改正資金決済法・金商法等によりブロックチェーン業界はどう変わるか

第2回 暗号資産交換業者による広告の表示方法や禁止行為、利用者への情報提供、経過措置に関する留意点

ファイナンス

目次

  1. 暗号資産交換業に係る制度整備 - 暗号資産交換業者の広告の表示方法、禁止行為、利用者に対する情報の提供その他利用者保護を図るための措置、利用者の金銭・暗号資産の管理方法等、暗号資産交換業者の業務に関する規定を整備する
    1. 広告・勧誘に関する規制
    2. 利用者の保護等に関する措置
    3. 利用者財産の保全義務等
  2. 暗号資産交換業に係る制度整備 - 取引時確認が必要となる取引の敷居値の引下げを行う
  3. 暗号資産交換業に係る制度整備 - 経過措置

 令和2年5月1日施行の改正資金決済法・金商法等と政令・内閣府令等は、ブロックチェーン業界において議論されてきた様々な事象・ビジネスモデルについて一定の解を与えるルールメイキングの集大成であり、大きな意味を持ちます。まだ明確な解が出ていないステーブルコインの論点等、実務のなかでの解釈に委ねられる部分があるものの大きな枠は示されたといえます。

 この連載では、改正の全体像を、①法令等改正までの経緯、②法令等の概要と留意点、③ブロックチェーン業界に与える影響にわけて、少しずつブレイクダウンしながら、なるべくわかりやすく解説します。

 本稿では、暗号資産交換業者による広告・勧誘や利用者の保護等に関する規制、および暗号資産交換業に関する経過措置などについて説明します。

暗号資産交換業に係る制度整備 - 暗号資産交換業者の広告の表示方法、禁止行為、利用者に対する情報の提供その他利用者保護を図るための措置、利用者の金銭・暗号資産の管理方法等、暗号資産交換業者の業務に関する規定を整備する

 改正資金決済法において、暗号資産交換業者の広告等に関して、主として以下のとおりの変更がされています。以下それぞれ概要を説明します。

  1. 広告・勧誘に関する規制
  2. 利用者の保護等に関する措置
  3. 利用者財産の保全義務等

広告・勧誘に関する規制

(1)広告等に関する表示義務

 改正資金決済法においては、暗号資産交換業者は、その行う暗号資産交換業に関して広告をするときは、以下の事項を表示しなければならないとされています(改正資金決済法63条の9の2)。

  1. 暗号資産交換業者の商号
  2. 暗号資産交換業者である旨及びその登録番号
  3. 暗号資産は本邦通貨又は外国通貨ではないこと
  4. 暗号資産の性質であって、利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして内閣府令で定めるもの

 なお、上記④を受けて内閣府令では以下の事項が規定されています(暗号資産交換業者に関する内閣府令18条)。

  • 暗号資産の価値の変動を直接の原因として損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由
  • 暗号資産は代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済のために使用することができること

 そして、広告の表示方法については、内閣府令において、これらの事項について明瞭かつ正確に表示しなければならないとされており、上記③および④の文字または数字は、当該事項以外の事項の文字又は数字のうち最も大きなものと著しく異ならない大きさで表示するものとされています(暗号資産交換業者に関する内閣府令17条)。

(2)広告等に関する禁止行為

 改正資金決済法においては、暗号資産交換業者またはその役員もしくは使用人は、以下の行為をしてはならないとされています(改正資金決済法63条の9の3)。

  1. 暗号資産交換契約の締結等をするに際し、虚偽の表示をし、または暗号資産の性質その他内閣府令で定める事項についてその相手方を誤認させるような表示をする行為

  2. 暗号資産交換業に関して広告をするに際し、虚偽の表示をし、または暗号資産の性質等について人を誤認させるような表示をする行為

  3. 暗号資産交換契約の締結等をするに際し、またはその行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、支払手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買または他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為

  4. 暗号資産交換業の利用者の保護に欠け、または暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとして内閣府令で定める行為

 そして、内閣府令では、上記①を受けて誤認させるような表示をしてはならない事項が定められており(暗号資産交換業者に関する内閣府令19条)、また、上記④を受けて禁止行為が定められています(暗号資産交換業者に関する内閣府令20条)。

 改正前の資金決済法においては、仮想通貨交換業者による広告・勧誘等について特段の規制はなく、これらの広告・勧誘に関する規制は改正資金決済法により新たに追加されたものです

