組織再編の手続とスケジュールを策定するポイントは

コーポレート・M&A

 当社は、組織再編を利用して取引先をグループ傘下に収めることとし、取引先とも大筋の合意をいたしました。これから詳細なスキームやスケジュールを詰めていくのですが、当社では組織再編を行うのが初めてですので、必要な手続とスケジュール策定上の留意点を教えてください。ちなみに、当社も取引先も上場していない非公開会社です。

 会社法上の組織再編には、合併(吸収合併・新設合併)、会社分割(吸収分割・新設分割)、株式交換、株式移転と種類があり、それぞれで必要な手続とスケジュール策定上の留意点が異なります。日数がかかるものに債権者保護手続(最低1か月以上)があげられますので、債権者保護手続が必要な組織再編か否かをまずは検討してみましょう。また、新設合併、新設分割、株式移転の場合、登記をして新会社を設立する関係上、登記手続の窓口である法務局の休業日(土曜、日曜、祝日、12月29日から翌年1月3日まで)は効力発生日に設定できませんので、合わせてご注意ください。

解説

目次

  1. 債権者保護手続が必要な組織再編とスケジュール
    1. 債権者保護手続が必要な組織再編とは
    2. 債権者保護手続に必要なスケジュール - 決算公告について
  2. 債権者保護手続の期間内に組み込める手続
    1. 株主・新株予約権者への通知
    2. 株主総会承認決議
    3. 株券提供公告・新株予約権証券提供公告
    4. 事前開示
    5. 会社分割における労働者承継の手続
  3. 効力発生に登記が必要な場合
  4. 効力発生後の手続

 組織再編においては、株主総会決議をはじめとする会社法上の諸手続が通常必要になります。ただし実務上は、会社法上の略式再編・簡易再編に該当する場合、金融商品取引法や金融商品取引所(東京証券取引所など)の開示ルールが適用される場合、独占禁止法上の届出・公正取引委員会の審査が必要な場合、許認可承継のため行政官庁の認可等が必要な場合、株主の説得に時間を要する場合、労働組合との協議に日数がかかる場合など様々なケースが存在し、必要な手続・スケジュールが異なることにご注意ください。

 以下では、組織再編に必要な契約・計画(吸収合併契約、新設分割計画など)が締結・確定されたことを前提に、会社法上の基本的手続を解説します。

債権者保護手続が必要な組織再編とスケジュール

債権者保護手続が必要な組織再編とは

 債権者保護手続(この手続だけでも最低1か月以上必要です)が通常必要となる組織再編として、吸収合併・新設合併・新設分割・吸収分割があげられます。株式交換・株式移転では例外的な場合にのみ債権者保護手続が必要です。

債権者保護手続に必要なスケジュール - 決算公告について

 債権者保護手続では、①組織再編を行うこと、②組織再編の当事会社の商号・住所、③組織再編に異議があれば申し出る旨(官報掲載翌日から1か月以内とするのが一般的であり最短です)、④決算公告の掲載紙・掲載頁を公告し、知れたる債権者には個別催告する必要があります(会社法789条2項、799条2項、810条2項)。

 なお、定款所定の公告方法が日刊新聞紙または電子公告の場合、官報公告に加え、これら定款所定の公告方法により公告すること(ダブル公告と表現されることがあります)で、知れたる債権者への個別催告は不要になります(会社法789条3項、799条3項、810条3項)。債権者数が多数の場合など債権者への個別催告を省略したい場合に、あらかじめ定款所定の公告方法を日刊新聞紙または電子公告に変更し、ダブル公告を行うケースもあります。

 ここで、実務上問題になりやすいのが④決算公告です。
 決算公告が済んでいる場合、掲載紙・掲載頁を公告すれば足りるため、官報掲載を申し込んでから(原稿を入稿してから)実際に掲載されるまで最短1週間程度になります。一方、決算公告が必要であるのに実施していない場合、最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容も掲載する必要があり、この場合には官報掲載の申込みから実際に掲載されるまで最短2週間程度かかります(いわゆる枠付き公告になるため、通常よりも日数がかかるようです)。

 上記のとおり、債権者保護手続は最短で1か月(+1週間から2週間程度)かかりますので、余裕を見てスケジュールを組む必要があります。

債権者保護手続の期間内に組み込める手続

 債権者保護手続以外の諸手続については、債権者保護手続の期間内に組み込むようスケジュールを策定することが可能です。もちろん、まずは株主総会の承認決議を得たうえで、債権者保護手続に取り組みたいケースなどもありますが、ここでは(会社法上可能な)最短の場合を解説します。

