セクハラを防ぐために会社は何をしなければいけないか
人事労務 弊社の地方営業所で、営業所長が女性パートタイマーに対して、セクハラを行っていたことが判明しました。内容としては、しつこく食事に誘ったり、容姿についてあれこれと言われたり、身体に触れられたり、卑わいな冗談を言われるといったものです。
営業所長に対して、何らかの処分を行う必要があると認識していますが、どのような処分が妥当でしょうか?
セクハラの被害が事実と判明した場合は、会社として厳正な処分を行う必要があります。懲戒処分はあらかじめ会社の就業規則で定めている場合に限り、行う事ができます(労働基準法89条9号)。
どのようなセクハラ行為に対して、どういった懲戒処分を行うのかは自社の就業規則に照らし合わせて決定します。ただし、就業規則で定められていればどのような処分でも認められるわけではありません。処分をするに値する客観的、合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるものであることが必要です。
解説
どのような言動がセクハラとなるのか?
職場のセクハラには「対価型」と「環境型」があります。
「対価型」とは、相手の意に反する性的な言動について拒否、抵抗した者に対し、報復として解雇、降格、減給などの不利益を与えるものを指します。
一方、「環境型」は、相手の意に反する性的な言動により、職場環境を不快なものにし、能力発揮に重大な悪影響が生じることを指します。
セクハラの種類 | 具体例 |
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対価型セクハラ |
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環境型セクハラ |
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事業主の義務とは?
男女雇用機会均等法に基づく防止配慮義務
セクハラについては、男女雇用機会均等法に事業主の防止配慮義務が定められています。
第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
厚生労働大臣指針10項目
職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、厚生労働大臣の指針により10項目が定められており、事業主は、これらを必ず実施しなければなりません(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号))。
(1) 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
- セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2) 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談窓口をあらかじめ定めること。
- 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
(3) 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
- 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
- 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
- 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
(4) (1)から3までの措置と併せて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
- 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
セクハラに対する懲戒処分について
懲戒処分は、就業規則にその種類及び程度に関する事項を記載しなければなりません(労働基準法89条9号)。また、どのような処分でも就業規則に定めれば出来るという事ではありません。その行為の性質などに応じて、バランスのとれた処分であることが必要です(労働契約法15条)。
第15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
おわりに
セクハラも、行為の程度に応じての処分を行わないと、懲戒処分を受けた加害者との間で、懲戒処分の無効が争われることにもなりかねません。まずは、事実関係をしっかり把握し、就業規則にのっとって、適切な処分を科すことが必要です。
