従業員がケガをしたときにはどのような手続をとればよいのか

人事労務

 当社が孫請として入っているアパートの新築現場で、従業員が落下し、右足を骨折しました。1か月程度休む予定です。病院には業務中に負傷したことを言っていません。元請は地元の大手建設会社です。手続きについて話し合っているうちに、1週間が過ぎてしまいました。労災にあたると思いますが、どのような手続きを行えばよいでしょうか。

 建設業の場合は、その建設現場の元請企業が労災保険に一括加入することになっているので(現場労災)、元請の現場労災を使って、療養費や休業補償の給付を請求することになります。また、1か月程度の休業という事ですので、管轄の労働基準監督署への「労働者死傷病報告」の提出義務も出てきます。
 早急に元請企業へ報告し、必要な対応を行うべきです。

解説

目次

  1. 労災保険とは
  2. 事業主や一人親方の労災保険
  3. 「労災隠し」は犯罪 報告は迅速に、正確に
  4. まとめ

労災保険とは

 労働基準法では、労働者が業務上の事由によって負傷したり、病気に見舞われたり、あるいは不幸にして死亡したりする場合、これによって発生した損害につき、雇用している事業主が補償することとなっています(労働基準法第8章 75条~88条「災害補償」)。

  この補償を公的保険という形で補う制度が労災保険 です。従業員の業務上の病気やケガがあった場合、この労災保険から治療に要した費用(療養補償)や休業した場合の補償(休業補償)など所定の給付を受ける事ができます。ご質問のケースでは被災者または遺族に対し必要な保険給付が行われます。

 労災保険は、賃金を受け取って働くすべての労働者が補償対象となり、労働者を使用する事業主は必ず加入しなければならない強制保険です(労働者災害補償保険法3条)。また、建設業においては、元請工事をする事業主は必ず加入しなければなりません。

 「労働者」災害補償保険ですので、代表取締役、一部役員、一人親方など労働者に該当しない者は原則として対象となりません。

現場労災の補償対象 現場労災の補償対象外
  • 元請企業の現場従業員
  • 下請企業の現場従業員
  • 下請個人事業者の現場従業員
  • 元請企業の代表者、役員
  • 下請企業の代表者、役員
  • 下請個人事業者の代表者、同居家族従業員
  • 建設業の一人親方

※ これらの方は特別加入をすることによって補償対象になる場合があります。

事業主や一人親方の労災保険

 中小事業所においては、代表も役員も現場作業に従事するケースが多く、労災に被災するリスクは一般従業員と変わらない場合があります。このような方の労災をカバーするために中小事業主等労災特別加入の制度があります。また、労働者として賃金を支払う従業員に対して労災がカバーされるため、請負で使用する一人親方には原則カバーされません。この特別加入という制度による加入には一定の条件があります。

中小事業主等労災特別加入の条件
  1. 従業員を雇用しており労働保険(労災保険)が成立している
  2. 雇用する従業員数が300人以下(建設業の場合)である
  3. 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託している

「労災隠し」は犯罪 報告は迅速に、正確に

 建設業の現場での業務災害については、元請企業の労災保険を使うことになりますが、実際に現場に入っている下請企業の立場からすると、「元請の安全管理体制に傷をつけてしまう」とか、「今後の受注への影響が出るかもしれない」といった事情で、元請企業に対し労災申請を言い出しにくい状況が以前はありました。

 しかし、そうした事情にとらわれて元請に正確な報告をせず、自社で一切の費用を出すからと健康保険を使って治療を受けさせたりした場合、労働安全衛生法に定める「労働者死傷病報告書」が正確に提出されません(労働安全衛生法100条、労働安全衛生規則97条)。
 こうした行為はいわゆる「労災隠し」とされ、 50万円以下の罰金刑 が課せられます(労働安全衛生法120条、122条)。

 「労災隠し」となってしまえば、良かれと思って取り繕った結果がかえって元請に対しても迷惑をかけ、自社の社会的信用の失墜を招きかねません。したがって、当然のことではありますが、労災事案が発生した場合は、法律に従った適切な対処が重要です。
 特に、「労働者死傷病報告」は、迅速な届出が必要です。

労働安全衛生法
第100条(報告等)

 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

第120条
 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
(5) 第100条第1項又は第3項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

第122条
 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第116条、第117条、第119条又は第120条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

労働安全衛生規則
第97条(労働者死傷病報告)

 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

まとめ

  • 建設業の労災保険は元請企業が一括加入する
  • 業務中にケガをした場合はすぐに元請企業に報告を
  • 労災隠しは犯罪、誰にもメリットがないので「労働者死傷病報告」をすぐに、正しく提出すること

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