2027年施行 暗号資産に関する金商法・資金決済法改正の概要
ファイナンス
目次
2026年7月15日、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(以下「本改正法」といいます)が国会で成立し、7月23日に公布されました。本改正法には、大きく分けて、「暗号資産に係る規制の見直し」「企業のサステナビリティ情報の開示・保証」「スタートアップ企業への資金供給の促進」「有価証券に関する不公正取引規制等の見直し」という4つの改正事項が含まれています。
このうち「暗号資産に係る規制の見直し」に係る本改正法の主な内容は、①暗号資産取引に係る規制を資金決済法から金商法へ移管することを前提に、金商法において、②無登録業者等への対応の強化、③情報公表規制の整備、④暗号資産交換業者(名称は「暗号資産取引業」者へ変更)への業規制の強化、⑤インサイダー取引規制の創設を含む不公正取引規制の強化の対応を行うことです。暗号資産に係る規制の見直しに係る規定は、公布日(2026年7月23日)から1年以内に施行されます。
本稿では、暗号資産に係る規制の見直しに係る本改正法の概要を上記5つの改正項目ごとに解説し、実務対応にあたっての重要ポイントを紹介します。
暗号資産に係る規制の見直しに係る金商法・資金決済法改正の概要
| 名称 | 資料 | 所管省庁 | 経過 |
|---|---|---|---|
| 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律 | 金融庁 | 2026年7月15日成立 2026年7月23日公布 |
本改正法は、2025年12月10日に公表された「金融審議会 暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告」1 (以下「WG報告」といいます)で示された方向性を踏まえ、金融商品取引法(以下「金商法」といいます)、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます)その他の関係法令を改正するものです。
現状、暗号資産は、その決済手段としての性格等に鑑みて主として資金決済法で規制されていますが、足下では決済手段としての利用よりも投資対象としての活用が進んでいるとの指摘があります。そこで、WG報告では、このように暗号資産の投資対象化が進展している状況を踏まえて、暗号資産取引に係る規制を資金決済法から金商法に移管したうえで、暗号資産の特性に応じた(有価証券とは異なる)金融商品としての規制を整備する方向性が示されました。
本改正法は、このようなWG報告の方向性に沿って、①暗号資産取引に係る規制を資金決済法から金商法へ移管することを前提に、金商法において、②無登録業者等への対応の強化、③情報公表規制の整備、④暗号資産交換業者(名称は「暗号資産取引業」者へ変更)への業規制の強化、⑤インサイダー取引規制の創設を含む不公正取引規制の強化の対応を行っています。
主な改正項目と企業への影響
本改正法のうち、「暗号資産に関する規制の見直し」部分の改正項目の概要は以下のとおりです。公布日(2026年7月23日)から1年以内に施行されます(附則1条柱書)。
| 改正項目 | 概要 | 企業への 影響 |
|---|---|---|
① 暗号資産取引に係る規制の資金決済法から金商法への移管 |
|
- |
|
||
|
||
|
||
② 無登録業者等への対応の強化 |
|
△ |
|
△ | |
|
△ | |
|
△ | |
|
◯ | |
| ③ 情報公表規制の整備 |
|
◎ |
|
◎ | |
|
◎ | |
|
◎ | |
| ④ 業規制の強化 |
|
◯ |
|
◎ | |
|
◎ | |
| ⑤ 不公正取引規制の強化 |
|
◎ |
|
△ | |
|
◯ |
さらに、2026年3月31日には「所得税法等の一部を改正する法律」が成立し、同日に公布されています。これには、本改正法の成立・施行を前提に、暗号資産取引に係る所得を分離課税の対象とすることがその内容として含まれています 2。
暗号資産取引に係る規制の資金決済法から金商法への移管
移管の概要
本改正法では、暗号資産取引に係る規制を資金決済法から金商法に移管するために、暗号資産に係る規定が資金決済法から削除され、金商法において、より拡充した内容の規定が新設されています。
より具体的には、資金決済法では暗号資産に係る規定が基本的にすべて削除されており、現行の「暗号資産交換業」は、「暗号資産取引業」に名称を変えて金商法の金融商品取引業に取り込まれています(改正金商法28条5項等参照)。
また、2025年の資金決済法改正で創設された「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」については、暗号資産取引の仲介行為に係る部分は金商法の金融商品仲介業に取り込まれ(改正金商法2条11項2号、66条の2第1項4号(「暗号資産売買媒介等業務」)等参照)、電子決済手段取引の仲介行為に係る部分のみが「電子決済手段サービス仲介業」として資金決済法に残置されています(改正資金決済法3章の3等参照)。
「暗号資産」の定義・範囲の維持
改正金商法2条は、以下のとおり「暗号資産」を有価証券とは異なる「金融商品」の一類型として定義しています。
一~三 (略)
三の二 暗号等資産(暗号資産又は資金決済に関する法律第2条第5項第4号に掲げるもののうち投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして内閣府令で定めるものをいう。以下同じ。)