株主・新株予約権者への通知

 組織再編に反対の株主・新株予約権者は、株式・新株予約権を会社が買い取るよう請求できます(会社法785条1項、797条1項、806条1項、787条1項、808条1項。ただし、例外があります)。この前提として、吸収合併・吸収分割・株式交換の場合は組織再編の効力発生日の20日前までに、新設合併・新設分割・株式移転の場合は株主総会決議の日から2週間以内に、株主・新株予約権者への通知が必要です(会社法785条3項・4項、797条3項・4項、806条3項・4項、787条3項・4項、808条3項・4項。公告で代替できる場合があります)。

株主総会承認決議

 効力発生日の前日までに(新設合併・新設分割・株式移転では登記前までに)、株主総会を開催して組織再編への承認決議(特別決議)を得る必要があり、これは各組織再編に共通します(会社法783条1項、795条1項、804条1項)。株主総会の招集通知発送が開催日の何日前か、各社定款に規定されることが一般的ですのでご確認ください。

株券提供公告・新株予約権証券提供公告

 新設合併の当事会社、吸収合併の消滅会社、株式交換、株式移転を行う場合で、株券発行会社である場合には、1か月以上の期間を定めた株券提供公告ならびに株主および登録株式質権者への個別通知が必要です(会社法219条1項)。債権者保護手続の官報公告と同時に行えばスケジュール面では支障がありません。

 なお、定款上は株券発行会社であっても、現実には株式全部について株券を発行していない場合は、この株券提供公告・個別通知を省略できます(会社法219条1項ただし書)。株主数が少ない場合などに全株主から株券不所持申し出を行ってもらい(株式全部について株券が発行されていない状況となります)、株券提供公告・個別通知を省略するケースも見られるところです。

 また、新株予約権証券が発行されている場合も同様の手続が必要になる場合がありますので注意が必要です(会社法293条1項)。

事前開示

 各組織再編において、組織再編に関係する事項を本店に備え置く必要があります(会社法782条1項、794条1項、803条1項)。かかる備え置きの開始日は、①株主総会決議が必要な場合は、その株主総会の2週間前の日(株主総会を書面決議で行う場合は、提案日)、②株主・新株予約権者への通知または公告を行う場合は、通知または公告のいずれか早い日、③債権者保護手続を行う場合は、公告または催告日のいずれか早い日、④会社分割の分割会社、株式交換の完全子会社となる会社で①から③の手続を行わない場合は、分割計画作成日・吸収分割契約締結日・株式交換契約締結日から2週間を経過した日のうち、いずれか早い日(①から④のなかで最初の日)となります(会社法782条2項、794条2項、803条2項)。

 たとえば、株主総会を効力発生日の直前に行うスケジュールを組むと、③債権者保護手続(公告掲載日、個別催告日)が、債権者保護手続が不要の組織再編では②株主・新株予約権者への通知・公告日が、それぞれ最も早い日になることが多いと思われます。

会社分割における労働者承継の手続

 会社分割の分割会社においては、商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号)附則5条および会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律に定める、労働者承継手続を履践する必要があります。株主総会を効力発生日の直前に行うスケジュールを組むと、債権者保護手続の開始と同時期にスタートすることが可能です。

会社分割における労働者承継の手続

効力発生に登記が必要な場合

 新設合併・新設分割・株式移転では、組織再編行為の結果、新会社が設立されます。この新会社が設立された日に、新設合併・新設分割・株式移転の効力が発生することになりますが、会社設立の登記を行う関係上、法務局の休業日(土曜日、日曜日、祝日、12月29日から翌年1月3日まで)は登記を行うことができません。

 よって、たとえば、事業年度のスタートに合わせ平成29年4月1日を効力発生日とする新設合併・新設分割・株式移転を行おうとしても、同日が土曜日であり登記を申請できません。新設合併・新設分割・株式移転のスケジュールを組む際、合わせて注意してください。

 一方、吸収合併・吸収分割・株式交換の場合は、登記が効力発生の要件ではないため、1月1日など法務局の休業日を効力発生日とすることが可能です。ただし、効力発生の要件でないとはいえ、合併登記、分割登記など必要な登記は、効力発生日以降速やかに(遅くとも2週間以内に)行うことが必要です(会社法921条、923条)。

効力発生後の手続

 効力発生後遅滞なく、実施した組織再編に関する事項の事後開示を行う必要があります(会社法791条、801条、815条)。また、合併・会社分割では、権利承継に伴う各種手続(不動産移転登記など)が必要ですので、スケジュール作成の際に留意が必要です。

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