重要経済安保情報の管理・提供(取扱い)の留意点と事故発生時の対応
国際取引・海外進出当社でセキュリティ・クリアランス(企業の適合事業者の認定および従業者の適性評価の認定)の取得が完了し、政府から重要経済安保情報の提供を受けることが可能になりました。今後、提供された重要経済安保情報についてどのように管理していけばよいでしょうか。
セキュリティ・クリアランスを取得した企業は、重要経済安保情報を、適合事業者向けガイドラインの非常に詳細な規定(こうした規定は、規程ひな型や契約ひな型の中にも具体化されています)に沿って適切に取り扱うことが求められます。具体的には、①取扱者の選定および取扱者名簿の整備、②文書等の接受、③文書等の取扱い、④文書等の返却・廃棄という4つの面で、重要経済安保情報を厳格に管理しなくてはなりません。
重要経済安保情報文書等の紛失、漏えい、破壊などの事故があった場合には、適切な初期対応や調査・行政機関への報告など、ガイドラインに従った適切な対応が必要です。
解説
取扱者の選定および取扱者名簿の整備
適合事業者向けガイドライン 1 は、適性評価の認定の取得者であっても、従事している業務の実態に照らして、必要のない重要経済安保情報を取り扱ってはならないとします。
こうした原則の下、適合事業者向けガイドラインは以下の対応を求めています。
- 契約において、重要経済安保情報を取り扱える部署を限定したうえで(契約ひな型 2 16条2項)、
- 当該部署内で、行政機関から提供された個々の重要経済安保情報ごとに適性評価の認定の取得者の中から当該情報を実際に取り扱うことになる者(以下「取扱者」といいます)をさらに絞り込み、
- 取扱者名簿に整理すること
取扱者名簿は、適性評価者名簿の場合とは異なり、実際に重要経済安保情報の取扱いを行う前に、行政機関に提出し、行政機関からの承認を受けることが必要です(規程ひな型 3 25条1項、契約ひな型17条1項)。また、取扱者名簿は、候補者名簿や適性評価者名簿と同様、企業内において業務の遂行上真に必要とされる者以外の者に共有してはならないとされています(規程ひな型25条4項)。
文書等の接受
行政機関から重要経済安保情報文書等(重要経済安保情報を記録する文書、図画、電磁的記録もしくは物件または重要経済安保情報を化体する物件)を接受する際には、保護責任者または保護責任者から指名された者であり、かつ、適性評価の認定を取得した者が行わなければなりません(規程ひな型31条1項、契約ひな型23条)。
保護責任者は、自身が重要経済安保情報を取り扱わない限り、必ずしも適性評価の認定を取得する必要はないとされているため、保護責任者が適性評価の認定を取得していない場合には、適性評価の認定の取得者を指名して接受にあたらせる必要があると考えられます。
文書等の取扱い
行政機関より受領した重要経済安保情報文書等に関しては、その取扱いにも厳格なルールが定められています。その主な内容は、以下のとおりです。
| 類型 | 取扱いにあたって求められる主な事項 | 規程ひな型 | 契約ひな型 |
|---|---|---|---|
| 文書等の保管・管理 |
|
32条1項 | 24条1項 |
|
32条4項・1項 | 24条3項・1項 | |
|
32条2項 | 24条2項 | |
| 文書等の閲覧 |
|
34条2項 | 30条1項 |
|
34条1項 | 30条2項 | |
| 情報の伝達 |
|
35条3項 | 31条1項 |
|
35条2項 | 31条2項 | |
|
35条1項 | 31条3項 | |
| 文書等の複製・作成 |
|
36条1項 36条3項 |
32条1項 32条2項 |
|
37条1項 | 33条1項 | |
| 文書等の運搬 |
|
33条1項 | 26条1項 |
|
33条3項 | − | |
|
33条4項 | − | |
|
13条 33条5項 |
− | |
| 記録簿の作成 |
|
31条2項 | − |
|
36条4項 | − | |
|
34条3項 | − | |
|
28条5項 | − |
なお、企業は、毎年1回以上、重要経済安保情報取扱区画ごとに、重要経済安保情報文書等の保管状況を検査し、その結果を行政機関に報告するものとされています(規程ひな型42条1項、契約ひな型38条1項)。
文書等の返却・廃棄
企業は、行政機関から返却の指示があった場合には、重要経済安保情報文書等を返却しなければなりません(規程ひな型45条2項、契約ひな型39条)。
また、重要経済安保情報文書等の廃棄は、原則として行政機関から特に指示があった場合にのみ認められています(規程46条1項、契約40条1項)。重要経済安保情報の漏えいのおそれがある緊急の事態においては、漏えいを防止するために他に適当な手段がないと認める場合には、廃棄することが認められていますが(規程ひな型47条1項、契約ひな型41条1項)、その場合でも、その暇がない場合等を除き、行政機関の承認を得る必要があります(規程ひな型47条2項、契約ひな型41条2項)。
事故発生時の対応
重要経済安保情報文書等が紛失した場合、漏えいもしくは破壊された場合またはそれらの疑いがある場合(以下「事故等」といいます)には、以下の対応が求められます(規程ひな型48条、契約ひな型42条)。
- 適切な処置の実施
- 保護責任者または業務管理者への報告
- 報告にかかる事実の調査の実施
- 事故等の拡大防止に必要な措置の実施
- 行政機関に対する、把握し得るすべての内容の報告
- 行政機関に対する、事故等の詳細の報告
- 行政機関に対する、調査結果に所見および対策を添えた調査報告書の提出
(資料)セキュリティ・クリアランス関連法令の全体像
重要経済安保情報保護活用法とその下位法令、ガイドライン等の構成は、以下のとおりです。
| 法令等 | 概要 | 成立/施行/公表時期 |
|---|---|---|
| ① 重要経済安保情報保護活用法 | 本法それ自体 | 2024年5月10日成立 2025年5月16日施行 |
|
2025年1月31日閣議決定 2025年5月16日施行 |
|
|
2025年1月31日閣議決定 2025年5月16日施行 |
|
④ 重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(行政機関編)、 |
|
2025年5月2日公表 |
|
2025年5月2日公表 |
-
重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)(2025年5月2日) ↩︎
-
適合事業者向けガイドライン別添3「契約書のひな型」 ↩︎
-
適合事業者向けガイドライン別添1「規程のひな型」 ↩︎
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