改正資金決済法・金商法等によりブロックチェーン業界はどう変わるか
第4回 資金決済法・金商法等の改正がブロックチェーン業界に与える影響
ファイナンス
シリーズ一覧全4件
目次
令和2年5月1日施行の改正資金決済法・金商法等と政令・内閣府令等は、ブロックチェーン業界において議論されてきた様々な事象・ビジネスモデルについて一定の解を与えるルールメイキングの集大成であり、大きな意味を持ちます。まだ明確な解が出ていないステーブルコインの論点等、実務の中での解釈に委ねられる部分があるものの大きな枠は示されたといえます。
この連載では、改正の全体像を、①法令等改正までの経緯、②法令等の概要と留意点、③ブロックチェーン業界に与える影響にわけて、少しずつブレイクダウンしながら、なるべくわかりやすく解説します。
本稿では、今般の法令等改正によるブロックチェーン業界への影響について説明します。
ブロックチェーン業界に与える影響
今回の改正がブロックチェーン業界に与える影響を代表的な業種・論点ごとにブレイクダウンして以下では簡単に整理したいと思います。
暗号資産交換業者
令和2年5月1日から改正資金決済法および改正金融商品取引法が施行されることに伴い、暗号資産交換業者においては、内閣府令に定められた方法による利用者の金銭の信託、利用者の暗号資産の分別管理、履行保証暗号資産 1 の分別管理などの対応が必要となります。
これに加えて、暗号資産を原資産とし、または暗号資産に関する指標を参照するデリバティブ取引(以下単に「暗号資産デリバティブ取引」といいます)を業として行う暗号資産交換業者については、後述1−2.のとおり第一種金融商品取引業者としての対応も必要となります。改正資金決済法によりカストディ業者も暗号資産交換業者に該当するため、カストディ業者については後述1−3.のとおりの対応が必要となります。
また、これら改正法の施行に伴い、一般社団法人日本暗号資産取引業協会(以下、「JVCEA」といいます)は、自主規制規則の改正および制定を行っており、暗号資産交換業者においては、各種規程類の改定、新設等の対応が必要となります。
実際に、GMOコイン株式会社、コインチェック株式会社などは、令和2年5月1日より各種規程類の改定、新設等を実施しています。
暗号資産デリバティブ業者
本連載第3回 1.のとおり、これまで暗号資産デリバティブ取引については法の規制がかかっていなかったため、暗号資産交換業者が暗号資産売買等の一環として取り扱うケースが多数ありました。
しかし、法改正によって暗号資産デリバティブ取引を業として行うことは金融商品取引業にあたることが明確に定められ、第一種金融商品取引業者としての登録が必要になる等、暗号資産デリバティブ取引については厳しい規制がかかることになりました。実際に、これまで暗号資産交換業者としてのみ登録されていた株式会社DMM Bitcoin 2 やGMOコイン株式会社 3 などは、第一種金融商品取引業者登録のプレスリリースを公表しています。
このように、既に暗号資産デリバティブ取引業界は本改正に基づく適切な業務運営に向けて動き出していますが、いわゆるデリバティブプロに関する適用除外規定から暗号資産デリバティブ取引が除外されている点(金融商品取引法施行令1条の8の6第1項2号)や証拠金規制としてレバレッジ2倍が上限とされた点(改正後の金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「業府令」といいます)117条1項47号から50号、同41号、42号)については多くの意見が出されました(金融庁内閣府令案等パブコメ 4 No60~64、68~123)。
これらのなかには、国内リクイディティプロバイダーが海外リクイディティプロバイダーよりも不利に扱われることにより国内市場の縮小を懸念するものや(金融庁内閣府令案等パブコメNo63)、レバレッジ規制による取引量の減少を懸念するもの(金融庁内閣府令案等パブコメ83、84)等、業界の悲鳴とも取れる意見が散見されます。
今後、このような業界との認識の相違を解消しつつ、国内の健全な市場の発展に向けた適切な規制の形成が望まれるところです。
暗号資産カストディ業者
利用者の暗号資産を管理し、利用者の指図に基づく利用者が指定するアドレスに暗号資産を移転させる、いわゆる暗号資産カストディ業務は基本的に暗号資産交換業に該当し、カストディ業者は暗号資産交換業者としての登録をする必要があります。
