銀行から業務委託を受ける場合に留意すべきポイント
ファイナンス当社は銀行からシステムの開発・保守業務の委託を受ける予定ですが、当社の態勢について銀行からどのようなことを求められますか。また、どのような点に留意する必要がありますか。
銀行は規制上、外部委託先を管理する必要があることから、業務を受託する場合は、情報管理やリスク管理などの態勢整備を求められる場合があります。また、金融監督当局から、銀行の業務・財産の状況に関して報告を求められることや、立入検査の対象になる可能性がある点に留意が必要です。
解説
銀行による業務の外部委託
銀行は、経営の効率化や急速な技術革新を踏まえた迅速な対応をはかるために、専門性を有する企業などにシステムの開発・保守業務をはじめとする各種業務を委託することがあります。これからは、フィンテックによるイノベーションに対応するため、銀行がITベンチャー企業などに業務委託を行う場面も増えると予想されます。
銀行から求められる態勢整備
どのような態勢を整備しなければいけないか
銀行は、顧客保護の観点から外部委託先に対して態勢整備を求めることが、規制上要求されています。銀行から業務の委託を受ける場合は、委託契約などにおいて、以下のような態勢、措置を整備することが求められます。
情報管理態勢の整備
委託業務を通じて取得した情報についての目的外使用の禁止を含め、顧客などに関する情報管理を整備し、守秘義務を負うことが求められます。 また、顧客情報についてのアクセス管理の徹底も求められます。外部委託先において、銀行の顧客情報が漏えいする事件が生じていることから、情報管理やセキュリティ対策の整備は特に重要です。委託業務の実施状況などに関する報告、検査
委託業務の実施状況を定期的または必要に応じて、銀行に報告することが求められます。また、銀行が委託業務の実施状況を検査するため、立入りを求める場合もあると考えられます。顧客からの苦情相談態勢の整備
顧客からのクレームなどについて、速やかに銀行に報告するとともに、銀行の指示に従い誠実に対応するなどの苦情相談態勢を整備することが求められます。問題発生時の対応
システム障害などの問題が発生した場合であっても、顧客へのサービスの提供に支障を来さないような体制の整備が求められます。再委託先などへの監督態勢
銀行から委託を受けた業務を更に外部に委託している場合は、再委託先や再々委託先の事業者に対して十分な監督を行っていることが求められます。
銀行代理業の許可が必要となる場合
なお、銀行の固有業務を営むために必要な業務の一部について委託を受ける場合は、銀行代理業の許可が必要となる場合があります。その場合の留意点については、「銀行代理業の許可はどのような場合に必要となるか」をご参照ください。
委託先、再委託先でも金融監督当局への対応が必要になる
金融監督当局は銀行本体だけでなく、業務委託先に対しても、その銀行の業務または財産の状況に関し、報告、資料の提出、施設への立入り検査などを求めることができるため、業務委託先はそのような金融監督当局対応を行う必要が生じる可能性があります。
なお、銀行から直接業務の委託を受けている場合だけでなく、再委託先、再々委託先であっても、金融監督当局から報告を求められたり、立入検査の対象になる可能性があります。
まとめ
今後、フィンテックによるイノベーションに対応するため、銀行がITベンチャー企業などに業務委託を行う場面も増えると予想されますが、銀行から業務の委託を受けるには、上記のような態勢を整備する必要があります。銀行としても適切な態勢を整備できる企業に対してのみ業務を委託するものと考えられますので、銀行との協働を進めていくうえで重要な判断要素の一つになるでしょう。