三の三~五 (略)
物品その他の財産的価値(通貨を除く。)を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、通貨、通貨建資産(資金決済に関する法律第2条第7項に規定する通貨建資産をいう。以下この号において同じ。)及び同条第5項に規定する電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であつて、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であつて、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
この「暗号資産」の定義は、現行の資金決済法の定義(2条14項)と実質的に同一のものになっています(資金決済法における「本邦通貨及び外国通貨」が金商法では「通貨」とされるなど、各法における定義の差異に伴う形式的な調整のみが行われています)。
WG報告でも、現行の資金決済法における「暗号資産」の範囲を維持する方向性が示されていましたので(WG報告8頁)、本改正法における定義が資金決済法の定義と実質的に同一のものであることも踏まえると、現行の資金決済法における暗号資産の範囲が維持される、すなわち、暗号資産の範囲が拡大または縮小することは基本的に想定されないと思われます。
たとえば、資金決済法における暗号資産の定義に含まれる「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ」るという要件に関しては、暗号資産をいわゆるNFT(Non-Fungible Token)等と区別する解釈が示されていましたが 3、金商法でもかかる文言が維持されていることから、このようなNFT等と暗号資産の分水嶺にも変更は生じないものと推察されます。
移管に伴う経過措置
本改正法のうち暗号資産に係る規制の見直しに係る規定は、公布日(2026年7月23日)から1年以内に施行されます(附則1条柱書)。
暗号資産取引に係る規制が金商法へ移管されることに伴い、資金決済法において暗号資産交換業や電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の登録を受けたまたは登録申請中の事業者や、これまでは業規制の対象となっていなかった暗号資産を投資対象とする投資運用・助言行為等を行っていた事業者が、どのように取り扱われるのかが実務上重要な論点となりますが、この点については本改正法の附則に経過措置の規定があります。
その内容は、大きく分けて、業務継続を認める時間的な猶予措置と、その期間中における一部規制の適用除外(免除措置)として設計されています。暗号資産の発行・取引に関与している事業者は、自社がどのカテゴリーに該当するかを確認のうえ、本改正法の施行に向けた対応のスケジュールを策定することが重要となります。
(1)全事業者に共通する経過措置
- 届出義務(施行後2週間以内)
商号・名称、取扱暗号資産の名称等を内閣総理大臣へ届け出る義務があります。 - 業務継続の猶予(施行後6か月間)
本改正法上必要とされる登録(または変更登録)が完了していなくても、一定期間は現行業務を継続することが可能です。 - 登録申請による期間延長(最大2年間)
上記6か月以内に登録(変更登録)申請を行えば、登録又は登録拒否の処分まで業務継続が可能です(ただし、施行後2年が上限)。
(2)カテゴリー別に必要な手続と適用除外
経過措置期間中は改正金商法の主要な規制が適用されるものの(この期間においては金融商品取引業の登録を受けていない事業者も金融商品取引業者とみなされます)、従前の資金決済法下では課されていなかった重要システム提供業者に関する規制や自己資本規制比率等については、適用対象から除外されるケースがあります。必要となる手続(新規登録または変更登録)や免除される規制範囲は、事業者のカテゴリーにより異なります。事業者は、施行に向けて、自社のカテゴリーに応じた対応スケジュールを策定する必要があります。
対象事業者(カテゴリー) |
必要な手続 |
特記事項(免除措置等) |
|---|---|---|
① 既存の暗号資産交換業者(非金商業者) |
金融商品取引業の新規登録申請 |
重要システム提供業者に関する規制、自己資本規制比率等の免除 |
② 無登録で暗号資産を投資対象とする運用・助言、暗号資産の借入れを行っている業者 |
自己資本規制比率等の免除 |
|
③ 既存の電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者(非金商仲介業者) |
金融商品仲介業の新規登録申請 |
標識掲示義務等の免除 |
④ 既存の金商業者(暗号資産を投資対象とする運用・助言、暗号資産の借入れ) |
金融商品取引業の変更登録申請 |
− |
⑤ 既存の交換業者 兼 金商業者 |
重要システム提供業者に関する規制等の免除 |
|
⑥ 既存の電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者 兼 金商仲介業者 |
金融商品仲介業の変更登録申請 |
− |
経過措置の詳細については、長島・大野・常松法律事務所FinTechニュースレターNo.11「暗号資産に係る規制・税制の改正の内容(1)− 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要 − 」をご覧ください。