本連載第1回の4、第2回の1 のとおり、財産的要件を満たす必要があることや利用者の保護等に関する措置、利用者財産の保全に係る措置を講じる必要があるなど、暗号資産交換業者として遵守すべき事項は厳しく、暗号資産カストディ業者は、改正法の規制を遵守できる体制を整えて暗号資産交換業者としての登録を受けるか、暗号資産交換業者としての登録を受けることを断念してサービスの停止または変更をするという判断をすることになります。これまで、暗号資産カストディ業務は、比較的小規模のスタートアップであっても特別の規制を受けないことから参入が可能といえましたが、今回の法改正によりサービス継続を断念せざるを得ないカストディ業者もありました。たとえば、株式会社VALUがサービス「VALU」内において暗号資産カストディ業務を行っていたものの、改正法施行前の2020年1月時点で、今回の法改正を原因としてサービス継続を断念し、同年3月末に同サービスを停止したとのリリースがなされています 5。
なお、経過措置の規定により、施行日から6ヶ月が経過するまで(令和2年11月30日まで)は、施行の際に管理している暗号資産と同じ種類の暗号資産については、登録を受けずに業務を継続できます(改正法附則2条1項)。また、施行日から6か月が経過するまで(令和2年11月30日まで)に暗号資産交換業者としての登録申請をすれば、登録申請に対する処分がなされるか、施行日から1年6か月が経過するまで(令和3年11月30日まで)は、同様に従前の業務を継続することができます(改正法附則2条2項)。そのため、暗号資産交換業者としての登録を受けるどうか検討している状況にある会社も、これらの経過措置に基づき検討期間を延ばすことは可能です。ただし、これらの経過措置の適用を受けるために、令和2年5月14日までに会社の商号および住所を届け出ている必要があることに留意が必要です(改正法附則3条、金融庁「暗号資産交換業・金融商品取引業の経過措置に係る届出について」(2020年4月3日))。
セキュリティトークン発行事業者
改正金商法において「電子記録移転権利」という概念が創設されましたが、セキュリティトークンであるからといって必ず電子記録移転権利に該当するわけではなく、金商法2条2項各号に掲げる権利をトークン化したもののみが電子記録移転権利に該当することには注意が必要です(改正金商法2条3項柱書)。
(1)電子記録移転権利の発行
電子記録移転権利に該当するセキュリティトークンを発行する事業体は、様々な金商法上の規制に留意する必要がある一方で、電子記録移転権利を表示するトークンについては暗号資産から除かれることが明示された(改正資金決済法2条5項ただし書)ため、資金決済法上の規制に留意する必要はありません。
電子記録移転権利に該当するセキュリティトークンを発行する事業体は、まず、金商法上の開示規制に留意する必要があります。セキュリティトークンの取得勧誘に際して、私募の要件(上記3(2)ウ(ア))を満たさない限り、有価証券届出書の提出義務等を課されます(改正金商法4条1項)。
また、金商法上の業規制にも留意する必要があります。業として電子記録移転権利の売買、売買の媒介等、募集・私募の取扱い等を行う場合には、第一種金融商品取引業の登録が必要になります(改正金商法28条1項1号、29条)。また、業として行う自己募集・私募については、第二種金融商品取引業の登録が必要です(改正金商法28条2項1号、29条、2条8項7号ト、改正金商法施行令1条の9の2第2号)。
(2)有価証券を表示したトークンの発行(電子記録移転権利に該当しないもの)
電子記録移転権利に該当しないトークンを発行する場合についても、表示される権利が金商法上の有価証券に該当する場合には、当該権利の種類に応じて金商法が適用されます。たとえば、株式や社債をトークン化する場合は、一項有価証券の規制が適用されることになります。
このような、有価証券に該当する権利を表示するトークンであるものの電子記録移転権利に該当しないものについて、改正資金決済法上の暗号資産に該当し得るかどうかに関しては法令の文言のみからは明らかではありませんでした。しかし、金融庁内閣府令案等パブコメNo1~3番への回答において、「電子記録移転有価証券表示権利等」が資金決済法の規制対象とならない旨が示されており、「電子記録移転有価証券表示権利等」とは改正金商法2条2項のみなし有価証券をトークン化したものを指す(改正業府令1条4項17号、6条の3)ため、改正金商法2条2項のみなし有価証券をトークン化したものについては、資金決済法の規制対象とはならないことになります。
(3)有価証券以外の権利を表示したトークンの発行
セキュリティトークンとしては、電子記録移転権利に該当せず、かつ有価証券に該当しない権利をトークン化したものも想定されます。たとえば、固定金利の貸付債権のトークン化がこれに該当します。こうした場合については、有価証券に該当しない以上金商法の規制は適用されないものの、改正資金決済法上の暗号資産に該当する可能性はあり、これに該当する場合は、発行者は暗号資産交換業の取得が必要になり得るので注意が必要です。
ステーブルコイン
(1)ステーブルコイン発行に関するアメリカと日本の状況
