2027年特定商取引法改正はどうなる?方向性と対応ポイントを弁護士が解説 ダークパターン、最終確認画面・注文完了後メール、チャット勧誘等の規制強化等
取引・契約・債権回収
消費者庁は、2026年9月に特定商取引法の改正の方向性を示す「中間取りまとめ」およびその「参考資料集」を公表し、さらに議論をまとめ、2027年の通常国会に改正案を提出する見通しです。
今回の改正の方向性は、ECサイト、サブスクリプション(サブスク)、オンライン広告、SNSマーケティング、プラットフォーム運営、店舗誘導型ビジネスなど、幅広い事業に大きな影響を及ぼし得るものです。関係する事業者においては、今後の法案、政省令、ガイドラインの内容を注視し、実務に与える影響を継続的に確認する必要があります。
特定商取引法の改正の方向性と企業への影響
消費者庁は、2026年9月10日に、ダークパターンの規制などを中心として、特定商取引法の改正の方向性を示す「中間取りまとめ」およびその「参考資料集」を公表しました 1。本年10月31日までパブリックコメントが実施され 2、今後、消費者庁は、年内に最終的に議論をまとめ、2027年の通常国会に特定商取引法の改正案を提出する予定となっています。
今回の特定商取引法改正は、デジタル技術の発展に対応した大改正というべきもので、いわゆる「ダークパターン」に関する改正など改正点は多岐にわたります。特定商取引法では、オンライン上での取引は「通信販売」として規制されていますので、この規制の改正は、特にサブスクやECサイトなどのオンライン上での取引に大きな影響を与え、申込み導線(広告・UI、最終確認画面)、注文完了メールおよび解約導線などのシステム改修等も必須になることが想定されることから、今後の展開には注視していく必要があります。
なお、特定商取引法のうち、訪問販売、通信販売または電話勧誘販売は、一定の規制業種が適用除外となっている(特定商取引法26条1項7号・8号、同法施行令11条および別表第2)ため、すべての事業者が改正の影響を受けるものではありません。したがって、改正法が自社に与える影響を検討するにあたっては、まずは、自社の事業のうち、どのサービスが影響を受けるのかを確認しておくべきです。
中間取りまとめ等の内容を踏まえ、特定商取引法の改正の方向性を大きく分けると、次のとおりとなります。
| 方向性 | 概要 |
|---|---|
| ① 広告~勧誘段階における規制 |
|
|
② 申込み~契約締結段階における規制 |
|
| ③ 解約段階における規制 |
|
| ④ その他 |
|
なお、同時期に消費者契約法の改正も予定されています。特定商取引法の適用を受ける取引は、通常、消費者契約法の適用も受けることから、その動向にも注意しておく必要があります。
上記の方向性①〜④について、以下で詳しく解説します。
広告~勧誘段階における規制
「ダークパターン」に対する規制強化
(1)現状の課題
インターネット取引においては、巧妙な画面表示を利用して、消費者の心理に不当に働きかけて、消費者を契約締結に誘導したり、解約を思いとどまらせたりする手法が用いられることがあります。こうした手法は、国際的に「ダークパターン」と呼ばれ、消費者の意思決定に係る選択や判断を歪めかねない画面表示・設計として指摘されています。
ダークパターンの例を、消費者庁の資料(中間取りまとめの参考資料集)からいくつか挙げると、以下のとおりです。
ダークパターンの一例:社会的証明(お客様の声)

ダークパターンの一例:緊急性(在庫僅か・カウントダウンタイマー)

ダークパターンの一例:執拗な繰り返し

なお、ひとくちに「ダークパターン」といっても、一義的に明確な定義があるものではないため、論者によって、どのような手法を「ダークパターン」に当たると考えるかは異なる場合があります。
こうした「ダークパターン」のうち、いくつかのカテゴリーについては、既に景品表示法で規制されています。たとえば、虚偽の性能や効果をうたう表示は優良誤認表示、虚偽の在庫の表示や虚偽のカウントダウンタイマーは有利誤認表示、ステルスマーケティングは指定告示 3 で景品表示法の規制の対象になっています。
(2)改正の方向性
中間取りまとめでは、問題となる表示・UI(ユーザー・インターフェース)の手法は多様であり、個別の手法を列挙することは困難であるとして、ダークパターン等の変化の早さにも柔軟に対応できる包括的な規律の導入が検討されています。