無登録業者等への対応の強化
本改正法では、無登録業者等への対応が大幅に強化されています。その主な内容は以下のとおりです。
罰則の引き上げ
無登録で暗号資産交換業を行った場合の罰則は、現行の資金決済法では3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科(資金決済法107条12号)ですが、金商法では10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科に大幅に引き上げられます(改正金商法197条1項4号の4)。
これは、本改正法で、無登録で金融商品取引業を行った場合の罰則自体も引き上げられることに対応するものです。
犯則調査・緊急差止命令の対象化等
証券取引等監視委員会の犯則調査の対象に、暗号資産に係る不公正取引が追加されます(改正金商法210条1項)。また、無登録営業や不公正取引といった違法行為が裁判所による緊急差止命令の対象にもなり(改正金商法192条)、証券取引等監視委員会の申立て権限も整備されます(改正金商法194条の7第4項)。
民事効規定の新設
金商法に違反する無登録業者が行った暗号資産の売付け等は暴利行為に該当するものと推定し、その売買契約等を原則として無効とする規定(民事効規定)が設けられます(改正金商法171条の15)。ただし、その対象は「未公表暗号資産」に限定されており、金融商品取引業者(暗号資産取引業者)が取り扱っている暗号資産は対象に含まれません(同条2項1号)。
これは、無登録業者による未公開株式等の取引に関する現行の金商法171条の2と同様の規定です。
ステルスマーケティング規制の導入
暗号資産の発行者や金融商品取引業者等から対価を受けて暗号資産の取引判断に関する意見をインターネット等で表示する場合には、対価を受ける旨の表示が義務付けられます(改正金商法171条の12)。
これは、有価証券取引に関する現行の金商法169条と同様の規定です。
支払手段としての利用者被害の未然防止
さらに、本改正法には含まれておらず、内閣府令事項とされていますが、暗号資産が詐欺的な投資勧誘の支払手段として利用されることを未然に防ぐ措置を講じることとされています 4。「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(以下「説明資料」といいます)では、新規口座開設直後にはアンホステッド・ウォレットへ移転できない等の熟慮期間を設けることが例として挙げられていますが、WG報告ではより詳細に「詐欺的事案の可能性に関する警告や移転目的の確認、取引モニタリングの適切な実施、新規口座開設直後及び新規ウォレット先への移転について一定の熟慮期間を設けるなどの対応を求めることが適当」とされていたところであり(WG報告26頁)、内閣府令案で具体的な措置の内容がどのように規定されるのかが注目されます。
情報公表規制の整備
情報公表規制の整備の目的・概要
現状、暗号資産の発行時には、暗号資産交換業者に対し、主に自主規制団体が定める規制に基づき、利用者へのホワイトペーパー等の提供が求められていますが、その記載内容が不明確であるなどの指摘がなされていました。
これに対し、WG報告を踏まえ、改正金商法では、利用者が正しい情報に基づき合理的に取引判断ができるよう、情報公表に係る規制が整備されました。規制内容は以下の3点です。
- 暗号資産の発行者の情報公表義務の新設
- 暗号資産取引業者の情報提供義務の強化
- 公表される情報の正確性の確保・投資者保護
暗号資産の発行者の情報公表義務の新設
(1)暗号資産の区分
改正金商法では、その発行者等の存在が観念できる暗号資産として、「特定暗号資産」という概念が新たに導入されました。「特定暗号資産」は、「暗号資産であって、特定の者のみが当該暗号資産を発行する権限を有するもの(これに類するものとして内閣府令で定めるものを含む。)」と定義されています(改正金商法2条50項)。
特定の者のみが発行権限を有する例としては、暗号資産取引業者が発行者の依頼に基づいてIEO 5 形式で販売する暗号資産が挙げられます。これに類するものとして内閣府令で定めるものとしては、パーミッション型ブロックチェーン 6 による暗号資産や、ERC-20 7 等の基盤となるトークン規格に基づき発行される暗号資産が含まれることが想定されます 8。
他方、ビットコイン(BTC)等の、上記のいずれにも該当しない暗号資産は、「特定暗号資産」には該当しません(本稿では便宜上、特定暗号資産に該当しない暗号資産を「非特定暗号資産」といいます)。
(2)発行時の情報公表義務
特定暗号資産を発行し、または発行しようとする者(以下「特定暗号資産発行者」といいます)は、あらかじめ一定の情報(以下「特定暗号資産情報」といいます)を内閣府令に定めるところにより公表しなければ、「特定暗号資産の募集・売出し」を行うことができません(改正金商法27条の39第1項本文)。
「特定暗号資産の募集・売出し」の定義は改正金商法2条52項に定められており、発行者が資金調達目的で、多数の投資家に対する勧誘を伴う形で暗号資産を発行しようとする場合、その勧誘の多くが該当します。
他方、以下の類型は「特定暗号資産の募集・売出し」に該当せず、特定暗号資産発行者に情報公表義務は課されません。
「特定暗号資産の募集・売出し」に該当しない類型(例)
- 暗号資産の無償付与の勧誘を行う場合
- (マイニングやステーキング等の)報酬として行う暗号資産の付与に関し勧誘を行う場合
- 適格機関投資家のみを相手方として一定の勧誘を行う場合(プロ私募)
