令和4年改正・消費者裁判手続特例法のポイント解説
訴訟・争訟 公開 更新
目次
はじめに
2016年(平成28年)に施行された消費者裁判手続特例法は、施行から5年を経て、2022年(令和4年)3月1日に改正法 1(以下「本改正法」といいます)の法案が国会に提出され、同年5月25日に成立、同年6月1日に公布されました 2 3。施行日は、公布日から起算して1年半を超えない範囲で政令で定める日とされています。
当該改正は、消費者裁判手続特例法の活用が広がらない等の運用上の課題を踏まえ、対象となる事案の範囲拡大や実効性・利便性等の向上を図るものであり、消費者被害の救済が強化される一方、対消費者ビジネスを展開する企業にとっては訴訟リスクの増大につながる可能性があります。
以下では、今般の改正の概要と実務上のポイントを解説します(以下では、現行の消費者裁判手続特例法を「現行法」と、改正後の同法を「改正後法」といいます)。
おさらい~消費者裁判手続特例法とは?
消費者裁判手続特例法は、内閣総理大臣が認定した消費者団体が消費者に代わって事業者に対して訴訟等をすることを可能にする「消費者団体訴訟制度」の一翼を担う制度です。消費者団体訴訟制度には、この他に、適格消費者団体が不特定多数の消費者利益を擁護するための差止請求制度があります。差止請求制度は事前予防の制度であるのに対し、消費者裁判手続特例法は、事後救済としての被害回復の機能を担っています(両制度の関係性については、「第1回 日本版クラスアクションか?制度の全体像を探る」2-2 (2) もご参照ください。
消費者裁判手続特例法は、消費者被害では同種の被害が拡散的に多数生じる一方、個々の消費者が自ら訴訟等によりその被害を回復することが困難であるという状況を踏まえ、消費者被害の集団的な回復を図るために制定されました。その手続構造は、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体が消費者に代わって被害の集団的な回復を求めるというもので、共通義務確認訴訟と簡易確定手続等からなる、ユニークな二段階型の手続となっています。
現行法の概要
同法は、あくまで民事訴訟法の特例であり、事業者と消費者との間の実体的な法律関係に直接影響を及ぼすものではありませんが、従来個々の消費者が被害回復に要する時間・費用・労力の負担等から事業者に対する訴訟提起を躊躇していたようなケースにおいて、被害回復が図られることが期待されています。
- 制定時の消費者庁の資料
- 制定時の執筆者による解説記事
【連載】施行直前!消費者裁判手続特例法の概要と実務上の注意ポイント
第1回 日本版クラスアクションか?制度の全体像を探る
第2回 徹底解説、「共通義務確認の訴え」とは
第3回 「簡易確定手続」について押さえておくべきこととは - 適格消費者団体のリスト
改正の経緯・背景
今般の改正に至った経緯は以下のとおりです。
- 消費者裁判手続特例法は、その附則5条において、施行後3年を経過した場合に、その施行状況等を勘案し、同法の規定について検討を加えるものとされていた。また、同法が成立した国会の附帯決議でも見直しの必要性が指摘されていた。
- 消費者庁は、同法の運用が一定程度積み重ねられてきたことを踏まえ、2021年(令和3年)3月から「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」(以下「検討会」といいます)を開催し、同年10月に同検討会の報告書(以下「検討会報告書」といいます)が取りまとめられた。
- 消費者庁は、検討会報告書等を踏まえ、同法の見直しを進め、2022年(令和4年)3月1日、改正法案を第208回国会に提出。
検討会報告書では、同法が被害者救済に向けて一定の機能を果たしているとの評価がなされた一方、施行後の共通義務確認の訴えが4件(後記8の末尾一覧表)にとどまるなど、消費者被害全体の規模や分野の広がりに照らせば同法の活用範囲は広がりを欠いているとされました。
こうした課題認識を踏まえ、本改正法は、消費者の被害を救済しやすく、消費者が利用しやすい制度へと進化させるとともに、制度を担う団体が活動しやすい環境整備を行うことを目指し、対象範囲の拡大、和解の早期柔軟化、消費者への情報提供方法の充実、特定適格消費者団体の負担軽減等の措置を講じています。
