セキュリティ・クリアランス取得の方法は?適性評価の進め方と留意点

国際取引・海外進出

 当社ではセキュリティ・クリアランスの取得を進めており、まずは適合事業者の認定を受けることができました。次に、重要経済安保情報の取扱いの業務を行う予定の従業員について、「適性評価」を受ける必要があるとのことですが、具体的にはどのように進めればよいのでしょうか。

 企業が従業者について、セキュリティ・クリアランス制度における適性評価の認定を取得させるにあたって行うべき事項は、①適性評価を受ける候補者の選定、②適性評価の実施への対応、③適性評価者名簿の整備の3つのステップに分けられます。

 適性評価の過程においては、これらに加えて、④適性評価に関する個人情報等の管理、⑤従業者が派遣労働者である場合の取扱いについても留意する必要があります。

解説

目次

  1. 適性評価を受ける候補者の選定
    1. 候補者の選定
    2. 候補者に対する説明および名簿掲載への同意の取得
    3. 重要経済安保情報の提供元の行政機関への名簿提出
  2. 適性評価の実施への対応
  3. 適性評価者名簿の整備
  4. 適性評価に関する個人情報等の管理
  5. 従業者が派遣労働者である場合の取扱い
  6. 従業者による適性評価の認定取得後の事情変更
  7. (資料)セキュリティ・クリアランス関連法令の全体像

適性評価を受ける候補者の選定

 適合事業者に認定された企業は、従業者に適性評価を受けさせるにあたって、①適性評価を受けさせる従業者(以下「候補者」といいます)の選定、②候補者に対する説明および名簿掲載への同意の取得、③重要経済安保情報の提供元の行政機関への名簿提出を実施する必要があります。

候補者の選定

 企業は、候補者として「重要経済安保情報の取扱いの業務を新たに行うことが見込まれることとなった者」(重要経済安保情報保護活用法12条)を特定する必要があります

 運用基準 1 は、「取扱いの業務を新たに行うことが見込まれることとなった者」には、「直ちに取扱いの業務を行うべき個別具体の必要性が生じている状況のほか、重要経済安保情報の取扱いの業務を行う具体的な蓋然性が認められる状況も含む」(運用基準19頁)としています。適合事業者向けガイドライン 2 はさらに具体的に、「当該事業者において、当該行政機関が管理する重要経済安保情報の取扱いの業務を行っていなかった者で、人事異動や担務変更により、新たに重要経済安保情報の取扱いの業務を行うことが見込まれることとなった者が該当する」(適合事業者向けガイドライン11頁。下線筆者)としています。

 これらを踏まえると、従前、重要経済安保情報の取扱いが行われてきたようなポストに異動する者や同ポストの業務を新たに担当することとなった者は、「取扱いの業務を新たに行うことが見込まれることとなった者」に該当すると考えられます(重要経済安保情報保護活用諮問会議第2回)。また、「重要経済安保情報を取り扱うという条件で採用されることになる求職者」も候補者とすることが可能です(適合事業者向けガイドライン13頁)。こうした候補者は、必要最低限の範囲に留めることが必要です(規程ひな型 3 14条2項)。

 なお、適合事業者向けガイドラインは、重要経済安保情報取扱区画に立ち入らずに行う警備事務や、重要経済安保情報の取扱いの適性が認められた者の立ち会いの下、重要経済安保情報が保管された区画に立ち入って実施する清掃業務は、重要経済安保情報を認知しない態様で行われるため、「取扱いの業務」に当たらないとしており、こうした業務を行うにあたって、適性評価を取得することは不要です(適合事業者向けガイドライン14頁)。

候補者に対する説明および名簿掲載への同意の取得

 企業は、候補者を選定した後、当該候補者に対して、適性評価の概要やプロセスなどを説明し、候補者名簿に掲載することの同意を取得する必要があります

 適合事業者向けガイドラインは、説明の主体として、候補者の直属の上司等各事業者において適切と思われる者を挙げています(ただし、上司等が候補者のプライバシーを侵害することのないよう徹底することが前提となり、そのための上司等の留意事項が教育資料ひな型 4 の34頁で整理されています)。また、説明にあたって用いる資料および同意書のひな型は、適合事業者向けガイドラインに別添4として添付されています 5

