2019年1月施行の中国越境EC制度の適用要件

国際取引・海外進出
本間 隆浩弁護士 森・濱田松本法律事務所 東京オフィス

 中国向け越境ECの新制度の適用条件について具体的に教えてください。

 2019年1月1日施行の新制度は、あらゆる越境ECに適用されるわけではなく、一定の要件を満たす越境EC取引にのみ適用されることになります。当該要件を満たさない越境EC(たとえば、国外ウェブサイトからの単発的な直送モデルによる購入等)については、一般の個人輸入品として取り扱われることになります。

解説

目次

  1. 新制度の適用要件の概要
  2. ①中国国内で設立登記がなされた会社が運営する越境ECプラットフォームを経由すること
  3. ②販売される商品がポジティブリストに列挙された商品に該当し、個人輸入目的であり、かつ、越境EC小売輸入税収政策に定める条件を満たすこと
  4. ③税関が取引、支払および物流の電子情報を監督管理できるルートを経由すること
  5. ④直送モデルまたは一定の地域の保税区を利用した保税区モデルによる取引であること
  6. まとめ

新制度の適用要件の概要

 2019年1月1日施行の越境ECの新制度(参照:「2019年1月施行の中国越境EC制度の特徴」)の適用を受けるためには、以下の要件をすべて満たすことが要求されています。

  1. 中国国内で設立登記がなされた会社が運営する越境ECプラットフォームを経由すること
  2. 販売される商品が「越境電子商取引小売輸入商品リスト(2018年版)」(以下「ポジティブリスト」といいます)に列挙された商品に該当し、個人輸入目的であり、かつ、越境EC小売輸入税収政策に定める条件を満たすこと
  3. 税関が取引、支払いおよび物流の電子情報を監督管理できるルートを経由すること
  4. 直送モデルまたは一定の地域の保税区を利用した保税区モデルによる取引であること

 各適用要件の詳細について、以下簡単に解説します。

①中国国内で設立登記がなされた会社が運営する越境ECプラットフォームを経由すること

 新制度の適用を受ける越境ECであるためには、経由する越境ECプラットフォームの運営者が中国国内(大陸)で設立登記を行っている企業である必要があります。この要件は新制度で新たに設けられたものです。
 本要件により、たとえば大手の越境ECプラットフォームである天猫国際(Tmall Global。運営会社は香港の会社であるTaobao China Holding Limited)や京東海囤全球(運営会社は香港の会社であるJD.com International Limited)を利用した越境ECは、このままだと新制度の適用を受けられないこととなる可能性があります。
 ただし、新制度には2019年3月末までの猶予期間が設けられており、これらの越境EC プラットフォームの運営会社も今後何らかの対策をとる可能性があるため、今後の動向を注視する必要があります。

②販売される商品がポジティブリストに列挙された商品に該当し、個人輸入目的であり、かつ、越境EC小売輸入税収政策に定める条件を満たすこと

 まず、新制度の適用対象となるためには、販売される商品がポジティブリストに列挙された商品である必要があります。ポジティブリストは比較的広範なものとなっており、現在越境ECで取り扱われている主要な商品の多くが含まれています。
 次に、個人使用目的であることは、越境ECの大前提であり、個人使用目的でない場合は、一般貿易として取り扱われることになります。ただし、個人使用目的か否かの明確な判断基準はないため、たとえば一度に大量に購入する場合等には個人使用目的ではないと判断される可能性もあります。

③税関が取引、支払および物流の電子情報を監督管理できるルートを経由すること

 本要件を満たすためには、(a)税関とネットワーク接続されている越境ECプラットフォームを経由するか、(b)税関に電子情報を共有することができる運送業者を用いる必要があります。販売者としては、出店する越境ECプラットフォームがこれらの条件を満たしているかを確認することが必要となります。

④直送モデルまたは一定の地域の保税区を利用した保税区モデルによる取引であること

 越境ECの方式のうち、直送モデルについては、すべて新制度の対象となります。保税区モデルについては、税関管理上、特定の地域(北京、天津、上海、大連、南京、蘇州、杭州、寧波、広州、深セン、珠海等の37都市。以下「対象地域」といいます)内の保税区を利用する場合にのみ新制度が適用されるとされています(参照:「中国向け越境ECの仕組み(保税区モデル・直送モデル)」)。
 主要な越境ECプラットフォームのほとんどが対象地域内に存在すると考えられますが、上記①~③の要件を満たすものの、対象地域外の保税区を利用しているため④の要件を満たさない越境ECもあり得ます。その場合、「2019年1月施行の中国越境EC制度における課税の取扱い」および「2019年1月施行の中国越境EC制度における輸入手続」のとおり、課税に関しては新制度が適用されますが、輸入管理については新制度は適用されず、独自の管理が行われることになります。

まとめ

 新制度における各種項目の適用関係を表にまとめると、以下のとおりとなります。

要件 新制度の適用対象
となる越境EC
新制度の適用対象とならない越境EC 一般貿易
保税区モデル
(対象地域外)
左記以外の越境EC
個人使用目的 ×
①~③の要件 ×
④の要件 ×
課税関係 越境EC税制
(一定金額以上は
一般貿易課税)
越境EC税制
(一定金額以上は
一般貿易課税)
行郵税 一般貿易課税
輸入管理 新制度を適用 独自の監督管理制度を適用 一般個人輸入として
監督管理
一般貨物として
監督管理

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