社内クーデターによる代表取締役の解職

コーポレート・M&A

 当社取締役会の内部において、代表取締役とその他の取締役とが経営方針を巡って対立しています。代表取締役を解職したいのですが、立場を鮮明にしていない取締役も数名います。どのようにすれば、解職できるでしょうか。

 代表取締役の選定・解職は取締役会決議事項であり(会社法362条2項2号)、定款に別段の定めがない限り、取締役の過半数の賛成がなければ代表取締役を解職できません(会社法369条1項)。そのため、まずは代表取締役の解職に賛成する取締役を、少なくとも過半数は確保する必要があります。
 その上で、取締役会において、緊急動議として代表取締役の解職を求め、決議することになるでしょう。

解説

目次

  1. 手続の流れ
  2. 各手続における留意点
    1. 取締役会招集手続
    2. 取締役会における代表取締役の解職決議
    3. 取締役会における代表取締役の選定決議
    4. 代表取締役の変更登記
  3. その他の留意点
    1. 株主の視点
    2. 開示(非上場会社は無関係)

目次

  1. 手続の流れ
  2. 各手続における留意点
    1. 取締役会招集手続
    2. 取締役会における代表取締役の解職決議
    3. 取締役会における代表取締役の選定決議
    4. 代表取締役の変更登記
  3. その他の留意点
    1. 株主の視点
    2. 開示(非上場会社は無関係)

手続の流れ

 代表取締役の選定・解職が取締役会決議事項である以上(会社法362条2項2号)、取締役会開催の流れに則る必要があります。

 具体的には、以下のような手続を踏むことになります。

社内クーデターによる代表取締役の解職の手続

各手続における留意点

 それでは、具体的に、各手続における留意点を説明します。

取締役会招集手続

(1) 取締役会の招集通知への記載

 取締役会招集通知の内容について、会社法には特に規定されていないので、取締役会を招集する際に議題や議案を通知する必要はありません。

 もっとも、多くの会社においては、定款(あるいは取締役会規則)で、代表取締役(取締役社長)が取締役会を招集する旨定めています。この場合、招集権者である代表取締役以外の取締役が取締役会を招集しようとするときは、取締役会の目的事項(議題)を示して、代表取締役に対して取締役会の招集を請求することになります(会社法366条2項)。

 そうすると、取締役が代表取締役の解職を求めて取締役会の招集を請求する際に、代表取締役がこの動きを察知してしまいます。

 取締役会招集手続については、「議題を定めずに取締役会招集通知を送ることができるか」もあわせてご覧ください。

(2) 緊急動議による解職決議

 そのため、代表取締役の解職を唯一の目的事項とする臨時取締役会を開催するのではなく、他に決議事項や報告事項がある定例の取締役会において、緊急動議として解職決議を求めるべきです。これにより、代表取締役に事前に知られることなく、解職決議まで持っていくことができます。

 なお、そもそも、定款や取締役会規則において、取締役会を招集する際に目的事項(議題)を通知する旨定められている会社も多数あります。そのような会社であっても、あらかじめ通知された議題以外の議題についても取締役会において審議・議決することができると考えられていますので1 、上記のとおり、緊急動議として議題を追加することが可能です。

(3) 事前の根回しが重要

 経営陣において内紛があり、代表取締役と他の取締役とが対立しているようなケースでは、あらかじめ代表取締役の解職の件を取締役会の議題に挙げてしまうと、代表取締役が多数派工作に出て、解職が決議できない場合もあります。

 そこで、このような場合には、代表取締役の解職を画策する取締役は根回しを行い、解職決議(および新しい代表取締役の選定決議)に十分な人数を確保した後に、取締役会において緊急動議として解職決議を求めることになります。

取締役会における代表取締役の解職決議

(1) 代表取締役は「特別の利害関係」を有する

 取締役会決議は、議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し(定足数)、その過半数をもって行われます(決議要件)(会社法369条1項)。

 そのため、解職決議に十分な人数として確保するのは、少なくとも、「議決に加わることのできる取締役の過半数」ということになります。
 ただし、定款において、定足数や決議要件を加重した場合には、それに従います。

 この点、代表取締役解職決議について、その代表取締役は「特別の利害関係」(会社法369条2項)を有すると考えられているので、定足数から除外されます。

 したがって、例えば、取締役が4人の取締役会設置会社において代表取締役を解職しようとする場合、代表取締役を除いた3人が取締役会決議に参加することになります(なお、この場合、定足数は2人なので、1人が欠席しても問題はありません)。そして、そのうち2人が解職に賛成すれば、適法・有効に代表取締役を解職することができるということです。

