うつ病を発生させないために企業が取り組むべき4つのこと

人事労務

 弊社は従業員数500名程度の製造業ですが、ここ数年うつ病で休職する従業員が増えてきており、困っています。人事担当者の話によると、部署によっては長時間労働や、上司との人間関係で精神的に参ってしまったという話も寄せられているようです。どのように対応していけばよいのでしょうか?

 うつ病などの精神疾患については、「外部からのストレスの強さ」と「個人の対応力の強さ」との関係で発病に至ると考えられます。「外部からのストレスの強さ」として、長時間労働があったり、ハラスメントや職場でのいじめがあったりなど、業務に関連性があるとなると、企業側の責任が問われます。

 会社としては、長時間労働の削減や、人間関係を良くするための様々な取り組みを行うことが重要です。また、平成27年12月よりストレスチェック制度が義務化されるなど、企業内でのメンタルケアへの取り組みが求められます。

解説

目次

  1. メンタルケアの必要性
  2. 厚生労働省が示す職場のメンタルヘルス対策4つのケア
    1. メンタルヘルス対策に有効なストレスチェック
    2. 義務化されたストレスチェック制度
    3. ラインケアの必要性
    4. 事業所内の産業保健スタッフによるケア
    5. 専門機関によるケア
  3. おわりに

メンタルケアの必要性

 ご質問のように、職場でのメンタル不全者についての相談は年々増えており、労災認定件数も増加しています。

年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度
件数 308 325 475 436 497

厚生労働省 平成26年度「過労死等の労災補償状況」

出典:厚生労働省 平成26年度「過労死等の労災補償状況」より



 職場でメンタル不全者が出ると、休職者が増え、他の人への負担も大きくなり、長時間労働につながりやすく、更なるメンタル不全者が出るなど、悪循環に陥るケースも少なくありません。さらに、職場全体の雰囲気も悪くなり、従業員のモラールダウンにもつながりやすくなります。今や、職場のメンタルヘルス対策は必須とも言えるでしょう。

厚生労働省が示す職場のメンタルヘルス対策4つのケア

 厚生労働省では、メンタルヘルスケアの取り組みの一環として、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を作成しました。

 指針の中で、事業者にとって望ましい取り組みとして、メンタルヘルスケアに関する事業場の現状とその問題点を明確にするとともに、その問題点を解決する具体的な実施事項等についての基本的な計画を策定し、実施する必要があるとしています。

 そして、心の健康づくり計画の実施に当たっては、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」および「事業場外資源によるケア」の4つのメンタルヘルスケアが継続的かつ計画的に行われるよう、教育研修・情報提供を行うとともに、4つのケアを効果的に推進し、職場環境等の改善、メンタルヘルス不調への対応、職場復帰のための支援等が円滑に行われるようにする必要があるとしています。

4つのメンタルヘルスケア
  1. 従業員一人ひとりによる「セルフケア
  2. 会社の管理職による「ラインケア
  3. 事業所内の産業保健スタッフによるケア
  4. 社外の「専門機関によるケア

メンタルヘルス対策に有効なストレスチェック

 これらの取り組みのうち、職場のメンタルヘルス対策に有効な「ストレスチェック」は、メンタル不全に陥る前に、従業員が自身の心の状態を把握するために行うもので、「セルフケア」とされます。ストレスチェック制度を使って、従業員が自己のストレスに対する反応の現れ方や、心の状態を正しく把握することはとても重要です。

義務化されたストレスチェック制度

 前述の通り、精神障害の労災認定件数は年々増加しており、企業に対する従業員へのメンタルケアの必要性が強く求められるようになってきました。そこで、平成27年12月より従業員数50人以上の事業場に対してストレスチェックを義務付けるなど労働安全衛生法の一部が改正されました


労働安全衛生法
第66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)


事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

ラインケアの必要性

 4つのケアのうち、「ラインケア」とは、管理監督者が社員へ個別の指導・相談や職場環境改善を行う取り組みのことです。

 管理監督者は、部下にあたる従業員の状況を日常的に把握でき、具体的なストレス要因を把握しうる立場にあります。そのため、職場環境の改善や、従業員からの相談に対応することなどが必要とされます。事業者は管理監督者がこれを実行できるよう、ラインによるケアに関する教育・研修、情報提供を行う必要があります。

事業所内の産業保健スタッフによるケア

 「産業保健スタッフによるケア」とは、産業医・衛生管理者・衛生推進者・事業場内の保健師・看護師・カウンセラー等が次のような取り組みを行うことを指します。

  1. 職場環境などの改善
  2. 労働者に対する相談対応
  3. 職場適応、治療及び職場復帰の指導
  4. 労働者に対する教育研修

専門機関によるケア

 「専門機関によるケア」とは、外部のEAP機関などによる支援を指します。メンタルヘルスに関しては、社内に専門家がいないという場合も少なくありません。そういった場合に、外部の専門機関の力を借りながら、対策を取っていくことも必要です。

おわりに

 業務を原因としたうつ病等の発症は、長時間労働やパワハラ、いじめなどの問題が隠れているケースが多々あります。職場で業務に起因したうつ病を発生させないためにも、長時間労働の削減、パワハラ・セクハラ・いじめなどの対策など企業が積極的に取り組む姿勢が重要です。

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