 候補者より同意を取得できた場合には、企業は候補者より必要情報を聴取したうえで、候補者名簿を作成します。候補者名簿のひな型は、規程ひな型に様式1として別添されています。なお、候補者名簿は、個人情報であると共に機微な情報であることから、企業内においても、業務の遂行上真に必要とされる者の間だけで厳重に管理することが求められています(適合事業者向けガイドライン15頁)。

重要経済安保情報の提供元の行政機関への名簿提出

 企業は、候補者名簿の作成後、当該名簿を重要経済安保情報の提供元の行政機関に提出します。

 行政機関は、候補者名簿に掲載された候補者が、「重要経済安保情報の取扱いの業務を新たに行うことが見込まれることとなった者」に該当するかどうかを改めて判断し、該当するものと認められた場合には、当該適性評価の対象者(以下「評価対象者」といいます)に対し、適性評価に関する告知書および適性評価を受けることの同意書を送付します。

 評価対象者が同意書を提出すると、調査機関(内閣府)より質問票が送付され、適性評価の調査が開始されます。

適性評価の実施への対応

 適性評価の調査および評価の手続は、評価対象者と内閣府および重要経済安保情報の提供元となる行政機関の間で実施されるため、企業自身が行うべき事項は基本的にありません。もっとも、適性評価の調査の過程において、評価対象者の上司等への裏取りは実施されることとなっているため、評価対象者の上司等に、合理的な範囲で調査に協力するよう十分に説明することが必要とされています(適合事業者向けガイドライン16頁、教育資料ひな型34頁)。なお、内閣府は、評価対象者や評価対象者の上司等向けのQ&Aを公表しており 6、評価対象者の上司等への説明にあたっては、教育資料ひな型と合わせて、当該Q&Aも活用することが可能です。

 行政機関が、評価対象者について重要経済安保情報を漏らすおそれがないと認められると評価した場合、その結果は評価対象者に対して通知されます。結果通知に際しては、評価対象者は、行政機関に対する誓約書の提出も求められます(運用基準26頁)。

適性評価者名簿の整備

 適性評価の結果は、従業者本人のみならず、企業に対しても通知されます。

 企業は、適性があると認められた従業者を一覧にした名簿(以下「適性評価者名簿」といいます)を作成する必要があり(規程ひな型17条1項および契約ひな型 7 8条1項)、少なくとも年1回、当該名簿を点検し、退職などにより従業者でなくなった者を削除するなど適切な管理を行うことが必要です(契約ひな型8条2項)。ただし、同名簿を、行政機関に対して提出する必要はありません。

 適性評価者名簿は、候補者名簿と同様、企業内において業務の遂行上真に必要とされる者以外の者に共有してはならないとされています(規程ひな型17条3項)。

適性評価に関する個人情報等の管理

 従業者による適性評価の認定の取得のプロセスにおいて、企業は、適性評価に関する個人情報(候補者が候補者名簿への掲載に同意しなかったこと、適性評価対象者が適性評価の実施に同意しなかったこと、適性評価の結果の通知を受けていないこと、適性評価の結果等)を取り扱うこととなります。こうした個人情報について個人情報保護法に基づいた管理を行う必要があることは当然ですが、さらに、運用基準はかかる個人情報を重要経済安保情報の保護以外の目的のために利用し、または提供してはならないと定めており(運用基準31頁)、これを受けて、規程ひな型20条および契約ひな型11条は、その旨の条項を設けています。

 目的外利用に関する具体例は、以下のとおり、法案審議時の国会答弁のほか、運用基準や適合事業者向けガイドラインに挙げられています。

類型 具体例
目的外利用に該当する場合
  1. 適性評価の結果を考慮して、解雇、減給、降格、懲戒処分、自宅待機命令、不利益な配置の変更、労働契約内容の変更の強要、昇進もしくは昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと、または専ら雑務に従事させるなど就業環境を害すること(運用基準31頁)
  2. 企業が営業目的で第三者に従業員の適性評価の結果を示して回ること(2024年3月22日衆議院内閣委員会高市早苗国務大臣答弁)
目的外利用に該当しない場合
  1. 適性があるとは認められなかった者について、予定していた重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせないこと(適合事業者向けガイドライン18頁)
  2. 適合事業者において、重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる前提で採用または採用内定した場合において、当該者につき適性があるとは認められなかった場合に、当該者の採用や採用内定の取消しをすること(ただし、最終的に当該取消しが可能であるか否かは、労働法制との関係において、司法において個別具体的に判断)(適合事業者向けガイドライン18頁)
  3. 適合事業者において、適性があると認められた者を対象に手当を支給すること(ただし、重要経済安保情報の取扱いの業務の難易度とそれに対する遂行能力、当該業務を遂行するうえで当該従業者が負う業務上の責任などを全体として評価した結果であり、適性があると認められた事実そのものが評価対象ではないことが前提)(適合事業者向けガイドライン18頁)
個別具体的な判断に委ねられる場合 外国の政府と共同で実施するプロジェクト等において、重要経済安保情報の取扱いが想定されるため、その対象者を相互に確認する観点から、行政機関が、外国の政府に、適性評価において重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者の氏名を伝達すること(運用基準31頁)