その内容は、消費者の誤認を招く手法や、迷惑または不安を覚えさせるなどして望まない申込み等を迫る手法に焦点を当てるものであって、具体的な射程や判断基準については、事業者の予見可能性を確保し、適正な表示・UI設計まで萎縮させないよう、下位法令やガイドライン等において違法なパターン(ブラックリスト)や適法なパターンを示す等の方法により明確化することとされています。
現在、勧誘段階において検討されている内容は、インターネット上で広告をする場面において、誤認を招くまたは威迫、迷惑もしくは不安を覚えさせるなどして、消費者の意に反して申込みをさせようとする表示・UIであり、たとえば、以下のとおりです。
- 誤認を招く表示・UI
- 支払金額(違約金等を含む)、分量、契約期間等について、その内容を正確かつ容易に認識できない虚偽・不明瞭なもの
- 口コミ、利用状況、在庫情報、タイムセール等の商品の性能や内容に関連する情報であって、その内容が虚偽であるもの
- 迷惑または不安を覚えさせる表示・UI
- 契約の申込みに関し、操作の反復または威迫的な文言等を用いて、消費者に迷惑を覚えさせ、または不安を生じさせるような仕方によって、消費者に契約の申込み・締結をさせようとするもの
- ステルスマーケティングに関する表示・UI
- 広告であるにもかかわらず広告であることが判別し難い表示を禁止し、または広告であることが判別し難い表示には広告である旨の明示を求めるもの
なお、後記4-1のとおり、解約時における手続妨害についても、ダークパターンの一種として規制が導入されることが検討されています。
(3)実務への影響
現在、検討されているダークパターン規制のうち、上記の「①誤認を招く表示・UI」および「③ステルスマーケティングに関する表示・UI」は、景品表示法により既に規制対象になっているため、実務への新たな影響は「②迷惑または不安を覚えさせる表示・UI」への対応が中心になるものと考えられます。
中間取りまとめでは具体的な例は挙げられていないものの、たとえば、②の「操作の反復」により「迷惑を覚え」させる行為としては、申込み導線において離脱しようとしたユーザーに対して、何度もポップアップ画面を表示して申込みを促す行為が考えられます。
次に、「威迫」とは、消費者庁によると、脅迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為をいい、対面取引の文脈だと、たとえば、「『契約書にサインしてくれないと困る。』と声を荒げ」る事例や「エステティックサロンの無料体験を受けているときに衣服を脱がされた状態で多数の者に囲まれて執ように勧誘」される事例が「威迫」として紹介されています 4。
もっとも、オンライン上の取引の場合に、どのような行為が「威迫」になるかは明らかではありません。たとえば、申込み導線上において「サービスに申し込まないと、大損をして人生を棒に振って一生後悔するぞ!」と表示したりする行為については、規制の対象になる可能性があります。ただ、そういった過激な表現ではなく、「この動画配信サービスに今週中に加入しないと、特別番組〇〇は今後一生見られないかも!」「この受験対策教材を今すぐダウンロードしないと、あなたは試験に落ちてしまうかも!」「この結婚相談サービスを契約しないと、あなたは一生結婚できないかも!?」のように、消費者を不安にさせるような宣伝文言がどこまで規制されるのかは、注目ポイントになると考えます。
| カテゴリー | 規制対象になる可能性がある行為・表現 |
|---|---|
| 迷惑なUI | 申込み導線において離脱しようとしたユーザーに対して、何度もポップアップ画面を表示して、しつこく申込みを促す行為 |
| 不安を覚えさせる表示 |
申込み導線上における次のような表現
|
なお、景品表示法で既に規制されている「①誤認を招く表示・UI」および「③ステルスマーケティングに関する表示・UI」についても、特定商取引法で新たな規制の対象になることによって、景品表示法 5 の下では認められていない強力な法執行(業務停止命令、業務禁止命令等)の対象になることから、より違反時のリスクが高まる点には注意が必要です。
チャット等を利用した勧誘に対する規制導入
(1)現状の課題
近年、事業者がチャットやSNSのメッセージ送信機能などを用いて消費者に働きかけることによって、消費者が当初想定していなかった商品・サービスの購入に誘導される事例が多く発生しています。
しかし、こうした勧誘行為そのものについての規制はありませんでした。
現在、特定商取引法では、訪問販売に係る取引をはじめとする以下の7類型の取引が特定商取引として規制されています(特定商取引法1条)。
