『法のデザイン』が法務業界にもたらしたインパクト

法務部

目次

  1. 『法のデザイン』出版からの3年を振り返る
  2. 本を出したことがキャリアの転機に
  3. 来るか?『法のデザイン2.0』
  4. 法律の議論は法律家の中で閉じないほうがいい

弁護士水野祐が『法のデザイン』を世に問うて3年。出版社フィルムアート社のご厚意もあり、法律書籍サブスクリプションサービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」への掲載が開始されました。これを記念し、新型コロナウイルス流行による自粛期間が開けた6月初旬、水野祐弁護士にリーガルデザインの今とこれからについて、お話を伺いました。
(聞き手:橋詰卓司)

水野祐(みずの・たすく)
法律家。弁護士(シティライツ法律事務所)。Creative Commons Japan理事。Arts and Law理事。東京大学大学院・慶應義塾大学SFC非常勤講師。グッドデザイン賞審査員。リーガルデザイン・ラボ。note株式会社などの社外役員。著作に『法のデザイン −創造性とイノベーションは法によって加速する』など。Twitter : @TasukuMizuno

橋詰卓司(はしづめ・たくじ)
衛星通信・放送業、人材業、スマホアプリ業の法務責任者を経て、現在は弁護士ドットコムクラウドサイン事業部にてマーケティングおよびリーガルデザインを担当。『【改訂新版】良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方』(技術評論社)ほか共著。Twitter : @takujihashizume

『法のデザイン』出版からの3年を振り返る

橋詰:
水野先生の著書『法のデザイン』が出てから3年経ちました。書店でもいまだに平積みで置かれ、法務パーソンに限らず広く読まれる本になったと思います。この3年を振り返ってみていかがでしたか。

水野弁護士:
おかげさまで、あの本でいう「リーガルデザイン」的な発想 1 で法務や事業・経営戦略を見直そうという動きが少しずつ生まれてきている、そんな手応えはあります。

お客様の守秘義務があるので言えないものがほとんどですが、新規事業に企画初期から並走するようなプロジェクトにアサインしていただいたり、役員あるいは経営企画からの依頼で事業戦略に法的視点を組み込むようなご依頼だったりが増えました。また、あるお仕事では、規約をWebだけでなく冊子などの様々なメディアで表現するような、そんな試みもありました。そうした仕事を通じて、他ではなかなかみられないような、法務とデザイナー/エンジニアとの共同作業を垣間みたりもできました。そういう部署間を横断したチームを立ち上げることがプロジェクトの端緒になることもあります。

クラウドサインさんとも、慶應義塾大学SFCリーガルデザイン・ラボでの研究 2 をご一緒させていただきました。あそこで扱った同意のリ・デザインの議論も、個人情報保護法、GDPR、クッキー法の整備などをきっかけに、ますます増えてきているように思います。

橋詰:
そして、シティライツ法律事務所としても、この3年でチームメンバーを増やしていらっしゃいます。

水野弁護士:
パートナーとしては健吾さん(平林健吾弁護士)と二人の期間がしばらくあって、2017年にマサさん(伊藤雅浩弁護士)が加わって新生シティライツになって、そして今や弁護士11人のチームになりました。

みんな単独でもやっていけるような弁護士ですし、お互い自由奔放にやっています。みんなそれぞれバラバラの方向を向いているようだけど、よくわからない謎の統一感もある、そんなイメージのチームにできたらいいですね。

橋詰:
直近では桶田大介先生も入所され、取り扱い法律分野の幅がさらに広がっています。こうなると、次に入所されるのがどちらの先生になるのか。俄然注目してしまいますね。

水野弁護士:
意中の人は何人かいて、お会いした時にはそういうお話もします。でも焦るものではないですし、ご本人にとっていいタイミングで来てもらえたら、うれしいなと思っています。