事業者に影響のある主な改正事項
今般の改正のうち、事業者に影響のある主な改正事項としては、対象範囲の拡大、和解の早期柔軟化、消費者への情報提供方法の充実があげられるでしょう。
後記5では、これら3点にフォーカスして解説していきます。
改正事項一覧と事業者への影響度
改正事項 | 概要 | 改正後法の条文 | 事業者への影響度 |
---|---|---|---|
対象範囲の拡大 | 対象となる損害に一定の慰謝料を追加 | 3条2項 | ◎ |
対象となる被告に事業者以外の一定の個人を追加 | 3条1項、3項 | ||
和解の早期柔軟化 |
共通義務確認訴訟(一段階目の手続)において共通義務の存否以外についても和解が可能に | 11条 | ◎ |
共通義務確認訴訟における和解と二段階目の手続の関係整理 | 13条、15条、16条 | ||
消費者への情報提供方法の充実 | 事業者に、一定の場合における対象消費者等への個別通知を義務付け | 28条 | 〇 |
事業者による公表事項を整理 | 29条 | 〇 | |
事業者に、早期に消費者の氏名等の情報開示をさせることが可能に(保全開示命令) | 9条 | 〇 | |
特定適格消費者団体による公告の公告事項の整理 | 26条 | △ | |
特定適格消費者団体による通知の通知事項の整理 | 27条 | △ | |
行政が公表する情報の拡充 | 95条 | △ | |
特定適格消費者団体の負担軽減等 | 二段階目の手続の申立ての柔軟化 | 16条 | △ |
特定適格消費者団体を支援する法人を認定する制度の導入 | 98条~113条 | △ | |
適格消費者団体に対する特定認定の有効期間の延長(3年→6年) | 75条 | △ | |
特定適格消費者団体と適格消費者団体の連携協力規定の新設 | 81条 | △ | |
その他 | 消滅時効の完成猶予・更新の特例の整備 | 68条 | △ |
異議後の訴訟における訴えの取下げ制限 | 60条 | △ | |
裁判記録の閲覧主体を当事者および利害関係を疎明した第三者に限定 | 54条 | △ |
実務上のポイント解説
対象事案の拡大
(1)一定の慰謝料請求が共通義務確認の訴えの対象に
消費者裁判手続特例法は、同法が念頭に置く消費者被害の特性や被害の集団的回復という制度趣旨、事業者側の応訴負担等を踏まえ、共通義務確認の訴えの対象となる事案の範囲を、次のような多段階の要件構造によって限定しています(詳細は「第2回 徹底解説、「共通義務確認の訴え」とは」1-1参照)4。
対象となる事案の要件構造
対象となる事案の要件 | 条文 |
---|---|
① 請求権の範囲 | 3条1項 |
② 損害の範囲 | 同条2項 |
③ 被告の範囲 | 同条3項 |
④ 消費者裁判手続特例法により処理すべき事案を画するための固有の要素(多数性、共通性、支配性) | 同条4項 |
改正後法でもこうした要件構造自体は維持されていますが、これまで一律に対象外とされていた慰謝料を損害とする訴えが一定の場合には提起可能となります。
慰謝料の取扱い
現行法 | 改正後法 |
---|---|
一律に除外(3条2項6号) | 不法行為に基づく損害賠償請求のうち、(ⅰ)次の①または②に該当する慰謝料については、(ⅱ)その額の算定の基礎となる主要な事実関係が共通する限りで、提訴可能(3条2項6号イ、ロ)。
|
慰謝料については、共通義務確認の訴えの第1号事案(大学入試での性別等による得点調整事案における受験料等の請求)において、当該事案の本質が性別等により一律に不利益に扱われたことによる慰謝料が中核的な被害であったのにもかかわらず、慰謝料請求が対象事案から除外されていたために、慰謝料の支払いを求める消費者は別途自ら訴訟提起することを余儀なくされたという経緯がありました。
検討会では、この点が課題視されたほか、事業者が故意である場合の慰謝料について、事業者側の応訴負担に配慮して責任追及を免れさせることは公平の見地から妥当でない、といった意見がありました。
こうした議論を経て、改正後法では、上記の範囲で慰謝料が共通義務確認の訴えの対象となる損害に加えられることになりました。