| 特定商取引法の対象 となる類型 |
概要・例 |
|---|---|
| 1. 訪問販売 |
事業者が消費者の自宅等に訪問して、商品や権利の販売または役務の提供を行う契約をする取引
※キャッチセールス、アポイントメント・セールスを含む
|
| 2. 通信販売 |
事業者が新聞、雑誌、インターネット等で広告し、郵便、電話等の通信手段により申込みを受ける取引
※「電話勧誘販売」に該当するものを除く
|
| 3. 電話勧誘販売 |
事業者が電話で勧誘を行い、申込みを受ける取引
※電話をいったん切った後、消費者が郵便や電話等によって申込みを行う場合にも該当する
|
| 4. 連鎖販売取引 | 個人を販売員として勧誘し、さらにその個人に次の販売員の勧誘をさせる形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引 |
| 5. 特定継続的役務提供 |
長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引
※エステティックサロン、語学教室など7つの役務が対象とされている
|
| 6. 業務提供誘引販売取引 | 「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引 |
| 7. 訪問購入 | 事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引 |
出所:消費者庁ウェブサイト「特定商取引法ガイド」を基に作成。
(2)改正の方向性
中間取りまとめでは、LINEに代表されるメッセージアプリ、SNSのDM機能、電子メール、SMS等(以下「チャット等」といいます)による勧誘について、電話勧誘販売と同様の規制を導入することが検討されています。ここでいう「チャット等」は、特定の相手方との双方向のやり取りを想定したものです。返信を受け付けない一斉配信等が規制の対象になるわけではありません。
つまり、上記の特定商取引法の対象となる7類型に、8つ目の新たな類型として、チャット等による勧誘をした販売(以下「チャット等勧誘販売」といいます)に係る取引が追加される形になると考えられます。
- 規制の対象
チャット等勧誘販売の規制は、事業者から消費者に対してチャット等による勧誘を開始した場合の取引が対象となり、消費者が自ら事業者に対してチャット等を開始した場合の取引は対象外となるのが原則です。
ただし、例外的に、事業者が、勧誘目的を告げずにまたは著しく有利な条件を提示するなどして、消費者を誘導して、事業者に対するチャット等を開始させた場合には、規制対象に含まれることになります。これは電話勧誘販売 6 と同じ考え方に基づくものです。
なお、中間取りまとめの内容からは離れますが、チャットではなく、Zoomなどのウェブ会議システムを利用した勧誘については、事業者から消費者に会議参加用URLを送っている場合には、法改正を経なくとも既に電話勧誘販売に含まれるというのが消費者庁の見解 7 であり、今回の改正の対象には含まれません。
法的な理由付けは異なるものの、ウェブ会議システムを利用した勧誘が電話勧誘販売に含まれることは、裁判例も認めているところです(大阪地裁令和7年1月17日判決・消費者法ニュース144号249頁) 8。 - チャット等勧誘販売の規制の内容
チャット等勧誘販売に係る取引については、電話勧誘販売と同等の規制が適用されることが検討されていますが、これは事業者側にとって相当負担の重いものと思われます。
中でも、特に重要な規制は、契約後に、クーリング・オフができる旨の書面を受領した日から起算して8日間、消費者にクーリング・オフの権利が認められることです。クーリング・オフは、消費者側に無条件での解除を認めるものであって、非常に強力な解除権となります。
クーリング・オフの規制以外にも、勧誘に先立ち、販売業者等の氏名または名称、勧誘者の氏名、商品・サービスの種類および販売目的を告げること、また、再勧誘を禁止することも検討されています。
また、チャット等勧誘販売についても、事業者は契約成立時に消費者に書面を交付することを原則とすることが検討されています。
この点について、電話勧誘販売の現在の規制では、当該書面は電子的に交付できるとはされているものの、電子的交付には、非常に複雑で負担の多い要件を守る必要があります 9。チャット等勧誘販売については「インターネット取引の実態を踏まえて、引き続き検討すべきである」とされているものの、仮に電話勧誘販売と同様の要件が課されるのであれば、事業者は、一定の書面を郵送せざるを得なくなり、事業者にとって大きな負担となることが想定されます。