話は変わりますが、弁護士ドットコムさんもクラウドサインを中心に最近さらに注目度が高まっていますよね。

橋詰:
ありがとうございます。私も入社して3年になろうとしていますが、リーガルテックがようやく理解されはじめている、というように思います。

水野弁護士:
個人的には、先月発表されたLayerXさんとの業務提携 3 には関心があります。DX、特にスマートコントラクトあるいはスマートリーガルコントラクトについては、両社にぜひチャレンジしていただきたいなと期待しています。このあたりはリーガルデザイン・ラボと弁コムさんの共同研究でもよく話題にのぼっていましたが。

そうそう、LayerXさんといえば、Twitterでブロックチェーンやスマートコントラクトのニュースをおいかけていらっしゃるth_satさん。あの方はやばいですね。たぶんいま日本で一番スマートコントラクト周りに詳しい方なのではないでしょうか? 何者なんですか?

橋詰:
実は私も気になっていたのですが、中の人がどのような方かまでは知らないんです。弊社から、対談企画を持ちかけてみましょうか? 4

水野弁護士:
本当ですか? 今、th_satさんは会いたい人のトップ3に入っている方なので、もし実現していただけるのであればうれしいですね!

シティライツ法律事務所 水野 祐 弁護士

シティライツ法律事務所 水野 祐 弁護士

本を出したことがキャリアの転機に

橋詰:
今回、その『法のデザイン』を、弊社の法律書籍サブスリクプションサービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」で掲載させていただけることになりました。ありがとうございます。

水野弁護士:
いまだに評価をいただけてこうして声をかけてもらって、大変光栄です。こちらこそありがとうございます。

橋詰:
あの本がすごかったのは、未来予想がほとんどそのとおりになっているという点です。本の中に書いた事で、予想が大外れしたところってありましたでしょうか? ないような気がするんです。

水野弁護士:
どうなんでしょう? 確かにそんなに大外れしたものはないかもしれませんね。今の目で見ると、むしろ当たり前にすらなっちゃったというのはあります。

橋詰:
本書はもともと、レクシスネクシス・ジャパンさんの企業法務専門誌「BUSINESS LAW JOURNAL(以下、「BLJ」」の連載を書籍化したものでした。ちなみに、連載掲載時点では、反応はどうだったんですか。

水野弁護士:
無風です(苦笑)。何人かの方がブログで触れてくれていたくらいですかね。ほんとうに無風でした。レクシスネクシス・ジャパンさんにも、きっと腫れ物扱いされていたんじゃないかなぁ。当時、まだ新人のくせに、編集者さんとしても困った著者だったでしょうね…。もっと批判されることで議論を生み出したかったのですが、あんまり話題にもされませんでしたね。

橋詰:
そこまで無風の理由はなんだったんでしょうかね。

水野弁護士:
連載の時期では、ちょっと取り上げた話題が早過ぎたのかもしれません。あとは、BLJの読者って実践的な知識を求めている傾向があるので、ミスマッチだったかもしれないですね。でもBLJの連載がなければ書籍もなかったかもしれないので、感謝しています。

橋詰:
タイミングがここしかないというところで、法律家の書いた本としても相当売れましたよね。個人的には2〜3万部ぐらいいったのでは? と推測していました。

水野弁護士:
いやいや、全然そこまで売れないです。本の部数と顧問契約の数は数え始めると数字に囚われて苦しくなるので、あんまり真面目に把握しないようにしています(笑)。ただ、そんな数字にはなっていないのは間違いないです。できるだけ多くの人に読んでもらう、というタイプの本でもないですしね。届く人に届けばいい、そういう本だと思っていますし、こういう人に読んでもらいたいな、という人に届いている実感はあります。

橋詰:
水野先生の名刺代わりになっている部分もありますか。

水野弁護士:
「情熱大陸」のテレビ放送 5 より、意外に本のほうが自分が伝わっている感じがあるんですよね。法律家としてのキャリアにおいても、よい転機になったと思います。

僕から言うのはちょっと恥ずかしい話ですけど、読んだ方から感謝されることがあるんですよ。本を読んで世の中や法に対する見え方が変わったとか、法務や弁護士として自分の仕事観が変わったとか。あの本を読んで、けんすうさん 6 などの事業をやってくれている人が実際にサービスを考えてくれたり、とか。そんな声や反響をいただけるのはうれしいです。