ステーブルコインは、以下の3種に分類されています。
- 法定通貨担保型(米ドルにペッグされているGemini dollar(GUSD/ジェミニ・ダラー)等)
- 暗号資産担保型(ETH(イーサリアム)を担保にしたMakerDAO(DAI/ダイ)等)
- 無担保型(シニョレッジ・シェアによるコントロールを行うBasis(ベーシス)等)
日本では、大手銀行がステーブルコインを発行する計画が伝えられていたり、KDDIグループとディーカレットのデジタル通貨 6、LCNEM Cheque 7 の事例が報道されていますが、現時点で本格的に立ち上がった事例は存在しないものと考えられます。
(2)令和2年5月1日施行法令等の影響 - 暗号資産か為替取引かの論点
今回の法令等の施行では、大きな影響を受ける点はないものの、引き続き検討を要する論点が残っています。
ステーブルコインは、法令等の改正前から、その取引を暗号資産の取引として規制するか、為替取引として規制するかが問題となってきました。
ステーブルコインが改正資金決済法上の「暗号資産」(改正資金決済法2条5項各号)に当たるとすれば、ステーブルコインを業として交換等する取引所等は、「暗号資産交換業」(改正資金決済法2条7項)の登録が必要となり、犯罪収益移転防止法の特定事業者として本人確認の義務等が課されます。
一方で、ステーブルコインの取扱いが「通貨建資産」(改正資金決済法2条6項)として暗号資産から除外され、送金としての「為替取引」に用いられるものであると考えられるのであれば、銀行法・資金決済法上の銀行業・資金移動業に当たり、これらの登録または免許が必要となります(下記事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果(以下「金融庁事務ガイドラインパブコメ」といいます)回答も参照)。この場合、100万円以下のステーブルコインの移動については資金移動業の登録が必要となり(改正資金決済法2条2項、37条、資金決済に関する法律施行令2条)、100万円を超えるステーブルコインの移動については銀行業の免許が必要となることになります(銀行法2条1項、2項2号、4条1項)。
以上のとおり、ステーブルコインが「暗号資産」または「通貨建資産」に該当するかは今回の法令等の改正前から生じている未解決なものではありますが、個別のケース毎に検討をすることになります。ルールの明確化のため、今後の実務の集積が期待されます。
「たとえば、トークンの発行者と利用者との間の契約等により、発行者等が当該利用者に対して法定通貨をもって払い戻す等の義務を負っている場合、当該トークンは、原則として、当該発行者が「本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行が行われることとされている資産」に該当すると考えられますので、資金決済法第2条第6項に規定する通貨建資産に該当し、同法第2条第5項に規定する仮想通貨には該当しないと考えられます。」
(「「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の一部改正(案)」に対する、金融庁「パブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」(令和元年9月3日)回答No5)
(3)Libraについて - 世界的な金融規制当局の影響による計画の変更
Libraについても、令和2年5月1日施行法令等の影響は、上記と同様です。
なお、Libraの動向としては、世界的な金融規制当局の影響を受け、令和2年4月16日に方針の大転換がありました。もともと一種のステーブルコインとされていたLibraは、複数の通貨の「通貨バスケット」をもとにその価値を算定することになっていました。しかし、各国の金融監督当局は、国境を跨いで流通が見込まれるLibaraが先進国、後進国問わず、中央銀行の力を弱めることになりかねないとして警戒を強めていました。そうした懸念に対応する形で各国の法定通貨ごとに価格が連動する個別通貨連動型の複数のLibraを発行する方向で計画が変更されています。具体例としては、ドルだけを裏付けにした「リブラドル」のほか、「リブラユーロ」や「リブラポンド」があげられています。
Libraについては、方針の大転換によって、当初の理想・理念は後退してしまってはいますが、当初の計画をもとにしたLibra等に関する考察については、「Facebookが発表したLibraサービスの法的性質、今後のブロックチェーン業界の展望とは?」もご参照ください。
ICO・IEO
(1)日本におけるICO・IEOの現状