なお、中間取りまとめには記載されていませんが、電話勧誘販売と同様の規制であれば、一定の規制業種(金商業、貸金業、保険業、宅建業、旅行業、電気通信事業等)等は適用除外になると考えられます(特定商取引法26条1項8号、同法施行令11条および別表第2)。
(3)実務への影響
チャット等勧誘販売の規制の対象となる事業を行っている場合には、同規制の対象にならないように勧誘方法を見直すか、または、同規制への対応が必要となります。
もし、勧誘方法を変更する場合には、事業者からチャットを開始するのではなく、消費者からチャット等を開始してもらう方法に変更することが一案です。
しかし、その場合には、事業者は、事前に消費者に対して、チャット等のやり取りを通じて勧誘が行われることを明示する必要が生じると考えられます。もし、消費者からチャットを開始した場合でも、事前に消費者に示していない商品やサービスを勧誘すること(いわゆる「アップセル」や「クロスセル」10 のうち一部の取引)は、電話勧誘販売と同じく、勧誘目的の不告知として、引き続きチャット等勧誘販売の規制の対象になる可能性が高いと考えられます。
訪問販売(アポイントメント・セールス)規制の店舗誘導ビジネスへの適用
(1)現状の課題
近年、ウェブページにおいて勧誘目的を告げずに店舗等に誘引し、来店後に高額な契約を締結させる事例が増加しています。
現行法では、チラシやパンフレット等で多数に対して勧誘目的を告げずに店舗に誘引する手法については、当該店舗での契約は、アポイントメント・セールスとして、訪問販売の規制の適用を受けます。しかし、これは、チラシやパンフレット等に限定されており、インターネット上の広告表示による誘引は規制の適用外でした。
(2)改正の方向性
中間取りまとめでは、チラシやパンフレット等の広告だけでなく、インターネット上の広告表示についても、勧誘目的を告げずに店舗等に誘引し、来店後に契約を締結させる手法をアポイントメント・セールスの一類型として扱い、訪問販売の規制対象とすることが検討されています。
(3)実務への影響
訪問販売の規制の対象になると、8日間のクーリング・オフの権利が認められることになるため、事業者には、その対応について重い負担が生じます。
ただし、店舗販売においては、インターネットにおいて広告されていない商品・サービスについても、その場で消費者に対して勧誘することは、一般的に行われているものです。そこで、中間取りまとめは、「一般的な広告や通常の来店誘引、店舗における通常の商品説明まで規制対象とならないよう、勧誘目的の秘匿と評価すべき行為の範囲を明確化する必要がある」とも述べています。
したがって、一般的に許容される手法で、インターネット上で広告を展開している店舗販売業者は、改正の影響を受けない可能性が高いと考えられますが、議論の展開を注視していく必要があります。
レスキュー商法等に対する規制強化
(1)現状の課題
近年、消費者がインターネットの広告等を見て、事業者に対して自宅への訪問を要請したところ、想定外に高額の商品・サービスを勧誘されるケースが増加しています。
特に、水漏れや鍵開けなどのレスキューサービスでは、安価な広告表示を見て、業者の訪問を要請したところ、広告価格とかけ離れた高額な契約を勧誘される事例が増えています(いわゆる「レスキュー商法」)。こうした事例では、たとえ消費者が事業者を自宅に呼び寄せたという経緯があっても、そこでなされた取引は訪問販売としての規制の適用を受けると考えられています 11。
もっとも、こうしたレスキュー商法は、訪問販売としての規制の適用は受けるものの、勧誘行為自体は禁止されていませんでした。
(2)改正の方向性
中間取りまとめでは、ウェブページ等を利用して、著しく事実に相違する商品またはサービスの価格を示し、これに誘引されて来訪を要請した者に対し、外部からの介入、勧誘場面からの離脱や、商品等の比較検討が困難な環境において、合理的な根拠なく、当該表示に記載された価格と著しく乖離した高額の商品の購入またはサービスの契約の締結を勧誘する行為について、違法行為と位置付け、行政処分の対象とすることが示されています。
(3)実務への影響
この改正は、水漏れや鍵開けなどのレスキューサービスのすべてに影響を与えるものではなく、従前から、悪質商法であると問題視されていた一部の取引のみが影響を受けるものです。
