どのような場合に特別利害関係が認められるのか

コーポレート・M&A

 取締役会の議決に加わることができなくなる「特別な利害関係」に該当するのは、具体的にどのような場合でしょうか。

 代表取締役の解職決議における代表取締役や、譲渡制限株式の譲渡承認決議における譲渡人・譲受人、第三者割当てを引き受ける取締役等が「特別な利害関係」を有する取締役に該当します。

解説

目次

  1. 特別の利害関係とは何か?
  2. 具体例

目次

  1. 特別の利害関係とは何か?
  2. 具体例

特別の利害関係とは何か?

 「特別の利害関係」とは、ある取締役が、その決議事項について、会社に対する忠実義務(会社法355条)を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係、あるいは、会社外の利害関係を意味するとされています1

 この「特別の利害関係」があると、その取締役は、議決に加わることができません(会社法369条2項)。

 「特別利害関係と取締役会決議」についても、あわせてご覧ください。

具体例

 本稿では、典型的な事例やよく問題となる事例を挙げます。

 見解の対立が最も激しいと思われる「代表取締役の選定・解職決議」については、「代表取締役の選定・解職と特別利害関係」をご覧ください。

競業取引・利益相反取引の承認(特別利害関係あり)

 ある取締役が会社と同業を行う競業取引や、会社から金銭を借り受けるといった利益相反取引を承認するための決議(会社法356条1項)は、その取締役が決議事項について特別の利害関係を有する場合の典型例でしょう。

 取締役の利益相反取引については、「取締役の利益相反取引について取締役会承認が必要となるのはどのような場合か」をご覧ください。

譲渡制限株式の譲渡承認(特別利害関係あり)

 譲渡制限株式を発行する会社が取締役会設置会社である場合、譲渡承認の決議機関は原則として取締役会となります(会社法139条1項カッコ書)。譲渡制限株式を譲渡しようとする株主が取締役である場合、あるいは、譲り受けようという者が取締役である場合、その取締役は、その譲渡承認決議について特別利害関係を有します2

 例えば、取締役会が3人の取締役(A、B、C)により構成されている非公開会社があり、取締役Aが保有する株式を取締役Bに譲渡しようという場合、取締役AもBも特別利害関係人として決議に参加できず、取締役Cだけで、その譲渡を承認するか否かを決議することになります3

譲渡制限株式の譲渡承認(特別利害関係あり)

取締役を引受人とする第三者割当て(特別利害関係あり)

 会社が第三者割当てを行う場合において、取締役が株式を引き受けるとき、その引受人である取締役は、その第三者割当決議について特別の利害関係を有します。

 取締役全員が第三者割当てを引き受ける場合、取締役会決議ができないように思われるかもしれませんが、そうではなく、各取締役への第三者割当てとして個別に決議することになります4。つまり、取締役Aに割り当てる決議は取締役A以外の取締役によって行い、次に、取締役Bに割り当てる決議を取締役B以外の取締役で行う、というように、各取締役の人数分、第三者割当ての引受けについて決議することになります。

 なお、取締役と会社との間の第三者割当引受契約は、利益相反取引にも該当するとして、第三者割当てに関する取締役会決議のほかに、利益相反取引の承認決議(会社法365条1項・356条1項2号)も必要となるのかが問題となりますが、東京地裁平成26年6月26日判決は、第三者割当てに関する決議に加えて、改めて利益相反取引として決議する必要はないと判示しました5

取締役を引受人とする第三者割当て(特別利害関係あり)

取締役の責任の一部免除(特別利害関係あり)

 定款の定めに従って、取締役会において取締役の責任の一部免除を決議する場合(会社法426条1項)、責任を一部免除される取締役は、特別の利害関係を有します 。

 取締役全員の責任を一部免除する場合は、第三者割当てのケースと同じように、責任を一部免除される取締役だけを個別に除外した上で、順次決議することになります。

 取締役の報酬(特別利害関係なし)、取締役の退職慰労金贈呈議案(特別利害関係あり)については別途解説します。


  1. 落合誠一『会社法コンメンタール8 –機関(2)-』292、293頁〔森本滋〕(商事法務、平成21年) ↩︎

  2. 稲葉威雄ほか『実務相談株式会社法3〔新訂版〕』711頁以下〔芦原利治〕(商事法務研究会、平成4年) ↩︎

  3. 稲葉威雄ほか『実務相談株式会社法3〔新訂版〕』705頁以下〔小林健二〕(商事法務研究会、平成4年)参照 ↩︎

  4. 稲葉威雄ほか『実務相談株式会社法3〔新訂版〕』700頁以下〔浅野克男〕(商事法務研究会、平成4年) ↩︎

  5. 東京地裁平成26年6月26日判決は、「利益相反取引は、取締役がその地位を利用し、会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図るおそれがあるから、…このような取引について取締役会の承認を受けることを要するとしたものである。これに対し、新株発行については、…取締役会の決議により決めることとされ(旧商法280条ノ2第1項)、実際にも、…取締役会においてこれを決議したというのであって、このような規律により、上記の旧商法265条1項の趣旨は既に実現されているというべきであるから、その引受けについて更に…取締役会の承認を受けることを要しないと解するのが相当である。そうすると、本件第三者割当てに係る引受けは、旧商法265条1項の利益相反取引には当たらないことになるから、同法266条1項4号所定の取引に当たるということもできない。」と判示しました。 ↩︎

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