現場担当者、法務、経営、弁護士……すべての関係者が知っておくべきクレーム対応の全貌『カスハラ対策実務マニュアル』PR

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目次

  1. カスハラが社会問題化し、国も対策に取り組むように
  2. 厚労省のカスハラマニュアルに対応した初の書籍
  3. 「カスハラ」という言葉の定義から議論を深めた
  4. 毅然としたカスハラ対応で労働生産性の向上につなげていく

「耐用年数の過ぎた購入商品が故障したので交換に応じてほしい」「イメージと違うのでやり直してほしい」——業種別に起きるさまざまなクレーム。自社に落ち度がないからといって強引な対応をしてしまうと、その一部分だけが切り取られてSNSで炎上し、会社のイメージダウンにつながる可能性もあります。

また、日々のクレーム対応が行き過ぎてしまうと、ストレスを受けた担当者が休職・離職してしまうだけでなく、企業としては安全配慮義務違反に問われるリスクもあります。「クレーム対応は消費者・顧客対応を担う現場部門だけの責務ではない」と考えを改めるべきタイミングにきています。

では、クレーム内容を正しく捉え、適切に対応するにはどうすべきなのでしょうか。日本加除出版は2022年8月、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策の知識やノウハウをまとめた『カスハラ対策実務マニュアル』を刊行しました。今回は、編著者の香川総合法律事務所代表 香川希理弁護士、企画を担当した日本加除出版 佐伯寧紀氏に、出版の経緯と狙いについて伺いました。

プロフィール

香川 希理弁護士
香川総合法律事務所代表弁護士。2006年明治大学法学部卒。2009年立教大学大学院法務研究科卒。同年司法試験合格。同年最高裁判所司法研修所入所。2010年弁護士登録(東京弁護士会)。2013年香川総合法律事務所設立。主な役職等:東京弁護士会マンション管理法律研究部。東京弁護士会弁護士業務改革委員会マンション部会。東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会(2011年~2020年)。公益財団法人澤田経営道場企業法務講師。保有資格:マンション管理士、管理業務主任者。

佐伯 寧紀氏
日本加除出版株式会社編集部課長。

カスハラが社会問題化し、国も対策に取り組むように

本書を企画した経緯について改めて伺えますか。

佐伯氏:
2020年10月に、厚生労働省が企業向けのカスハラ対応マニュアルを策定する方針を決めたことがきっかけでした。ちょうどその頃、新聞等でカスハラが増えているという報道を見かけたこともあり、別書籍の著者にカスハラをはじめとするクレーム対応に詳しい弁護士を伺ったところ、香川弁護士の名前があがり、お声がけさせていただきました。

香川弁護士:
私自身、クレーム問題は以前から扱っていましたが、2018年頃より社会の潮目が少しずつ変わってきたように感じていました。「クレームに対応しない企業が悪い」という考え方から、「そんなクレームをする客のほうが悪い」「クレーム対応を現場に押し付けている企業が悪い」といった意見が一般的になりつつあったのです。

2020年になるとTVなどでもカスハラ問題が特集されたり、私への講演依頼が増加したりなど、カスハラへの注目度がより高まってきたので、非常に良いタイミングでお声がけいただきましたね。

カスハラが社会問題になっている背景については、どのようにお考えですか。

香川弁護士:
スマートフォンやSNSが普及したことは大きいと思います。

企業側があいまいな回答をしたり、強引な回答をしたりすると、そのクレーム対応がインターネット上にさらされてしまうケースが増えてきています。顧客側は強力な武器を手にしたともいえるでしょう。

一方で、企業は人手不足によって、顧客対応よりも従業員保護を優先しなければならない場面も出てきています。顧客側、企業側の事情が相まって、カスハラが社会問題化してきたと考えています。

佐伯氏:
ストレス社会からクレームのレベルが過剰になってきたことで、正当なクレームと不当なクレームをどう線引すべきかという問題が出てきているのが、企業側の1つの悩みでしょうね。

そうしたなか、2022年2月に厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が公表されました。

香川弁護士:
2020年6月に施行された「厚労省パワハラ指針(正式名称:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)」でも、カスハラに関する内容は盛り込まれていました。ただ、その対応策としてあげられている項目は、体制の整備やマニュアルの作成、研修の実施といった一般論にとどまっており、企業側からは「具体的に何をすればよいのかわからない」という声があがりました。厚労省のカスハラマニュアルが公表されたのは、そうした流れからです。

しかしながら、カスハラと一口に言っても、業界や企業規模が異なれば、クレームの内容も変わります。厚労省のカスハラマニュアルにおいても、どの会社にも共通するような項目をまとめざるを得ず、あまり踏み込んだ内容にはなっていません。

業界、会社ごとに考えていかなければならない難しさがあるんですね。

香川弁護士:
もう1つの問題は、カスハラ対応のほとんどが「裁判外交渉」であるという点です。例えば「誠意を見せろ」と言われたときにどう対処すべきか、100万円の損害賠償が妥当なところ300万円の請求がなされた場合にどうすべきか、といった内容は、厚労省がアドバイスすべき性質のものではありません。各企業としては、厚労省のカスハラマニュアルを参考にして独自に個別具体的なマニュアルを作成する必要があります。