したがって、大多数の事業者には影響をもたらさないものと考えられます。
取引・広告プラットフォーム提供者等に対する誇大広告等の削除等の要請の規定導入
中間取りまとめでは、消費者庁等が、通信販売に係るインターネット上の誇大広告等に関し特定商取引法に基づく行政処分を行った場合に、その広告等を表示している第三者に対しても削除要請を行う権限を明確化することが検討されています。
具体的には、消費者庁は、行政処分の対象となった誇大広告等が、取引プラットフォームまたは広告・SNSのプラットフォームで表示されているときに、当該プラットフォームの提供者等に対して誇大広告等の削除等の要請を行うことができるようになる予定です。
さらに、プラットフォーム提供者等が、消費者庁の要請に基づいて、問題となった広告等の削除を行った場合には、販売業者等との関係では損害賠償責任を免除されることも規定される予定です。
申込み~契約締結段階における規制
最終確認画面の規制強化
(1)現状の課題
2021年の特定商取引法改正においては、申込みの最終確認画面において所定の事項を表示する義務が設けられました。しかし、改正後も、「定期縛りなし」、「いつでも解約可能」等の表示により、解約条件等について誤認する事例や、最終確認画面の前後で、より有利であるかのような取引条件が提示され、消費者が高額なプランや条件の異なる契約へ誘導されたり(アップセル)、また、支払総額、契約期間、解約条件等の重要な取引条件を一体として把握しにくい表示が現れたりするようになっています。
(2)改正の方向性
中間取りまとめでは、現行法の最終確認画面の表示義務や誤認表示の禁止の範囲を拡張し、インターネット取引における最終確認画面における支払総額の表示、取引条件の分離表示の禁止等といった表示方法の義務付け等を行うことが検討されています。
また、最終確認画面で注文を確定後に、前の契約内容を変更して別内容の契約をするよう事業者側から提示するようなケースに対しては、既に確定した注文内容を変更させる際に、変更前後の内容を対照させる等、変更箇所の明示を義務付けるべきであるとされています。
(3)実務への影響
最終確認画面の表示方法について、新たな規制が導入されることに伴い、特に、最終確認画面において支払総額を表示していない場合、最終確認画面で表示すべき取引条件をリンク先などに分離して表示している場合、最終確認画面の後に事業者から注文内容を変更するよう提示する場合には、システム改修を含めた対応が必要になる可能性があります。
注文完了後メール等の送信義務化
(1)現状の課題
インターネット上での取引においては、取引が成立すると、事業者から消費者に対して注文確認メールを送ることが一般的となっています。しかし、現行法の下では、インターネット取引において、消費者に対する一般的な書面の交付や注文確認メールの送信義務は規定されていません。
したがって、消費者においては、最終確認画面を自らスクリーンショットで保存するなどの対応をしていないと、消費者が取引条件を確認できないケースがあることが問題視されています。たとえば、消費者が最終確認画面の表示内容を保存していないと一般的な定期購入契約における解約権(例:2回目発送の◯日前までに解約の申し入れがある場合には解約が可能である旨の条件が付されている場合)の行使が困難となったり、最終確認画面で誤認した場合の取消権の行使にあたって誤認の有無や表示内容を立証することが困難となったりすることが指摘されています。
(2)改正の方向性
そこで、中間取りまとめでは、インターネット取引において、消費者が契約内容を確認し、一般的な定期購入契約における任意解約権や最終確認画面により誤認した場合の権利行使を円滑に行うことができるようにするため、契約内容を記載した電子書面等を、注文完了後遅滞なく、電子メール等により消費者に交付することを義務付けるべきであるとされています。
(3)実務への影響
多くの事業者は、インターネット通販で注文が成立すると、その注文内容を電子メールで消費者に送付していることから、実務への影響は大きくないとも思われます。もっとも、電子メール等で交付することが義務付けられる情報の内容および形式については、まだ具体的になっていません。
なお、中間取りまとめの欄外の注記には、情報の内容について「最終確認画面の記載事項に加え、契約に関する事項(事業者の氏名、住所、電話番号等)の記載も必要である」との指摘、および、形式について「消費者が添付ファイルを開かない行動が一般化していることや、通知事項が長大となると消費者に読まれにくくなることを踏まえ、どこまでをメール本文等に記載し、どこからをリンク等で示すかといった情報量のバランスを考慮すべき」との指摘が記載されています。
