適格機関投資家等特例業務の改正について

ファイナンス
木村 勇人弁護士 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業

 適格機関投資家等特例業務の見直しのために、平成27年5月、金融商品取引法が改正されたと聞きましたが、具体的に、どのような点が改正されたのでしょうか。

 主な改正点は、①特例業務届出者の届出事項の拡充・添付書類の追加、②特例業務届出者に対する行為規制の強化、③適格機関投資家特例業務の出資者の範囲に関する改正があげられます。
 また、すでに適格機関投資家等特例業務を行っている特例業務届出者にとっては、改正法の施行により、一定の対応が必要となります。

解説

目次

  1. 適格機関投資家等特例業務の見直し
    1. 適格機関投資家等特例業務とは
    2. 見直された法令
  2. 特例業務届出者の届出事項・添付書類に関する改正
    1. 届出事項の拡充・添付書類の追加
    2. 外国に住所を有する個人や外国法人が適格機関投資家等特例業務を行う場合
  3. 特例業務届出者に対する行為規制の強化に関する改正
    1. 特例業務届出者に対する行為規制の強化
    2. 帳簿書類、事業報告書の作成
  4. 適格機関投資家特例業務の出資者の範囲に関する改正
  5. 経過措置
    1. 行為規制は迅速に対応が必要
    2. 勧誘の扱いは施行日前後で変わる
    3. 届出事項・添付書類の追加提出は、施行後6か月以内に
  6. まとめ

適格機関投資家等特例業務の見直し

適格機関投資家等特例業務とは

 金融商品取引法(以下「金商法」といいます)上、ファンドの取得勧誘または拠出を受けた金銭の運用を行う場合、原則として金融商品取引業者としての登録が必要ですが、一定の要件を満たした場合には、届出のみでプロ投資家向けのファンドの取得勧誘または運用を可能とする制度が、適格機関投資家等特例業務届出制度となります。

見直された法令

 近時、適格機関投資家等特例業務を悪用し、投資に慣れていない投資家に被害を与える事例が増えていることから、適格機関投資家等特例業務の見直しを目的として、平成27年5月、金商法の一部を改正する法律(平成27年法律第32号)が成立しました。
 今回の改正法は、一部の経過措置が置かれているものを除いては、平成28年3月1日から施行されます。
 また、平成27年11月20日には、「平成27年金融商品取引法改正等に係る政令・内閣府令案等の公表について」において、金融商品取引法施行令(以下「金商法施行令」といいます)、金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「金商業等府令」といいます)等の改正案が公表され、これについては、平成28年2月3日に、パブリックコメントの結果等が公開されております。
 そこで、来る施行日に備えて、今回の適格機関投資家等特例業務の改正について、解説いたします。

特例業務届出者の届出事項・添付書類に関する改正

届出事項の拡充・添付書類の追加

 従来、特例業務届出者が届けなければならない事項として、商号、資本金の額などが定められていましたが、今回の改正で、さらに届出事項が拡充され、添付書類が追加されることになりました。
 主な内容は以下を参照ください。

拡充された届出事項 添付書類
  • 適格機関投資家等特例業務を行う営業所または事務所の名称、所在地
  • 営業所または事務所の電話番号やホームページアドレスなど内閣府令において必要な事項(改正金商法63条2項、改正金商業等府令238条)
  • 欠格事由に該当しないことを誓約する書面
  • 定款 ・登記事項証明書
  • その他内閣府令で定める書類(改正金商法63条3項)

外国に住所を有する個人や外国法人が適格機関投資家等特例業務を行う場合

 また、外国に住所を有する個人や外国法人が適格機関投資家等特例業務を行う場合、これまでの金商法の規定では、日本の規制当局が、その個人や外国法人について、十分に監督を行うことは事実上困難であることが指摘されていました。

 そこで、外国に住所を有する個人や外国法人が行う適格機関投資家等特例業務に対しても、日本の規制当局による監督が及ぶような改正がなされました。
 外国に住所を有する個人や外国法人に国内における代理人や代表者を定めることが要求され(改正金商法63条7項1号ニ、2号ニ)、外国に住所を有する個人または外国法人の主たる営業所または事務所等の所在する国の外国金融商品取引規制当局について、調査協力や情報提供等に応ずる旨の保証がないことが欠格事由として規定されています(改正金商法63条7項1号ホ、2号ホ)。

特例業務届出者に対する行為規制の強化に関する改正

特例業務届出者に対する行為規制の強化

 特例業務届出者に対する行為規制は、従来、虚偽告知の禁止(現行金商法38条1号)および損失補てん等の禁止(現行金商法39条)のみを適用することとされていました。
 しかし、投資家保護の観点から、特例業務届出者に対する行為規制が強化されることとなり、特定投資家以外の者との取引については、主に次に掲げる規制が適用されることとなりました。

  1. 顧客に対する誠実業務(現行金商法36条1項)
  2. 名義貸しの禁止(現行金商法36条の3)
  3. 広告等の規制(現行金商法37条)
  4. 契約締結前の書面の交付(現行金商法37条の3)
  5. 契約締結時等の書面の交付(現行金商法37条の4)
  6. 断定的判断の提供の禁止(現行金商法38条2号)

帳簿書類、事業報告書の作成

 さらに、特例業務届出者においては、帳簿書類の作成および保存、事業報告書の作成および内閣総理大臣への提出等が求められることとなりました(改正金商法第63条の4)。

適格機関投資家特例業務の出資者の範囲に関する改正

 適格機関投資家等特例業務の出資者の範囲については、投資判断能力を有すると認められる一定の投資家および特例業務届出者と密接に関連する者に限定するという考え方に基づいて規定されることになりました。
 具体的には、主として以下にあげた者に限定されることとなります(改正金商法施行令17条の12、改正金商業等府令233条の2)。

  • 金融商品取引所に上場されている会社
  • 資本金または純資産の額が5,000万円以上である法人
  • ファンド資産運用等業者(集団投資スキームにて自己私募または自己運用を業として行う者)
  • ファンド資産運用等業者と密接な関係を有する者等

経過措置

 また、既存の特例業務届出者にとっては、次の3点に留意する必要があると思われます。

行為規制は迅速に対応が必要

 適合性の原則や契約締結前書面の交付義務等といった行為規制については、改正金商法の施行後ただちに適用されることとなるため、迅速に対応する必要があります。

勧誘の扱いは施行日前後で変わる

 改正金商法施行の際に、すでに適格機関投資家等特例業務を行っている者は、施行日前に勧誘を開始した権利に係る投資運用を引き続き行うことができることとされており(改正金商法附則2条)、この点について新たに対応が必要となるものではありません。
 しかし、新規の勧誘については改正金商法の要件を満たすものでなければ行うことができません。

届出事項・添付書類の追加提出は、施行後6か月以内に

 改正金商法施行の際に、すでに適格機関投資家等特例業務を行っている者は、6か月以内に届出事項・添付書類の追加提出を行わなければならないこととされており(改正金商法附則第3条)、特に、外国に住所を有する個人や外国法人が適格機関投資家等特例業務を行っている場合には、あらかじめこれらの書類の準備が必要となります。

まとめ

 上記に記載した適格機関投資家等特例業務に関する金商法の改正点を把握し、施行日に備えて、必要な対応を準備すべきでしょう。

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