厚労省のカスハラマニュアルに対応した初の書籍

本書の特長について伺えますか。

香川弁護士:
一般的なクレーム対応本は、私が執筆したものも含めこれまでいくつかありましたが、厚労省のカスハラマニュアルにここまで対応して書かれたものは他にありません。

また、厚労省のマニュアルに足りない部分を補っている点も特長です。業界ごとの特徴や対処方針、実際の顧客対応で起こり得る裁判外交渉に近い具体的なケースへの対応方法をまとめています。

香川総合法律事務所代表 香川希理弁護士

香川総合法律事務所代表 香川希理弁護士

佐伯氏:
第1編ではカスハラ対策の基本、第2編では実務のポイントを押さえ、第3編では厚労省のカスハラマニュアルを踏まえたうえで企業がやるべきこと、第4編では業界別のケーススタディをまとめています。読者層は、現場担当者だけでなく、経営層や法律実務家など幅広い方々を想定しています。

弁護士の先生からは、「裁判例には出てこないカスハラの実態や対応方法が知りたかった」という声もいただいています。弁護士が実務で使える内容になっていながらも、弁護士以外の方が読んでも理解しやすいよう工夫しています。

香川弁護士:
特に第4編では、業界ごとのカスハラ対策の全体像を捉えつつ、具体的な対応のイメージを持っていただけるようこだわりました。小売、食品、介護、不動産、マンション管理、建設、金融、システム開発、冠婚葬祭といったカスハラが起こりやすい9つの業界についてそれぞれ特徴をまとめたうえで、ケーススタディを記載しています。その業界の慣習や常識なども含め、一般的な法律書籍には書かないようなところまで踏み込んでいます。

本書のおすすめの読み方があれば教えてください。

香川弁護士:
時間のない方は、まず第4編の自社の業界について確認していただき、現場の担当者の方には「無断録音は許されるのか」といった具体的な対応方法がまとめてある第2編を読んでいただきたいです。経営者には、第1編や第3編を読んで全体像を掴んでいただきたいですね。

佐伯氏:
現場の担当者だけではなく、ぜひその上長の方にも読んでいただきたいです。従業員がカスハラ対応の悩みを抱え込み疲弊していくケースは多いので、会社全体として取り組むためにはどうすべきか考えるための参考にしていただきたいです。

香川弁護士:
企業内でマニュアルをつくるときの参考文献としても使っていただけます。実際に、「自社のマニュアル策定の参考にしました」という声はすでに複数いただいていますね。

佐伯氏:
企業ごとにカスハラ対応の指針をつくっておくと判断がぶれず、現場も疲弊せずにすみます。本書は予防や早期対応という場面でも大いに役立つと思います。

「カスハラ」という言葉の定義から議論を深めた

本書の発刊以降、カスハラの認知度について変化は感じられていますか。

香川弁護士:
それはあると思いますね。従来の弁護士業界では「カスハラって何? 弁護士がやることなの?」という認識が強かったですが、業務としてカスハラ対応に取り組まなければならないという意識が次第にできているように感じます。

「カスハラ」という言葉によって、弁護士をはじめ多くの関係者の意識が変わってきているのかもしれません。

佐伯氏:
書籍のタイトルに「クレーム」という用語をいれず、「カスハラ」のみ入れるかどうかは、正直悩みました。「クレーム」という用語を並列させる方法も検討しましたが、実際のクレームには正当なものもあります。「カスハラ」という名称を書名に入れることによって、本書の立ち位置が明確になりましたね。

香川弁護士:
いちばん先にカスハラ対策の軸となる基本書をつくっておきたいという狙いもありました。正当なクレームと不当クレームの区別については厚労省のカスハラマニュアルにも記載がありますが、クレームとカスハラの区別に関しては、これまで誰も書いていませんでした。本書では、答えのない領域でカスハラに対する自分たちなりの見解を示した形です。

佐伯氏:
本書を通じてカスハラという言葉に対する議論を深められたことは非常によかったと感じています。他の書籍でも参照してもらえるような本になったのではないでしょうか。

毅然としたカスハラ対応で労働生産性の向上につなげていく

最後に、BUSINESS LAYERSの読者に向けてメッセージをお願いします。

香川弁護士:
日本企業の労働生産性の低さの原因の1つに、過剰なサービス提供やカスハラ問題があると考えています。

従業員の休職や離職はもちろんですが、現場担当者がクレームに悩んだり疲弊したりしていることで、目に見えない労働生産性の低下を招いています。

一方で、社会全体のカスハラに対する風向きは、ここ数年で大きく変わってきています。経営者や法務の方はこのタイミングで、自社専用のカスハラ指針・マニュアルの作成に取り組むなど、意識を切り替えていただきたいです。

また、経営者は「カスハラには毅然として対応する」というメッセージを発信しても良いでしょう。それがひいては日本企業の労働生産性向上にもつながっていくはずです。

ぜひ、勇気を持って取り組んでいただきたいと思います。

カスハラ対策実務マニュアル

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