個人保証をとる場合に注意するべきポイントは?

取引・契約・債権回収

 新しい取引先に対して商品を継続的に販売する予定ですが、信用力に不安があるので、その取引先の代表取締役に保証してもらうことになりました。どのような点に留意したらいいでしょうか。

 保証は、書面で契約する必要があります。また、保証契約が有効に成立するように、保証意思を十分に確認する必要があります。

解説

目次

  1. 個人保証はなぜ必要か
  2. 保証書と連帯保証条項のどちらがよいか
  3. 保証人本人の意思確認をどう行うか
  4. 保証の種類
    1. 通常の保証と連帯保証のどちらがよいか
    2. 特定債務保証と根保証のどちらがよいか

個人保証はなぜ必要か

 法人が契約をする際、法人の信用力を補完するために、代表者などの個人保証を求められるケースは非常に多く見られます。
 以下では、個人保証を求める場合、保証契約を有効に成立させるために、どのような点に留意すべきか説明します。

保証書と連帯保証条項のどちらがよいか

 保証契約は、書面でしなければその効力を生じません(民法446条2項)。
 その書面について、別冊の保証書をとる方式と、取引基本契約書に連帯保証条項を入れる方式が考えられますが、今後予想される取引金額から合理的と認められる極度額と保証期間を定める限定根保証(下記4-2参照)とするのであれば、保証書による方式のほうが事務管理上は利便性が良いかも知れません。

保証人本人の意思確認をどう行うか

 保証契約は、債権者と保証人との間の契約です。
 形式的に保証書が作成されたとしても、その署名捺印が保証人本人の意思に基づいたものでなければ、保証契約は成立していないことになります。
 したがって、保証契約の締結にあたっては、保証人本人と直接面談し、保証人に対し、保証内容を説明したうえで、保証意思を確認する必要があります

 保証意思を確認する際には、できる限り、債権者の担当者複数名で面談し、後日において訴訟となった場合の証拠として、その面談内容(保証人の服装、天気、そのときになされた会話内容等を含む)を記録化しておくことをおすすめします。
 また、保証人の署名捺印は、面前でもらうようにしてください。保証人が別人に署名させて、後日において保証否認を主張する場合もあるからです。
 更に、保証人の捺印は、印鑑証明書付きの実印でもらうようにしてください。

保証の種類

通常の保証と連帯保証のどちらがよいか

 実務では、保証といえば連帯保証が一般的です。
 これは、仮に連帯保証ではなく、通常の保証で信用補完を行った場合、様々な点で不都合なことが生じるからです。

通常の保証における不都合な点① 催告の抗弁

 まず、連帯保証でないと、債権者が保証人に対して保証債務の履行を求めても、保証人は債権者に対し、「まず主たる債務者に催告すべき」旨を請求できてしまいます(民法452条、催告の抗弁)。
 連帯保証であれば、主たる債務者に催告する前に、連帯保証人に対して連帯保証債務の履行を求めることができます。

通常の保証における不都合な点② 検索の抗弁

 また、連帯保証でないと、保証人は、債権者に対し、主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、「まず主たる債務者の財産について執行」をしなければなりません(民法453条、検索の抗弁)。
 連帯保証であれば、主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明されても、連帯保証人に対して連帯保証債務の履行を求めることができます。

連帯保証のメリットはまだある

 このほか、連帯保証でないと、保証人に対する履行の請求が主たる債務者に対してその効力を生じない(民法458条、434条)など、連帯保証のほうが、債権者にとってメリットが多いので、保証を取り付ける際には連帯保証とすることをおすすめします

特定債務保証と根保証のどちらがよいか

 ある特定の主債務を保証するのが特定債務保証一定の継続的取引から発生する不特定の主債務を保証するのが根保証です。
 根保証にしておかないと、個別の主債務が履行されるたびに保証債務が消滅しますので、根保証にすることをおすすめします。    

限定根保証と包括根保証の違い

 根保証には、極度額と保証期間のいずれかまたは両方を定める限定根保証と、極度額も保証期間も定めない包括根保証があります。

 極度額も保証期間も定めなくていい包括根保証のほうが、債権者にとって得策のように思えますが、包括根保証の場合、裁判例では、保証契約締結から相当期間が経過したとき、主債務者の経営状態が悪化したときには保証人に解約権が認められています。
 また、包括根保証契約時における包括根保証人の予見可能性を超えるような額については、信義則または権利濫用の法理により保証債務額が一部カットされることもありますので、一概に有利とはいえないところがあります。なお、債権法改正により極度額の定めのない根保証契約は無効とされる予定ですので、この点も注意が必要です。

 このような裁判例や債権法改正の動向を踏まえると、今後予想される取引金額から合理的と認められる極度額と保証期間を定める限定根保証とされることをおすすめします。   

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