監査役はどのような場合に解任されるか

コーポレート・M&A

 私は、ある公開会社の監査役を務めていますが、先日、取締役会において取締役の職務執行の妥当性について意見を述べたところ、取締役の反発に遭い、取締役は、次の定時株主総会で私を解任しようとしているようです。監査役は、どのような場合に解任されるのでしょうか。また、解任を阻止する方法はありますか。

 監査役を解任するためには、株主総会の特別決議が必要です。
 監査役は、解任議案を決議する株主総会で意見を述べることができますし、解任された監査役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。
 なお、監査役の解任議案が株主総会で否決された場合でも、監査役の職務の執行に関して不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったときには、一定の要件を満たす株主は、会社および監査役の両方を被告として、監査役の解任の訴えを提起することができます。

解説

目次

  1. 株主総会の特別決議による解任
  2. 監査役による意見陳述
  3. 監査役による損害賠償請求
  4. 監査役の解任の訴え
  5. まとめ

株主総会の特別決議による解任

 監査役は、正当な理由がなくても、株主総会の決議によって解任することができるとされています(会社法339条1項)。
 なお、監査役の選任の場合と異なり、監査役の解任議案を株主総会に提出する際、取締役は、監査役(監査役会設置会社である場合は監査役会)の同意を得る必要はありません。このような同意を必要としてしまうと、監査役の解任議案を株主総会に提出することが事実上できなくなってしまう可能性があるためです。
 そして、監査役の解任決議は、株主総会の特別決議事項とされています(会社法309条2項7号)。取締役の解任決議が普通決議とされているのに対し、監査役の解任決議が特別決議事項とされているのは、取締役よりも監査役の地位の強化が図られているためです。

監査役による意見陳述

 監査役の解任議案を決議する株主総会においては、解任議案の対象となっている監査役に限らず、それ以外の監査役も、監査役の解任について意見を述べることができます(会社法345条1項・4項)。監査役にこのような意見陳述権が保障されているのは、監査役の意見を株主総会に反映するためです。
 なお、監査役解任議案の株主総会参考書類等を作成する時点までに、監査役から取締役に対して解任についての意見が通知されている場合、取締役は、その意見を株主総会参考書類に記載しなければなりません。また、監査役が株主総会参考書類作成時までに取締役に対して意見を通知していなかったとしても、監査役が株主総会において意見を陳述することが制約されることはありません。

監査役による損害賠償請求

 解任された監査役は、その解任について「正当な理由」がある場合を除き、会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(会社法339条2項)。「正当な理由」がある場合とは、職務執行上の不正行為や法令・定款に違反する行為があった場合、心身の故障により客観的に職務遂行に支障を来している場合、職務への著しい不適任や能力の著しい欠如がある場合をいうと解されています。
 このような損害賠償は、株主総会の決議による監査役の解任の自由を保障した代わりに、任期満了まで監査役としての地位にあり続けられることを期待していた監査役の期待を保護するために認められたものです。
 また、賠償すべき損害の範囲は、監査役が解任されなければ任期満了までおよび任期満了時に得られたであろう役員等としての報酬等であると解されています。

監査役の解任の訴え

 監査役の職務の執行に関して不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、監査役の解任議案が株主総会で否決された場合、以下の要件を満たす株主は、会社および監査役の両方を被告として、監査役の解任の訴えを提起することができます(会社法854条1項、855条)。

議決権・持株要件 保有期間要件
公開会社 総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上
または
発行済み株式の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上
6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)
非公開会社 総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上
または
発行済み株式の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上
保有期間要件なし

 なお、非公開会社では、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において監査役を選任することを内容とする種類株式を発行することができますが(会社法108条1項ただし書・9号)、このような会社では、種類株主総会で選任した監査役を通常の株主総会で解任できてしまうと、その種類株主に監査役の選任をする権利を与えたことが無意味になってしまいますので、監査役の解任もその種類株式の種類株主総会の決議で行われます(会社法347条2項、339条1項)。もっとも、定款に別段の定めを設けた場合や、その監査役を選任した種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存在しなくなった場合は、例外的に、通常の株主総会で解任が可能とされています(会社法347条2項)。

まとめ

 監査役は、株主総会の特別決議により解任決議が承認されない限り、解任されることはありません。また、監査役は、解任議案を決議する株主総会で意見を述べることができますし、解任された監査役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。
 もっとも、監査役の解任議案が株主総会で否決された場合でも、監査役の職務の執行に関して不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったときには、一定の要件を満たす株主は、会社および監査役の両方を被告として、監査役の解任の訴えを提起することができます。

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