ベンチャー法務、最前線!

第3回 法務で身につけたリーガルマインドは、多様なジャンルで活かせる – ビズリーチ

ベンチャー

目次

  1. 広範な部門と連携する情報セキュリティ業務
  2. 法務部員になるまでの多様な道のり
  3. 法務部に限らない選択肢
  4. しなやかな組織づくりに貢献したい

 人工知能やFinTech、ブロックチェーンなど、次々と新しいイノベーションが生まれている現代において、私たちのビジネスは加速度的に変化しています。事業内容の広がりに伴い、法務部の役割は多岐にわたり、特にベンチャー企業は法整備が進んでいないような領域に直面するケースも多いでしょう。本連載では、ベンチャー企業の法務部へ取材し、「ベンチャー法務としてのあり方」についてお話を伺っていきます。

 第3回となる今回は、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」やレコメンド型転職サイト「キャリアトレック」など、人事や人材(HR)領域を中心としたインターネットサービスを運営している株式会社ビズリーチで管理本部 管理本部長室に所属している安原 大輔氏に取材しました。

 安原氏はビズリーチが4社目の企業。大学時代は法学部に在籍し、「法務の仕事に携わることを考えてきた」と言います。ところが安原氏の話を聞くと、そのキャリアは非常にユニークで、実に様々な経験をされてきたことがわかりました。法務という仕事の多様性について、安原氏の経験をもとに、ご紹介したいと思います。

広範な部門と連携する情報セキュリティ業務

管理本部はどのような組織構成なのでしょうか。

 管理本部には法務・総務・財務・経理・業績管理・審査といった機能があります。私は管理本部長室に所属し、全社のリスク対応という観点で情報セキュリティに関する業務を担当しています。

管理本部全体では何名いるのでしょうか。

 50名弱くらいでしょうか。男女比は、半々くらいです。

情報セキュリティというと、どのような業務があるのでしょう。

 情報セキュリティの目的には、完全性、機密性、可用性の確保などがあります。可用性の確保とは、たとえば情報の取り扱い手順を統一することです。会社の標準となるルールを設定し、それが浸透したといえるようになるまで継続的にフォローしていきます。ビズリーチでは複数のプロダクトを展開しているため、プロダクトごとにセキュリティの水準を統一し、全体的に引き上げていくことに取り組んでいます。

セキュリティの水準はどのように設定するのですか。

 各部・各事業部の業務内容をヒアリングし、そこで利用している業務システムや外部ツールを確認します。最初に、広くリスクの評価をして、弱いところを識別していきます。そこで対応が必要と考えた事項については、審議を経て対応を行うことになります。「守るべきところにきちんとリソースを割けるようにする」ということが目的の1つです。

リスク評価をしていく中で難しいと感じるところは。

 「今の当社に最適なリスク対応策は何か」を考えていくことです。攻守の最適なバランスは、組織の規模や会社のステージによって変わっていきますので、会社の強みを最大限発揮できるようにしっかりと配慮しないといけません。守ることがゴールではなく、守りながら事業を成長させることが目的なので、そのバランスを取りながら取り組んでいます。

現在取り組んでいるプロジェクトはどのようなものでしょうか。

 今手がけている案件は半年くらいのプロジェクトで、社内だけでも複数の事業部と関わり、60名くらいの人と進めています。プロジェクトが進行するにしたがって、フェーズが変わってくるため、フェーズごとに様々なメンバーとコミュニケーションをとって進める必要があります。

 当社には事業戦略を考えられるエンジニアも多く、開発が必要な案件は、一緒に議論をしながら、仕様を決めていきます。彼らは具体的な開発に対して責任を持ってくれるだけでなく、様々な意見も出してくれるので、要件を決める上でも頼りにしています。

現在の仕事の面白いところを教えてください。

 リスク対応の業務は、一見非効率に見えることがありますが、「突発的に発生する大きなリスクを避ける」という考えのもと、長期的な視点で取り組むべき施策であると捉えています。今、会社は成長期なので、半年後、1年後、2年後を見据えて、組織を健全に発展させるために、皆で目的やプロセスをすり合わせながら取り組んでいます。このような取り組みが、成果として形になっていくところが面白いです。

株式会社ビズリーチ 管理本部 管理本部長室 安原 大輔氏

株式会社ビズリーチ 管理本部 管理本部長室 安原 大輔氏

法務部員になるまでの多様な道のり

安原さんのこれまでの経歴について教えてください。

 新卒でIT企業に入社しました。大学では法学部に在籍していたので、いずれは法務の仕事をしたいと思っていたのですが、最初の1年は営業の職務につきました。2年目からコンプライアンス室に異動させていただき、J-SOX対応(内部統制)と内部監査を担当していました。

