交通費は賃金に含まれるのか

人事労務

 弊社では社員の通勤のための交通費として6か月定期券を交付しています。ところが、ある社員から、「交通費は賃金なのだから、定期券のような現物で給付されるのはおかしい。お金で支給するべきだ。」と指摘がありました。やはり法律的に問題なのでしょうか?

 貴社での交通費が「賃金」という位置づけであれば、労働基準法の適用があるので、原則として「通貨で」支給することになります。ただし、労働組合と労働協約を締結している場合は、例外として定期券などの現物給付も認められます。

解説

目次

  1. 賃金とは
  2. 賃金支払いの5原則
  3. 通勤交通費を定期券で支払う事について
  4. おわりに

賃金とは

 「賃金」の定義については、労働基準法で次のように定義されています。

労動基準法11条
 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

 したがって、交通費がそもそも労働の対象で、「賃金」に該当するのかどうかを検討する必要があります。

 労働者が職場に行くための通勤にかかる費用について、使用者に支給を義務付ける法律はありません。また、通勤そのものは労働では無いので、労働の対価ということにもなりません。つまり、「賃金」ではないと言えます。
 しかし、通勤交通費について、就業規則や雇用契約で支払額や基準が明確な場合は、「賃金」として扱うとされています。この場合、通勤交通費は「賃金」となり、労働基準法の適用があるとされます。

賃金支払いの5原則

 賃金の支払いについては、労働基準法24条で以下の5つのルールが定められています。

  1. 通貨払いの原則
    賃金は、原則として通貨で払う事が定められています。銀行口座への振り込みなどは、労働者の同意を得た場合には可能です。また、通貨払いが原則ですから、現物給与は例外を除いて認められません。

  2. 直接払いの原則
    賃金は、直接本人に支払わなければいけません。本人の代理人や家族などに払う事はできません。ただし、本人が病気等で代わりの人が使者として受け取ることは可能です。

  3. 全額払いの原則
    賃金は、社会保険料や所得税など法律で定められたもの以外を控除して支給することはできません。ただし、社内積立金などを労使協定で定めて控除することは可能です。

  4. 毎月払いの原則
    賃金は毎月少なくとも1回以上は支払うものとされています。

  5. 一定期日払いの原則
    賃金は、「毎月25日」など、期日を特定して支給しなくてはいけません。

 賃金については、「賃金を支払うときに注意すべきポイント」もあわせてご覧ください。

通勤交通費を定期券で支払う事について

 通勤交通費について、支給額や基準などについて就業規則や雇用契約書で定められている場合は、賃金となることから、賃金支払いの5原則が適用されます。
 通勤交通費を通貨でなく、定期券として現物で給付することは、労働基準法で定める「通貨払いの原則」に違反することになります。
 現物給付が認められるのは、労働組合と労働協約を締結した場合に限られます。従って、質問者の会社が労働組合と現物給付について労働協約を締結しているのであれば、労基法には違反しません。ただし、この現物給付が認められるのは、組合員のみです。労働組合に加入していない労働者については、現物給付は認められません。

おわりに

 通勤交通費については、そもそも使用者に支給義務はありません。しかし、世間的には通勤交通費を支給する会社が一般的なことを考えると、より良い人材を採用するためには、支給するという企業が多いのではないでしょうか(平成27年就労条件総合調査では、調査回答企業の91.7%の企業が通勤手当などを支払っています)。

 その場合、支給額や上限額、支給基準などを明確に就業規則等に定め、労働基準法を遵守することが必要となります。通勤交通費については、従業員が引っ越したにも関わらず、そのままの金額を支給してしまったり、所得税の非課税枠を超えて支給していたりなど、何かと管理が行き届かない面も多々あるようです。ルールを再確認し、法にのっとった扱いを遵守することが大切です。

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