慰謝料請求を共通義務確認の訴えの対象事案に含めることについては、検討会では、上記第1号事案のような事案のほか、個人情報漏えい事案についても検討が行われました。後者に関しては、これを共通義務確認の訴えの対象に含めるべきかを巡ってかなり激しい議論の応酬がありましたが、最終的に、改正後法は、慰謝料請求を対象事案とする道を開きつつ、その範囲を絞り込むという形に落ち着きました(個人情報漏えい事案についても、上記(ⅰ)(ⅱ)の要件を満たす場合に限り慰謝料請求が可能となります)。
財産的請求と併せて請求する慰謝料についての「その額の算定の基礎となる主要な事実関係が共通する」という要件は、こうした絞り込みの機能を果たす要件の1つですが、検討会報告書では、「画一的に算定される」慰謝料が念頭に置かれています。その具体的な例示として、(単に損害額を一律に設定して主張するような場合ではなく)「同一額ないしは共通の算定基準により算定される額が認定される場合」(=不法行為の場合には被侵害利益・法益およびその侵害態様が、債務不履行の場合には債務およびその不履行の態様が、相当多数の消費者について共通し、慰謝料額の算定の基礎となる主要な事実関係が相当多数の消費者について共通する場合)があげられています(11頁)。事業者においては、自社のビジネスの適法性を改めて検証し、特に上記の意味で慰謝料が画一的に算定されるケースについて、これまで少額ゆえに不法行為責任を事実上免れていたようなことがないか、そうしたケースがある場合は再発防止を防ぐための対応を改めて検討することが考えられます。
(2)被告の範囲拡大:悪質法事案における事業者以外の個人追加
現行法では、法人の代表者や従業員等の個人は、自らも事業を行っている場合でない限り、共通義務確認の訴えの被告となりません。しかし、検討会報告書では、いわゆる悪質商法事案において、事業者自体の財産が隠匿され、代表者や実質的支配者である個人に財産が移転していることが珍しくない実態が指摘され、そのような個人について応訴負担に配慮して本制度による責任追及を免れさせることは公平の観点から妥当でないとされていました。
検討会の段階では様々な実質的支配者が検討されていましたが、改正後法では、悪質商法に関与した事業監督者(民法715条2項)や被用者を念頭に、事業者以外の個人を被告とすることが可能とされました。
事業者以外の個人の取扱い
現行法 | 改正後法 |
---|---|
事業者以外の個人は被告にならない(3条1項、3項) | 事業者の被用者が消費者契約に関する業務の執行について第三者に損害を加えたことを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求における、事業監督者 6(民法715条2項)または当該被用者を被告とすることが可能(3条1項5号ロ、ハ、および3項3号ロ、ハ) ✓ ただし、次の条件を満たす場合に限る ・事業者に故意または重過失があり 7 かつ 8 ・被告となる事業者監督者・被用者に故意または重過失があること 9 |
被告の範囲の拡張はいわゆる悪質商法事案を念頭に置いたもので、要件も事業者と被告となる事業監督者・被用者に故意または重過失を求めるなど、かなり適用要件が絞り込まれています。また、施行後の状況に照らすと、制定当初懸念されていた特定適格消費者団体による濫訴のおそれはかなりの程度で後退しているといえます。
こうしたことから、健全に事業を行う事業者としては、被告の範囲の拡張について過度に委縮する必要はないと考えられます。むしろ、訴え提起前の交渉段階における誠実な対応と適切なコミュニケーションにより、特定適格消費者団体から無用な誤解を受けぬように努めることが重要でしょう。
和解の早期柔軟化
現行法では、共通義務確認訴訟における和解は、共通義務(現行法2条4号)の存否に限定されています(現行法10条)。本改正法は、このようなオールオアナッシングに近い和解の在り方を見直し、より柔軟な和解を可能にしました(現行法10条の削除、改正後法11条 10)。
改正後法は行うことができる和解の内容を特段制限していませんが、検討会報告書では、次のような類型の和解が想定されていました。
消費者庁では、本改正法の施行に際してガイドライン等で和解に関する留意事項等を明確化することが検討されています。
検討会報告書で想定されていた和解類型
想定類型 | 期待される効果 |