法務の仕事がしたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

 法人税法の面白さに大学時代のゼミで目覚めました。企業には「利益を上げましょう」という考えがあると思いますが、税法を学ぶと、「適切な税額にするにはどうするか」という観点があり、この視点が新鮮でした。会社は利益を大きくしたいと思っている一方で、実はその背後に税金を適正化したいという思惑が隠れているんだと。大学時代から、このようなリーガルの知識を活用して、事業に貢献したいと考えていました。

そのような志望がある中で営業からのスタートとは、意外な経歴ですね。

 営業では、尊敬する上司、先輩、同期に恵まれ、その時の経験が私の社会人の基礎になっています。その後の、コンプライアンス室は、J-SOX対応だけでなく内部監査も含め、コンプライアンス事項全般を扱ってリスク対応を行う部署でした。この部署では、各サービスの事業部、経理部などと、連携しながら進めていました。1つのサービスだけでなく、各サービスと関わることは今にも通じますね。「会社の仕組みをつくる」仕事ですから、とてもやりがいがありました。

J-SOX対応はどれくらい担当していたのでしょうか。

 3年半ぐらいですね。1年目は業務プロセス、2年目は財務関連、3年目は全社対応と、一通り全体を見ることができました。

 J-SOX対応や内部監査を行うにあたって、「法律的なこと」、「財務経理的なこと」、「ITに関すること」というのが、知識として必要となります。その中で、「ITに関すること」について、知見を強化したいという想いが強くなり、ITコンサルの企業へ転職することを決意しました。

ITコンサルの企業ではどのようなキャリアを積まれたのでしょうか。

 ITコンサルタントとして、SAP社が提供する基幹系情報システムを取り扱う部署に配属され、数百人を超えるプロジェクトの一員として業務を担当しました。あっという間の1年でしたが、代えがたい経験をさせていただいたと思います。その後は、システム関連の契約書をまとめたり、他部署のエンジニアと連携してプロジェクトを進めたりなど、当時の経験が現在も非常に活きていると感じます。

3社目ではどうだったのでしょうか。

 ご縁という言葉に集約されてしまうところもありますが、次の転職で法務担当となりました。

 当時は上司との2名体制で、社内の法務相談に始まり、契約書のレビュー・作成、新規サービスの規約作成から提携契約、M&A契約など、幅広い業務に携わらせていただきました。新規サービスの立ち上げが多かったため、サービスごとに規約や契約が必要となりました。たとえば、Q&Aサービスのメディア提携の話があると、その都度、提携先ごとに契約書を作成していました。既存のQ&AやFAQシステムの契約は、規約に基づいて、文言交渉で済みますが、新しいスキームができるとひたすら新しい契約書の作成を行っていました。

法務の仕事は未経験だったにも関わらず、裁量が大きいですね。

 まずは契約書を読むことからスタートしましたが、早い段階からほとんどあらゆる契約に携わらせてもらいました。また、いくつかM&Aも行っていましたので、そこも経験することができました。

特に印象に残っている仕事はなんでしょうか。

 提携案件で、交渉の場にも参加させていただきつつ契約書の作成を担当した仕事がありました。フロントで交渉しつつ、契約書を自分で作って提携までまとめるという、もともと理想としていた仕事ができたと感じています。

株式会社ビズリーチ 管理本部 管理本部長室 安原 大輔氏

法務部に限らない選択肢

理想としていた仕事ができていた中で、なぜビズリーチへの転職を決意されたのでしょうか。

 法務担当として社内に向いて仕事をしがちなところがあったため、当時は外に目を向けて、様々な企業を調べたり、イベントに参加したりしていました。そうした中でたまたまビズリーチに出会い、「この会社はおもしろい」と直感しました。ビジネスモデルもさることながら、8年目にして従業員数800名を超える会社はめったに聞きません。そうした会社の管理本部で働くというのは、色々おもしろいことがありそうだと思いました。短期間で成長し、この後さらに伸びる可能性がある会社にはなかなか出会えるものではありませんので。その後、管理本部長室が新設されるタイミングで入社することが決まりました。

実際にビズリーチに入社してどのように感じましたか。

 期待以上にチャレンジングで面白い環境がありました。急成長する組織で大きな業務改革を行うことがミッションのため、いかに現場を巻き込み適切な施策を遂行するか、非常にやりがいがあります。