今後、どのような規制になるのか次第ではあるものの、注文後に送信する電子メールの内容を変更するシステム改修が必要になる可能性があります。
解約段階における規制
解約手続妨害(解約におけるダークパターン)の規制導入
(1)現状の課題
消費者が契約を解除または解約する権利を有していても、電話等がつながらないこと、連絡手段が限定されていること、手続が合理的理由なく過度に複雑であること等により、消費者が権利行使を阻害されている事例があることが指摘されています。
これは、解約の場面におけるダークパターンの一種であると指摘されているところであり、消費者庁の資料(中間取りまとめ 参考資料集)には、次の例が挙げられています。
ダークパターンの一例:キャンセル困難

(2)改正の方向性
中間取りまとめでは、消費者の解約手続を不当に遅延させる行為や、契約手続に比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続を課す行為を、違法行為として規制することが検討されています。
(3)実務への影響
消費者が契約を解除または解約することを引き止めることを意図して、解約をしにくくしている場合はもちろん、解約を受け付ける電話等が、混雑するなどして事業者が意図せずにつながりにくい状態が続く場合も規制対象になると考えられます。
もっとも、オンラインで提供されているサービスの解約の引き止めについては、次のようにさまざまなパターンが想定されます。
- 解約するための導線がわかりづらいもの
- 問い合わせフォームで問い合わせないと解約導線がわからないもの
- 申込みはオンラインでできるのに、解約は電話でしかできないもの
- 解約導線に進んだときに解約理由についての選択式のアンケートに対する回答を求められ、アンケートの回答に対応した引き止め策が提案されるもの
そして、今後の規制の展開次第ではあるものの、システム改修を含めた対応が必要となる可能性もあります。
返品特約の不当な濫用禁止
(1)現状の課題
インターネット取引を含む通信販売においては、消費者は原則として商品の引渡し等を受けた日から起算して8日を経過するまでの間、返品権を有します。もっとも、販売業者は、返品権を排除する特約(以下「返品特約」といいます)を設けて、広告に表示すれば、消費者の返品権を排除することも可能であり、実務上は、多くの事例で返品権が排除されています。
しかし、返品特約は返品権を排除する場面でのみ有効であるにもかかわらず、返品権とは異なる文脈、すなわち、事業者が注文と異なる商品を送付した場合、不良品を引き渡した場合など、消費者が民法上の解除権や損害賠償請求権等を行使できる場合にも、販売業者が返品特約を理由としてこれらの権利行使を一律に拒否する事例があることが報告されています。
(2)改正の方向性
そこで、中間取りまとめでは、販売業者が、購入者から債務不履行解除などの契約の解除等の通知を受けた場合には、事実関係について確認を行うことなく、返品特約のみを理由として、消費者の権利行使を拒む旨を告げる行為を、新たに規制することが検討されています。
(3)実務への影響
多くの事業者は、事業者が注文と異なる商品を送付した場合、不良品を引き渡した場合など、自らに責任がある場合において、返品特約を盾に消費者への対応を拒絶していないと思われます。
もっとも、ウェブサイトの表記・説明において、「一切、返品を受け付けない」などと記載している場合には、誤解を招きかねないため、「ユーザー都合による返品を受け付けない」などと記載を変更するなどの対応をしたほうがよいと考えられます。
その他
その他、中間取りまとめには、以下の内容も含まれていますが、多くの事業者には関係がない内容であると思われます。
強引な契約締結等への対応
点検商法やレスキュー商法においては、十分な説明がなく、契約も成立していないまま工事等に着手し、消費者が断りにくい状況を作出した上で契約締結を迫る事例があることが指摘されています。
中間取りまとめでは、消費者が契約の申込みや承諾の意思表示をする前に、契約の履行に着手し原状回復を困難とする行為を、訪問販売類型において違法行為と位置付け、行政処分の対象とすべきことが検討されています。