ICO(Initial Coin Offeringの略称)とは、一般に「新規に仮想通貨を発行し、その販売によって資金を調達する方法」、IEO(Initial Exchange Offeringの略称)とは、「新規に仮想通貨を発行する主体が、その販売を第三者である仮想通貨交換業者に委託することで資金を調達する方法」とされています。
ICO・IEOについてのルールメイクについては、紆余曲折があり 8、2017年末頃より、資金決済法における暗号資産規制のもとで実施されるべきという整理に落ち着いています。
なお、ルールとしては上記の整理となったものの2017年末頃から現在に至るまで、日本において適法に行われたICO・IEOは実務上存在しない状況となっています。
(2)令和2年5月1日施行法令等の影響 - JVCEAの自主規制規則がポイント
今回の法令等の施行では、暗号資産交換業の取り扱う暗号資産の名称等の変更に係る届出が、事前届出に変更された以外には、ICO・IEOに対して大きな影響を及ぼすものはありません。上記のとおり、既に2017年末頃より、ICO・IEOは、資金決済法における暗号資産規制のもとで実施されるべきという整理に決着していたからです。
今回の法令等の施行前である2019年9月27日に、金融庁認定の自主規制団体であるJVCEAは、「新規仮想通貨の販売に関する規則」および「新規仮想通貨の販売に関する規則に関するガイドライン」を制定し、同日より施行することを発表しています。これは、ICO・IEOの審査基準を明確化するものとなります。
これまでは、新規仮想通貨の販売方法であるICOおよびIEOの実施に当たり、審査基準そのものが存在していませんでしたが、これらの自主規制規則制定により、新規仮想通貨の発行者に確認すべき事項、同仮想通貨の購入者に対して公表すべき事項等が明確に示されることになりました。
マイニングプール
改正資金決済法においていわゆるカストディ業が暗号資産交換業に該当することとされたため(改正資金決済法2条7項4号)、マイニングプール運営事業がこれに該当しないかが問題となります。マイニングプールとは、参加者の計算資源を集約して仮想通貨のマイニングを行い、これにより得られたマイニング報酬を参加者に分配する仕組みをいいます。マイニングプールがマイニングに成功した場合に、暗号資産ネットワークからマイニング報酬が得られますが、このマイニング報酬が参加者に分配される前に一旦はマイニングプールに保持される仕組みが取られることが多く、これを捉えて参加者の暗号資産をプール運営者が管理しているといえ、カストディ業にあたるのではないかという点が問題になっています。
「他人のために暗号資産の管理をすること」という法令上のカストディ業の定義からはマイニングプールの運営がこれに該当するかは明らかではなく、またパブリックコメントにおいてもマイニングプールに関するコメントはなかったため、マイニングプール運営事業がカストディ業に該当するかどうかについて、個別に判断すべき論点といえます。
この問題については今後の議論の進展が望まれるところですが、マイニングプールのカストディ業該当性を考察するにあたっては、マイニングプール運営事業者は参加者の暗号資産を管理しているといえるのか(事業者自身に帰属する暗号資産を参加者に分配するとはいえないか)、またカストディ業を暗号資産交換業に含むこととした目的・趣旨に照らして、マイニングプール運営事業も規定対象に含まれると考えるべきなのかどうかといった各点に留意しつつ、また個別のマイニングプールの仕様、運用、利用規約等を考慮したうえで、慎重な検討が求められると考えられます。
ブロックチェーンゲーム
(1)日本におけるブロックチェーンゲームの現状
日本におけるブロックチェーンゲームとして、My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)、Etheremon(イーサエモン)、Crypto Spells(クリプトスペルズ)、くりぷ豚等があげられます。これらのゲームジャンルはRPG、育成シミュレーションゲーム、カードゲームと多岐にわたりますが、いずれもゲーム内のアイテムにおいて、ETH(イーサリアム)に由来する規格の1つであるERC721等により発行された非代替性トークン、すなわちNFT(Non-Fungible Tokenの略称であり、以下単に「NFT」といいます)が含まれていることが特徴的です。
(2)令和2年5月1日施行法令等の影響 - 暗号資産該当性および電子記録移転権利該当性
ブロックチェーンゲームの法的論点として、改正前はゲーム内のアイテムの「仮想通貨」該当性が主要な検討事項となっておりました。
なお、ゲーム内のアイテムが仮想通貨に該当する場合、ゲーム内アイテムをプレイヤーに販売し、日本円や仮想通貨を対価として受け取るゲーム運営事業者は、暗号資産交換業者としての登録をしなければなりません(改正資金決済法2条5項)。