---|---|
共通義務の存否を明らかにせず、解決金の支払いを約する和解 | 共通義務の存否を巡る争いに拘泥することなく柔軟かつ迅速な解決が期待できる。 |
事業者が対象消費者全体に支払うべき金額の総額を定める和解 | 事業者にとってリスクコントロールが図りやすくなり、和解に応じ易くなる効果が期待できる。 |
共通義務の存在を認めるとともに、個々の消費者への支払額やその算定方法を定める和解 | 二段階目の手続(簡易確定手続等)を利用しないことで、迅速な解決が期待できる。 |
事業者が第三者に寄付を行うことを合意する和解 | 合理的な方法によっても消費者への支払いが現実的にかなわない場合や、和解による救済を選択した消費者が見込みより少なかったこと等により残余金が生じる場合に用いることが期待できる。 |
金銭の支払いによらない和解 | たとえば、ポイント還元、料金の割引、契約期間の延長等により、事案に即した柔軟な解決が期待できる。 |
また、改正後法は、和解の内容の柔軟化と併せて、和解が成立した場合の二段階目の手続(簡易確定手続等)の要否についても柔軟化しており、一定の和解については二段階目の手続を要しないものとしています(改正後法15条2項ただし書)。
共通義務確認訴訟における和解が柔軟化されたことで、事業者は訴訟の終結方法について多様な選択肢の中から最適な出口戦略を探ることとなります。たとえば、訴訟の形勢判断が微妙なケースなどにおいて、レピュテーションリスクの低減や訴訟の長期化による負担回避のために、解決金の支払義務を認めて決着を図るという方法も採りうるでしょう。
また、このような出口戦略の選択肢が増えることは、共通義務確認訴訟が提起される前の特定適格消費者団体との交渉の在り方にも影響を与えると考えられます。
なお、従来どおり、特定適格消費者団体間の相互牽制の仕組みは維持されていますので(他の特定適格消費者団体は、共同訴訟参加(民事訴訟法52条1項)したうえで、和解に応じないことで当該和解の成立を防止することができます)、事業者は他の特定適格消費者団体の動向についても目を配る必要があるでしょう。
こうした点から、事業者には、共通義務確認訴訟の前後を通じ、よりいっそう戦略的な訴訟対応が求められるといえるでしょう。
消費者への情報提供方法の充実
本改正法では、対象消費者に対して二段階目の手続への加入をより効果的に促すため、消費者への情報提供の在り方について見直しが行われました。特定適格消費者団体、事業者および行政それぞれについて改正されましたが、そのうち事業者についての改正事項は次のとおりです。
事業者にとっては、たとえば、知れている対象消費者等に対する個別通知(改正後法28条)に際し、対象者の特定や通知に関する手間や費用などの負担が発生することになります。
消費者への情報提供方法(事業者サイド)
現行法 | 改正後法 |
---|---|
簡易確定手続開始決定の主文等の公表義務(27条) | (29条への変更) 公表事項の整理・変更 |
簡易確定手続申立団体に対する情報開示義務(28条)・情報開示命令(29条) | (31条、32条への変更) ― |
ー | (新設)知れている対象消費者等に対する個別通知義務(28条)
|
ー | (新設)保全開示命令(9条) 裁判所は、改正後法31条の情報開示義務の対象となる文書について当該文書があらかじめ開示されなければその開示が困難となる事情等がある場合、共通義務確認訴訟の係属中に、当該文書の開示を命ずることができる。 |
今後のスケジュール
本改正法は、消費者裁判手続特例法と消費者契約法を併せて改正するものですが、消費者裁判手続特例法に係る改正事項は、公布日(2022年(令和4年)6月1日)から起算して1年半を超えない範囲で政令で定める日に施行されます。
今回の改正では見送られたが今後の改正で検討されることになるかもしれない項目
検討会報告では、現行法上、対象事案から除外されている拡大損害、逸失利益および人身損害(現行法3条2項1号~5号)に係る請求や、特別法上の規定に基づく損害賠償請求(現行法3条1項4号かっこ書)を対象事案に含めることに関する意見が紹介されましたが、結論として引き続き検討すべき課題と位置づけられ、本改正法でも改正対象とはなりませんでした。
