従業員の妊娠・出産・育児について会社はどのようなサポートを行うことができるか

人事労務

 当社の女性従業員が出産することになりました。所属する部署の要の社員でもあり、本人も出産後は復帰したいと言っているので、できるだけサポートしたいと思っています。
 会社としてはどのような手続きをしたらいいでしょうか?

 雇用保険や社会保険に加入している従業員であれば、休業中の給付金や社会保険料の免除などの経済的支援を受けられる制度があります。また、休業中だけでなく、職場復帰を支援するような助成金もあり、これらを活用することで、会社の負担を減らすとともに、優秀な人材を定着させることにもつながります。

解説

目次

  1. 出産・育児に関する制度
    1. 出産手当金
    2. 出産育児一時金
    3. 社会保険料の免除
    4. 育児休業給付金
    5. 社会保険料の特例
    6. 年金額計算の特例
  2. 育児休業を支援する助成金
    1. 中小企業両立支援助成金(育休復帰支援プランコース)
    2. 中小企業両立支援助成金(代替要員確保コース)
    3. 期間雇用者継続就業支援コース
  3. おわりに

出産・育児に関する制度

 従業員が出産や育児で会社を休業する場合、加入している保険によって以下のような制度があります。

出産手当金

 出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までにおいて、会社を休み賃金の支払いを受けられないとき、従業員は健康保険から標準報酬日額の3分の2の手当を受けることができます(健康保険法102条)。

提出時期 出産日予定日から2年間
提出先 全国健康保険協会
提出方法 郵送・窓口持参
申請書類 健康保険出産手当金支給申請書
添付書類 □医師または助産師の意見書
□申請書3ページの記載内容が多い場合は、添付書類として当該ページをコピー
■事業主の証明

【初回申請時のみ】
△出勤簿のコピー
△賃金台帳のコピー
△役員報酬に係る役員会議の議事録のコピー

△が付されている書類は、該当する場合には必ず添付。
□が付されている書類は、様式に必ず記入、証明を受ける。
■が付されている書類は、該当する場合に様式に記入、証明を受ける。

 書式:全国健康保険協会「健康保険出産手当金支給申請書

出産育児一時金

 従業員は、健康保険より1児につき42万円が支給されます(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は40.4万円(平成27年1月1日以降の出産))。妊娠85日(4か月)以後の出産(死産を含む)が対象となります(健康保険法101条、健康保険法施行令36条)。

提出時期 出産日翌日から2年間
提出先 全国健康保険協会
提出方法 郵送・窓口持参
申請書類 健康保険出産育児一時金支給申請書
添付書類 【申請書所定欄に次のいずれかの証明】
■医師・助産師の証明
■市区町村の証明

【上記証明が受けられない場合】
●戸籍謄(抄)本
●戸籍記載事項証明書
●登録原票記載事項証明書
●出生届受理証明書
●母子健康手帳
●住民票
○医療機関等から交付される出産費用の領収・明細書のコピー(海外で出産された場合は除く。)

※領収・明細書に「直接支払制度を利用していない旨」が記載されていない場合は、医療機関等から交付される直接支払制度を利用していないことを証する書類のコピーを併せて添付してください。

■健康保険出産育児一時金申請に伴う申出書または健康保険家族出産育児一時金申請に伴う申出書(海外出産された方で該当する方のみ)

○が付されている書類は必ず添付。
●が付されている書類は、いずれか1つを添付。
■が付されている書類は、該当する場合に様式に記入、証明を受けてください。

 書式参考例:全国健康保険協会「健康保険出産育児一時金支給申請書

社会保険料の免除

 産前産後休業期間、育児休業期間(育児休業を開始した日が含まれる月から、終了した日の含まれる月の前月まで)において、健康保険料(介護保険料を含む)と厚生年金保険料の被保険者負担分と事業主負担分が免除される制度です。
 免除された期間についても、将来の年金給付については、保険料を納付したものとして計算されます。なお、保育所に入所できないなど、1歳6か月までの間で育児休業を延長した場合、延長の申出をすることによりその期間も免除を受けることができます(厚生年金保険法81条の2、81条の2の2、健康保険法159条、159条の3)。

 産前産後休暇
提出時期 被保険者から申出を受けた時
提出先 郵送で事務センター
(事業所の所在地を管轄する年金事務所)
提出方法 電子申請、郵送、窓口持参
申請書類 健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書
添付書類 なし

 参考書式例:日本年金機構「産前産後休業保険料免除制度

 育児休業
提出時期 被保険者から申出を受けた時
提出先 郵送で事務センター
(事業所の所在地を管轄する年金事務所)
提出方法 電子申請、郵送、窓口持参
申請書類 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書
添付書類 なし