- 少人数 9 を相手方として一定の勧誘を行う場合(少人数私募)
- 暗号資産取引業者が、特定暗号資産発行者の関与なく特定暗号資産の取扱い(以下「勝手上場」といいます)を行う場合
なお、プロ私募・少人数私募については、以下のように規制の潜脱防止が図られています。
- 一括譲渡以外の方法による譲渡禁止や、プロ投資家以外の者に対する譲渡禁止といった転売制限が、政令で設けられる見込み 10。
- これらの勧誘を行う者は、その相手方に対して、特定暗号資産情報の公表が行われていないことその他内閣府令で定める事項を告知しなければならない(改正金商法27条の49第1項・3項)。
- これらの勧誘により特定暗号資産を取得させ、または売り付ける場合には、相手方に対し、あらかじめまたは同時に、当該告知すべき事項に係る情報を提供しなければならない(改正金商法27条の49第2項・4項)。
公表対象となる「特定暗号資産情報」については、改正金商法27条の39第1項各号に列挙されています。具体的な内容については内閣府令を待つ必要がありますが、WG報告を踏まえると、以下の事項が含まれる可能性があると考えられます。
- 特定暗号資産の基本的情報
- 特定暗号資産に内在するリスク
- 特定暗号資産の商品性
特定暗号資産情報の具体例については、長島・大野・常松法律事務所FinTechニュースレターNo.12「暗号資産に係る規制・税制の改正の内容(2)− 情報公表規制の整備 − 」をご覧ください。
(3)継続的な情報公表義務
「特定暗号資産の募集・売出し」を行った特定暗号資産発行者は、特定暗号資産の発行後も、大要以下の継続的な情報公表義務を負います。
項目 |
概要 |
改正金商法 |
|---|---|---|
特定暗号資産定期情報の公表 |
年1回、特定暗号資産情報の一部を、原則として事業年度終了後3か月以内に公表しなければならない。 |
27条の50第1項本文 |
特定暗号資産臨時情報の公表 |
当該特定暗号資産について公益または投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める場合に該当することとなったときは、遅滞なく、その内容に関する情報を公表しなければならない。 |
27条の51 |
ただし、暗号資産の分権化等により発行者の活動が利用者の取引判断に重要ではなくなった場合等において、内閣総理大臣の承認を受けたときは、特定暗号資産発行者の継続的な情報公表義務は免除されます(改正金商法27条の50第1項ただし書)。
暗号資産取引業者の情報提供義務の強化
(1)特定暗号資産に関する情報公表義務
- 発行時の情報公表義務
特定暗号資産の募集・売出しの取扱いを行おうとする暗号資産取引業者は、あらかじめ(特定暗号資産発行者が作成・公表する)特定暗号資産情報を内閣府令に定めるところにより自らも公表しなければ、当該募集・売出しの取扱いを行うことができません(改正金商法27条の39第4項)11。 - 勝手上場時の情報公表義務
暗号資産取引業者は、特定暗号資産情報が既に公表されている特定暗号資産につき勝手上場を新たに行おうとする場合、特定暗号資産発行者が公表した情報をあらかじめ公表しなければなりません(改正金商法27条の53第1項)。
(2)非特定暗号資産などに関する情報公表義務
- 新規取扱い開始時の情報公表義務
特定暗号資産情報の公表がされていない暗号資産を新たに取り扱おうとする暗号資産取引業者は、あらかじめ、当該暗号資産に関して投資者に明らかにされるべき基本的な情報として内閣府令で定める情報(以下「暗号資産情報」といいます)を(自ら作成して)公表しなければなりません(改正金商法27条の60第1項本文)。 - 対象となるケース
非特定暗号資産の取扱いを開始する場合のほか、日本国外で発行された特定暗号資産を暗号資産取引業者が勝手上場する場合も含まれると考えられる。 - 公表が求められる内容
詳細は内閣府令を待つ必要があるが、WG報告を踏まえると、特定暗号資産の性質・機能や供給量、基盤技術に関する情報が含まれる可能性がある。 - 経過措置
既存の暗号資産交換業者については、現に取り扱っている暗号資産につき、施行日から新規取扱いを行おうとするものとみなされ、施行日から3か月以内に暗号資産情報を公表する必要がある(附則8条5項、9条4項)。特に複数の暗号資産の取扱いを行っている暗号資産交換業者は、対応スケジュールを早期に策定する必要がある。 - 臨時情報の公表義務
暗号資産情報を公表した暗号資産取引業者は、当該暗号資産について公益または投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める場合に該当することとなったときは、遅滞なく、その内容に関する情報を公表しなければなりません(改正金商法27条の61本文)。
公表される情報の正確性の確保・投資者保護
(1)特定暗号資産発行者の財務監査証明取得義務
特定暗号資産発行者は、公表する特定暗号資産情報のうち、財務計算に関する情報で内閣府令で定めるものについて、特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければなりません(改正金商法27条の59第1項本文)。
ただし、当該募集・売出しにあたり投資家が払い込む額が、政令で定める投資上限を超えない場合は、上記の財務監査証明取得義務が免除されます(改正金商法27条の59第1項ただし書)。この投資上限として、株式投資型クラウドファンディングと同様に、一般投資家につき1件当たり原則として上限50万円(50万円を超える場合には収入または純資産の5%まで)、年間総額の最大上限200万円という投資上限(特定投資家は制限なし)が設定される予定です 12。