今回の改正により、これまでの「仮想通貨」該当性と同様に①改正資金決済法上の「暗号資産」該当性を検討することに加えて、②金融商品取引法上の「電子記録移転権利」該当性も検討する必要性が生じました。
なお、ゲーム内のアイテムが電子記録移転権利に該当するときは、ゲーム内アイテムをゲーム運営事業者自らが発行して販売する場合、原則として当該事業者は第二種金融商品取引業の登録を受けなければなりません(改正金商法28条2項1号、29条、2条8項7号ト、改正金商法施行令1条の9の2第2号)。また、ゲーム運営事業者以外の第三者が発行するトークンをゲーム運営事業者が販売する場合、原則として当該事業者は第一種金融商品取引業の登録を受けなければなりません(改正金商法28条1項1号、29条)。
さらに、上記に加えてゲーム内アイテムの発行者は、販売を行う際に原則として、私募の要件(本連載第3回1−3.(1))を満たさない限り、有価証券届出書の提出義務等を課されます(改正金商法4条1項)。
①について、ゲーム内のアイテムが、NFTとして、決済手段等の経済的機能を有しないのであれば、当該アイテムは、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値」(改正資金決済法2条5項1号)(いわゆる「1号暗号資産」)に当たらず、かつ「不特定の者を相手方として前号に掲げるもの(いわゆる1号暗号資産を指す)と相互に交換を行うことができる財産的価値」(同項2号)(いわゆる「2号暗号資産」)にも当たらないとして「暗号資産」に該当しないと考えられます。この解釈は、これまでのNFTの「仮想通貨」該当性を否定する下記金融庁事務ガイドラインパブコメNo4の解釈と同趣旨です。
「例えば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。」
(「「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の一部改正(案)」に対する、金融庁「パブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」(令和元年9月3日)回答No4)
②について、たとえば、ユーザーが保有しているのみで配当等の権利収入が得られるゲーム内アイテムであるような場合、当該アイテムは「電子記録移転権利」として扱われ、上記の金商法上の規制に服する可能性が生じます。「電子記録移転権利」に該当する否かは、ゲーム内での仕様態様も含めた個別のケース毎に検討をすることになりますので、今後の実務の集積により、「電子記録移転権利」該当性の範囲が明確になることが期待されます。
その他
その他古物商を用いた新しい暗号資産市場、電力、電子契約等に関するビジネス領域で、ブロックチェーン技術を用いた新しいサービスが模索されていますが、その点のリーガルスキームについては、今後検討をしたうえで公表をさせていただければと考えています。
-
利用者の暗号資産のうち、利用者の利便の確保および暗号資産交換業の円滑な遂行を図るために必要なものとして内閣府令で定める要件に該当する暗号資産と同じ種類および数量の暗号資産をここでは「履行保証暗号資産」といいます。 ↩︎
-
株式会社DMM Bitcoin「金融商品取引業者(第一種金融商品取引業)登録完了についてのお知らせ」(2020年5月1日、2020年5月22日最終閲覧) ↩︎
-
GMOコイン株式会社「第一種金融商品取引業者登録のお知らせ」(2020年5月1日、2020年5月22日最終閲覧) ↩︎
-
本稿では、金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(令和2年4月3日)を「金融庁内閣府令案等パブコメ」と表します。 ↩︎
-
株式会社VALU「VALUサービス終了のお知らせ」(2020年3月31日、2020年5月22日最終閲覧) ↩︎
-
KDDI株式会社「仮想通貨交換事業者 ディーカレットへの出資」(2019年7月11日、2020年5月22日最終閲覧) ↩︎
-
株式会社LCNEM「LCNEM、ブロックチェーン上の新型電子マネー(いわゆるステーブルコイン)の新サービスを発表」(2019年4月17日、2020年5月22日最終閲覧) ↩︎
-
詳細については、ICOで調達する際の留意点や弊所拙書である『ブロックチェーンビジネスとICOのフィジビリティスタディ』(商事法務、2018)参照 ↩︎

法律事務所ZeLo・外国法共同事業
- コーポレート・M&A
- IT・情報セキュリティ
- 人事労務
- 知的財産権・エンタメ
- 事業再生・倒産
- ファイナンス
- 訴訟・争訟
- ベンチャー

法律事務所ZeLo・外国法共同事業

法律事務所ZeLo・外国法共同事業

法律事務所ZeLo・外国法共同事業