて作成し、今年から実施しています。

このような研修はイギリスの事務所でも経験してきました。若手だけでなく、経験を積んだ方でも最近の動向を常に把握し、勉強したうえでサービスを提供していく姿勢は重要です。

マツナガ外国法事務弁護士:
私が直接トレーニングをすることで若手弁護士の成長や、キャリアを描くうえでも大きな一歩となるはずです。

海外の弁護士が日本の法律事務所で挑戦する、新しいキャリア形成のきっかけにしたいと考えています。

前田弁護士:
これまでも私たちは多数の外国法弁護士を抱えて日本を代表する国際的な法律事務所であると自負してまいりましたが、今回開始した外国法共同事業の下でさらに国際化し、日系企業の様々なクロスボーダー案件を安心してお任せいただける体制になります。

特にアウトバウンドM&A、クロスボーダー・ファイナンス、国際仲裁案件などに経験豊富な外国法弁護士を採用し、日系企業の皆様のグローバル展開にお力添えさせていただきたいと考えております。

(文:枚田 貴人、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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