内部統制システムに関する取締役会決議
コーポレート・M&A内部統制システムについて取締役会で決議しましたが、これで取締役として、善管注意義務を尽くしたということになりますか。
内部統制システムの整備について1度決定すれば、とりあえず、内部統制システム整備決定義務には違反しないことになります。 もっとも、取締役は、その決定された内部統制システムの基本方針・大綱が遵守されているかを監視・監督する義務があるので、不備があるのにこれを放置した場合には、善管注意義務違反が生じることになります。
解説
内部統制システムの取締役会決議
根拠条文
大会社、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社においては、内部統制システムの整備の決定をしなければなりません(会社法348条4項・3項4号、362条5項・4項6号、399条の13第2項・1項1号ロ・ハ、416条2項・1項1号ロ・ホ)。
取締役会における決議とその後
内部統制システムの整備について、取締役や取締役会において1度決定すれば、それを取り消したりしない限り、それ以降取締役会において議論したり、再決定等をしなくても、その整備決定義務の違反にはなりません1。
もっとも、取締役・取締役会において決定した基本方針・大綱に従って、担当役員等がその決定の細則を決め、人員の配置や細かい手続の整備を行うという場合に、実際に、それが基本方針・大綱に従ってなされているか、さらには、きちんと機能しているかを検証しなければ、内部統制システムの決定は形骸化してしまいます。そのため、取締役は、内部統制システムの決定に加えて、その決定に従って内部統制システムが機能しているかを監視・監督する義務も負っています。
したがって、担当役員等が決定した具体的な内部統制システムが機能不全に陥っているのに、これを放置したような場合には、取締役の善管注意義務違反が問われることになります。
会社を取り巻く市場環境や会社自体の変化により、当初の内部統制システムが機能しなくなったにもかかわらず、これを放置した場合も、同様に、取締役の善管注意義務違反が問われる可能性があります2。
なお、大会社や監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社に限らず、中小会社であっても、善管注意義務の内容として、内部統制システムの整備が求められることもありますが、上記について、同様のことが言えます。
内部統制システムの取締役会決議の効果
適切な内部統制システムを決定し、これを整備した場合、一部の取締役や従業員が不正を行い、会社や第三者に損害を発生させたとしても、他の取締役らは、自己の役割分担の範囲を超えた部分については、特段の事情がない限り、監視・監督義務違反に基づく損害賠償責任を負わないことになります3。
特に大規模な会社においては、全ての業務執行について取締役が監視・監督することは事実上不可能なので、内部統制システムを構築することで、その監視・監督体制を整え、基本的には、他の取締役の業務執行について信頼することを認めるのです。
もっとも、取締役や従業員らの業務執行について疑念を差し挟むべき特別の事情があったにもかかわらず、これを看過した場合には、内部統制システムが適切に機能していたとしても、任務懈怠責任を免れないことになります。

プラム綜合法律事務所
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