これらについては、今後の消費者被害の発生・拡大の状況や制度の運用状況を踏まえ見直しが行われる可能性があります。
このほかにも、報告書で提言されながら改正は見送られた事項や将来的な検討課題とされた事項がありますので、今後も引き続き消費者裁判手続特例法の改正動向を注視していく必要があるでしょう。
(参考)これまでに提起された共通義務確認訴訟の概要
(2022年8月31日現在)
事案 | 概要 | 提訴日 | 共通義務確認訴訟の帰趨 | その後 |
---|---|---|---|---|
① 大学入試における得点調整 原告:特定非営利活動法人消費者機構日本 被告:学校法人東京医科大学 |
事前の説明なく、性別、浪人年数等により一部の出願者を不利に扱う得点調整が行われたとして、不法行為責任または債務不履行責任を理由に、入学検定料相当額等の支払いを求めるもの | 2018.12.17 | 共通義務の存在を確認する判決(東京地判2020.3.6(平成30年(ワ)38776号))11 が確定(一部却下)。 | 簡易確定手続における和解が成立。対象消費者への分配金の分配完了。 対象消費者:559人 確定した債権:約6,757万円 回収額:約6,836万円(印紙代含む) |
② 情報商材の販売 原告:特定非営利活動法人消費者機構日本 被告:株式会社ONE MASSAGE、泉忠司 |
虚偽・著しく誇大な説明・勧誘をして情報商材を販売したとして、不法行為責任の構成により、購入代金相当額の支払いを求めるもの | 2019.4.26 | 第一審は支配性の訴訟要件を欠くとして、請求却下(東京地判2021.5.14(平成31年(ワ)第11049号))12 。 控訴審も同様の判断により原告の控訴棄却(東京高判2021.12.22(令和3年(ネ)2677号))。 2021年12日18日、最高裁に上告・上告受理申立て。 |
|
③ 大学入試における得点調整 原告:特定非営利活動法人消費者機構日本 被告:学校法人順天堂大学 |
事前の説明なく、性別、浪人年数等により一部の出願者を不利に扱う得点調整が行われたとして、不法行為責任または債務不履行責任の構成により、入学検定料相当額等の支払いを求めるもの | 2019.10.18 | 共通義務の存在を確認する判決(東京地判2021.9.17(令和元年(ワ)28088号))が確定(一部却下)。 | 簡易確定手続中。 2022年7月28日に事業者が債権認否。 |
④ 給与ファクタリング 原告:特定非営利活動法人埼玉消費者被害をなくす会 被告:株式会社ZERUTA |
事業者の給与ファクタリングは実質的に利息制限法・出資法に違反する違法行為であるとして、不法行為責任の構成により、支払い済み金銭相当額の支払いを求めるもの | 2020.6.8 | 共通義務の存在を確認する判決(さいたま地判2021.2.26(令和2年(ワ)1254号))が確定。 | 簡易確定手続において、一部の被害回復実現。 対象消費者:23名 確定した債権:約2,046万円 回収額:約194万円 |
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消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律(令和4年法律第59号) ↩︎
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現行の消費者裁判手続特例法の正式名称は「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」ですが、今回の改正により、一定の慰謝料請求が対象事案に追加されたことから、「消費者契約法及び消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」に名称変更されました。 ↩︎
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2022年9月21日、改正に伴う消費者裁判手続特例法の施行令及び施行規則の改正案が公示され、これらに対するパブリック・コメント(意見公募手続)が開始されました(受付期間:2022年9月21日~同年10月21日)。 ↩︎
