「お得感」を示す表示で景品表示法違反とならないために(有利誤認表示)

競争法・独占禁止法

 当社は小売業者ですが、「閉店セール」という表示をしてセールを行おうと計画中です。具体的な閉店時期は未定ですが、何か問題はありますか。また、改装のために半年間閉店したあとにリニューアルオープンする予定である場合には、何か問題はありますか。いずれの場合も在庫は一掃するので、通常より相当安く販売する予定です。

 具体的な閉店時期が決まっていなくても、たとえば、在庫がなくなり次第閉店するのであればとくに問題はありません。しかし、閉店セールをしたら思いのほか好評なのでさらに商品を仕入れて営業を続けたりすると、有利誤認表示の疑いがあります。半年間閉店後リニューアルオープンする場合には、閉店することは事実なので問題ないと考えますが、リニューアルオープンをする予定であることを明記する必要があるでしょう。

解説

目次

  1. 有利誤認表示の意義
  2. 何についての誤認なのか
  3. 「お得感」を基礎づける事実は正しいものか
  4. まとめ

有利誤認表示の意義

 商品・役務の取引条件について、①実際のもの、または②同業他社のものよりも、取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示は禁止されています(景品表示法4条1項2号 有利誤認表示)。
 実際の取引条件よりも有利な取引条件を表示する有利誤認表示としては、たとえば、(i) 実際には誰にでもその価格で販売しているのに「あなただけには優待価格!」と表示したり、(ii) 「返金保証キャンペーン!今月中に限り、ご満足いただけなかった場合、手付金を全額返金!」と表示しながら、実際には同じ内容のキャンペーンを毎月繰り返していたりした、という場合があります。
 同業他社のものよりも有利な取引条件を表示する有利誤認表示としては、たとえば、自社と同業他社のインターネット接続サービスを比較して、「同業他社が提供するプランには電子メールサービスが付属していない」と表示していた場合に、実際には、当該同業他社が提供するプランにも無料オプションサービスとして電子メールサービスが付属していた、という場合があります。

何についての誤認なのか

 商品の品質等の内容に関する不当表示(優良誤認表示)については、一般消費者が表示どおりの品質の商品を手に入れることができないことから、不当であることが理解しやすいのに対して、設例のような「閉店セール」などの場合には、「一般消費者は、思ったとおりの品質の商品を、思ったとおりの価格で手に入れているのだから、問題ないのではないか」という感想を持たれることがあるようです。
 実際、公正取引委員会の価格表示ガイドラインですら、「倒産品処分」などの安さを強調する表示の不当性に関して、販売価格が通常時の価格と比較してほとんど差がないかどうかを問題にするかのような表現を用いています。

 しかし、このような考え方は、有利誤認表示の問題点を正しく理解したものとはいえません。消費者は、一般的に商品に対する知識や情報に乏しく、商品の内容と取引条件を客観的に判断して取引が自己に有利か不利かを判断することはできません。つまり、消費者は、客観的な商品の内容や取引条件以外の情報(たとえば「通常価格」や「メーカー希望小売価格」)を参考に、有利か不利かを判断しているといえます。 有利誤認表示は、このような、消費者が有利さ(お得感)を判断する基礎となる事実について虚偽の情報を伝えることにより、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害することが問題なのです。
 実際、現在の消費者庁ホームページの「よくある質問」では、閉店する予定がないのに「閉店セール」と表示する場合について、実際の販売価格が通常時の価格と比べて安いかどうかを問題にしていません。

「お得感」を基礎づける事実は正しいものか

 このように、「お得感」を基礎づける事実に虚偽があるかどうかがポイントです。そして、「閉店セール」という表示をみれば、消費者は「閉店のために在庫を売り切る必要があるから通常より安いのだろう」と感じるのだろうと思われます。したがって、仮に「閉店セール」が思いのほか好評であっても、さらに商品を仕入れて営業を続けることは、「お得感」を基礎づける事実について虚偽の情報を伝えていることになり、有利誤認表示に該当するものと考えられます。
 これに対して、在庫が全部売れた時に閉店するということは消費者の期待に反するものではないので、具体的な閉店時期が未定であっても、それだけで有利誤認表示と判断されることはないものと考えられます。
 ただし、リニューアルオープンする場合には、その旨明記すべきでしょう。なぜなら、一般的に言って、完全に店じまいするのであれば商品を本当にすべて処分するように思われますが、リニューアルオープンする場合には商品を後日に販売することもできるように思われるので、消費者は、完全に店じまいする場合の方が安いと感じる可能性があるからです。

まとめ

 取引条件をいつわる有利誤認表示については、 販売価格などの取引条件自体をいつわるような場合だけでなく、「お得感」を基礎づける事実をいつわることも不当表示であることに注意が必要です。実際の消費者庁の摘発事例も、後者のものが大半であるといえます。

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