法定休日労働が翌日に及んだ場合における割増賃金の処理について

人事労務
新 智博弁護士 弁護士法人中央総合法律事務所

 当社は、就業規則で日曜日を休日と定めていますが、繁忙期には、従業員が日曜日に労働を行う事もあります。この間、ある従業員が日曜日から労働を行い、月曜日の午前0時以降も勤務しました。
 休日に従業員が労働を行った場合、割増賃金を支払わなければなりませんが、日をまたいだ場合、休日でない月曜日の労働分についても割増賃金を支払うべきでしょうか。

 労働基準法における「1日」とは、午前0時から午後12時までを意味し、就業規則で日曜日のみを休日と定めていれば、法定休日も日曜日のその時間帯に限られます。したがって、法定休日に勤務を開始して、法定休日でない月曜日に及んだ労働は、当該超過分については法定休日労働に当たらず、法定休日労働に対する割増賃金を支払う必要はありません。

 しかしながら、時間外労働や深夜労働に対する労働基準法上の割増賃金の規定の適用は受けるため、これに従う必要があります。

解説

目次

  1. 法定休日労働とは
  2. 法定休日労働に対する割増賃金
  3. 法定休日労働が翌日に及んだ場合の処理
  4. おわりに

法定休日労働とは

 法定休日とは、使用者が労働者に対して毎週少なくとも1日与えなければならない休日(原則として午前0時から24時間の労働義務からの解放)のことを指します(労働基準法35条1項)。

 休日をあらかじめ特定することは法律上求められていませんが、通達(昭和63年3月14日基発150号)によって就業規則により休日を特定することが求められています。

 法定休日労働とは、法定休日とされていた日に行われた労働のことを指します。法定休日労働は、原則として労働基準法35条違反となります。

 もっとも、使用者が事業場の過半数代表と労使協定を締結し、これを行政官庁に届け出て(労働基準法36条1項・いわゆる「36協定」)、就業規則や労働契約において休日労働を命じることができる旨を設定した場合、使用者は労働者に対して休日労働を命じることができます。この場合、使用者は、法定休日労働に対する割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条1項)。

 参照:「36協定(さぶろく協定)とは ~36協定で締結した時間を超えた場合はどうすればよいか~

法定休日労働に対する割増賃金

 使用者は、法定休日労働を行った労働者に対して、通常の労働日の賃金に3割5分の割増率を乗じた割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条1項本文・割増賃金令)。

 また、午後10時から午前5時までの時間帯に労働をさせた場合(いわゆる「深夜労働」)、通常の労働時間の賃金の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条4項)。

 そして、法定休日労働が深夜に及んだ場合、割増率は合算され、使用者は労働者に対して、少なくとも6割の率で計算した賃金を支払わなければなりません(労働基準法施行規則20条2項)。

 参照:「時間外労働に関する割増賃金」「休日労働に関する割増賃金

法定休日労働が翌日に及んだ場合の処理

(1)割増賃金支払義務の有無

 労働基準法において「1日」とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日を意味しています(昭和63年1月1日基発1号)。そして、法定休日を含む2暦日にまたがる勤務を行った場合の休日労働に係る割合増賃金を支払うべき労働となるのは、法定休日である日の午前0時から午後12時までの時間帯に労働した部分です(平成6年5月31日基発331号・平成6年3月31日基発181号)。

 したがって、日曜日を法定休日と定めた場合、月曜日の午前0時以降に及んだ労働については、法定休日労働と同様の処理を行う必要はなく、法定休日労働に対する割増賃金を支払う必要はありません

 もっとも、時間外労働および深夜労働に対する割増賃金の支払いは、労働基準法の規定に従う必要があります。なお、時間外労働が月60時間を超えた場合においては、その超えた労働時間について、5割以上の割増率で計算した割増賃金を支払うという例外的な取り扱いもありますが(労働基準法37条1項ただし書)、本稿においては、月60時間超の時間外労働への割増賃金率は考慮しないものとします。    

(2)本件における割増賃金の計算方法

 たとえば、所定労働時間が午前9時から午後6時まで(休憩1時間)であり、日曜日を法定休日と定める企業において、労働者が日曜日の午後3時から翌日月曜日の午前3時まで労働を行った場合、この労働に対する割増率は以下のとおりとなります。

割増賃金の計算方法

  1. 午後3時から午後10時までは休日労働となるので、その割増率は3割5分となります。
    なお、法定休日における労働時間が法定労働時間を超えたとしても、その割増率は重複しません(昭和22年11月21日基発第366号等)。
  2. 午後10時から午後12時までは休日労働かつ深夜労働となるので、その割増率は6割以上となります。
  3. 午後12時から午前3時までは深夜労働かつ時間外労働となるので、その割増率は5割以上となります。

おわりに

 以上のとおり、法定休日労働に対しては、一定の割増賃金を支払わなければなりませんが、当該労働が日をまたいだ場合、休日と定められた日の午後12時以降の労働については法定休日労働に対する割増賃金を支払う必要はありません。しかしながら、時間外労働や深夜労働に対する労働基準法上の割増賃金の規定の適用は受けるため、これに従う必要がある点にご注意下さい。

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