なお、かかる状況を作出した場合には、「原状の回復を著しく困難にする」ものであれば、現行法においても、消費者契約法により取消しの対象となる場合があります(消費者契約法4条3項9号)。
クーリング・オフ妨害への対応
消費者が、クーリング・オフの対象となる契約を締結した後に、クーリング・オフの権利を行使して、契約を解除しても、事業者がそれを妨害する事例があることが指摘されています。
中間取りまとめでは、クーリング・オフの権利が行使された後の返金などの履行拒否または不当遅延については、それ自体を違反行為として迅速な執行を行うことが検討されています。
後出しマルチへの対応
当初は連鎖販売取引であることを明らかにせず、商品購入や有償サービス契約をさせた後に、事後的に紹介料・マージン等の特定利益を得られることを告げる、いわゆる「後出しマルチ」が問題視されています。
中間取りまとめでは、こうした取引において、知識や経験に乏しい消費者が誘引される点や、告げられた特定利益を期待して知人への勧誘等を行うものも見られることから、連鎖販売取引の規制の趣旨が及ぶものについて規律の対象となる旨を明確化することが検討されています。
-
詳細は、消費者庁のウェブサイト「デジタル取引・特定商取引法等検討会」もご参照ください。 ↩︎
-
指定告示とは、景品表示法5条3号に基づき、内閣総理大臣が不当表示として指定した告示を指します。ステルスマーケティングについては、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が指定されています。 ↩︎
-
消費者庁・経済産業省「特定商取引に関する法律・解説(令和7年6月1日時点版)」の36頁および313頁。 ↩︎
-
景品表示法では、違反者に対する行政処分としては、措置命令と課徴金が規定されています。 ↩︎
-
電話勧誘販売は、事業者から消費者に電話をかけることが要件の1つとなっており、消費者から事業者に電話をかける場合には規制の対象外であるのが原則です。もっとも、事業者が、勧誘目的を告げずに、または著しく有利な条件を提示するなどして、消費者を誘導して、事業者に対して電話をかけさせた場合には、電話勧誘販売に含まれることになります。 ↩︎
-
消費者庁・経済産業省「特定商取引に関する法律・解説(令和7年6月1日時点版)」11〜12頁 ↩︎
-
同裁判例は、次のように判示しています。
「電話とは、一般に、音声を電気信号等に変換して送受信し、隔地者間での通話を可能にする通信方法をいうものと解される。そうすると、音声と映像の送受信による通信方法は、音声の送受信に関する部分については電話と同様の機能を有し、これに加えて映像の送受信による通信が可能になったものといえる。そして、特定商取引法が電話勧誘販売を規制の対象としている趣旨は、電話による勧誘には、不意打ち性、密室性、勧誘の執拗性、即決の強要等の問題が生じるからであるところ、これらの問題は、音声の送受信による通信に映像の送受信による通信が加わっても変わらずに発生するといえる。そうすると、音声の送受信による通信に映像の送受信による通信が加わったからといって、当該通信方法を電話勧誘販売の規制の対象から除外すべき理由はない。」 ↩︎ -
消費者庁「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」参照。 ↩︎
-
「アップセル」とは、顧客が購入しようとしている商品・サービスよりも高額の商品・サービスを購入してもらうこと、「クロスセル」とは、顧客が購入しようとしている商品・サービスに併せて別の商品・サービスも購入してもらうことをいいます。 ↩︎
-
消費者が、事業者に対して、自宅で契約を行うことを要請したことにより、事業者が消費者宅を訪問して勧誘を行い契約に至る場合には、訪問販売の多くの規制は適用除外となります(特定商取引法26条6項1号)。もっとも、消費者庁は、広告の表示額と実際の請求額との間に相当の開きがあった場合は、その請求額で契約を締結する意思を有して行った訪問要請とはいえないとして、適用除外の適用を否定する解釈を示しています(消費者庁・経済産業省「特定商取引に関する法律・解説(令和7年6月1日時点版)」)。裁判例も、東京高裁令和6年10月31日判決(令和6年(行コ)43号)は、当該適用除外が適用されるには、消費者が事業者に訪問を要請した時点において「役務の対価等の契約の内容の主要部分を少なくとも概括的には認識し、または認識することができる状態にあった」ことが必要であるという解釈を示しています。 ↩︎
森・濱田松本法律事務所外国法共同事業