 解職決議における当該代表取締役の特別利害関係については、「代表取締役の選定・解職と特別利害関係」もあわせてご覧ください。

(2) 議長の交代

 代表取締役の解職を審議・議決する際、その議論の的となっている代表取締役は議長になれません。そのため、定款や取締役会規則に規定がある場合にはそれに従い、規定がない場合には別途議長を選任する必要があります。

(3) 退席

 解職決議に特別利害関係を有する代表取締役には、その決議事項につき出席権がありません。その他の取締役は、代表取締役に対して取締役会の場からの退席を命じることもできるので、代表取締役を完全に排除した上で、解職について審議・議決することも可能です。

取締役会における代表取締役の解職決議

取締役会における代表取締役の選定決議

(1) 元代表取締役の取扱い

 取締役会設置会社の場合、業務執行者である代表取締役は少なくとも1人いなければなりません(会社法362条3項)。そのため、唯一の代表取締役を解職した場合には、続いて、新たな代表取締役を選定する必要があります

 もっとも、代表取締役の選定に当たっては、解職された元代表取締役も取締役の一員として議決に参加することができます。というのも、取締役会決議によって代表取締役という地位を剥奪できても、取締役を解任する権限を持つのは株主総会なので(会社法339条1項)、依然として、元代表取締役も取締役会のメンバーだからです。

 そのため、元代表取締役を解職決議の際に退席させていた場合には呼び戻す必要があります。

(2) 新代表取締役候補の出席権・議決権

 代表取締役候補者は、代表取締役選定について「特別の利害関係」を有しないと考えられています2。そのため、代表取締役候補者も当該選定決議の定足数からは排除されず、議決に参加することができます。

 例えば、取締役が4人の取締役会設置会社において代表取締役を選定しようとする場合、全ての取締役が当該議決に加わります。そのうちの過半数をもって代表取締役を選定するので、元代表取締役一人が反対しても、その他の取締役3人が賛成すれば、代表取締役を選定することができます。

新代表取締役候補の出席権・議決権

代表取締役の変更登記

 代表取締役の氏名・住所は登記事項のため(会社法911条3項14号)、変更から2週間以内に登記しなければなりません(会社法915条1項)。

 この登記申請の添付書面として、取締役会議事録が必要となります(商業登記法46条2項)。

 この点、突然に解職された元代表取締役としては、取締役会議事録に署名または押印することを拒絶したいことでしょう。実際に押印を拒絶されたとしても、一部の取締役の押印がないことの理由が示されており、取締役会議事録に出席取締役の過半数が押印してあれば、登記申請の添付書面として受理される取扱いがなされています3

その他の留意点

株主の視点

 以上、各手続における留意点を説明してきましたが、そもそも会社の株主が誰かという視点を忘れてはなりません。

 代表取締役がその会社の議決権の過半数を握る大株主であるような場合、その代表取締役は、取締役会において代表取締役の地位を剥奪されたとしても、クーデターを起こした取締役を株主総会で解任し、自分の息のかかった者を取締役に選任することができます

 そうすると、クーデターの意味が全くありませんので、代表取締役解職のための取締役の多数派工作の前に、そもそもその解職は株主からも支持されるものなのかということを考慮してから行動する必要があります。

開示(非上場会社は無関係)

 代表取締役の異動は臨時報告書提出事由となっているので(金融商品取引法24条の5第4項、企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号)、有価証券報告書提出会社(主に上場会社)は、代表取締役の異動(取締役会における代表取締役の解職・選定決議)後、遅滞なく、臨時報告書を提出する必要があります。

 また、代表取締役の異動は各証券取引所の適時開示事項でもあるので、代表取締役の解職・選定決議後、直ちにその内容を開示しなければなりません(例えば、東京証券取引市場においては、有価証券上場規程402条1号aa・同施行規則402条の2第1項)。


  1. 名古屋地裁平成9年6月18日判決等、江頭憲治郎『株式会社法〔第6版〕』415頁(有斐閣、平成27年) ↩︎

  2. 上柳克郎ほか『新版 注釈会社法(6)』115頁〔堀口亘〕(有斐閣、昭和62年)、酒巻俊雄ほか『逐条解説会社法 第4巻 機関・1』574頁〔早川勝〕(中央経済社、平成20年)、落合誠一『会社法コンメンタール8 –機関(2)-』293頁〔森本滋〕(商事法務、平成21年)、江頭憲治郎『株式会社法〔第6版〕』417頁(有斐閣、平成27年) ↩︎

  3. 松井信憲『商業登記ハンドブック〔第3版〕』151頁(商事法務、平成27年)参照 ↩︎

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