橋詰:
私もその一人です。私的推薦法律書籍をまとめた「法律書マンダラ」の真ん中の、法務パーソンなら絶対買うべき本の中にいれさせてもらっています。

水野弁護士:
あれ、私も見ましたが、さすがにちょっとおそれおおいというか…。ありがたいですが、きっとみなさんの心の中で総ツッコミを食らっていると思います。ムカついている人もいるかも(笑)。

橋詰:
私がオススメしているのは、「こういうふうに法律を使って物事を捉える世界もあるんだよ」というその一点なんですけどね。もちろん、シュアーな仕事も法律の世界の大事な仕事なので、別にあの一冊だけを真ん中において崇めているわけではないです。

水野弁護士:
そうですよね、ありがとうございます。あとは絶版にならない程度に、しぶとく、知る人ぞ知る奇書として漂っていけるといいんですが(笑)。

水野 祐 弁護士

来るか?『法のデザイン2.0』

橋詰:
そこで、今日のインタビューの核心に入りたいと思います。ずばり、3年たって、あの本を書き直すお話ってないんでしょうか。

水野弁護士:
実は、この第6刷のタイミングで、『法のデザイン2.0』的なものを書かないか? という話はあるにはあります。レッシグの『CODE2.0』のようなイメージですかね。けれども、率直なところとしては、いまはあの本の各論部分をアップデートすることよりは他に時間を使いたいことがある、という気持ちですね。

橋詰:
3年前に3年後のことを正確に見通していた水野先生が、今度は10年後を見通したらどんな視界になるのか、読んでみたいですねぇ。

水野弁護士:
未来予測は法や法律家にとって本来は食い合わせがよくないと考えられてきたわけです。でも、本当にそうだろうか? 未来志向のマインドを持って法を眺めてみたらどうだろうか? 「デザイン」という言葉で法をくるんでみたら、これまでにない法の可能性が生まれるんじゃないか? というのが、あの本の大きなメッセージの一つでした。その提案はある程度伝わったと思いますし、私も含めて各自が実践していく時期なんじゃないでしょうか。

橋詰:
弁護士 水野祐としては、いつも何年後に視点をおいて仕事をしているのですか。クライアントの期待は、数年後を正確に見通すロイヤーでいてほしい、そう思っているような気がしますが。

水野弁護士:
それ、メディアは期待しているけど、クライアントはそこまで期待してないですよ(笑)。目の前のこれを解決してくれよと、現実的なソリューションを求められていると感じますけどね。弁護士として仕事をもらっている以上、そこからは逃げられないし、逃げてはいけないでしょう。

橋詰:
自分にプレッシャーをかけたり気負ったりはされませんか? 「もっと未来を語るロイヤーにならなければ」みたいな。

水野弁護士:
僕に事業戦略のコンサル的なことを依頼するクライアントはいます。特に大企業は未来志向の新規事業に関する依頼が多いかもしれないです。でも、それ以外、特にスタートアップなどはお金が発生する以上、現実の問題解決を期待されるケースがほとんどです。唯一、社外役員を依頼してきてくれるスタートアップは未来志向の部分も含めて評価してくれているかもしれませんけど。

なので、フューチャリストにならねば、という気負いはないですね。でも、自分としてはまだ種まきフェーズというか、投資フェーズだと捉えているので、興味をもった新しい分野については貪欲に時間を投資して、学んでいます。そういう焦りみたいなものはあるかもしれないです。周りから見れば、ほとんど同じことなのかもしれませんが(笑)。

橋詰:
近年は政府委員として活動される機会も多かった印象です。

水野弁護士:
『法のデザイン』は、規制改革を担う行政の人たちも読者として想定して書いたのですが、官僚受けはめちゃくちゃよかったですね(笑)。官僚は、未来志向で法を扱う職能の最たる存在なので、『法のデザイン』での議論は理想主義すぎると突き放されるかと思ったのですが。

