企業結合において、独占禁止法による規制にはどのようなものがあるか

企業結合の届出制度

　私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律（以下「独占禁止法」といいます）では、一定の売上規模以上の会社間の株式譲渡、合併、共同新設分割、吸収分割、共同株式移転、事業等の譲渡（以下、併せて「企業結合」といいます）については、公正取引委員会に対し、その概要や当事会社とその親会社・子会社・関連会社の状況について届け出ることが要求されます（独占禁止法10条2項、15条2項、15条の2第2項・第3項、15条の3第2項、16条2項）。

　吸収分割の場合には、独占禁止法15条の2第3項に届出要件が定められており、同項4号において、分割によりその事業の重要部分を別の会社に承継させようとする会社の分割対象部分に係る国内売上高が30億円を超え、かつ、承継会社の属する企業結合集団（承継会社、承継会社の子会社、承継会社の最終親会社およびその最終親会社の子会社から成る集団）に係る国内売上高合計額が200億円を超える場合に届出が必要となる旨の定めがなされています。設問のケースでは、独占禁止法15条の2第3項4号に該当するため、届出が必要となります。

届出後の待機期間中の企業結合の実行禁止

　届出後原則30日間の待機期間中はその企業結合を実行することができません（独占禁止法10条8項本文、15条3項、15条の2第4項、15条の3第3項、16条3項）。ただし、届出会社が待機期間の短縮申出書を提出した場合で、公正取引委員会が排除措置命令を行わない旨の通知をする場合には、待機期間はその通知の日まで短縮されます（独占禁止法10条8項ただし書、15条3項、15条の2第4項、15条の3第3項、16条3項参照）。

一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる企業結合の禁止

　また、このような届出の対象となるか否かにかかわらず、公正取引委員会は、審査の結果、企業結合が「一定の取引分野」における競争を実質的に制限することとなると判断した場合には、排除措置命令により、その企業結合を禁止しまたはその企業結合に条件を付すことができます（独占禁止法17条の2第1項）。ただし、当事会社から問題解消措置の申出がなされた場合には、排除措置命令が行われないこともあります。

　競争を実質的に制限することとなるか否かは、「一定の取引分野」における当事会社グループの市場シェアの高低やその他の競争圧力等が判断要素となります。公正取引委員会の審査は、公正取引委員会の定めた「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」（平成16年5月31日、平成23年6月14日最終改定。いわゆる「企業結合ガイドライン」）に即して進められます。「一定の取引分野」の画定にあたっては、当事会社グループの取り扱う商品・役務やその取引地域の範囲を需要者等にとっての代替性の観点から判断することになりますが、取引地域の範囲は、個々の商品・役務によって、日本全国、都道府県、市区町村、あるいはそれより狭い範囲など異なってきます。

公正取引委員会による審査のフロー

　公正取引委員会の審査は、（届出後の）第1次審査（原則30日間）においてさらに詳細な審査が必要と判断された場合には、第2次審査（届出受理日から120日後または当事会社による報告等の完了から90日後のいずれか遅い日まで）に移行し、第2次審査終了前の企業結合の実行は事実上不可能となります（以上、図1参照）。

【図1：企業結合審査のフローチャート】