(2)虚偽記載等についてのエンフォースメントの強化
- 民事責任の規定の整備
まず、特定暗号資産発行者により作成される情報の虚偽記載・不提供については、特定暗号資産発行者およびその関係者に対し、一定の民事責任が課されます(改正金商法27条の41から27条の48)。この規定は、有価証券の開示書類に関する虚偽記載・不提出の民事責任に関する規定(金商法16条から22条)と同様の構造です。
たとえば、公表された特定暗号資産情報につき重要事項の虚偽記載があった場合には、特定暗号資産発行者は、特定暗号資産の募集・売出しに応じて特定暗号資産を取得した投資家に対して損害賠償責任を負います(改正金商法27条の42)。特定暗号資産発行者は、自らに過失がなかったことを立証してもこの損害賠償責任を免れることはできないほか(無過失責任)、損害額については推定規定が置かれるなど(改正金商法27条の43)、虚偽記載を行った特定暗号資産発行者に対しては重い責任が課されます。さらに、このような虚偽記載が行われた場合には、特定暗号資産発行者の役員などの関係者にも、一定の民事責任が課されます(改正金商法27条の45)。
次に、非特定暗号資産に関して作成される情報の虚偽記載・不提供については、これを取り扱う暗号資産取引業者に対し、一定の民事責任が課されます(改正金商法27条の66、27条の67)。 - 刑事罰の整備
特定暗号資産に関する重要な事項に関する虚偽記載につき、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはこれらの併科が科されるほか(改正金商法197条1項4号の3)、暗号資産に関する虚偽記載や情報不公表等についても刑事罰が整備されます(改正金商法197条の2第1項10号の4から10号の6等)。 - 犯則調査の対象への追加・課徴金制度の整備
虚偽記載等については、証券取引等監視委員会の犯則調査の対象に追加されるほか(改正金商法210条1項)、課徴金制度の対象とされます(改正金商法172条の13から172条の19)。
業規制の強化
業規制の強化の概要
WG報告では、暗号資産には、セキュリティトークン(有価証券をトークン化したもの)と同様の流通性があることを踏まえ、暗号資産交換業者には、基本的に第一種金融商品取引業に適用される規制と同様の規制を適用することとする一方で、資金決済法において暗号資産の性質に応じて設けられている規制(例:安全管理措置等)については、金商法への移管後も同様の規制を設けるという方向性が示されました。
本改正法においては、このような方向性に沿い、以下のとおり、暗号資産交換業者(名称は「暗号資産取引業」者へ変更)への業規制の強化等の対応が行われています。
- 業規制の対象となる行為の範囲を広げ、暗号資産の借入れや暗号資産を投資対象とする投資運用・助言行為を新たに業規制の対象に含める
- 暗号資産取引業には第一種金融商品取引業に相当する規制を適用することで、規制強化を行う
- 暗号資産の管理を行うための重要なシステムの提供業者(暗号資産管理関係業務提供者)に係る業規制(事前届出制)を新たに導入する
業規制の対象となる範囲の拡張
本改正法では、業規制の対象となる行為の範囲を広げ、暗号資産の借入れと、暗号資産(現物)を投資対象とする投資運用行為や投資助言行為を業として行う場合にも業登録が必要とされています。
(1)暗号資産の借入れ
暗号資産の借入れについては、改正金商法2条8項25号に規定されており、これを業として行う行為は「暗号資産取引業」(改正金商法28条5項)に該当します。
もっとも、暗号資産取引業のうち、暗号資産の借入れ(および特定暗号資産の募集・売出し(5-2(2)参照))を業として行う行為は「暗号資産取引特例業務」(改正金商法29条の6第7項)と定義されており、暗号資産取引特例業務のみを行う者 13 については、兼業規制に係る届出が不要とされ(同条3項)、責任準備金や自己資本規制比率に係る規定が適用されない(同条4項)など、規制の一部が緩和されています(適用対象外とされているこれらの規制の詳細は下記6-3をご参照ください)。
(2)暗号資産(現物)を対象とする投資運用行為・投資助言行為
暗号資産(現物)を対象とする投資運用行為および投資助言行為については、改正金商法2条8項11号(投資助言)、12号(投資法人資産運用・投資一任)、14号(投資信託委託)および15号(自己運用)に規定されており、これらを業として行う行為は、投資運用業(改正金商法28条4項)または投資助言・代理業(同条3項)に該当します。
このように、現行の投資運用業と投資助言・代理業の範囲を拡張する形で改正されており、(暗号資産の借入れとは異なり)暗号資産取引業の中に組み込まれているわけではない点に注意が必要です。
暗号資産取引業に係る規制の強化
上述のとおり、暗号資産取引業者(「暗号資産交換業」者から名称変更)には、基本的に第一種金融商品取引業に相当する規制 14 が適用され、また、第一種金融商品取引業には相当する規定がないような暗号資産に特有の資金決済法の規制(安全管理措置等)は、金商法への移管後も引き続き同様の規制が設けられています。
第一種金融商品取引業に相当する規制の中には、現行の資金決済法ではそもそも規制が課されていない項目のほか、資金決済法にも規制は存在するものの規制が強化される項目も含まれます。なお、一部の規制は、第一種金融商品取引業に相当する規制をそのまま適用するのではなく、暗号資産取引業に特有の規制内容の調整が行われている点に注意が必要です。