一方で、政府の委員会等に呼んでいただく機会も増えましたが、やってみた結果、やっぱり自分はボトムアップのほうが向いてるなと思いはじめています。見た目も、キャラも、やっぱり合わないなあと(笑)。

水野 祐 弁護士

法律の議論は法律家の中で閉じないほうがいい

橋詰:
あおるつもりはないのですけれど、ちょっと順風満帆すぎませんか? ここまではすべて予想通りと言わんばかりに飄々とされていて…。「最近はこの問題に危機感を感じて、夜も眠れません」みたいな話がまったく聞けてない気がして、このままでは帰れないです(笑)。

水野弁護士:
全然そんなことないです。むしろ日々、失敗ばかりです(笑)。

たしかに『法のデザイン』を書いた頃は、個別の法分野や論点に興味があって、それらと格闘しているうちに、それらに通底する一つの流れが見えてきて、総論を書いた、という流れがありました。でも、今は個別の法分野や論点について、「次にくるのはこれだ」みたいな言い方はあまりしないようにしています。

とはいえ、そういう言い方はしていないけど、それでもそこそこ雄弁に語っているほうではありますから、十分色々言っているほうではあると思うんですけど(笑)。

橋詰:
ヒントは、WIRED連載の「社会契約」でしょうか。

水野弁護士:
WIREDから連載を依頼されて、いま興味がある社会契約をテーマにしてもいいのであればぜひ、と言ったら、そのまま採用してくれて 7

ルールメイキング的なことをここ数年やってきて、政府のなかを近くから見れば見るほど、抜本的な改革は無理ゲーだなと。これは政府の人たちが無能だというわけじゃなくて、むしろ彼らはすごくがんばっているんだけど、変えられない構造的な問題があると感じました。あとは、さっきも言ったように、そういうところで立ち回れる能力が自分にないことにようやく気づいた、という(笑)。

むしろ、今の世の中の法を含む社会制度に対する不信をどうにかできないかな、という思いがあります。制度に対する信頼が著しく損なわれている。いかにして法を含む制度に対する信頼を回復するか、いかに「自分ごと」にできるか。そこでポイントとなる概念が社会契約です。

そもそも「契約」という説明原理が日本社会に対して適合的かというという問いもあるんですが、社会契約的な概念が間違いなく日本でも世界でも重要なテーマになると思います。バズワードにしたいわけじゃないけれど、そうなるだろうなとは思っています。

橋詰:
水野先生の中で、結論があるわけじゃないんですね。

水野弁護士:
決して「置きに行っている」わけではないです。何回連載とかも決まってないですし。むしろWIREDという未来志向な雑誌の、その号の特集に緩やかにひもづけるような形で書かせてもらうような工夫をしています。

社会契約のことを考えていると、「契約」ってそもそもなに? というところに立ち返ります。最近の話題にひきつけると、GDPR的な同意至上主義と、それに対する認知系とか行動経済学的なところからの自由意志に対する批判や、それこそクラウドサイン的な電子署名の根拠もそうだし、もっというとスマートリーガルコントラクトで合意形成のあり方、コミュニケーション的な面とか、社会を構成するパッチワークの一要素の作り方自体も、今のテクノロジーに合わせてリ・デザインできるんじゃないか、社会契約とかそれ以外のことを考え直せるんじゃないかという感覚をもっています。

自律性・意思決定・合意形成というものが問われなおすだろうと。それをどう集合的な意思決定とか社会の秩序までを敷衍させるかは、これから連載のなかで言語化していければと思っています。

橋詰:
クラウドサインもそういう未来にもっていきたいんですけど、もっていこうとしても、社会がうざがるんだろうなぁって思ってしまうんですよね。

水野弁護士:
うざがるでしょうね(笑)。たとえば二段の推定を疑うとか、遠回りに感じちゃうんでしょうね 8。でも僕は、一番面白いところは、電子署名の浸透を機に二段の推定を問い直すところだと思いますけど。紙とは何か? デジタルとは何か? 契約とはなにか? 自由意思とか意思決定とはなにか? という本質的な問いです。それはやるべきだと思いますよ。

