監査役への就任と就任後の行動

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 友人から、自分が経営している会社の監査役になってもらいたいと依頼されました。監査役に就任したら、まず何をすることになるのでしょうか。

 監査役は、就任後、会社内容を把握した上で、監査計画を作成し、それに従った監査活動を行うことになります。

解説

目次

  1. 監査役への就任
    1. 監査役の選任と登記
    2. 監査役の欠格事由と兼任の禁止
  2. 役割
  3. 監査活動 [^4]
    1. 監査役就任直後の活動
    2. 監査計画の作成(監査役監査基準36条参照)

監査役への就任

監査役の選任と登記

 監査役は、株主総会の普通決議特則普通決議)により選任されます(会社法329条1項、341条)。
 監査役選任議案を株主総会に提出するには、取締役は、監査役(2人以上いる場合、その過半数)の同意を得なければなりません(会社法343条1項)。

 監査役候補者が株主総会に出席し、その席上において就任を承諾した場合、その旨を株主総会議事録に記載し、登記申請書において、「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する。」と記載すれば、監査役の変更登記の際、原則として就任承諾書は不要となります。

 もっとも、平成27年の商業登記規則改正により、本人確認証明書が添付書面として追加されました1。本人確認証明書(これに代わる印鑑証明書を含みます)が添付書面となる場合において、株主総会議事録に監査役の住所が記載されていないときは、別途監査役の就任承諾書(監査役がその住所を記載し、記名押印したもの)が添付されない限り、登記申請は受理されないことに注意が必要です2。この点については、事前に弁護士や司法書士などの専門家に確認するのが安全です。

監査役の欠格事由と兼任の禁止

 監査役の欠格事由は、取締役と同様、以下のとおりです(会社法335条1項・331条1項)。

  1. 法人
  2. 成年被後見人、被保佐人、外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
  3. 会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に規定されている一定の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  4. 上記3以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者は除かれます)

【関連リンク】 会社の役員になるための資格

 また、監査役は、その会社・子会社の取締役・支配人その他の使用人、子会社の会計参与・執行役を兼任できません(会社法335条2項)。監査役は、取締役・会計参与の職務執行の監査をその職務とすることから、公正な監査、子会社調査権の適正な行使のために、このように兼任が禁止されています。

役割

 監査役の職務は、以下のとおり大きく2つに分けられます。

  • 取締役(・会計参与)の職務執行の監査(会社法381条1項前段) =業務監査
  • 監査報告の作成(会社法381条1項後段・会社法施行規則105条、129条、会社計算規則122条) =会計監査

 監査役は、株主の負託を受けた独立の機関として取締役の職務の執行を監査することにより、企業および企業グループが様々な利害関係者の利害に配慮するとともに、これら利害関係者との共同に努め、健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立する責務を負っています(監査役監査基準32条1項)。

 監査役の具体的な職務に関し、公益社団法人日本監査役協会が新任監査役に必要な情報を「新任監査役ガイド〔第5版」(平成23年9月29日)にまとめています。新任監査役向けとはなっていますが、監査役の業務が網羅的にわかりやすくまとめられていると思うので、随時参考にするとよいでしょう。

監査活動 4

監査役就任直後の活動

 監査役は、取締役や使用人らとの意思疎通を図り、情報の収集および監査の環境の整備に努めなければなりません(会社法381条1項・会社法施行規則107条、会社法389条2項・会社法施行規則107条2項)。

 そのため、まずは、以下のような行動をすることになるでしょう。

(1)会社内容の把握

 元取締役や元従業員が監査役に就任したような場合であれば、既に会社内容を把握しているでしょうが、そうでない場合は、まずその会社がどのような会社であるのかを把握する必要があります。
 そこで、以下のような書類・資料を入手し、会社の概要を把握します。

  • 事業概況、最近の業績(前期の事業報告、計算書類等の確認)
  • 役員構成
  • 組織図
  • 定款(記載事項の確認)
  • 商業登記簿謄本(役員に係る登記の確認)
  • 取締役会規程(決議事項、報告事項、開催手続の確認)
  • 権限・稟議等の主要規程
  • 親会社・子会社等に関する資料

(2)社長・担当者への確認

 上記資料において不明だった点などについて、社長や担当者に確認するほか、以下のような事項を確認します。

  • 経営環境とその対応方針
  • 会社の事業計画・方針がある場合、その内容
  • 重要な事業の状況及び投資の状況
  • 経営上・事業運営上のリスク、課題およびその対応等

監査計画の作成(監査役監査基準36条参照)

 実際の監査活動に先立ち、監査方針を立てた上で監査計画を作成します。

 監査役は、上記3-1で把握した情報により経営環境、経営上・事業運営上のリスク、経営方針・経営計画、内部統制システムの構築・運用の状況、また、特に経営者のスタンス等を考慮し、企業不祥事を発生させない予防監査、そのためのリスク管理体制やコンプライアンス体制等の整備等、良質な企業統治体制の確立に向けて、監査対象、監査の方法、実施時期を適切に選定し、計画を作成することになります。

 この点、他に既任の監査役がいない場合の新任の監査役が監査計画を作成することは困難な場合もあるので、このような場合の就任後の1年間は、前任監査役の監査計画を参考に、または踏襲して、監査を進めることが望ましいでしょう。

 なお、公益社団法人日本監査役協会の会員提供による監査業務支援ツールとして、監査計画などのサンプルが公開されています。

公益社団法人日本監査役協会の会員提供による監査業務支援ツール


  1. 法務省「役員の登記の添付書面・役員欄の氏の記録が変わります(平成27年2月27日から)」参照 ↩︎

  2. 松井信憲『商業登記ハンドブック〔第3版〕』446頁(商事法務、平成27年) ↩︎

  3. 監査役監査基準」(平成27年7月23日最終改正) ↩︎

  4. 公益社団法人日本監査役協会作成に係る「参考資料1 監査基準を実践するための中小規模会社監査役の監査実務の例示」128頁以下参照 ↩︎

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