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(制定時の執筆内容に対する補足)消費者裁判手続特例法の制定時には、対象となる請求権として3条1項4号に「瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権」が存在していましたが、民法改正(2020年4月施行)により、瑕疵担保責任が「契約不適合責任」と改められ、債務不履行責任の一種と整理されたことに伴い、同号は削除され、旧5号(不法行為に基づく損害賠償請求権)が4号に繰り上げられるなどの改正が行われています。 ↩︎
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立案担当者による解説である、伊吹健人ほか「消費者裁判手続特例法改正の概要」(NBL1224号75頁~、以下「担当者解説」といいます)では、該当例として、事業者の故意によって本人の同意なくその個人情報をいわゆるカモリストとして名簿屋に売却されたような事案における慰謝料等が示されています(77頁)。 ↩︎
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民法715条:ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。(2項)使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。(3項)前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。 ↩︎
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正確には「被用者の選任及びその事業者について故意又は重大な過失により相当の注意を怠った」場合(3条1項5号イかっこ書き) ↩︎
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事業監督者・被用者を被告として訴訟提起する場合には事業者の故意または重過失もが要件になるという点は、担当者解説78頁でも指摘されています。
この点は文言上わかりやすくはありませんが、次のような条文整理になると考えられます。すなわち、被告の範囲に事業者監督者・被用者を追加することは改正後法3条1項5号ロ・ハ及び同条3項3号ロ・ハに規定されているところ、このうち3条3項3号ロ・ハはいずれも「イに掲げる事業者の事業監督者」、「イに掲げる事業者の被用者」と規定され、同号イの規定を受けたものになっています。そこで、同号イの「事業者」とは何かが問題となりますが、この点については、改正後法3条1項5号イが「事業者(当該被用者の選任及びその事業の監督について故意又は重大な過失により相当の注意を怠ったものに限る。第3項第3号において同じ。)」(下線部:執筆者)と定めていることから、故意または重過失がある事業者を指すということになります。そのため、同条3項3号ロ・ハの「イに掲げる事業者の事業監督者」および「イに掲げる事業者の被用者」の「事業者」は、故意または重過失ある事業者に限定されると考えることができます。 ↩︎ -
正確には、事業監督者については「被用者の選任及びその事業の監督について故意又は重大な過失により相当の注意を怠った」場合(3条1項5号ロかっこ書き)、被用者については「第三者に損害を与えたことについて故意又は重大な過失がある」場合(3条1項5号ハかっこ書き)を指します。担当者解説78頁では、たとえば、詐欺的商法を行うにあたって同様の商法の勧誘の経験がある者を選任したような場合には選任について故意に相当の注意を怠ったといえるとされ、また、従業員等に詐欺的商法の勧誘を指示したような場合や従業員等がそのような勧誘を行うことを知りながら放置していたような場合には監督について故意に相当な注意を行ったといえるとされています。 ↩︎
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和解内容を限定する機能を果たしていた現行法10条は削除されます。 ↩︎

弁護士法人大江橋法律事務所

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