所定労働時間が短い社員について割増賃金を計算する際に留意すべきポイント
人事労務当社の所定労働時間は、1週40時間、1日8時間と定められています。パートタイマーについては、1日5時間の所定労働時間となっていますが、この者と取り交わした1日5時間の所定労働時間を超えた場合の割増賃金の支払について、どのようにしたらいいでしょうか。
パートタイマーの所定労働時間の5時間を超えて働いた場合は、法定労働時間の8時間までは、下記の計算となります。
通常の時間単価 × 1.0 × 所定労働時間を超えた時間
また、法定労働時間の8時間を超えた場合は、その時間について2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。
通常の時間単価 x 1.25 x 所定労働時間を超えた時間
そして、その週の労働時間を合計して40時間を超える場合には、超えた時間について、同じく2割5分以上の割増賃金を支払う必要があり、1週間に1回の法定休日に働かせた場合は、3割5分以上の割増賃金を支払うことになります。
解説
時間外、休日および深夜の割増賃金
労働基準法32条の定める1週40時間・1日8時間という労働時間の原則は、正規社員でも、短時間社員でも同じように適用されます。
したがって、個別の労働条件の締結において、1日8時間以下の所定労働時間を定めた場合、8時間までは、通常の時間単価の賃金を支払うことになりますが、1日の労働時間が8時間を超えた場合は、2割5分以上の割増賃金を加算した単価で支払わなければならなくなります(労働基準法37条1項)。
また、週の労働時間においても1週40時間を超えることになった場合には、2割5分以上の割増賃金が必要となります(労働基準法37条1項)。
さらに、所定労働時間を超えているか否かに関係なく、深夜労働(22時から翌日の5時までの時間帯の労働)の場合は、2割5分の深夜割増賃金を支払わなくてはなりません(労働基準法37条4項)。
法定労働時間内の労働の注意点
今回の事例のポイントは、法定労働時間より少ない所定労働時間が労働条件となっている場合、割増賃金をどう計算するか、ということです。
労働基準法により割増賃金の支払義務が生じるのは、①法定労働時間を超えた労働時間の場合、②法定休日における労働時間、③22時から翌日の5時までの深夜労働時間帯に労働した場合となります。
したがって、実際の労働時間が法定労働時間より短い場合は、労働基準法による割増賃金の支払い義務は発生しません。
仮に1日の所定労働時間を5時間として労働契約をしている者が8時間働いた場合は、所定労働時間である5時間を超えた3時間分については法定内の労働時間となりますので、労働基準法上の割増賃金の支払い義務は発生しません。当然、3時間分については、通常時間単価で支払う義務が発生します。
仮に、8時間働かせたにもかかわらず、5時間の所定労働時間分だけしか支払わない場合は、残りの3時間は不払い労働となり労働基準法24条に違反する行為で、30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。
地域の最低賃金の確認も大切
なお、短時間労働者の賃金単価を決める際、地域の最低賃金を考慮して決定している場合があります。近年は、増額幅が大きくなっている傾向があります。毎年の改定時において賃金単価と地域の最低賃金を確認しなければなりません。
パートタイム労働者にも、最低賃金法に基づき定められた地域別・産業別の最低賃金額が適用になりますので注意が必要です(最低賃金法4条)。
まとめ
- 短時間労働者の賃金は、就業規則等に特別の定めが無い限り、法定内労働時間における賃金は、通常支払われる時間単価で賃金を支払わねばならない
- 法定労働時間を超えた場合、法定休日労働、深夜労働においても、割増賃金の支払は必要となる
- 最低賃金額より低い金額でパートタイム労働者を使用することはできない