 参考書式例:日本年金機構「育児休業保険料免除制度

育児休業給付金

 1歳(保育所に入所できないなど、一定の場合は1歳6か月)に満たない子を養育するために育児休業をした場合、従業員は、雇用保険より休業開始前の賃金月額の67%(休業開始から6か月経過後は50%)の給付金を受けることができます(雇用保険法61条の4)。

提出時期 公共職業安定所長が指定する支給申請期間の支給申請日
→ ハローワークから交付される「育児休業給付次回支給申請日指定通知書」に印字
提出先 事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)
※ 電子申請による支給申請も可能
申請書類 育児休業給付金支給申請書
添付書類 賃金台帳や出勤簿など、支給申請書の記載内容を確認できる書類

 参考書式例:ハローワークインターネットサービス「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書

社会保険料の特例

 産前産後休業または育児休業等を終了した後、育児のための短時間勤務等により報酬が低下した場合、低下した報酬に応じた標準報酬月額に改定できる特例があります。この手続きは、標準報酬月額の変動が1等級でも行うことができ、変動のあった月から4か月目に保険料が改定となります(育児休業:健康保険法43条の2、厚生年金保険法23条の2、産前産後休業:健康保険法43条の3、厚生年金保険法23条の3)。

産前産後休業
提出時期 速やかに
提出先 事業所所在地を管轄する事務センター
(事業所の所在地を管轄する年金事務所)
提出方法 郵送、窓口持参
申請書類 健康保険・厚生年金保険 産前産後休業終了時報酬月額変更届
添付書類 なし

 参考書式例:日本年金機構「産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出

育児休業
提出時期 速やかに
提出先 事業所所在地を管轄する事務センター
(事業所の所在地を管轄する年金事務所)
提出方法 郵送、窓口持参
申請書類 健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届
添付書類 なし

 参考書式例:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出

年金額計算の特例

 3歳未満の子を養育する従業員の標準報酬月額が、1-5 の社会保険料の特例の手続きにより低下した場合でも、従業員の将来の年金額を従前の高い標準報酬月額で計算することができる特例です。

提出時期 被保険者から申出を受けた時
提出先 郵送で事業所所在地を管轄する事務センター
(事業所の所在地を管轄する年金事務所)
提出方法 郵送、窓口持参
申請書類 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書
添付書類 1. 戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書(申出者と子の身分関係および子の生年月日を証明できるもの)
2. 住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)

※(申出者と子が同居していることを確認できるもの)
※ 提出日から遡って90日以内に発行されたものをご提出ください。
※ 養育特例の要件に該当した日に同居が確認できるものをご提出ください。

(例)育児休業終了の場合は、育児休業終了年月日の翌日の属する月の初日以後に発行された住民票が必要になります。

 参考書式例:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

育児休業を支援する助成金

 これらの保険の手続きの他に、中小企業の育児休業を支援するための主な助成金として、以下のものがあります。

中小企業両立支援助成金(育休復帰支援プランコース)

 育児休業取得時と育児休業から復帰するために会社が従業員の支援を行ったときに、会社に支給される助成金です。
 育休復帰プランナーの支援を受けて育休復帰プランを作成し、プランに沿った業務の引き継ぎ、育児休業中の従業員へ職場に関する情報や資料の提供、職場復帰にあたり面談を実施し、休業前の職場に復帰させた場合に支給されます。
 支給額は、育児休業取得時に30万円、職場復帰時に30万円の合計60万円です(1企業あたり1回限り)。

中小企業両立支援助成金(代替要員確保コース)

 3か月以上の育児休業を取得した従業員の代わりに新たに雇用または新たな派遣により従業員を確保し、育児休業を終了した従業員を休業前の職場に復帰させ、6か月以上雇用した場合に、会社に支給される助成金です。
 支給額は、育児休業取得者1人あたり30万円(育児休業取得者が期間雇用者の場合は10万円加算)です。

期間雇用者継続就業支援コース

 有期契約労働者(期間雇用者)について、通常の労働者と同等の要件で育児休業を取得させ、育児休業終了後に原職復帰させた事業主に対する、助成金です。
 支給額は、最初の支給決定の対象となる支給対象者は40万円、2人目から5人目の支給対象者は15万円です。
 さらに、通常の労働者として復帰させた場合には加算もされます。最初の支給対象者は10万円、2人目から5人目の対象者は5万円です。

おわりに

 保険制度と助成金をうまく活用して優秀な人材の確保を図ることは、会社の発展にもつながりますので、これらのサポートを検討してみてはいかがでしょうか。

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