橋詰:
橘(大地/弁護士ドットコム クラウドサイン事業部長)ともその点についてはよく話しをします。私もせっかちなので、普段はビジネスを進めるため「それはもう無視して、先にいっちゃいましょう」と言いながら、ロビイングのシーンで法律家を前にすると、二段の推定の土俵についつい乗って議論してしまったり。皆さん金科玉条のごとく扱われますから…。

水野弁護士:
うーん、もちろん現実問題として法律論は大切なんですが、それと同時に、なんか法律家がどうとかこだわらずに、もっと、本質的な議論にエンジニアでもデザイナーでも思想家でも哲学者でも巻き込んでみたらいいんですよ。というか、そういうことをしないと次のフェーズには進めないと思います。

…まあこういうことを話していると、やっぱり自分は、人一倍他分野との関わりが好きな変わったローヤーなのかもしれませんね。

(取材・撮影・文:橋詰卓司)

  • 法のデザイン - 創造性とイノベーションは法によって加速する
  • 著:水野祐
  • 定価:本体2,200円+税
  • 出版社:フィルムアート社
  • 発売年:2017年
  • 「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」で読む

  1. 編注:水野弁護士は著書『法のデザイン』でリーガルデザインの意味について次のように述べている。「このような情報化社会において、法律や契約を私たち私人の側から主体的にデザイン(設計)するという視点が重要になる。『リーガルデザイン(法のデザイン)』とは、法の機能を単に規制として捉えるのではなく、物事や社会を促進・ドライブしていくための『潤滑油』のようなものとして捉える考え方である」(『法のデザイン』フィルムアート社、2017、47頁参照) ↩︎

  2. サインのリ・デザイン「『コントラクトギルド』を結成し契約のリ・デザインを加速します」(2018年4月6日) ↩︎

  3. 弁護士ドットコム プレスリリース「弁護⼠ドットコムが LayerX と業務提携 クラウドサインと共同で⼤企業・⾏政機関のDXを推進」(2020年5⽉13⽇) ↩︎

  4. 本対談の収録後に水野弁護士とth_satさんの対談が実現し、橋詰が編集長を務める「サインのリ・デザイン」で記事が公開されている。サインのリ・デザイン「LayerX × CITY LIGHTS LAW特別対談—スマートリーガルコントラクトの近未来」(2020年7月9日)。 ↩︎

  5. MBS 情熱大陸「水野 祐弁護士 その表現はアウト?セーフ?それとも…?クリエイターの“自由”を守り、表現を加速させる異色の若手弁護士に密着!」(2016年5月1日放送) ↩︎

  6. 本名・古川健介(ふるかわ・けんすけ)。学生コミュニティー「ミルクカフェ」の立ち上げやハウツーサイト「nanapi」の運営を経て、現在はマンガサービス「アル」の代表取締役。 ↩︎

  7. 編注:WIREDの連載「なぜいま社会契約なのか:水野祐が考える新しい社会契約〔あるいはそれに変わる何か〕序章」で水野弁護士は「社会契約とは、わたしたちが生まれながらにして、「この社会を信頼し、社会が決めた制度やルールの下で生きていきますよ」という「契約」にサインすることである(という設定になっている)。」としたうえで、「そもそもどんなルールにサインしているかわからない、ルールに意見が言えない、貧富により適用されるルールが異なる、すでに時代遅れになったルールにいつまでも拘束される・・・このような概念が、近年のルール、制度、そして社会に対する強く深い不信につながっている。」と現状の問題を提起し、ホッブズやヒュームといった哲学的なアプローチとは異なる、日々行なっている法律や契約の設計といった「法のデザイン」の集積が新しい社会契約を構成するのではないか、と仮説を立てて論じている。 ↩︎

  8. 編注:橋詰は「サインのリ・デザイン」で二段の推定について度々取り上げ、問題提起している。 「電子契約でハンコの「印影」が法的に不要なのはなぜか」 「代表者以外の従業員による押印・電子署名の有効性」など ↩︎

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