組織再編に伴う人員整理を行う場合の注意点

コーポレート・M&A

 当社は、来年A社を吸収合併します。吸収合併後に割当可能なポストとの関係で余剰人員が生じるため、できれば整理解雇を行いたいと考えています。何か注意点があれば教えて下さい。また、一般に組織再編に伴い人員整理を行うには、整理解雇以外にどのような方法があるのでしょうか。

 整理解雇は、人員削減の必要性その他の諸事情を踏まえ、権利濫用に当たる場合にはできません。合併などの組織再編により余剰人員が生じたとしても、赤字であるなどの事情がなければ整理解雇は認められない可能性が高く、慎重な検討と対応が必要です。
 一般に組織再編に伴う人員整理では、整理解雇を行わずに、配転、希望退職制度の実施、退職の勧奨等の方法が実施されることも多いです。

解説

目次

  1. 配転
  2. 希望退職制度
  3. 退職勧奨
  4. 整理解雇

 企業の統合に際しては、統合後に希望退職制度を実施して人員の削減の方針を発表するケースを目にします。合併などにより企業が統合すると、重複する部門では効率化の余地が生じるため、企業が人員整理を検討することは合理的な判断とも思われます。では、この人員整理にはどのような手法があり、注意点はそれぞれどのような点でしょうか。

配転

 組織再編において余剰人員が生じた部門から、担当業務を割り振ることが可能な部門に労働者を配置転換し、あるいは転勤させる方法があります。これらの配置転換や転勤は「配転」と呼ばれます。
 就業規則上に根拠がある限り、会社が配転を命じることは原則可能であるため、組織再編後に配転が行われるケースは実務上多くみられます。
 ただ、以下の場合には、会社に配転を命じることができないと解されていますので、このような事情はないか確認が必要です。

  • 労働条件において職種・勤務地を限定している労働者の場合(東京地裁昭和51年7月23日判決
  • 配転により労働者の給与が減額する場合(仙台地裁平成14年11月14日決定
  • 労働者の生活上の不利益が特に大きい場合(転居困難な病気を持った家族がいる場合等)(大阪高裁平成18年4月14日判決
  • 労働者を退職に導く意図での配転の場合(大阪地裁平成12年8月28日判決

希望退職制度

 会社において優遇された退職金等の条件を提示し、退職希望の労働者を募集するというものです。個々の事例によりますが、数か月から1年程度の給与分を退職金に上乗せするという条件を提示するというケースが多いように思われます。
 これは労働者の自由意思で退職を行うというものであり、後に述べる整理解雇に比べて無効となる可能性が低いことから、組織再編において人員整理が行われる場合には、希望退職制度を実施するのが通例となっています。

 希望退職制度の主なポイントは次のとおりです。

  • 退職には最終的に会社の承認が必要であるとの条件を付すこと
     これがないと、会社にとって重要な労働者が退職してしまうことになります。よって、労働者からの退職の申出に対して最終的に退職を認めるかについては会社の承認が必要であることを条件付けしておくことが重要です。

  • 希望退職の条件が合理的なものであること
     希望退職の条件設定は会社の任意であり、労働者もこの条件に応じて退職する限りにおいては特に問題はありません。
     ただ、現実的には、労働者が決意するに足りる条件を提示する必要があり、自ずと会社の状況を踏まえ合理的な水準の条件が求められることになると考えます。
     また、もし希望退職制度の結果次第で整理解雇を行うことも予定している場合、希望退職制度が特定の部門・労働者のみを対象にしたものなど公平性を欠く条件であるは、整理解雇の有効性を否定する事情にもなり得ると考えますので注意が必要です。

退職勧奨

 会社より個別の労働者に対して退職をするよう勧め、労働者の合意を得て退職とする方法もあります。希望退職制度に比べ、会社が退職を求める労働者のみを対象に個別に協議する点で異なります。

 もっとも、退職勧奨の過程において、

  • 不必要に長時間にわたり勧奨を行った場合
  • 労働者本人が退職に応じない意向を示したにも関わらず何度も勧奨を行った場合

には、労働者が退職に応じたとしても後々その効果が否定される可能性があります。また、会社が労働者に対して不法行為に基づく損害賠償義務を負う可能性もあります最高裁昭和55年7月10日判決)。よって、退職勧奨を行う場合には、限度を超えたものとなっていないか注意が必要です。

整理解雇

 労働者の退職を強制的に実現させる方法として整理解雇の方法があります。
 労働契約法16条によれば、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には解雇は無効とされます。整理解雇の場合、具体的には、以下の要素を総合して有効であるかが判断されることになります。

  1. 人員削減の必要性があるか
     赤字であることや部門閉鎖等の事情があるかという点が考慮されます。

  2. 解雇回避のための努力を行ったか
     配転や希望退職制度等の措置を講じ、整理解雇を回避するために真摯かつ合理的な努力をしたかという点が考慮されます。

  3. 対象者の選定が妥当であるか
     整理解雇の対象とする従業員の選定につき客観的で合理的な基準を設定しているかという点が考慮されます。

  4. 手続が妥当であるか
     労働組合、労働者との間で十分な協議を行ったか否かという点が考慮されます。

 組織再編において余剰人員が生じるとしても、それ自体で上記①の人員削減の必要性が認められるものではありません。あくまで、組織再編後も赤字状態が継続している、あるいは組織再編に伴う事業の見直しにより部門自体が無くなるなどの事情が必要と考えられます。
 その他②から④の要件についても慎重な検討が必要であり、整理解雇を行うことは容易ではありません。よって、組織再編により人員削減を行う場合でも、整理解雇までは行わないというケースが多いように思われます。

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