2019年1月施行の中国越境EC制度における輸入手続

国際取引・海外進出
本間 隆浩弁護士 森・濱田松本法律事務所 東京オフィス

 中国向け越境ECの新制度の適用対象となる場合の輸入手続について教えてください。

 2019年1月1日施行の新制度が適用される場合、輸入管理上は、一般貨物ではなく個人用輸入品と同様に取り扱われます。そのため、①輸入時の法定検査の対象商品に該当する場合でも法定検査を受ける必要がなく、かつ、②新規輸入の際に認可、登録または届出が必要とされる商品(たとえば、化粧品、乳幼児用配合粉ミルク、薬品、保健食品等)についても審査認可等が必要とされないことになります。

解説

目次

  1. 新制度の適用対象となる場合の輸入手続
  2. 適用対象地域外の保税区を利用した保税区モデルにおける輸入手続
  3. その他の越境ECの輸入手続
  4. まとめ

新制度の適用対象となる場合の輸入手続

 2016年4月の越境ECの制度改正の際には、越境ECによって輸入される商品についても、一般貿易と同様に、①法定検査および②新規輸入時の認可等の対象とする方針が示されていました。
 しかしながら、①法定検査の対象となると、通関の際に、税関に対して売買契約書、インボイス、船荷証券、パッキングリスト等の通関書類を提供しなければならなくなるところ、越境ECによって輸入される商品については、これらの提供が困難であるという問題がありました。さらに、新規輸入時の審査認可等についても、特に中国での新規輸入時の認可等を取得していない化粧品、乳幼児用配合粉ミルク、薬品、医療機器、特殊食品(保健食品、特殊医学用途配合食品等)等については、当該認可等の取得が容易ではないため、従来越境ECで輸入できていたものが輸入できなくなるという問題も生じました。

 その結果、実務に大混乱を来たしたため、2016年5月に制度改正の適用が一時停止され、①法定検査および②新規輸入時の認可等を不要とする暫定的な取扱いが継続されていましたが、これらの取扱いが最終的にどうなるかが注目されていました。
 新制度では、最終的に、①法定検査および②新規輸入時の認可等のいずれも不要とされ、輸入手続に関する越境ECのメリットが維持されることになりました。

適用対象地域外の保税区を利用した保税区モデルにおける輸入手続

 「2019年1月施行の中国越境EC制度の適用要件」のとおり、適用要件のうち、保税区の所在地域の要件のみを満たさない保税区モデル(参照:「中国向け越境ECの仕組み(保税区モデル・直送モデル)」)の越境ECについては、独自の輸入管理が適用されることとされています。
 具体的には、対象地域外の保税区を利用した保税区モデルによる越境ECについては、原則として、①法定検査および②新規輸入時の認可等が必要とされることになり、厳格な輸入手続の対象となります。

その他の越境ECの輸入手続

 上記以外の越境ECについては、国際小包(クーリエ)等により直接中国国内の消費者に配送される際に、通常の個人輸入品として管理されることになるため、①法定検査や②新規輸入時の認可等は不要となります。ただし、新制度の適用対象となる越境ECと異なり明確な取扱い・手続が定められていないため、適用対象となる越境ECと比べて、通関で遅延したり差し止められる等の不安定さが生じるリスクが残ると考えられます。

まとめ

越境ECの輸入手続 ①法定検査 ②新規輸入時の認可等
新制度の適用対象となる場合 不要 不要
適用対象地域外の保税区を利用した
保税区モデルの場合
原則として必要 原則として必要
上記以外の越境ECの場合 不要(ただし、通関の遅延・差止め等のリスクあり) 不要

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