- 主要株主規制
資金決済法上は規定がない主要株主規制が新たに課されることになります(改正金商法32条から32条の4)。 - 兼業規制
暗号資産取引業では、付随業務とそれ以外の業務の2つに分類され、付随業務以外の業務には事前届出が必要とされるものの、当局の承認は求められていません(改正金商法35条の2の2)。この点は、現行の資金決済法では事後報告で足りることと、金融商品取引業では付随業務・(事後)届出業務・承認業務の3つに分類されていることの間をとった規制内容になっているといえます。 - 業務管理体制
詳細は内閣府令で定められる予定ですが(改正金商法35条の3第2項)、WG報告および説明資料によれば、業務管理体制として、以下の体制等の整備が義務付けられると見込まれます 15。 - 取り扱う暗号資産の審査体制
- 取扱い暗号資産に関する情報提供体制
- 顧客適合性確保のための確認体制
- 売買審査体制
- 暗号資産の発行者が情報公表規制に違反した場合には、当該暗号資産を取り扱わないようにするための体制等
- 取扱暗号資産の審査
公益または投資者の保護を確保するために必要な基準として内閣府令で定める基準に適合しない暗号資産の取扱いが禁止されます(改正金商法43条の7)。詳細は内閣府令で定められる予定ですが、説明資料4頁によれば、流動性やコンプライアンス、移転記録管理等に関する基準を定める予定とされています。 - 顧客の暗号資産の管理
「暗号資産等管理業務」16 を行う金融商品取引業者は、顧客に対し善良な管理者の注意をもって当該業務を行わなければならず、また、暗号資産等管理業務を行うにあたっては、内閣府令で定めるところにより、顧客の暗号資産を適正に管理するための方法によらなければなりません(改正金商法43条の10、43条の11)。
詳細は今後策定される内閣府令を待つ必要がありますが、WG報告を踏まえると、最近の不正流出事案を踏まえ、サプライチェーン全体に及ぶ包括的なセキュリティ対策の強化が求められる可能性があると思われます 17。 - 責任準備金
コールドウォレット等で管理する暗号資産についても、ソーシャルエンジニアリング等の手法による流出リスクがあることを踏まえて、不正流出事案が生じた場合の補償原資として責任準備金の積立てが義務付けられています(改正金商法46条の5)18。
実務上の影響を左右する責任準備金の具体的な積立率については「管理する暗号資産の残高に応じ、セキュリティ水準も勘案しながら」定める予定とされており 19、今後策定される内閣府令に注視が必要です。 - 自己資本規制比率
資金決済法上は規定がない自己資本規制比率が新たに課されることになります(改正金商法46条の6)。実務上は具体的な比率が重要ですが、今後策定される内閣府令の公表を待つ必要があります。 - 外務員制度
資金決済法上は規定がない外務員制度が新たに導入されることになります(改正金商法64条から64条の9)。
暗号資産管理関係業務に係る業規制の導入
最近の不正流出事案には、暗号資産交換業者向けのウォレットソフトウェアを提供する事業者がサイバー攻撃を受けたことが不正流出の一因となったものが見られることを踏まえ、本改正法では、暗号資産交換業者に対して暗号資産の管理を行うための重要なシステムの提供等を行う事業者について、業務の適切な運営を確保するための「暗号資産管理関係業務」(改正金商法2条54項)に係る業規制が新たに導入されています。
その主な規制の概要は以下のとおりです。
(1)規制対象
規制対象となる「暗号資産管理関係業務」は、次の3つの業務をいうものと定義されており、その規制の外延は今後策定される内閣府令を待つ必要があります。
- カストディ業務を行う金融商品取引業者(暗号資産取引業者)に対して、顧客の暗号資産の管理に必要な情報システム(内閣府令で定めるものに限る)を継続的に利用させる業務
- 当該業者の委託を受けて当該情報システムの保守または管理(内閣府令で定めるものに限る)を行う業務
- 当該業者の委託を受けてカストディ業務のうち内閣府令で定めるものを行う業務
(2)参入規制
参入は事前届出制で(改正金商法66条の94)、届出をした者は「暗号資産管理関係業務提供者」(改正金商法2条55項)と定義されています。
(3)業務管理体制
業務管理体制の詳細は内閣府令で定められる予定ですが、暗号資産管理関係業務提供者は、①暗号資産管理関係業務を適確に遂行するための業務管理体制を整備し、②情報の漏えい等の防止その他の安全管理のために必要な措置(システムの安全性確保等)を講じなければなりません(改正金商法66条の97)。
(4)監督
業務改善命令、業務廃止・停止命令、報告徴求などの監督権限が定められています(改正金商法66条の102から66条の106)。
さらに、実務上は、暗号資産取引業者が外部の者からこのようなシステムの提供等を受ける場合には、当局に対して事前届出を行った事業者以外から提供を受けることが禁止されていることが重要です(改正金商法43条の12)。ウォレットサービス等のシステムの提供を外部から受けている既存の暗号資産交換業者にとっては、当該システム提供事業者が海外に所在しており、当局への届出を期待できない場合などには、事業者の切り替えや内製化等の対応を迫られる可能性があり、実務上も非常に影響が大きいと考えられます。
不公正取引規制の強化
不公正取引規制の強化の概要
