管理職も育児介護休業の対象となるか

人事労務

 管理職から育児介護休業の申し出があった場合、認める必要がありますか。また、時短勤務の申し出があった場合はどうでしょうか。

 育児・介護休業法においては、休業は原則として認める必要があります。しかし、時短勤務については、その管理職従業員が「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)に該当する場合には、認める義務はありません。

解説

目次

  1. 管理職と労働基準法
  2. 管理職と育児休業・介護休業
  3. 管理職と時短勤務
    1. 管理監督者には時短勤務の措置をとる必要はない
    2. 管理職が管理監督者にあてはまるわけではない
  4. まとめ

管理職と労働基準法

 労働基準法上、「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)については、労働基準法第4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)、第6章(年少者)および第6章の2(妊産婦等)で定める「労働時間、休憩及び休日に関する規定」は適用されないこととされています(労働基準法41条2号)。これにより、管理監督者については、法定労働時間(労働基準法32条)、休憩時間(労働基準法34条)、休日(労働基準法35条)などの規定が適用されません。

 ただし、いわゆる管理職が管理監督者に自動的にあてはまるわけではありません。「管理職」は会社の中で与えられた肩書にすぎないからです。ある管理職の従業員が管理監督者にあたるか否かは、主として残業代請求の文脈で、しばしば裁判所で争われています。

 管理監督者について具体的な判断基準を示した最高裁判例は未だ存在しません。下級審裁判例においては、問題となる「管理職」従業員の①職務の内容、権限や責任、②勤務態様、③待遇の実態を総合的に考慮した判断がなされています。課長という肩書だから、部長という肩書だからということではなく、あくまでも実態に即した判断がなされます。

管理監督者該当性の判断基準(下級審裁判例)

管理職と育児休業・介護休業

 育児・介護休業法は、申し出をした従業員が管理職であること、あるいは、管理監督者であることを理由とした育児休業・介護休業の申し出の拒絶を認めていません。したがって、他に申し出を拒絶する適法な理由がなければ、管理職は育児休業・介護休業を取得することができます。なお、上記のとおり、管理監督者については、労働基準法の「労働時間、休憩及び休日に関する規定」が適用除外となっていますが、育児休業・介護休業を取得する権利はこの適用除外の影響を受けないものと考えられます。

 「他に申し出を拒絶する適法な理由」とは、たとえば、その従業員の雇用期間が申し出時点で1年未満である場合(育児・介護休業法6条1項1号、12条2項。ただし、その旨の労使協定の締結が必要です)などがあげられます。

管理職と時短勤務

管理監督者には時短勤務の措置をとる必要はない

 育児・介護を行う従業員のために使用者が講ずる義務を負っている措置のひとつとして、時短勤務の措置があります(育児・介護休業法23条)。育児については3歳に満たない子を養育する従業員、介護については常時介護を要する対象家族を介護する従業員が原則的な対象範囲です。

 この点、上記のとおり、管理監督者については労働基準法の「労働時間、休憩及び休日に関する規定」が適用除外となっています。時短勤務の措置(育児・介護休業法の言葉でいうと、所定労働時間の短縮措置)は、労働基準法の労働時間等に関する規定の適用があることを前提に、それを緩和しようとするものですから、そもそも適用除外となっている管理監督者については、時短勤務の措置をとる必要はないと理解されています。厚生労働省の見解も、同じです(育児時短について「平成21年改正法に関するQ&AQ19」、介護時短について「平成28年改正法に関するQ&AQ2-7」)。

管理職が管理監督者にあてはまるわけではない

 ただし、上記のとおり、いわゆる管理職が管理監督者に自動的にあてはまるわけではありません。「名ばかり管理職問題」は、日本マクドナルド事件東京地裁平成20年1月28日判決・労判953号10頁)において社会の耳目を集め、その後厚生労働省も関連通達の見直しを行うなど、管理監督者の範囲については厳格に解釈すべきであるとの方向性が示されています。
 管理監督者にあてはまらない管理職は、時短措置の適用対象となりますので、留意が必要です。上記の厚生労働省のQ&Aでも、管理監督者は「労働時間等に関する規定が適用除外されており、自ら労働時間管理を行うことが可能な立場にあることから」時短勤務の措置を講ずる必要がないとして、留意を促しています。

 なお、時短措置を申し出たことを理由とする不利益取扱いは禁止されています(育児・介護休業法23条の2)。

まとめ

 以上のとおり、管理職であることは育児休業・介護休業の付与を拒絶する根拠とはなりません。しかし、時短勤務については、管理監督者であれば、適用する義務はありません。ただし、管理監督者該当性については一度振り返ってみる必要があるでしょう。

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