利用者の保護等に関する措置

(1)暗号資産の性質に関する説明等

 改正資金決済法においては、利用者の保護等に関する措置として、従前の仮想通貨と本邦通貨または外国通貨との誤認防止の説明に代わり、より広く暗号資産の性質に関する説明義務が追加され(改正資金決済法63条の10第1項)、これを受けて内閣府令では、暗号資産の性質に関する説明に関する規定(暗号資産交換業者に関する内閣府令21条)に改正されたほか、利用者に対する情報の提供の規定(暗号資産交換業者に関する内閣府令22条)およびその他利用者保護を図るための措置等に関する規定(暗号資産交換業者に関する内閣府令23条)が改正されています。

(2)暗号資産信用取引を行う場合の情報提供義務

 改正資金決済法においては、暗号資産交換業の利用者に信用を供与して暗号資産の交換等を行う場合には、内閣府令で定めるところにより、当該暗号資産の交換等に係る契約の内容についての情報の提供その他の当該暗号資産の交換等に係る業務の利用者の保護を図り、および当該業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならないとされています(改正資金決済法63条の10第2項)。これを受けて内閣府令では、暗号資産信用取引に関する特則の規定(暗号資産交換業者に関する内閣府令25条)が設けられています。

 暗号資産信用取引は、内閣府令において、「暗号資産交換業の利用者に信用を供与して行う暗号資産の交換等」(暗号資産交換業者に関する内閣府令1条2項6号)と定義されていますが、「信用を供与」とは金銭の貸付けのみならず暗号資産の貸付けも含まれます(金融庁内閣府令案等パブコメ 1 No34)。なお、暗号資産信用取引を行うに際して、暗号資産交換業者が利用者に対する金銭の貸付けを行うときは、貸金業の登録を受ける必要があります(金融庁事務ガイドライン 2 Ⅱ-2-2-2-1)。

利用者財産の保全義務等

(1)利用者の金銭の信託

 改正資金決済法においては、暗号資産交換業者は、利用者の金銭を、自己の金銭と分別して管理し、内閣府令で定めるところにより、信託会社等に信託しなければならないとされています(改正資金決済法63条の11第1項)。これを受けて内閣府令では、暗号資産交換業者が利用者の金銭を信託するときは、信託会社等への金銭信託であって、利用者区分管理信託に係る契約が満たす必要がある要件が規定されています(暗号資産交換業者に関する内閣府令26条)。

 利用者の金銭の分別管理については、改正前の資金決済法においても規定されていましたが、改正後の資金決済法においては上記のとおり信託義務が追加されました。

(2)利用者の暗号資産の分別管理

 改正資金決済法においては、暗号資産交換業者は、利用者の暗号資産を自己の暗号資産と区別して管理しなければならないとされています(改正資金決済法63条の11第2項)。また、「利用者の利便の確保及び暗号資産交換業の円滑な遂行を図るために必要なものとして内閣府令で定める要件に該当するもの」を除き、暗号資産交換業者は、「利用者の暗号資産…を利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法」で管理しなければならないとされています(改正資金決済法63条の11第2項)。

 これを受けて内閣府令では、利用者の暗号資産の管理の規定(暗号資産交換業者に関する内閣府令27条)が追加されています。

 上記の「利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法」は、以下の方法とされています(暗号資産交換業者に関する内閣府令27条3項)。

  1. 暗号資産交換業者が自己で管理する場合には、暗号資産交換業の利用者の暗号資産を移転するために必要な情報を、常時インターネットに接続していない電子機器等に記録して管理する方法その他これと同等の技術的安全管理措置を講じて管理する方法

  2. 暗号資産交換業者が第三者をして管理させる場合には、暗号資産交換業の利用者の暗号資産の保全に関して、当該暗号資産交換業者が自己で管理する場合と同等の利用者の保護が確保されていると合理的に認められる方法

 この常時インターネットに接続していない電子機器等は、いわゆるコールドウォレットを指しますが、金融庁ガイドラインによれば、「一度でもインターネットに接続したことのある電子機器等は「常時インターネットに接続していない電子機器等」に該当しないことに留意するものとする」(金融庁事務ガイドラインⅡ-2-2-3-2(3)⑤)とされており、金融庁内閣府令案等パブコメによれば、ハードウェア・ウォレットを秘密鍵の生成、PINの変更、ぜい弱性対応などでベンダーにインターネット経由で接続した場合にも「常時インターネットに接続していない電子機器等」に該当しないとされています(金融庁内閣府令案等パブコメNo48)。