現行の金商法においては、暗号資産の不公正取引規制として、不正行為の禁止に関する一般規制、風説の流布や偽計、相場操縦行為等の禁止規制が整備されています。他方で、暗号資産のインサイダー取引を直接規制する規定は設けられていないほか、課徴金制度や証券取引等監視委員会の犯則調査権限等も整備されておらず、違反行為への抑止力が不十分との指摘があります。
本改正法においては、暗号資産の投資対象化が進展する中で、暗号資産取引の公正を害するような不公正取引への抑止力を確保するために、WG報告の方向性に沿い、以下のとおり暗号資産の不公正取引規制の強化が行われています。
- 暗号資産のインサイダー取引規制を新設
- 暗号資産にも妥当すると考えられる不公正取引規制についても併せて整備
- 暗号資産に係る不公正取引を証券取引等監視委員会の犯則調査や課徴金制度の対象へ追加すること等によるエンフォースメントの強化
暗号資産のインサイダー取引規制の新設
本改正法で新設される暗号資産のインサイダー取引規制においては、現行の上場有価証券等のインサイダー取引規制の枠組みをベースに、一定の暗号資産について、一定の関係者が、「重要事実」の公表前に売買等を行うことが禁止されます(改正金商法171条の7から171条の9)。これにより、暗号資産の発行者や暗号資産取引業者等は、以下のような対応が必要になると考えられます。
- 未公表の重要事実の管理体制の整備
- 役職員に対する取引制限や内部規程の整備
- 情報の公表のタイミングや範囲に関するガバナンスの強化等
(1)規制対象とされる暗号資産
インサイダー取引規制の規制対象となる暗号資産は、基本的に、暗号資産取引業者で既に取扱いが行われている暗号資産と、かかる取扱いの開始が暗号資産取引業者の業務執行決定機関において決定された暗号資産に限定されます(改正金商法171条の7第1項、171条の8第1項、171条の9第1項)。したがって、国内または国外の無登録業者やDEX(分散型取引所)等のみで取り扱われている暗号資産は、暗号資産取引業者における取扱いの開始が決定されていない限り、基本的にはインサイダー取引規制の対象外となります。
(2)「重要事実」
暗号資産のインサイダー取引規制の規制対象とされる「重要事実」の内容は、大要以下のとおりです。
項目 |
概要 |
|---|---|
暗号資産の発行者に関する重要事実 |
|
暗号資産取引業者に関する重要事実 |
|
大量売買者に関する重要事実 |
|
なお、上記の表に列挙する事実からは、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準に該当するものが除かれています(いわゆる軽微基準)。実務上は、個別に列挙されている各重要事実の該当性や、さらにはバスケット条項の該当性を判断するうえでも、軽微基準の具体的な内容が重要になると考えられますので、今後策定される内閣府令の内容を注視する必要があります。
(3)規制対象者
上記(2)の重要事実の類型に応じて、それぞれ以下の関係者が所定の経緯により重要事実を知った場合に、インサイダー取引規制の対象者とされます。
項目 |
規制対象となり得る関係者 |
|---|---|
暗号資産の発行者に関する重要事実 |
「特定暗号資産発行者関係者」(改正金商法171条の7第1項)
|
暗号資産取引業者に関する重要事実 |
「暗号資産取引業者関係者」(改正金商法171条の8第1項)
|
大量売買者に関する重要事実 |
「大量売買者関係者」(改正金商法171条の9第1項)
|
また、上記の関係者から重要事実の伝達を受けた者などの一定の者(いわゆる第一次情報受領者)もインサイダー取引規制の対象者とされます(改正金商法171条の7第3項、171条の8第3項、171条の9第3項)。
(4)適用除外
以下のとおり、暗号資産のインサイダー取引規制についても、(⑧の類型を除き)上場有価証券等のインサイダー取引規制と類似した適用除外類型が定められています(改正金商法171条の7第6項、171条の8第5項、171条の9第5項)。
インサイダー取引規制の適用除外(例)
- 既に有する権利の行使
- 法令による取引
- 知っている者の間の市場外取引
- 組織再編
- いわゆる「知る前契約」の履行
- いわゆる「知る前計画」の実行
- (大量売買者の関係者による取引のみ)一定の情報受領者による取引
- 技術的仕様に基づいて一定の役務を提供することにより暗号資産の提供または取得をする場合 22 その他これに準ずる特別の事情に基づく暗号資産に係る売買等であることが明らかな売買等をする場合(内閣府令で定める場合に限る)
(5)情報伝達・取引推奨行為の禁止
本改正法では、暗号資産のインサイダー取引規制についても、上場有価証券等のインサイダー取引規制(金商法167条の2)と同様、関係者による情報伝達・取引推奨行為が禁止されます(改正金商法171条の10)。
(6)罰則
暗号資産のインサイダー取引規制についても、上場有価証券等のインサイダー取引規制と同様、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金または併科とする刑事罰が定められています(改正金商法197条の2第1項16号から19号)。
その他不公正取引規制の整備
本改正法では、上記のインサイダー取引規制のほか、以下のとおり、暗号資産に係る不公正取引規制が併せて整備されます。
(1)安定操作取引の禁止
暗号資産についても安定操作取引の禁止規制が定められます。具体的には、政令で定めるところに違反して、暗号資産等の相場をくぎ付けし、固定し、または安定させる目的をもって一定の取引を行うことが禁止されます(改正金商法171条の5第3項)。
