退職前の社員にまとめて年休を申請された場合にどう対応するか

人事労務

 従業員が、退職の1か月前に退職希望を申し出て「残っている有給休暇を消化させてほしい」と言ってきました。引継ぎもあるため、希望を聞くことができません。辞める従業員にまとめて年次有給休暇を与えなければいけないのでしょうか?

 会社は有給休暇の請求をされた時季が、業務に支障を与える場合には、有給休暇の取得日を変更させる「時季変更権」が認められています。
 しかし、「時季変更権」は退職予定日を越えて行使ができないため、残っている有給を消化させるしかありません。
 ご質問のように退職予定日まで1か月しかなく、仮に労働日すべての有給休暇申請を出された場合には、これを拒否することはできません。

解説

目次

  1. 年次有給休暇のキホン
  2. 年次有給休暇は最大で何日になるか
  3. 退職間際にまとめて年次有給休暇の請求を受けないために
  4. 労働基準法は最低限の基準

年次有給休暇のキホン

 従業員が、入社から6か月を経過し、全労働日の8割以上労働した場合、年次有給休暇が発生します(労働基準法39条)。その日数は、短時間労働者以外の場合は下記のとおりとなります。この年次有給休暇付与の要件、日数は、労働基準法の改正によって見直されています。仮に就業規則で改正前の支給要件が定められていても、労働基準法が優先されます。就業規則を変更していない事業所は注意が必要です。

 平成28年1月現在の年次有給休暇の日数は以下の通りです(短時間労働者を除く)。

勤続年数 付与日数
6か月 10日
1年半 11日
2年半 12日
3年半 14日
4年半 16日
5年半 18日
6年半以上 20日

年次有給休暇は最大で何日になるか

 労働基準法上、年次有給休暇の付与日数は、6年半以上勤務し、全労働日の8割以上を労働すれば、毎年20日発生します。
 また、年次有給休暇の時効は2年間となりますので、年次有給休暇を使っていない労働者は、最大で40日保持していることになります。

退職間際にまとめて年次有給休暇の請求を受けないために

 年次有給休暇の請求を、退職前にまとめて請求される場合、多くの会社は、引継ぎなどの問題で混乱します。
 退職日を越えて年次有給休暇の日程を変えてもらうことが事実上できないため、通常は認められる「時季変更権」も事業所から労働者へ行使できません。

 この場合、 計画付与を積極的に活用するなどの対策 が挙げられます。
 計画付与とは、たとえば、「夏季は年次有給休暇を3日間交替で取る」「年末年始のうち、12月30日、1月4日、5日は一斉の年次有給休暇とする」という労使協定を結ぶことによって、年次有給休暇の付与につきある程度コントロールを及ぼすことをいいます。

 具体的な例として、就業規則に、「年次有給休暇は計画付与することができる」と記載されている事業所が多いと思います。こちらを使い、コンスタントかつ計画的に、年次有給休暇を消化してもらうことで、退職時に年次有給休暇を全て消化されるという最悪の事態を免れます。

 また、就業規則の服務規律を特にじっくり作成する会社が多いのも最近の傾向です。
 たとえば、服務規律に「退職時には、引継ぎが完了するまでは実出勤しなければならない」などの一文を入れることによって、対応することなどがよくあります。

労働基準法は最低限の基準

 なお、労働基準法上の年次有給休暇の付与要件は、前述の通りですが、詳しくは、各事業所の「就業規則」の規程によります。労働基準法は、「最低限」の基準を定めたものであるため、入社半年前から年次有給休暇を付与する事業所など、労働基準法の基準より上回っている就業規則も見受けられます。その場合は、就業規則にしたがって年次有給休暇を付与してください。
 反対に、労働者代表の意見も聞き、労働基準監督署に届け出ているにもかかわらず、労働基準法の基準を下回った規定が定められている就業規則もしばしば見受けられます。その場合には、労働基準法の規定が優先しますので、法律にしたがい付与することになります。

 就業規則の中でも、労働時間、休日と並んで、労働者の関心が強い箇所が、「休暇」です。
 就業規則を定期的にアップデートして 労働基準法に沿ったものにしましょう。   

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