従業者が派遣労働者である場合の取扱い

 適合事業者である企業に派遣されている派遣労働者は、本法との関係では、適合事業者の「従業者」と位置付けられます(適合事業者向けガイドライン13頁および19頁)。かかる解釈を踏まえ、派遣労働者に重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせようとする場合には、派遣元の企業と派遣先の適合事業者との関係において、労働法制との関係から、様々な調整が必要となります

従業者による適性評価の認定取得後の事情変更

 従業者は、適性評価の認定を取得した後に行政機関に提出する誓約書の中で(上記2参照)、適性評価における調査対象事項に関して事情変更が生じた際の報告義務を課されています。また、適合事業者も、規程および契約に基づき、同様に、従業者に関して事情変更を認めた際の報告義務を課されています(規程ひな型21条、契約ひな型13条)。

 かかる報告の結果、行政機関より「引き続き重要経済安保情報を漏らすおそれがないと認めることについて疑いを生じさせる事情」(重要経済安保情報保護活用法12条1項3号)があるとの通知があった場合には、企業は、直ちに当該従業者が重要経済安保情報を取り扱わないよう措置しなければなりません(規程ひな型22条、契約ひな型14条)。

(資料)セキュリティ・クリアランス関連法令の全体像

 重要経済安保情報保護活用法とその下位法令、ガイドライン等の構成は、以下のとおりです。

法令等 概要 成立/施行/公表時期
① 重要経済安保情報保護活用法 本法それ自体 2024年5月10日成立
2025年5月16日施行

② 重要経済安保情報保護活用法施行令

  • 本法中の政令委任事項を具体化
  • 重要経済安保情報の指定・解除、適性評価、適合事業者への提供等について規定
  • さらなる詳細は運用基準に再委任
2025年1月31日閣議決定
2025年5月16日施行

③ 重要経済安保情報の指定及びその解除、適性評価の実施並びに適合事業者の認定に関し、統一的な運用を図るための基準

  • 本法の施行に関して、政府として講ずべき措置や遵守すべき事項を規定することにより、政府における運用を統一化
  • 重要経済安保情報の指定・解除、適性評価、適合事業者への提供等の詳細を規定
2025年1月31日閣議決定
2025年5月16日施行

④ 重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(行政機関編)
重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)

  • 運用基準を補足する資料
  • 行政機関向けガイドライン:
    行政機関が、本法、施行令、運用基準に定める重要経済安保情報の指定および保護措置、適性評価の実施、適合事業者の認定等の実務を行うにあたっての補足的事項を規定
  • 適合事業者向けガイドライン:
    適合事業者の認定を受けるために必要なことに関する補足的事項および適合事業者の認定を受けて重要経済安保情報を取り扱うにあたっての補足的事項を規定
2025年5月2日公表

⑤ 適性評価に関するQ&A(第1版)

  • 運用基準を補足する資料
  • 適性評価対象者、適性評価調査に協力する評価対象者の上司や関係者、公務所または公私の団体向けのQ&A
2025年5月2日公表

  1. 重要経済安保情報の指定及びその解除、適性評価の実施並びに適合事業者の認定に関し、統一的な運用を図るための基準(2025年5月16日施行) ↩︎

  2. 重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)(2025年5月2日) ↩︎

  3. 適合事業者向けガイドライン別添1「規程のひな型」 ↩︎

  4. 適合事業者向けガイドライン別添2「教育資料ひな型(適合事業者向け)」 ↩︎

  5. 適合事業者向けガイドライン別添4「重要経済安保情報を取扱う業務が予定されている方へのお知らせ」 ↩︎

  6. 適性評価に関するQ&A(第1版)(2025年5月2日) ↩︎

  7. 適合事業者向けガイドライン別添3「契約書のひな型」 ↩︎

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する