これは、上場金融商品等や店頭売買有価証券の相場に関する現行の金商法159条3項と同様の規定です。
(2)ステルスマーケティング規制
上記4-4にも記載したとおり、暗号資産の発行者や金融商品取引業者等から対価を受けて暗号資産の取引判断に関する意見をインターネット等で表示する場合には、対価を受ける旨の表示が義務付けられます。
エンフォースメントの強化
本改正法においては、以下のとおり、暗号資産に係る不公正取引につきエンフォースメントの強化が行われています。
(1)証券取引等監視委員会の犯則調査
上場有価証券等の不公正取引に係るエンフォースメントと同様に、暗号資産に係る不公正取引についても、証券取引等監視委員会の犯則調査の対象とされることとなります(改正金商法210条1項)。
(2)課徴金制度
上場有価証券等の不公正取引規制と同様に、暗号資産に係る不公正取引についても、課徴金制度が新設されます(改正金商法173条から174条の3、175条の3から175条の5)。これに伴い、暗号資産に係る不公正取引についても、証券取引等監視委員会の課徴金調査の対象とされることとなります(改正金商法177条1項)。
(3)外国金融商品取引規制当局に対する調査協力
暗号資産取引についても、有価証券の取引等と同様、外国金融商品取引規制当局に対する調査協力の対象となります(改正金商法189条1項)。これにより、暗号資産取引の関係者等に対する出頭命令や報告・資料提出の命令等の実施が可能となります。
-
金融庁「金融審議会『暗号資産制度に関するワーキング・グループ』報告の公表について」(令和7年12月10日) ↩︎
-
令和8年度税制改正の詳細については、NO&T FinTech Legal Update ~FinTechニュースレター~ No.15/「暗号資産に係る規制・税制の改正の内容(5)− 令和8年度税制改正 − 」をご参照ください。 ↩︎
-
金融庁「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係『16. 暗号資産交換業者関係』」I-1-1①(注)、金融庁「『事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)』の一部改正(案)の公表に対するパブリックコメントの結果等について(コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方)」(2023年3月24日)No.2,16,21等参照 ↩︎
-
説明資料4頁 ↩︎
-
Initial Exchange Offeringの略。暗号資産の発行者が、暗号資産取引業者(交換業者)に販売業務を委託し、当該暗号資産取引業者(交換業者)がプロジェクトやトークンの審査を行ったうえで、自らのプラットフォームを通じて一般の利用者に販売・仲介する仕組み。 ↩︎
-
ネットワークへの参加に、あらかじめ特定の管理者の許可(パーミッション)を必要とするブロックチェーン。 ↩︎
-
イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーン上で、代替性トークン(同等の価値を持ち、互いに代替可能な暗号資産)を発行・管理するための標準的な技術規格。 ↩︎
-
WG報告12頁 ↩︎
-
WG報告13頁では49名以下とすることが提案されていますが、具体的な閾値については政令を待つ必要があります。 ↩︎
-
WG報告14頁 ↩︎
-
なお、「特定暗号資産発行者等」(特定暗号資産発行者や暗号資産取引業者などを含む概念)は、特定暗号資産の募集・売出しにより特定暗号資産を取得させ、または売り付ける場合には、原則として、あらかじめまたは同時にその相手方に対し、(特定暗号資産発行者が作成・公表する)特定暗号資産情報を内閣府令に定めるところにより提供しなければなりません(改正金商法27条の40第1項本文)。これは、有価証券における目論見書の交付義務(金商法15条2項)に類似した、勧誘の相手方となる個別の顧客に対する情報提供義務です。なお、日本国外で発行された特定暗号資産を暗号資産取引業者が勝手上場する場合には、このような情報提供義務は課されていません。 ↩︎
-
説明資料3頁 ↩︎
-
ただし、一部の第一種金融商品取引業者を除きます。 ↩︎
-
主に証券会社等に適用される業規制。 ↩︎
-
WG報告20頁、説明資料4頁 ↩︎
-
「暗号資産等管理業務」とは、暗号資産取引に関して顧客から金銭の預託を受ける行為、または他人のために暗号資産の管理をする行為に係る業務のことをいいます(改正金商法28条5項2号・8項)。 ↩︎
-
WG報告21頁。なお、具体的な対策の内容については、法令ではなくガイドライン等で定められる方向が示されています。 ↩︎
-
WG報告22頁 ↩︎
-
説明資料4頁 ↩︎
-
「特定暗号資産」の定義については、FinTechニュースレター「暗号資産に係る規制・税制の改正の内容(2)− 情報公表規制の整備 − 」(2026年5月)をご参照ください。 ↩︎
-
説明資料5頁によれば、大量売付け・大量買付けに該当するものとして、発行済暗号資産の20%以上の売買等が政令で定められる予定です。 ↩︎
-
マイニングやステーキングによる暗号資産の取得等が想定されていると考えられます。 ↩︎
長島・大野・常松法律事務所
- コーポレート・M&A
- IT・情報セキュリティ
- 知的財産権・エンタメ
- 国際取引・海外進出
- ベンチャー
長島・大野・常松法律事務所
長島・大野・常松法律事務所