 ビズリーチの経営理念の一つに「巻き込み、巻き込まれよう」というものがあり、部門間連携の多い業務を任せてもらっている私は、これを一番実感できているのではないかと思います。意志をもって取り組めば関係者が巻き込まれてくれるため、仲間の協力を仰ぎやすく、自分1人の力ではなく、チームで物事に取り組むことができます。広く力を借りられるという点で、特にすごい会社だなと思っています。

 また、その時にもらえる視点がとても貴重です。自分1人だったら落とす論点も、他のメンバーが気づいてくれますし、そこについてどうすべきかということも必ず議題にあがってくるので、的確な意思決定により近づくことができます。法務担当としても、1人で契約書を作るのではなく、他のメンバーとディスカッションしながら作ったほうが、品質があがることと同様です。それと同じことがチームのメンバーといつでもできるので、すごく良いなと思っています。

 さらに、ベンチャー企業として求められるスピード感は想像以上でした。一度決めたことでも軌道修正をしながら、かつできるだけ早く物事を進めていかないと、環境自体が変わってしまって、打ち手が適切でなくなる時があります。私の仕事で言うと、当初認識していたリスクの内容が組織や業務の変更によって変わるということが起こりえます。これを追いかけるスピード感も今の仕事の醍醐味ではないかと思います。

最近された法務としての仕事では、どのようなものがありますか。

 直近では社内で「改正個人情報保護法の研修をしてほしい」という依頼があり、「HRMOS(ハーモス)採用管理」の事業部の営業メンバーに説明するということがありました。20分で説明できるようにコンパクトにまとめていくのですが、おそらく他の法務の皆様と同様に、改正前、改正後、ガイドライン、プライバシーマーク要求事項に当社規程といろいろ詰め込んで制度の関係性を腑に落としていきます。時間のかかる作業ですが、パズルを解くように理解をしていくプロセスは面白いですね。

株式会社ビズリーチ 管理本部 管理本部長室 安原 大輔氏

しなやかな組織づくりに貢献したい

管理本部の一員という視点から、今後、組織をこういう風にしていきたいというビジョンはありますか。

 リスク対応という観点からですが、「仕組みによる対応」と「人の能力による対応」のバランスがうまくとれている、しなやかな組織にしていきたいと考えています。これまでは、大きなリスクから順次対処してきましたが、だんだん小さなリスクにも対応するようになってきています。その時に、リスク対応部門からではなく、現場からのアラートがより上がってくる組織の方が、しなやかと言えるのではないかと思います。こういった組織を実現するために、リスクとなる点について皆の認識合わせを深めていくことが次の仕事だと思います。

最後に、安原さんの様々な経験を踏まえて、これからの法務部員はどうあるべきだと思いますか。

 法務はリスク対応のチームであり、契約や規約を通じて将来を設計するチームだと思います。そして、その業務を通じて身につけられる将来の予測や事実確認、ヒアリングのスキルは、他にも応用が効くだろうと思います。

 情報セキュリティであれば、事実確認に基づいて事故が起こりうるケースを予測して、それに対する手当を考えます。その手当が失敗した時のために、別の手当も考えておきます。契約書を作る時と同様の発想であり、業務プロセスを設計するJ-SOX対応においても内部監査においても共通しています。契約書をつくる度に行っている現場のヒアリングでは、相手の持っている情報に基づいて相手が将来遭遇しうる場面にまで思いを巡らせているので、これはなかなかのことですね。

 なので、法務経験者は活躍の場をかなり色々なところに求めることができるのではないかと思います。「足腰が鍛えられているから、どこの山でも登れます」みたいな感じじゃないかなと(笑)。スピード感についてはどこにいても昨日より今日、今日より明日という形で求められていると思いますので、法務経験者の方がいろんな領域に一歩踏み込んでいくことで様々な事柄のスピード感が上がっていくように思います。

ありがとうございました。

株式会社ビズリーチ 管理本部 管理本部長室 安原 大輔氏

(取材、構成:BUSINESS LAWYERS編集部)

会社概要
株式会社ビズリーチ
所在地:東京都渋谷区渋谷2-15-1
創業:2009年4月
資本金:41億円(資本準備金を含む)
代表者:代表取締役社長 南 壮一郎
従業員数:881名
※2017年9月1日現在


プロフィール
安原 大輔(やすはら・だいすけ)
株式会社ビズリーチ
管理本部 管理本部長室
IT企業でのJ-SOX対応、内部監査、メディア運営企業での法務に従事したのち、2015年12月にビズリーチ入社。管理本部長室にて、情報セキュリティ全般を担当。

無料会員にご登録いただくことで、続きをお読みいただけます。

1分で登録完了

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する