 また、上記の「利用者の利便の確保及び暗号資産交換業の円滑な遂行を図るために必要なものとして内閣府令で定める要件」は、暗号資産交換業者に関する内閣府令27条3項に定める方法以外の方法で管理することが必要な最小限度の暗号資産とされており(暗号資産交換業者に関する内閣府令27条2項)、これは「当該暗号資産の数量を本邦通貨に換算した金額が、その管理する利用者の暗号資産の数量を本邦通貨に換算した金額に百分の五を乗じて得た金額を超えない場合に限る」(暗号資産交換業者に関する内閣府令27条2項括弧書)とされています。すなわち、暗号資産交換業者は、利用者の暗号資産のうち、95%以上を暗号資産交換業者に関する内閣府令27条3項に定める方法(コールドウォレット等)で管理する必要があり、5%以下についてはこれ以外の方法(ホットウォレット等)で管理することができます

(3)履行保証暗号資産の管理

 改正資金決済法においては、暗号資産交換業者は、利用者の暗号資産のうち前述の「利用者の利便の確保及び暗号資産交換業の円滑な遂行を図るために必要なものとして内閣府令で定める要件」に該当する暗号資産と同じ種類および数量の暗号資産(以下「履行保証暗号資産」といいます)を保有し、分別管理することが義務付けられています(改正資金決済法63条の11の2)。履行保証暗号資産については、利用者の暗号資産の管理と同様に、「利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法」による管理が必要となります(暗号資産交換業者に関する内閣府令29条)。

(4)利用者の暗号資産の返還請求権に対する優先弁済権等

 改正資金決済法においては、利用者は、暗号資産交換業者に対して有する管理を委託した暗号資産の移転を目的とする債権に関し、当該暗号資産交換業者が分別管理を行う利用者の暗号資産および履行保証暗号資産(いずれも第三取得者に移転したものを除く)について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有します(改正資金決済法63条の19の2、民法333条)。

 すなわち、改正前の資金決済法においては、仮想通貨交換業者に利用者の仮想通貨の分別管理義務があるものの、あくまで仮想通貨交換業者の財産であり、仮想通貨交換業者に法的倒産手続が開始された場合には、利用者が仮想通貨交換業者に対して有する仮想通貨の返還請求権は一般債権として扱われるにすぎませんでした(倒産手続における債権の取扱いについては弊所ジャーナル『新型コロナウイルスに関する企業法務の実務(債権回収編)』参照)。

 これに対し、改正後の資金決済法においては、利用者が暗号資産交換業者に対して有する暗号資産の返還請求権は、当該暗号資産交換業者が分別管理する利用者の暗号資産および履行保証暗号資産について優先弁済を受ける権利を有し、その結果、暗号資産交換業者に法的倒産手続が開始された場合でも、暗号資産の管理を委託した利用者は、分別管理する利用者の暗号資産および履行保証暗号資産について他の債権者に優先して弁済を受けることができます。ただし、暗号資産交換業者が利用者の暗号資産および履行保証暗号資産を第三取得者に移転した後は、利用者は当該優先弁済を受ける権利を行使することはできません(改正資金決済法63条の19の2第2項、民法333条)。

暗号資産交換業に係る制度整備 - 取引時確認が必要となる取引の敷居値の引下げを行う

 改正資金決済法における暗号資産交換業者は、改正前の仮想通貨交換業者と同様に犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」といいます)上の特定事業者とされています(犯収法2条2項31号)。そのため、改正資金決済法において、暗号資産の交換等を行わずに暗号資産の管理に係る業務を行う暗号資産カストディ業者も暗号資産交換業者とされたことから、暗号資産カストディ業者も犯収法に基づく確認義務等を負います。

暗号資産交換業に係る制度整備 - 経過措置

 暗号資産交換業に関する経過措置として、改正法施行の際(令和2年5月1日)、現に暗号資産管理業務(改正前の資金決済法2条7項3号に該当するものを除く)を行っている者は、施行日から起算して6月間は、当該暗号資産管理業務を行うことができるとされており(改正法附則2条1項)、当該期間内に暗号資産交換業の登録申請を行った場合にはその申請について登録または登録の拒否があるまでの間は当該暗号資産管理業務を行うことができるとされています。ただし、施行日から起算して1年6月を経過するまでに登録を受けられない場合には暗号資産管理業務を行うことはできません(改正法附則2条2項)。

※本記事は、法律事務所ZeLo・外国法共同事業のウェブサイトの「Journal」に掲載されている「令和2年5月1日施行改正資金決済法等によりブロックチェーン業界はどう変わるか」の内容を元に編集したものです。

  1. 本稿では、金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(令和2年4月3日)を「金融庁内閣府令案等パブコメ」と表します。  ↩︎

  2. 本稿では、金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」(令和2年4月3日)を「金融庁事務ガイドライン」と表します。 ↩︎

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