取締役会の開催方法について(電話会議・テレビ会議・代理出席など)

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 取締役会を開催したいのですが、取締役の1人が海外出張中で、帰国が間に合いません。どうすればよいでしょうか。

 安定した通信環境があれば、テレビ会議システムによることも、電話会議システムで参加することも可能です。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 取締役会の出席方法
    1. テレビ会議システム・Web会議システムによる取締役会
    2. 電話会議システムによる取締役会
    3. チャットで取締役会を行うことができるか
    4. 取締役の代理人が出席することは認められるか
  3. 取締役会の出席方法の状況

目次

  1. はじめに
  2. 取締役会の出席方法
    1. テレビ会議システムによる取締役会
    2. 電話会議システムによる取締役会
    3. チャットで取締役会を行うことができるか
    4. 取締役の代理人が出席することは認められるか
  3. 取締役会の出席方法の状況

はじめに

 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行うこととされていますが(会社法369条1項)、その出席の方法については、会社法上、特に規定されていません。

  取締役会が開催されている場所に、全出席者が物理的にいることが強制されているわけではない のです。

 このことは、会社法施行規則101条3項1号かっこ書が、取締役会議事録における取締役の開催場所の記載について、「当該場所に存しない取締役・・・が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。」と規定していることからも明らかです。

会社法施行規則101条3項1号
3 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
(1) 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)

取締役会の出席方法

 取締役会の「出席」方法ときくと、開催場所に物理的に赴くことが真っ先に思い浮かぶものですが、電話会議システムやテレビ会議システムなどについても認められています。

テレビ会議システム・Web会議システムによる取締役会

 法務省民事局参事官室の平成8年4月19日付け「規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について」において、「 取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時にほかの取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」であれば、テレビ会議システムによる取締役会も認められる ことが明らかとされました。

 テレビ会議システムの場合も、「各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」であることが必要であり、それを確認した旨取締役会議事録に記載します。

 SkypeやZoom、Teamsなどのサービスも、このテレビ会議システム・Web会議システムの一種として利用することができるでしょう。

 なお、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、取締役全員がリモートにて参加する、Web会議システムの方法によって取締役会を開催することも多くなっています。
 取締役会議事録には「取締役会が開催された…場所」を記載しなければなりませんが(会社法369条3項・会社法施行規則101条3項1号)、取締役の全員がリモートにて取締役会に参加した場合には、議長の所在する場所を取締役会の開催場所とすることになると考えられます12

 その他の取締役会議事録の記載事項については、「取締役会議事録には何を記載すればよいか」をご覧ください。

電話会議システムによる取締役会

 平成14年12月18日付け民商3044号民事局商事課長回答「電話会議の方法による取締役会の議事録を添付した登記の申請について」において、電話会議方式によって開催された取締役会の議事録を添付した登記申請が受理されることが明確となり、電話会議方式による取締役会の開催も認められることが明らかとなりました。

 もっとも、ある一人の取締役が、取締役会が開催されている場所にいない取締役に電話して、その意見を聴きながら議事を進めるというのでは足りないと考えられています(福岡地裁平成23年8月9日判決参照)。

 上記の民事局商事課長回答の前提となっていた取締役会議事録には、「電話会議システムにより、出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることが確認されて、議案の審議に入った」「本日の電話会議システムを用いた取締役会は、終始異状なく議題の審議を終了した」と記載されており、上記回答は、この議事録を添付した登記申請を認めたものです。

 そのため、このように、電話会議方式による場合であっても、 「出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態」であり、それが議決の間維持されることが必要 と考えられます。 取締役会議事録にも、この状態を確認したことを記載するのが通例です。
 実際のところ、電話機にはスピーカーフォン機能がついているので、これを利用すれば、電話会議システムの取締役会として認められることがほとんどだと思われます。

 取締役会議事録に何を記載するかについては、「取締役会議事録には何を記載すればよいか」もあわせてご覧ください。

チャットで取締役会を行うことができるか

 現在では、LINEなどを利用したインターネットによるチャットが、(ビジネスでの利用はさておき)電子メールと同じくらい、あるいはそれ以上に普及しつつありますが、このチャットによる取締役会も、情報伝達の双方向性及び即時性が確保されるなどの一定の要件を満たす限りにおいて認められるというのが、会社法立案担当者の見解です3

 通信環境が整った状態で、あらかじめ決めた時間に、取締役会参加者でグループチャットを行う場合も、取締役会として認められるということだと思います。ある取締役が一方的に文字を打ち込んで送信し、数時間後に他の取締役が賛成するというのでは、即時性がなく、取締役会としては認められないでしょう。テレビ会議システムが画像と音声を、電話会議システムが音声だけを双方向・即時に伝達するものであるのに対し、チャットは文字だけを双方向・即時に伝達し得るものである点で、前二者と後者とは一線を画すのではないかとも考えられますが、立案担当者の見解なので、これに依拠してもよいように思います。

 ただし、問題となるのは、チャットによる取締役会の議事録を添付書面とした登記申請が認められるのか、という場面であり、これは法務局の判断になりますので、実際にチャットによる取締役会の議事録を添付書面としようとする場合には、法務局の見解を事前に確認してください。なお、チャットによる場合、文字だけの伝達なので、電話会議システムやテレビ会議システム以上に、なりすましや乗っ取りといったセキュリティなどの問題があり、十分な配慮が必要だと思います。

取締役の代理人が出席することは認められるか

 取締役は、その者の知識・経験・能力を見込まれて株主総会決議で選任されるものであり、現に取締役会に出席して、意見し、議論することが期待されています。また、取締役会招集通知においては、会社法上、議題の特定が求められておらず、取締役会における緊急動議も認められています。

 もっとも、代理人は株主総会で選任された者ではありません。代理人による業務執行の決定や職務執行の監督が株主総会に裏付けられた有効なものでない以上、取締役の性質を考えると、 取締役が代理人を立てて取締役会に出席することにするということは認められない ということになります 。

 なお、取締役会の招集通知については、「議題を定めずに取締役会招集通知を送ることができるか」もあわせてご覧ください。

取締役会の出席方法の状況

 参考までに、(平成21年のデータであり、少し古いですが、)上場会社の取締役会におけるテレビ会議システム・電話会議システムの利用状況をご紹介します(回答は901社)4

  • よく利用している ⇒  92社(10.2%)
  • あまり利用しない ⇒ 128社(14.2%)
  • 全く利用しない  ⇒ 678社(75.2%)
  • 無回答      ⇒   3社(0.3%)

 基本的には、やはり、物理的に出席し、一堂に会して取締役会を開催する傾向が強いようです。

<追記>
2020年4月23日:新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2-1の見出しおよび本文、また脚注1、2において、テレビ会議システム・Web会議システムを利用した取締役会の開催に関する解説・表現を追加しました。

  1. 会社法上の規定は特にありませんが、取締役会の招集の際、その開催場所を通知しなければならないと考えられており(落合誠一『会社法コンメンタール8 –機関(2)-』276頁〔森本滋〕(商事法務、平成21年)、同様の議論が妥当します。 ↩︎

  2. 弥永真生『コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則〔第2版〕』508頁(商事法務、平成27年) ↩︎

  3. 相澤哲ほか『論点解説 新・会社法』362、363頁(商事法務、平成18年) ↩︎

  4. 「取締役会の構成・開催の状況」55、56頁(別冊商事法務編集部『別冊商事法務334 会社法下における取締役会の運営実態』(商事法務、平成21年)) ↩︎

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