有期契約労働者から育児休業の申し出があった場合の留意点

人事労務

 有期契約労働者から育児休業の申し出がありましたが、取得させなければいけないのか、という点も含めて留意すべき点を教えてください。

 まず、育児休業の取得対象に該当するかどうかを検討します。育児休業を取得させる場合には、契約期間との関係で、個別の管理が必要になります。また、育児休業取得中の雇止めについては十分に留意してください。

解説

目次

  1. 有期契約労働者と育児休業
    1. 引き続き雇用された期間が1年以上
    2. 養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない
  2. 育児休業取得中に有期労働契約を更新する場合の扱い
  3. 育児休業取得中の雇止め
  4. 有期契約労働者の育児休業といわゆる無期転換ルール
  5. まとめ

有期契約労働者と育児休業

 育児・介護休業法上、有期契約労働者の育児休業については、申し出時点で下記のいずれにも該当する必要があります(育児・介護休業法5条1項ただし書)。

  1. 引き続き雇用された期間が1年以上であること
  2. 養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合には、更新後のもの)が満了することが明らかでないこと

引き続き雇用された期間が1年以上

 ①については、「申出のあった日の直前の1年間について、勤務の実態に即し雇用関係が実質的に継続していることをいうものであり、契約期間が形式的に連続しているか否かにより判断するものではない」とされています(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(以下、「育児介護指針」といいます)第2、1(2)イ)。

 更新がすでに生じている有期契約労働者からの申し出のケースにおいては、更新前についても「引き続き雇用された期間」にカウントするという点がポイントです。

【例1】
2017年7月1日に期間6か月の有期労働契約(更新可能性あり)を締結
2017年7月1日~2017年12月31日 当初有期労働契約
2018年1月1日~2018年6月30日 更新①有期労働契約
2018年7月1日~2017年12月31日 更新②有期労働契約
× 2017年11月30日に申し出(当初から5か月)
× 2018年1月31日に申し出(当初から7か月)
2018年7月31日に申し出(当初から1年1か月)

養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない

 ②については、「育児休業申出のあった時点において判明している事情に基づき子が1歳6か月に達する日において、当該申出の時点で締結している労働契約が終了し、かつ、その後労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断する」とされています(育児介護指針第2、1(2)ロ)。

 これは、反対にいうと、子が1歳6か月に達する日までに現在の有期労働契約期間が満了している場合においては、「更新のないことが確実でなければ、更新したものと考えて要件②への該当性を判断しなさい」ということを意味しているものと考えられます。

【例2】
2017年7月1日に期間1年の有期労働契約(更新可能性あり)を締結
2017年7月1日~2018年6月30日 当初有期労働契約
2018年7月1日~2019年6月30日 更新①有期労働契約
2019年7月1日~2020年6月30日 更新②有期労働契約
× 2017年11月30日に申し出(更新の可能性はあるが継続雇用期間が5か月)【例1参照】
2020年5月31日に申し出(あと1か月で期間満了だが更新可能性あり)

育児休業取得中に有期労働契約を更新する場合の扱い

 育児休業は、その期間中、取得者の労働義務を免除するものと考えられます。したがって、有期契約労働者の育児休業は、最大でも現在の雇用期間の末日までということになります。その翌日以降についてはいまだ労働契約関係が存在していないためです。

 育児休業の申し出は原則として1子について1回ですが(育児・介護休業法5条2項)、有期契約労働者で、雇用期間の末日まで育児休業を取得している者が、有期労働契約の更新に伴い更新後の有期労働契約の初日を育児休業開始予定日とする育児休業の申し出をする場合には、この1子について1回という制限は適用されないこととされています(育児・介護休業法5条5項)。

育児休業取得中の雇止め

 育児休業中に有期労働契約期間が終了する場合の雇止めについては、育児・介護休業法上の規制がありますので、十分留意してください。

 まず、育児・介護休業法上、使用者は、労働者が育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないこととされています(育児・介護休業法10条)。そして、この不利益取扱いには、雇止め(契約の更新をしないこと)を含むものと考えられています(育児介護指針第2、11(2)ロ)。
 したがって、育児休業をしたことを理由とする雇止めは基本的に正当化されません。もっとも、雇止めが育児休業をしたことを理由とするものではない場合には、育児・介護休業法の規制は適用されないため、育児休業中の有期契約労働者を絶対に雇止めできないというわけではありません。

 ただし、雇止めが育児休業をしたことを理由とするものではないといえるかどうかは事実関係(法的紛争になることを踏まえると、証拠関係)によりますし、そもそも、労働契約法により、一定の場合の雇止めは制限されていますから(労働契約法19条)、慎重な検討が必要になります。いずれにせよ、ポイントとしては、育児休業中だから雇止めが可能という考え方はできない、ということです。

有期契約労働者の育児休業といわゆる無期転換ルール

 労働契約法上、いわゆる「無期転換ルール」の定めがあります(労働契約法18条)。このルールは、概要、有期労働契約が少なくとも1回更新され、通算契約期間が5年を超えた場合、有期契約労働者に無期労働契約の締結を申し込む権利を付与する、というものです。

 育児休業中は、労働義務が免除されるだけで、有期労働契約自体は存続しています。したがって、無期転換ルールにおける5年の通算契約期間には、育児休業期間を含むということになります。育児休業期間があるからといって、その期間を通算契約期間から除外することはできませんので、留意が必要です。

まとめ

 以上のとおり、有期契約労働者の育児休業に関しては、当初の申し出時の検討と共に、休業中の契約更新にあたっての処理などに留意が必要となります。とりわけ、育児休業中であることを雇止めの理由とすることができないことについては、理解しておく必要があります。

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